写真展PICK UP
金武治写真展「手作りピンホールカメラで巡る 四季の記憶」
東京・四ツ谷で12月9日から 使用カメラの製作工程も掲載
2021年12月7日 07:00
写真家 金武治さんの写真展「手作りピンホールカメラで巡る 四季の記憶」が、東京・四ツ谷のポートレートギャラリーで12月9日に始まります。ここではその主な展示作品とともに、撮影に使用したピンホールカメラの製作工程についても解説してもらいました。
展示について(作者コメント)
「手作りカメラで記憶を画像にする試み」をテーマに、自作カメラによる撮影に取り組んできました。撮影場所は自宅のある神奈川県、車で訪れやすい山梨県、長野県です。これまでカラーリバーサルフィルム、デジタルカメラ等を用いて同様な地域の自然、風景を撮影してきましたが、今回のピンホールカメラによる撮影では白黒フィルムを用いました。
私も50歳代半ばになり、何故か昔の事をよく思い出すようになりました。その時のイメージは何だか形がおぼろげで、色があるのか無いのか、はっきりしないようなものなのです。そのような思い出?もしくは記憶?を形にするには「白黒フィルムを用いたピンホールカメラ」が最適な機材と方法であると考えたのです。
出展作品は全38枚(全紙サイズ)です。身近な景色で日本の四季を表現してみました。日本の四季の中に「自分の記憶」を探してみたのです。
作者プロフィール
金武治(カネタケオサム)
1967年(昭和42年)神奈川県生まれ
1977年頃より写真を趣味にする
1990年(平成2年)東京工芸大学工学部写真工学科卒
様々な写真の楽しみ方を模索中。最近特に取り組んでいるのは、ピンホールカメラの自作・撮影、古い小型カメラ(ミノックス判、16mmスチルカメラ、ボルタ判等)の再現ナドナド。
写真展:「四季との対話」(PENTAX FORUM)2009年3月、「自然のたたずまい」(RICOH IMAGING SQUARE)2016年6月
所属団体:公益社団法人 日本写真協会 正会員、写真懇話会、写団創美
Webサイト「日本の自然風景&レトロフィルムカメラの世界」運営中
https://osamu-kanetake.jimdosite.com/
開催概要「手作りピンホールカメラで巡る 四季の記憶」
会場:ポートレートギャラリー(日本写真文化協会)
所在地:東京都新宿区四谷1丁目7番地12 日本写真会館5階
会期:2021年12月9日(木)〜12月15日(水)
時間:平日10時〜18時、土日祝日11時〜18時(最終日は15時まで)
備考:会期中無休・入場無料
主な出展作品の解説
日本の春といえば「桜」をイメージする事が多いと思います。子どもの頃に遊んでいた公園や学校にもあったものです。そのような場所を探してみました。
暑い夏には自然に「涼」を探してしまいます。多くの河川の上流部には渓流、清流にあたる場所があります。真夏の明るい日差しでもピンホールカメラによる撮影では長時間露光になり柔らかな流れが写ります。
秋と言えば「紅葉」でしょう。私としては華やかな紅葉よりも、少し地味ですが「自分なりの秋景色」を探してみました。かなりの長時間露光(10分以上)になりましたが、意外と良く写ったと感じています。
「厳冬らしい景色」を探しに北八ヶ岳へ出かけてみました。大変明るい条件なのですが、結構風があり難儀しました。持参できる荷物に制限があるときは、小型に作った3号機が重宝します。
ピンホールカメラの製作
ピンホールカメラで写真を撮るためには、「ピンホール」、「ピンホールカメラ」共に市販されている製品もありますので、必ずしも自作する必要はありませんが、日曜大工を楽しみながら「自分だけのオリジナルカメラ」を製作してみるのも良い事だと思います。
以下に、今回の作品展に出品する作品を撮影したカメラの製作工程を解説します。もし参考にされる方がいらっしゃいましたら、あくまで自己責任ということで、必ず適切な保護具を用いながら作業を行ってください。会期中はほぼ在廊予定で、カメラも展示しますので、質問等がございましたら写真展会場で気軽に聞いてください。
※この記事を読んで行なった行為によって生じた損害について、デジカメWatch編集部と金武治はその責を負いません。また、編集部が個別のご質問にお答えすることはできません。
0.きっかけ
私は日頃、デジタルカメラで風景などの作品づくりをしています。また、中古カメラ店巡りも趣味として楽しんでいます。
ある日、中古カメラ市でソロントンシャッターを購入しました。そして、またある日、今度は別のカメラ店で乾板カメラ用のロールフィルムホルダーを発見し、500円で購入しました。そこでこれらを組み合わせて「木製のピンホールカメラでも作ってみるか!」と思い立ちました。
4.ヤスリ掛け、砥の粉による目止め、塗装
紙やすりで表面をなめらかに仕上げた後に塗装を行います。今回、外観は薄茶色のニス塗料、カメラ内部はつや消し黒塗料を用いました。
はじめに、塗装しない部分を新聞紙等でマスキングします。その後、スプレー塗料で塗装していきます。これを様子を見ながら数度繰り返します(重ね塗り)。
また内部は、裏面に粘着材のついている市販の黒いフェルトも部分的に貼り、反射防止を徹底しました。
6.ピンホールの製作と取り付け
ピンホールの作り方は色々な方法があるようです。私の場合、色々試した結果、下記のような方法を選択しています。
・0.1mmの鋼板にマイクロドリルでピンホールを空ける
・ピンホールの直径は0.3mm。後述の2号機&3号機は0.2mmとした
9.バリエーション
先に製作手順を紹介したピンホールカメラ1号(焦点距離70mm、35mm判換算30mmレンズ程度の画角。6×9判専用)のほかに、今回の展示では超広角(焦点距離35mm。主に6×7判を使用し、35mm判換算17mm相当)のピンホールカメラ2号と、同じスペックでより小型を目指したピンホールカメラ3号(6×7判専用)も製作し、使用しました。
当初は1号機にソロントンシャッターを取り付けていましたが、現状は実用性の点から2号機、3号機も含めてレンズキャップをシャッターとして使用しています。ただし露光時間の短縮が高画質化に繋がるように感じられたため、ソロントンシャッターの復活も含め、今後の研究課題としています。