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Canon EXPO 2015に「1.2億画素EOS」が展示

全長30%減の600mm F4や、質感を再現するプリント技術も

キヤノンの関係者向けプライベートショー「Canon EXPO 2015」が11月4日に開幕した。本稿ではデジタルカメラ関連の展示についてレポートする。

同イベントは2000年から5年ごとに開催しており、主要技術や製品の展示を通じて、同社の目指す方向性を示す趣旨。一般入場はできない。4回目の2015年は「2020年の東京」をテーマにしている。

1億2,000万画素のEOSコンセプトモデル

予告されていた1.2億画素EOS(試作品)の姿があった。APS-Hサイズで1.2億画素のCMOSセンサーを搭載するコンセプトモデルで、EOS 5Dsがベースになっている。

総画素数1億2,260万、有効1億2,190万画素。記録サイズは13,312×9,216ピクセル、RAWデータは1枚230MB程度になるという。

小さな被写体も質感まで写せる点、大胆なトリミングに耐える画質、写真全体の質感向上を通じて撮影者の表現領域を広げる目的としている。

撮影セット。レンズはEF100mm F2.8Lマクロ IS USM
全体を表示したところ
等倍(100%)表示したところ

会場では、「次世代PROインクジェットプリンター」(試作品)を用いたプリントサンプルも用意していた。

次世代PROインクジェットプリンター(試作品)。対応用紙サイズにより「B0サイズ対応、12色」「A1サイズ対応、12色インク」「A2サイズ対応、12色」の3機種があった
B0にプリントした1.2億画素EOSの作例
作例の目の部分を撮影。ここまで近づいても精細感が落ちない
EOS 5DsとEF200-400mmで撮影した工場夜景
プリントサンプルの観賞用にルーペが用意されていた
8K静止画や動画のデモ展示でも、たびたびルーペが登場する
8Kディスプレイをルーペで拡大したところ

2億5,000万画素CMOSセンサー搭載カメラ

APS-Hサイズ、2億5,000万画素のCMOSセンサーを用いて、20km先の文字を判読できるという。画像のゆらぎやかすみの除去技術も含むソリューションとして展示していた。5コマ/秒のキャプチャーが可能で、その読み出し速度も特徴とする。

2.5億画素CMOSセンサー搭載カメラ(試作機)
画像処理の比較
20km先の文字が読めるという
拡大しても精細さを保つ
20kmのイメージ
超高感度35mmフルサイズCMOSセンサー。高感度・低ノイズの動画撮影を実現
(11月5日追記)同センサーは200万画素で、ISO409600相当で撮影した映像を流していた。仕様上の最高設定感度は未定

30%短い「600mm F4L」参考展示

次世代超望遠レンズの技術として、DOレンズとBRレンズの技術融合によるコンセプトモデルの展示があった。EF600mm F4L IS II USMから全長30%減とし、性能を維持したままより機動性に優れるという。

DO+BRレンズ採用の600mm F4Lコンセプトモデル。ファインダーを覗ける
ケース内には、製品らしい外装に仕上げた同コンセプトモデル
600mm F4で、DOレンズ採用なのがわかる

DOレンズは望遠レンズの小型軽量化に貢献し、BRレンズは色収差補正効果でより高画質を実現するという技術。

BRレンズのカットモデル。BR光学素子を含むひとつのレンズ群を「BRレンズ」と呼ぶ
EOSリモート撮影システムの参考展示。PCから遠隔操作する

次世代モデルのConnect Station参考展示

対応カメラを上に触れるだけで、無線による画像バックアップが行なえる「Connect Station」。CS100が現在発売中だが、将来像として次世代モデルを参考展示していた。

次世代のConnect Station

CS100でも実現しているNFCによる無線ペアリングに加え、次世代モデルでは無線充電とクラウドへのアップロードも行える。帰宅時にカメラを置けば、画像のバックアップ、クラウド同期、充電が自動で完了する。

タブレットをリモコンにして画像を探しているところ
絞り込みや共有などの機能を持つ。4K動画出力に対応したのも新しい
タブレットでの選択操作で写真を大写しにできる
画面を投影したテーブルにフォトフレームやフォトブックを置くと認識し、関連する写真などが表示されるデモ

また、フォトブック制作サービスの「PhotoJewel」は、来年をメドにアプリのアップデートを予定。自動レイアウトを用いて5ステップでアルバムが作れる機能や、静止画の画像検出アルゴリズムを利用して、動画ファイルからも好ましい1コマを切り出してフォトブックに含めてくれる。

新しいPhotoJewelアプリのデモ(参考展示)
フォトブックの見本

立体感のプリント表現

新次元のプリント表現として展示していた「Canon Super Creative Printing」は、立体プリントができるだけでなく、表面のテクスチャーも再現する。

プリントのようだが、よく見ると立体になっている
複数の光源とカメラで物体表面の反射光を撮影し、画像処理で凹凸を検出。プリンターで再現できるデータに変換したのち、UV硬化型インクジェットプリンターで色、光沢、凹凸を再現する。
油彩画を、オリジナルのひび割れやへこみまで再現した
光が当たることで。絵の具の厚みが感じ取れる

3D 360度の映像体験「高解像度ハンドヘルドディスプレイ」

5.5型パネル2枚、解像度は2,560×2,880(538ppi)、視野角は120度。人間の視覚特性に合わせて新開発したという接眼レンズを使用している。見る方向に合わせて方向感が自然となる立体音響システムも採用。

高解像度ハンドヘルドディスプレイ

EOS 6Dを7台使用した高感度・高解像度の全方位カメラシステムと、ハンディタイプのビデオカメラiVIS mini Xを24台用いた3D全方位カメラシステムを使用。3D全方位画像は、24台のカメラ映像から左目・右目それぞれの映像を360度分撮影し、高精度に繋げている。

EOS 6Dを7台使用した高感度・高解像度の全方位カメラシステム

体験コーナーは複数台を用意していたが、取材時で最長30分待ち。注目のほどが伺えた。試してみたところ、頭の動きへの追従性が高く、体の動きとの違和感で酔ってしまうことはなさそうだった。また、目を動かしても周辺が滲んで見えづらいようなことはなかった。

実際に体験できる

綴プロジェクト

先進技術を用いて文化遺産の未来継承を目的とする「綴(つづり)プロジェクト」は、2007年に京都文化協会とキヤノンが活動を開始。国内外にある日本の貴重な文化財を保存するべく、高精細な複製品を制作し、広く一般の目に触れる機会を作っている。

会場には、そうして制作された縦165cm、横10mあまりの「雲龍図」(江戸時代18世紀。曽我蕭白)の複製が展示されていた。原本はボストン美術館に所蔵されている。

「国宝 洛中洛外図屏風(上杉本)」の複製を制作するプロセスは、EOS 5D Mark IIIを専用開発の旋回台に載せて多分割撮影を行い、パソコンで合成。色合わせの後、大判インクジェットプリンター「imagePROGRAF」で出力し、伝統工芸士の箔工芸作家が経年変化の再現も含めて金箔を施す。最後に表装もオリジナルの文化財に忠実に再現し、完成する。

国宝 洛中洛外図屏風(上杉本)の複製品を部分展示

歴史的カメラの展示も

会場には、キヤノンがカメラに始まり事務機に多角化していく歴史の中における、代表的な機種の展示コーナーもあった。

1934年に国産初の35mmフォーカルプレーンシャッターカメラとして試作した「KWANON(カンノン)」、1936年発売の「ハンザキヤノン」に始まり、1941年発売の国産初の35mm胸部X線間接撮影用カメラ「CX-35」、1947年に発売した同社初の自社製交換レンズ「Serenar 135mm F4」、1952年に発売した世界初のスピードライト同調35mmカメラ「IVSb」、1959年に発売したキヤノン初の一眼レフカメラ「キヤノンフレックス」、普及型のレンジファインダーカメラ「P型(ポピュレール)」が並ぶ。

カンノン
ハンザキヤノン
CX-35
Serenar 135mm F4
IVSb
キヤノンフレックス
キヤノンP
キヤノネット(1961年発売)の姿も

それに続き、キヤノンF-1(1971年)、AE-1(1976年)、AF35Mオートボーイ(1979年)、EOS 650(1987年)、IXY(1996年)、IXY DIGITAL(2000年)、EOS Kiss Digital(2003年)といった機種が並んでいた。

次回のCanon EXPO開催は2020年

(本誌:鈴木誠)