イベントレポート

“カメラバカにつける薬”作者が「カメラ技術セミナー」に登壇

日本写真学会は11月17日、日本写真学会「第30回カメラ技術セミナー」を開催。当サイトでもおなじみの漫画「カメラバカにつける薬」の作者、飯田ともき氏が登壇した。

カメラ技術セミナーは、カメラ、レンズメーカーの開発者による開発背景や技術紹介が行われるセミナー。今回は第30回を記念し、メーカーのほかに、カメラ(写真)に関わる講師を招いたという。

今回は飯田氏の講演を聴講してきたので、その様子をお届けする。カメラ漫画を書くようになったきっかけや、漫画を書く際に気をつけているところなど、スライドを用いて解説。講演中は会場から笑い声が聞こえる緩やかなセミナーとなった。

本人の希望により患者の顔に加工しています

漫画を書くきっかけはカメラ好きから

カメラ漫画を書こうと思ったきっかけは、漫画を書くこととカメラが好きだからという。元々DPEショップでサラリーマンをしていた飯田氏は、仕事をしながら2015年に同人誌「カメラバカにつける薬」を執筆。本の即売会(フリーマーケット)などで販売したところすぐに売り切れ、続編を出してもすぐなくなるといったことが続いたとのこと。

その後、2017年にデジカメ Watchで連載をスタート、雑誌「デジタルカメラマガジン」でも連載が始まり、2022年には単行本「カメラバカにつける薬」を発売した。

現在でも即売会で販売を行っており、来場者のほとんどがカメラを首から掛けて飯田氏のブースを訪れるという。カメラ好き同士の良い点は、お互い素性を知らないままカメラの話題に突入できるといった点で、新製品やレンズの話など話題が尽きないそうだ。

ネタは実体験から。作者目線で美しい原稿を

漫画のネタは作者が自身が体験したことに加えて、「時事ネタ」「ネットのトレンド」「イベント」「他者からの話」などを元に書いているという。日々起こる事象を、作者の目線を通して“美しい原稿”になるように心がけているそうだ。

例えば、「秒20コマに8K動画かあ…これも私には別世界だな」というコメントを見かけたときは、オーバースペックだという読者の共感を確保しつつも、角のない表現にしているという。

イラスト:飯田ともき氏

正しい知識で読者の世界を広げるのが仕事

「カメラの事象を知ることは、読者の世界を広げること」だという飯田氏。スクリーンに表示されたカメラのイラストを用いて「なにも知らない人はこのイラストを何かと聞いたらをカメラと思うでしょう、少し詳しい人はペンタ部にMINOLTAと書かれていることに気づくしょう、そのほかαと感じる方や、北米大陸向けのマクサムという方もいる」と説明。

読者が知らない、興味が無い事象も、漫画を通して理解を深め、さらに世界を広げてほしいと話した。

イラスト:飯田ともき氏

読者に誤った知識を伝えないためにも、広くて深い知識が必要だという。イベントでメーカーの人から話を聞いたり、ダゲレオタイプから最新のデジタルカメラまで競合製品や技術、文化など一目でわかる「カメラ年表」を作成し、日々知識を深めているとのこと。

CP+のブースに4コマ漫画

スライドでは、飯田氏が体験した大変だった出来事を紹介。CP+に4コマ漫画を展示できたことは嬉しいながら、様々な苦労を経て展示を行ったという。左右の間隔などを図るのに自宅の外壁に漫画を貼り付けるなど、紙やWebでは味わえない体験だったと話す。

そのほかでは、10回以上の長編漫画になった「EOSの目覚め」などが紹介された。

特徴的な新製品は早く取り上げたいという気持ちがありながらも、発表日時により中々難しい場合があるという。

飯田氏は今後について、漫画家という特殊な立ち位置からカメラ業界を見て、読者に漫画を届けていきたいと話した。

本誌:佐藤拓