写真展

トミオ・セイケ写真展「Timeless Time」

(ブリッツ・ギャラリー)

"Timeless Time #01, Prague, 2012" ©Tomio Seike

 このたびブリッツ・ギャラリーは、欧米のアート写真シーンで活躍している写真家トミオ・セイケの新作写真展 「Timeless Time」(タイムレス・タイム)を開催します。本展では、2012年11月に集中的に撮影されたチェコ・プラハのシティースケープが展示されます。この地を訪れる多くの写真家は21世紀の現代に中世の面影が残るシーンを探し 求めます。現代の痕跡を覆い隠すために夜間の写真が多いのも特徴です。しかし、セイケはあえて、現在と中世の 面影が混在しているプラハの街並みを昼間に撮影しています。彼は私たちに西洋文化の本質にもっと目を向けて欲しいと考えているのではないでしょうか。多くの人が愛でる西洋文化の本質は、古いものを大事にしつつ新しいものを受け入れること。それは表層ではなく精神性にこそ意味があることを伝えたいのだと思います。

 本作はコンパクト・デジタル・カメラ(コンデジ)とインクジェット・プリンターで制作されています。彼がデジタルに精力的に取り組んでいる背景には、最近の写真界におけるデジタル化の流れがあります。工業製品のフィルムはメーカーの都合でいつ生産中止になるかわかりません。しかし写真家はフィルムがなくなっても作品制作を止めるわけに はいきません。セイケは過去数年間にわたり、このような問題意識を持ってデジタル作品の可能性を追い求めてきました。最近は、急激なデジタル化の反動からアナログカメラ、銀塩写真を再評価する動きも散見されます。しかし、セイケは議論のポイントは銀塩かデジタルではないと考えます。最近の更なる技術進歩と多種類の専用用紙の市場 への供給により、いまやデジタル作品であっても銀塩写真と何ら変わらないクオリティーを持つという確信があるの です。もちろんその前提には作家独自の表現をプリントで追求する絶え間ない努力が必要になります。

 実際、当初はデジタルに否定的だった欧州のアート写真界でも認識が変化してきました。2011年にはロンドンの老舗写真ギャラリー、ハミルトンズでセイケのデジタルによる作品展が開催されて大成功を収めているのです。

 セイケのデジタルカメラでの作品制作プロジェクトはシグマのDP2との出会いから始まりました。今回は全作がシリーズ最新型のDP3 Merrillで制作されています。大きな改善点はRAWでの撮影画像を直接モノクロに変換できる現像 ソフトが追加されたこと。以前より、デジタル処理の過程が減ったことでイメージの描写力が更に増しています。ライカで知られるセイケがコンデジで作品制作することに違和感を覚える人もいるかもしれません。彼は私たちに、よい 作品を制作するにはカメラ機材以上に作家のオリジナルなスタイル確立が必要であることを伝えたいのです。高価 なライカと違い、DP3 Merrillはアマチュアでも購入可能です。しかし、本展の展示作品を見れば、同じカメラでもセイケ のような写真世界の確立が容易でないことに気付くと思います。

 本展では、シグマDP3 Merrillで撮影され、デジタル・アーカイバル・プリントで制作された約20点が展示予定です。一部大判プリントも含まれる予定です。

(写真展情報より)

 9月15日(日)に、トミオ・セイケ・トーク・イベント「シグマDPシリーズのすべて」が開催される。時間は14時〜16時。ゲストは福井信蔵氏。

  • ブリッツ・ギャラリー
  • 住所:東京都目黒区下目黒6-20-29 Blitz-House
  • 会期:2013年9月14日(土)〜2013年12月7日(土)
  • 時間:13時〜18時
  • 休廊:日曜・月曜、9月24日〜9月28日

"Timeless Time #02, Prague, 2012" ©Tomio Seike

"Timeless Time #03, Prague, 2012" ©Tomio Seike

(本誌:折本幸治)