イベントレポート

エプソン主催「meet up! selection」の受賞作品展が開催中

新規のコンテストから選ばれた4名の作品

エプソン主催のフォトコンテスト「meet up! selection」の受賞作品展「meet up! EXHIBITION」が5月10日まで東京・新宿のエプソンイメージングギャラリー エプサイトで開催中だ。

meet up! selesctionは、エプソンが2017年に新設したフォトコンテスト。初回となる今回は9,584点の応募があった。本展では上位入賞者4名の受賞作品に加えて、入賞者の新作をグループ展形式で展示している。

エプソンが模索する新しいフォトコンテスト

エプソン主催のフォトコンテストといえば、2006年から開催していた「エプソンフォトグランプリ」がおなじみだが、こちらはインクジェットプリンターによって出力された写真作品を対象としているのに対して、meet up! selectionではテーマやプリント方法が自由で、さらにデータ応募も可能となっている点が異なる。なおプリント応募とデータ応募は審査が別部門扱いで、データ応募は「データでチャレンジ!!」という名前で独立している。

エプソンによれば、写真を『カタチ』あるプリント作品として身近に楽しんで欲しい、との思いから、主に若年層をターゲットとしたフォトコンテストとして「meet up! selection」を立ち上げたという。

meet up! EXHIBITIONは受賞作品展ではあるが、受賞作品だけでなく、受賞者が製作したほかの作品も併せて展示する点が大きな特徴となっている。

四者四様の個性

meet up! selectionではグランプリ1名と、優秀賞3名を選出した。審査員は写真家の清水哲朗さんと舞山秀一さん。今回の受賞者は、グランプリが藤井孝美さん、優秀賞が鳥羽敦さん、西脇亜美さん、ファン・カルロス・ピントさん。

舞山さんは4月28日に開催したオープニングイベントの中で、プリント応募の受賞作品についてコメントを送った。

舞山秀一さん。4月28日のオープニングイベントで。

グランプリの藤井孝美さん「No ID 〜不詳なる命の者達〜」は、山口県にある徳山下松港に住み着いた野良犬たちを撮った作品。舞山さんは藤井さんと同い年ということで「同世代で共通するものがある」と話した。

グランプリ:No ID 〜不詳なる命の者達〜(藤井孝美さん)

優秀賞の中では唯一単写真で受賞した鳥羽敦さんの作品「ブランコ」については、単写真作品としての質の高さを評価。これまでどこにも発表していなかったことに驚くとともに「これからも、思うままに突き進んでいってほしい」と激励した。

優秀賞:ブランコ(鳥羽敦さん)

ファン・カルロス・ピントさんの「時代」は、とある場所に設置されている公衆電話を定点観測的に撮影した組写真。「僕の作品とも重なる部分があります。ファンさんほど整理した絵を作るわけではないが、なんというか、安心した」と述べている。

優秀賞:時代(ファン カルロス ピントさん)

西脇亜美さんの「銀の世界」については「男性的な荒々しさを感じる」とコメント。10代で世界が作られすぎてしまうよりは、これからもっと違う、自分に広がりを持たせるステップとして、全く違う絵にチャレンジしてほしい、とアドバイスした。

優秀賞:銀の世界(西脇亜美さん)

データ部門にはスマートフォンからの応募も

会場にはデータ応募「データでチャレンジ!!」の入賞作品もプリントされた状態で展示されており、撮影機としてスマートフォンの機種名もよく見かけた。「データでチャレンジ!!」で優秀賞を獲得した作品も、iPhone 5sで撮られた作品だ。

清水さんはいくつかのフォトコンテストで審査をしている際に「スマートフォンで撮影された作品を選ぶことが最近増えてきた」と話す。

「僕は撮影機材に関係なく、なるべく新鮮な感覚の人の作品を選びたいという視点で審査しています。その結果、スマホで撮った写真を選んでいることが増えてきました。いいな、と思った瞬間にすぐ写真を撮れるのが、今やみんなが持つようになったスマホ、というのが面白いところですね」

清水哲朗さん。4月28日に行われたオープニングイベントの様子。

またデータでの応募を受け付けたことでフォトコンテストのハードルが下がり、プリントをする習慣がない人でもフォトコンテストに参加しやすくなったことで、これまで撮ったまま埋もれてしまった写真を掘り起こす機会になることにも期待しているという。

「今はみんながカメラを持っているし、みんなが写真を撮りたい時代。SNSでの『いいね』を動機として、撮れた、撮れないで一喜一憂している。でも紙焼きにはしないですよね。いいねがもらえないから。だからやっぱり、展示する機会は必要です。データで応募してくださった方には、実際にプリントが展示されているのを見て、プリントの良さを実感してもらって、紙焼きで残してくれるようになったらいいなと思います」

新しい個性を発掘 次回開催にも期待

受賞者にもお話を伺った。グランプリを受賞した藤井孝美さんは、写真作品を展示するのは今回が初めて。被写体として選んだ野良犬たちは、見た目こそ飼い犬のようだが、その素性は捨て犬の末裔。藤井さんは「こういう存在がいる」ことをもっと世の中に広めたいと思い、作品として撮り始めたのだという。

「彼らは紛れもなく人間が生み出した野良です。首輪はなく、寿命も4〜5年と短い。そんな彼らの証明写真を撮りたいと思いました。証明写真なので、撮るときは顔の大きさが同じくらいになるように気を付けています」

グランプリを受賞した藤井孝美さん。

ファン・カルロス・ピントさんは、2015年から写真を撮り始め、2017年ごろからコンテストへの応募を始めている。テーマとして選んだ公衆電話の写真は、東京オリンピックを控えて急速に変化していく東京の中にあって、古くから変わらない佇まいを記録しておきたいという気持ちが発端だったという。

「東京に住み始めて6年になりますが、今の東京は特に変化が速いと感じています。この公衆電話自体、いつまであるかわからないですが、いつか撤去されるその時まで、撮り続けていたいです。いずれはこのシリーズだけで個展ができたらいいなと思います」

ファン・カルロス・ピントさん。

「ブランコ」の鳥羽敦さんは、普段はエンジニアとして勤務。写真は10年来、フィルムとデジタルの両方で撮ってきたが、写真展での作品展示は初めてのことだという。プリントを仕上げるにあたっては、用紙の光沢感を活かす濃いめの色味を意識した。

「今回応募した作品は色が多くてまとまらないかな、と思っていたのですが、試しにこってりと色の出る光沢紙で出してみたら、思いの外面白い仕上がりになったので、これでいこう、となりました。奥行き感と臨場感が気に入っています」

鳥羽敦さん。

西脇亜美さんの作品「銀の世界」は、噴水で遊ぶ子どもたちを高速シャッターでとらえた作品。影の使い方や構図、余白のバランスなどが高く評価されている。写真部所属の高校生として、ニコンのTOPEYEや関西御苗場など、様々な展示、フォトコンテストに作品を出している。

「今回、メーカーさんのギャラリーに展示していただいて、これまでよりもいろんな人に見てもらえるということで、見てくださった方からいろんな意見が聞けたらいいなと思います。エプサイトで配布しているリーフレットに審査員の先生から講評を書いていただけたのも、うれしかったですね」

大阪府立成城高等学校3年の西脇亜美さん(左)と、同校写真映像プロダクトコースで教員をつとめるフォトグラファーの山口晴久さん(右)

これまでフォトコンテストの受賞作品展といえば、入選者の受賞作品を集めて展示するだけ、というイメージが強かったが、meet up! EXHIBITIONでは、受賞作品のほかに、受賞者の新作も展示しており、受賞者の作家性により深くフォーカスできる点が新しいと感じた。最も多くのギャラリースペースを割いているのはプリント応募作品だが、すぐそばに展示されているデータ応募作品もかなりこだわって作られたことが窺える。エプソンフォトグランプリ同様、応募作品の間口を広げつつも、きちんと作品を評価し、展示する場である点にはブレがないように感じた。

エプサイトの担当者によれば、meet up! selectionは次回の開催もすでに決まっているそうなので、募集の際には自信作を気軽に応募してみてもいいかもしれない。

4月28日のイベント当日は、エプサイトのセミナールームでプリント体験も行なっていた
プリント体験をした来場者には、「ピクトリコプロ・ホワイトフィルム」やピクトランの「局紙バライタ」などの用紙が進呈された

meet up! EXHIBITION

会期

2018年4月27日(金)〜2018年5月10日(木)

会場

エプソンイメージングギャラリー エプサイト
東京都新宿区西新宿2-1-1 新宿三井ビル1階

開催時間

10時30分〜18時00分(最終日は14時00分まで)

休館

日曜日

関根慎一