写真展告知

金武治写真展「手作りピンホールカメラで巡る 夢の街 東京」

写真家からのコメントと作品解説も紹介

皇居 巽櫓(千代田区)。江戸時代の面影を残す景色が多くあり、内堀に面した巽櫓(たつみやぐら)周辺の風景はその代表的なものです。ピンホールカメラを太陽に向けて撮影すると、この写真のような独特な虹色の円形のパターンが現れます。

自作の木製ピンホールカメラを用いた、金武治さんの写真展「手作りピンホールカメラで巡る 夢の街 東京」が、4月13日から東京・四ツ谷のポートレートギャラリーで行われる。この記事では、作者によるコメントと解説をお届けする。

開催概要「手作りピンホールカメラで巡る 夢の街 東京」

日本の首都であり世界最大級の人口を有する国際的大都市「東京」。政治・経済・文化において日本の中核で、交通面等でも日本の中心に位置しています。

そのような街を作者が製作した木製ピンホールカメラで撮影してみました。私達が日々暮らしている街をピンホールカメラ独特の広い視覚で眺めてみませんか。

ポートレートギャラリーのWebサイトより

会場:ポートレートギャラリー(日本写真文化協会)
所在地:東京都新宿区四谷1-7-12 日本写真会館5階
会期:2023年4月13日(木)〜4月19日(水)
時間:平日10時〜18時、土日祝日11時〜18時(最終日は15時まで)
備考:会期中無休・入場無料
展示数:全紙40点(予定)

撮影:柳沢保正

金武治(かねたけおさむ)
1967年5月22日生まれ。1990年3月東京工芸大学工学部写真工学科卒。公益社団法人 日本写真協会正会員。写真展:2009年3月「四季との対話」(PENTAX FORUM)、2016年6月「自然のたたずまい」(リコーイメージングスクエア東京)、2021年12月「手作りピンホールカメラで巡る 四季の記憶」(ポートレートギャラリー)

撮影の始まりと、機材を選んだきっかけ(作者コメント)

私達が日々生活している、世界を代表する都市「東京」を客観的な視点で記録できないか? と以前から漠然と考えていました。

私は東京圏の一部である神奈川県に長く住んでおり、東京都心も生活圏の一部と言えるような場所です。ところが思い返してみれば、江戸城や東京スカイツリーなど、遠くから眺めたことはあるものの実際に足を運んだことがない場所が結構ありました。そんな身近な名所「東京」を、この目で改めて見学してみようというのが始まりです。

ではなぜ今まで「東京の景色」を撮らなかったのかというと、既存の機材ではイメージ通りに撮れないように感じられたのです。どんな感じで眺めたら良いのだろうか? と漠然と考えていたのですが、あるきっかけにより自作したピンホールカメラを用いたところ、これまで思い描いていたイメージに近い映像が記録できると感じ、撮影を実行に移したのです。

この木製の自作ピンホールカメラは銀塩フィルムを用い、焦点距離(ピンホールとフィルムの間隔)を極力短くすることで大変広い画角が得られます。そのため大きな建物も画面内に収められ、ピンホールから入る光の量が少ないために長い露光時間が必要となり、時間の流れまでも記録できます。

また、現代のカメラのような緻密な描写が不可能なため、例えばプライバシーの問題(最近は通りすがりの人や車の撮影は断られることが多い)もクリアできるなど、機能としては不便極まりないカメラなのですが、意外にも都市の姿を捉えるのには適しているように思えたわけです。

使用カメラ
2号超広角タイプ(120フィルム、6×9判と6×7判兼用。焦点距離35mm。35mm判換算14〜17mm相当程度の画角)
3号超広角タイプ(120フィルム、6×7判。焦点距離35mm。35mm判換算17mm相当程度の画角)

↓ピンホールカメラの製作手順はこちら

作品の一例

新橋駅SL広場(港区)

1872年(明治5年)に日本で初めての鉄道が新橋駅(現 汐留駅)から横浜駅(現 桜木町駅)の間に開通しました。そのため新橋駅は日本の鉄道発祥の地と言えます。現在は駅前広場にC11形蒸気機関車が保存されており、記念碑となっています。

実は、撮影時は蒸気機関車の手前の道を多くの人々が歩いていたのですが、露光時間が長いためほとんど写っておりません。

浅草寺 雷門(台東区)

近代的な大都市東京にも、江戸を想わせる古くて懐かしい景色が今でも数多く存在します。浅草寺の創建は大変古く、平安時代初期の古い記録も残っているようです。国際的な観光地です。

手前に写っている和服姿の2人の女性はカメラのすぐ近くに立っているのですが、撮影中にほとんど動かずにいてくれたため、良い感じに写りました。

豪徳寺(世田谷区)

都心から少し離れた地域にも歴史を感じさせる場所があります。彦根藩井伊家の菩提寺でもある豪徳寺もその一つで、境内には発祥の地との説もある多くの招き猫が奉納されています。

撮影に使用したカメラは、かなり無理をして広い画角で撮影できるように製作しているため、画面中心部の描写は良好ですが、周辺部ほど画質の劣化が見られます。そのような描写の変化も、会場に展示している全紙サイズの作品で確認してみてください。

東京タワー(港区)

東京スカイツリーの完成後も、日本で2番目に高い建築物です。その巨大さを最も実感できると思われる位置からタワーを見上げてみました。画角が広いため、このような至近距離でもタワーの全体像を撮影できます。

銀座4丁目交差点(中央区)

東京で最も華やかな場所は? と考えた時、最もふさわしい場所ではないかと思いました。銀座4丁目周辺は全国で最も地価が高い場所としても知られています。

夕方の薄暗い時間、既に街灯が点灯し、車が前照灯を点灯するような条件でしたが、3分程の露光時間で撮影することができました。

丸の内ビル群(千代田区)

日本を代表する企業が所在する丸の内オフィス街。本作品は空に明るさが少し残っているものの、辺りは既に暗くなっている条件で撮影しました。

一般的にピンホールカメラでの夜間撮影は困難だと思われていますが、今回はISO 400の高感度リバーサルフィルムを用い、30分の露光時間で撮影したところ、このような結果を残すことができました。

江戸城の石垣と私(千代田区)

江戸城の天守は3度築かれましたが、いずれも火災等で焼失し、4度目の天守は計画されたものの天守台のみが築かれ、江戸市街の復興を優先する事になり天守は築かれませんでした。

今回はその天守台の前で記念撮影をしてみました。ND4フィルターを装着し、露光時間1分と長めに設定しました。カメラのシャッターを開けた私はすぐにカメラの前に走り、50秒後に再びシャッターを閉めるためにカメラに走って向かう。そのため、私の姿は少し透けた状態で写っております。