イベントレポート
Photo EDGE Tokyo 2019にフルサイズ新モデルが多数出品
盛況な動画関連 中判デジタルにも新製品
2019年10月30日 18:36
写真・映像業界のプロを対象とした展示会「Photo EDGE Tokyo 2019」が10月25日に都内で開催された。主催は玄光社「コマーシャル・フォト」で、4回目を迎える今回は28社/ブランドが出展。各種セミナーも開催され多くの来場者が訪れていた。
35mmフルサイズシステム
今回まず目立ったのは、35mm相当および中判級の比較的大きなイメージセンサーを搭載したカメラの展示が多かったことだ。ソニー、シグマ、パナソニックなどから相次いで新機種が出たタイミングでもあるが、プロ向けの展示会であることを考えると、各社とも大型イメージセンサー機の需要が高いと判断しているということだろう。
加えて、カメラそのものを紹介するというよりもワークフローを含めた提案をしているブースが目立った。特にテザー撮影がどれだけ快適にできるかを訴求するデモを行っているところが多い。一口にプロといってもいろいろだが、テザー撮影を重視する人は少なくない。
ソニーは11月1日発売のプロ機「α9 II」を展示。先に予定されていたお披露目イベントが台風の影響で中止になったため、イベントでの展示は今回が初めて。デモではWi-Fiの他、有線LANによるテザー撮影を見せていた。有線LANでは1台のPCにα9 IIとα9を接続し個別にリモート撮影ができることをアピール。最大20台のα9シリーズを接続でき、スポーツ撮影などでの利用を見込むという。
“小さなフルサイズ機”として話題になっている「SIGMA fp」の展示もあった。実際に手にしてみると想像以上に小型なのが印象に残る。静止画に加えて本格的な動画機能を搭載しているのだが、スチルとムービーを両方手がけるプロが増えている昨今の現状を象徴する様な機種である。
「動画はたまに使う程度」という人だと、動画撮影が難しいカメラなのでは? と心配するかも知れないが、動画モードを一般的なデジカメのような操作に変更する「STILLライク」が用意されているので安心だ。
35mmフルサイズ機といえばパナソニックの「LUMIX S1H」も新しい。シネマカメラとしての用途がメインとなり、シネマカメラの経験があるユーザーや小規模プロダクションが1つのターゲットとのこと。50万円前後するが、ターゲットユーザーからの反応は「安い、軽い、小さい」だそうで、メーカーも手応えを感じているようだ。
EOS Rでフルサイズミラーレス分野に参入したキヤノンも出展していた。新しい製品としては中望遠レンズの「RF85mm F1.2 L USM DS」と「RF70-200mm F2.8 L IS USM」の実機があった。
RF85mm F1.2 L USM DSは、DSコーティングでボケを柔らかく表現できるというモデル。非DSのRF85mm F1.2 Lと撮り比べをしてみたが、確かに玉ボケの輪郭が滑らかになっており、いわゆるアポダイゼーションフィルターを使ったレンズの描写に似たものとなっていた。
一方のRF70-200mm F2.8 L IS USMは、定番大口径望遠ズームレンズのRFマウント版。従来品と異なりズームで全長が変化するが、収納時に小型化できるメリットがある。同社の70-200mm F2.8レンズのフードは従来黒だったが、今回白に変更されていて新鮮な印象を受けた。
続いてニコンのブースを見てみると最新モデルの「Z 50」(APS-C機、11月下旬発売)の姿は無く、展示機は35mmフルサイズ一色。そしてミラーレスカメラの「Z 7」や「Z 6」に混じって一眼レフカメラの「D850」が鎮座していたのは意外だった。D850は2年ほど前に発売されたモデルで新機種では無い。キヤノンは今回、最新の「EOS 90D」以外の一眼レフは展示しておらず、このクラスの一眼レフはD850が会場で唯一の展示だった。
ニコンに話を聞くと、光学ファインダーにこだわるプロも多いそうで、そうしたユーザーに触れてもらうためとのこと。ミラーレスカメラも充実してきたが、一眼レフカメラの需要も根強いようだ。
ミドルフォーマットモデル
中判デジタルではハッセルブラッドが未発売のカメラボディ「907X」を展示していた。同社のデジタルバック「CFV II 50C」などを装着することで中判ミラーレスカメラになる。発売時期は未定だが、月面着陸50周年記念のマットブラック版が年内に先行発売される。背面モニターがチルト式なので上に向けると往年のVシリーズのような趣で撮影することもできる。
フェーズワンでは、同社で初めてとなるシフト機能を備えた中判カメラ「XTカメラシステム」を展示していた。1億5,100万画素のデジタルバックとのセットで価格は税別580万7,000円。建築物や風景を高画質に撮影できるという。高価だが、海外では風景を撮るハイアマチュアにもこうしたカメラの需要があるとのこと。
ライカカメラジャパンのブースでは中判一眼レフカメラ「S3」が展示されていた。1年ほど前に発表された機種だが、取材時点でも発売時期および価格は未定となっている。新たに画素数を6,400万画素に増やすなどした。
中判カメラもミラーレスタイプが増えているが、「光学ファインダーなど一眼レフのフィーリングに慣れた人に需要がある」という。こちらもテザー撮影のデモを行っていた。
発売済みとなるが富士フイルムも1億200万画素の中判ミラーレスカメラ「GFX100」を展示。「プロユーザーを想定していたが、思った以上にアマチュアの需要があり、品薄になっている」(説明員)と嬉しい悲鳴。こちらもテザー撮影のデモを行っていた。
動画関連
このイベントは写真・映像業界のプロ向けということで半数程度は“映像”すなわち動画関連の展示という印象だ。
動画機材を専門とするBlackmagic Designは8月に発売された「Blackmagic Pocket Cinema Camera 6K」を展示。30万円ほどと、スーパー35センサーのデジタルシネマカメラとしては比較的安価。EFマウントを採用しており、シグマのレンズを装着して試せるようになっていた。
また同社では動画編集ソフト「DaVinci Resolve 16」と組み合わせて高速な編集作業ができるという「DaVinci Resolve Editor Keyboard」も展示。デモを見せてもらったところ、ダイヤルなどを使って素材から必要な部分をどんどん切り出していくと粗編集されたタイムラインができあがっていくイメージだった。
VANLINKSはZHIYUNの新型電動スタビライザー「WEEBILL S」を展示していた。ミラーレスカメラや一眼レフカメラ用で、EOS 5Dクラスまで対応する。このクラスとしてはコンパクトな作りが特徴とのこと。11月1日発売で価格は税別4万8,000円。三脚を兼ねたグリップを付け替えるとローポジション撮影時のハンドルになる。
その他、スマートフォンで動きをプログラムできるIFOOTAGE(浅沼商会)の電動スライダー「Shark Slider mini 600 PRO」や、SSDにレコーディングできるATOMOS(メディアエッジ)の7.2型モニター「SHOGUN 7」などの展示もあった。
照明機材
プロ向けの展示会ということで照明機材の展示も多い。動画向けを意識した定常光ライトが多く、そのほとんどがLEDタイプである。
SAEDAブースではPhottixの新型LEDライト「Nuada」シリーズが展示されていた。「Nuada P」は動画の画角で使いやすいという横長タイプなのが特徴。拡散版を内蔵していてまぶしさを抑えている。色温度も変更可能。横長では無い「Nuada S」も用意する。
プロフォトのブースでは銀一のProfoto A1用アダプターが展示されていた。A1にプロフォトのOCFアクセサリーを装着できるアダプターとなっている。1万5,000円で発売済み。
ソフト・サービス関係
会場ではプロ向けのソフトウェアやサービスの展示も見られた。
アドビシステムズではストックフォトの「Adobe Stock」を紹介。写真の投稿者を募る案内をしていた。Adobe StockはPhotoshopなどとの連携ができることからクリエイターにダイレクトに販売できるとしている。投稿時に付けるタグもAIが自動提示するなど使いやすさをアピールしていた。
アドビのブースではPCやタブレット端末などで動画編集が行えるソフト「Premiere Rush」を紹介していた。簡単に動画編集できるのが特徴で、プロに向けても提案する。クラウドを活用することで、Rushで編集したものをそのままPremireで読むことができる。報道など速報性が求められる用途に向くとのこと。
アルファコードはVR映像の配信サービス「Blinky」を紹介していた。主に企業向けサービスで、人材採用、人材研修、不動産などビジネス用途での利用を見込んでいる。一般向けに公開することもできるが、視聴者を限定して公開することも可能。無料版もあるが有料のPro版では、映像に課金することもできる。