デジタルカメラマガジン

鈴木さや香さんが“写真との付き合い方”を紹介。書籍「日常写真が楽しくなるノートブック」

デジタルカメラマガジン編集部が発売した「日常写真が楽しくなるノートブック」について、著者の鈴木さや香さんに企画の背景や見どころについて語っていただきました。

——「日常写真が楽しくなるノートブック」とありますが、どんな本なのですか?

一言でいうと、身近なところで写真を楽しむ本になります。今は多くの人がカメラやスマートフォンで写真撮影ができる時代で、大きな失敗や、撮れていなかった!ということはなくなったと思うんですよね。でも、一方で写真を撮ることが作業になってしまっていて、楽しさを見つけられないという話も聞くようになりました。便利がゆえのことなのかなと思います。写真の楽しさや面白さはなんだろうと考えだしたら分からなくなりますよね。

だから、本を読んでくれた人に私ならではの日常写真を撮るときのヒントやアイデアを貸してみようかなと思って書きました。カメラやレンズの設定の話ではなくて、写真との付き合い方をまとめてみました。同じ方向を向いている人は楽しんで試してもらえると思うのですが、きっと別の方向を向いている人も知って損はないかなと思います。

鈴木さや香さんが普段の撮影で使っているテクニックを紹介

——日常の写真は当たり前すぎるのか、うまく撮るのが難しかったりします

普段見慣れているものや景色、あとは制限が多くある場所は撮るのが難しいと思います。「日常=自分の暮らし」はまさしくそうかなと私も感じます。格好つかないことも多いですし、すてきなことを見つけにくいです。でも、それを逆に考えると、見慣れているものや景色が多いなら、客観的に見ることで今まで見えていない部分に気づきはじめたりします。制限が多いなら、何が制限になっているのかを考えて、その制限を楽しむようにすれば良いし、格好つかないなら格好つけなければ良いし、すてきなことがないのならすてきではないものを撮ればいいっていう。

日常は、自分という等身大が写るので、頑張りすぎたり、ウソをつきすぎたりしたら、そのうち撮れなくなるんだと思います。本の中でも書いていますが、日常写真をどうして撮るのか? は私もよく分かっていないのです。でも、撮った方が客観性が身につくので、発見することが多くなると感じています。発見することは楽しい! 面白い! につながっていきます。

視点を変えることで新しい日常を発見できる

——生々しくて、いまいち人に見せられる感じになりません

たくさんの人に見せようと思って撮ると、自分の素の状態より2~3匹“猫をかぶって”撮る感じになります。私もそうです。Web上にあげる写真は猫をかぶっています。だから、人に見せない写真もいろいろ撮って、その中で見せられるものだけを選んで見せている感じです。それでいいんじゃないですか? 自分の100%を誰かに見せる必要なく、そのうちの2%くらいを見せるつもりでいれば。なので、いろいろ撮って選べばいいと思います。

撮った写真が少ないと、1枚見せるのにも100%に近いプライベート感になって、恥ずかしいと思ってしまいます。日常の写真はたくさん撮って、その中から2%だけ見せる。これがコツです。

普通に撮るとリアルっぽさが出てしまう。それをすてきに変えるコツも紹介

——鈴木さんとしては初めての著書になるんですね

そうなんです! いろいろな本を書いてきたのですが、共著で出版している本ばかりで、今回はじめての単著本になります。この本は3年くらい前にデジタルカメラマガジンの編集の方から「鈴木さん、本書かない?」って言われてから、こちょこちょと打ち合わせを重ね、長い時間をかけた作った本になります。

当初は、一般的な写真の撮り方を教える本を考えていたのですが「鈴木さんが楽しんでいることをそのまま伝える形で良いんだよ」って言われて、そうなのか? そんなんでいいのか? と考え直しました。そうしたらすごく楽しくなりました。好きなことを伝えられることに感動したりして。それで、もっと伝わるようにと調子乗ってイラストも描いてみたり(笑)。スキャンした手書きイラストの線の太さを合わせるのは、なかなか時間がかかった部分です。写真や文章よりも大変だったかもしれませんね。でもデザイナーの斎藤さんがすてきに作ってくれたこともあって、柔らかい日々の何気なさがあふれた本になりました。

ページには写真の解説や撮影メモのような鈴木さんのイラストがたくさん入っている

——日常の写真を飽きずに撮り続けるコツはありますか?

自分が撮った写真を見て選ぶということが重要だと思います。写真を選び続けることで、あ!これも撮っておこう、っていう循環が生まれます。つまり、撮っているだけでは、視点に限界があるかなと思います。フォトブックやバースデーカードなど、なにかのために写真を選んだり、飾ったりすることで視点が増えていきます。そうしたら、これも撮りたいとか、これと組み合わせられるかなとか、撮る理由がどんどん自然に増えていきますよ。

撮るだけでなく、写真を選ぶ、まとめる、飾るなど写真の活用方法も紹介している

——この本でここを見てほしいっていう部分がありますか?

大きな意味を理解していただいてから、細かいアイデアの部分を読んでいただけると頭に入っていきやすいかなと思います。巻頭のページと、ラストの方のページを読んでから、私が何を言いたいのかなと理解していただくと、より一層自分と近いものに感じてもらえるのでは? と思っています。

巻頭に日常写真を写す意味、巻末では写真を撮り始めた理由や日常写真を撮るときに大切にしていることをまとめている

——最後に、日常写真を楽しむコツを教えてください。

いろいろなことを受け入れていくことだと思います。日常は良い日ばかりじゃないし、記念日ばかりじゃない。熱が出たり、家にヤモリがいっぱい住んでいたり、たこ焼きが熱くてやけどしたり、いろいろあるのが自分の暮らしです。自分や家族のドキュメンタリーを撮っているつもりでいると楽しいです。撮らなければ、目には見えないこともあります。撮ってみたらそれは長い人生の重なりになって、いつか見えてくるかもしれません。毎日、撮るのをがんばろう! と気合を入れるのではなく、気軽な気持ちで気長にやっていきたいですね。