インタビュー

撮影用のLEDライト、どうやって選べばいいの?

Aputureの代理店・アガイ商事に聞いてきました(中編)

amaran 200x S

近年、爆発的にその製品ラインアップが拡充されてきている撮影用LEDライト。長いこと写真愛好家に親しまれてきたストロボとは一線を画するものとして、その存在感を高めてきています。

LEDライトに興味があるけれど、実際どういう感じなの? と思っている読者もいるでしょう。今回はLEDライトの入門編として、その基本的な特徴を、Aputure(アプチャー)やamaran(アマラン)などLEDライトの取り扱いに豊富な経験を持つアガイ商事(営業部・堀川謙吾さん/中本海渡さん)に伺ってきました。

演色性は重要なのか

——LEDライトを選ぶ際に、注目すべきスペックはなんですか?

まず注目してほしいのは「演色評価数」です。大体どこのメーカーも「CRI」という単位で数値化して表記しています。

ごくごく簡単に言ってしまうと、これは太陽光に反射して見える色を100としたときに、どれだけ正確な色を出せるかの基準をあらわすものです(厳密には“Ra”のこと)。撮影用LEDライトでは“95”がボーダーラインと言われています。そのため、製品カタログを見る際に「95+」といった表記を見ることが多くなってくると思います。

この数値は、光そのものを人の目でみてなかなか違いの分かるものではありません。信頼性の低いメーカーだとカタログ上で高い数値になっていても、実際に取り寄せてカラーメーターでチェックすると低い値が出る、という製品も残念ながらなかにはあります。

amaran 200x Sのスペック表(一部)

——撮影において演色性が低いとどんな影響がありますか?

メーカーにもよりますが、照射された被写体にグリーンかマゼンタがのってしまうケースが多いです。例えばモデルさんに光を当てた場合、赤や緑、青白っぽくなるイメージでしょうか。一般家電におけるLEDの蛍光灯でも、演色性の低いものは緑がかっているものが多かったりします。

以前のLEDライトは非常に演色性が低く、とても撮影業界で使えるものではありませんでした。それが技術の向上により、“CRI95以上”という高い数値を平均して出せるようになってきました。家庭用ではLED電球など割と早くから普及し始めていましたが、それは演色性の高さがそこまで求められていなかったから。撮影業界にLEDが浸透するまでラグが生じていたのはそんな理由からです。

——カタログでは、「CRI」以外の表記を見かけることもあります。

「SSI」という表記を見かけることも多いと思います。これはアメリカの映画芸術科学アカデミーが新しく作った基準で、ボーダーラインが“85”と言われています。「CRI」よりも細かいですね。弊社が取り扱っているAputure製品でも“87”というのが最高です。

他にも異なる団体が定めた基準があったりしますが、その中のどれを重要な指標とすべきか、というのは一概に言えるものではありません。ユーザーの中でどれか基準を持っておくのが良いと思いますが、より一般的な「CRI」で考えていくということでとりあえずは充分だと思います。

LEDライトにはいろんな形状があります。

——LEDライトにはその形状に様々なタイプがあります。どんなものを選べばよいのでしょうか?

まず撮影用LEDライトには、大きく分けて以下のようなタイプがあります。ユーザーの撮影用途によって、どれを選ぶかが変わるでしょう。

・スポットタイプ

・パネルタイプ

・チューブタイプ

・フレキシブルタイプ

まずは「スポットタイプ」ですが、光量でいうと1番強い傾向がありますので、撮影におけるメインのライトとして使うパターンが多いです。

amaran 200x S

「パネルタイプ」はベースライトとして使うことが多いです。スタジオによって上に吊っている所もあったりして、空間そのものを明るくする目的で使うイメージになります。光の性質としてはより拡散効果の高いものとなります。カードサイズから大きなものまで、製品としては1番ラインアップに幅があるといえるかもしれません。

顔を照らす目的のみであれば、パネルタイプの小さいものがあれば本当に便利です。マグネットで取り付けられるものや、コールドシューにつけられるものなど、種類も多彩にあります。

「チューブタイプ」は、被写体のエッジを出すとか、メインライトで生じた影を消すといった使い方があります。その他にも、例えばコスプレ撮影などの現場ではこのライトそのものをセットの一部にして演出するというケースもあります。照らす目的ではなく、画角の中に写りこませるということですね。

amaran PTシリーズ

「フレキシブルタイプ」は、この中では最も光量が抑えめになります。しかしなんといっても軽く、セッティングの幅は大きいです。トップライトを作りやすいですね。

amaran F21c

出せる色について

——LEDライトは、モデルによって出力できるカラーにも違いがありますね。

弊社が取り扱っているAputureやamaranを例にすると、「d:デイライト」「x:バイカラー」「c:マルチカラー」の3タイプがあります。製品名の末尾にそれぞれ“d”と“x”と“c”が付いて区別されています。

デイライトは5,600K固定。バイカラーは色温度の調節に対応。マルチカラーは多彩なカラーを出力できるという特徴があります。出力が同じワット数であれば、一般的にはデイライトの光量が1番大きく、バイカラー、マルチカラーの順に光量が落ちていきます。

製品名に“d”と“x”と“c”がそれぞれ付いている

——ユーザーはどれを選ぶか迷いどころですね。

多くの色を出せるマルチカラータイプが便利といえばそうですが、例えばポートレートを撮影する人の中にはバイカラータイプで色温度だけ調節できれば十分、というユーザーもいるようです。シンプルにパンチ力が欲しければデイライトタイプが適していると言えますね。

ただLEDは技術の進歩も早く、新製品がどんどん出てきます。新しいモデルが出てくれば、マルチカラータイプでもその他のタイプより光量が大きくなる場合もあります。ここはある意味難しいところです。メーカーによってどのタイプに力を入れているかも異なってきます。

価格の傾向/アクセサリーの話

——それぞれのタイプで、価格にはどういう傾向がありますか?

基本的にはマルチカラータイプの方が価格は高くなります。で、バイカラー、デイライトの順番。また、当然ですが価格を決める要素はほかにもあります。防滴性能の有無、DMXやバッテリー駆動への対応可否などです。

Aputure製品で言うと、スタジオやプロ向けのモデルは“コントロールボックス”が付属しています。灯体を手の届かない位置にセッティングしてしまう場面も多いので、離れた場所でも操作できるようにしているというわけです。

別体型のコントロールボックスの例

対して、個人で使うようなハイアマ層向けのモデルは、灯体に操作部を一体化して価格を抑えたものが多いです。コンセントにさせばすぐ使えるという手軽さはありますが、遠隔操作についてはアプリで対応するといったような工夫をしています。

本体の背面に操作部を配したモデル

これらの違いは、ストロボで言うところの“モノブロックタイプ”か“ジェネレータータイプ”かといった話に似ているかもしれません。

——どんな撮影に使うかで必要な機能を選べば、自身に合うモデルも見つけられるかもしれませんね。

光量はどう見る?

——他に注目すべきスペックはありますか?

留意いただきたいのは「W(ワット)数」についてです。もちろん光量の目安にはなるのですが、厳密にいうと「W数=光の強さ」ではありません。

例えば同じ200Wのライトがあったとして、現行モデルと5年前のモデルを比較したら、その明るさは全然異なる場合があります。LEDの技術の向上により、発光効率や精度が向上したことが主な要因です。

どれだけ強い光をあてられるかで言うと、W数よりもLux(ルクス)を見る必要があります。ただし、Luxに関しては公表されていない製品も多く、そうなるとW数を目安にしなくてはいけないので、そのあたりはわかりにくい部分かもしれません。

——先ほども、ライトの形状やカラータイプによっても光量が変わってくるという話がありましたね。

はい、単純にパネルタイプのような“面光源”にくらべて、スポットタイプの“点光源”(厳密には点ではないが)の方が素子がぎゅっと集中している分、同じ出力でもより明るくなる傾向にあります。

保証の有無もチェック

——製品選びの時に気にしておくとよいことはありますか?

修理対応などの保証も、製品選びの基準として入れていただいた方がよいかもしれないですね。

通販サイトなど見ると、出どころのはっきりしない製品も多く販売されているのが現状です。何かトラブルが起きた時に、修理のため国外に製品を送るとなると時間も費用も掛かります。国内で保証してくれる業者があるかどうがというのは、非常に重要なポイントといえます。


とにかく製品ラインアップが多く、何を選べばよいのかわかりにくいのがLEDライト。今回はそれらの特徴を分類し、かつ製品選びで気にすべきポイントを確認しました。次回は、LEDライトの製品リリースなどでよく目にする用語について聞いていきます。

本誌:宮本義朗