キヤノンエキスポ2010で「1億2,000万画素のCMOSセンサー」が展示

~“世界最大のCMOSセンサー”や“無線充電&転送ステーション”も

 キヤノンが主催する「キヤノンエキスポ東京2010」(Canon EXPO Tokyo 2010)が都内で開幕した。同社の最新技術や取り組みなどを一堂に展示した。

 キヤノンエキスポは、5年に1度開かれる関係者向けのプライベートショー。キヤノンエキスポ2010としては9月にニューヨーク、10月にパリですでに行なっている。

会場の入り口には、2008年からデザインイベント「ミラノサローネ」に出展している「NEOREAL」のオリジナルバージョンを展示

クロスメディアステーション

 デジタルカメラなどの静止画や動画をテレビで鑑賞するためのデバイス。コンセプトモデルの展示で、製品化は未定。リビングで簡単に映像を楽しむことをコンセプトとする。

クロスメディアステーションにカメラを載せたところ既存のカメラをベースに無線充電やWi-Fi対応の改造を施してある

 クロスメディアステーションの上にカメラを置くだけで、充電と画像や動画の取り込みが自動でできる装置。また写真の分類なども自動で行なえる。画像の保存用にHDDを内蔵する。本体の電源もカメラを置くと自動で入る。

 充電については、本体とカメラボディの間で磁気共鳴方式により無線充電する。従来の電磁誘導による結合とちがいクロスメディアステーションの上であればどの場所においても充電できるのがメリット。一方画像は、無線LAN(Wi-Fi)でカメラから取り込む。転送速度などを考慮して今回はWi-Fiを選んだという。いずれもカメラ側にも対応が必要なため、展示のカメラにはボディ下部に充電およびWi-Fiのためのデバイスを装着していた。製品になる場合はカメラに内蔵されるという。

カメラを置く前はクロスメディアステーションの電源が切れているが、カメラを載せると自動的に電源が入り充電と画像の転送を開始する
電力の供給があると光るボードを置くとLEDが光るボードの背面にコイルがある

 カメラの画像処理機能により、同じ人物の写真を表示したり、同じ撮影日あるいは同じカメラで撮影した画像といった絞り込み表示が可能になるという。

 なお、クロスメディアステーションはWebを介して2台以上をリンクさせることも可能。離れて暮らす家族などが画像を共有することなどを想定している。「充電、画像の取り込み、分類といった機能を1つのボックスに収めたのが、HDDレコーダーなどとは異なる点。簡単さを重視した」(説明員)。

USBスロットやSDカードスロットもあり、既存のカメラでも利用可能になっているクロスメディアステーションの画面表示例

1億2,000万画素のCMOSセンサー

 8月24日に発表した世界最高画素数のCMOSセンサー(APS-Hサイズ)。画素数約1億2,000万は、約1億3,000万とされる人間の眼の視野細胞数に匹敵するという。

約1億2,000万画素のCMOSセンサーとそれを使用したカメラ

 撮影した動画を4Kのディスプレイに表示してデモを行なっていた。デモでは、ディスプレイに表示した静止画から指定した部分のフルHD動画や4K動画をリアルタイムで再生できる。ディスプレイへのタッチ操作でズームやスクロールも可能だった。

4Kディスプレイに全体を縮小表示したところ。青い四角はフルHDに相当するサイズ同じディスプレイに等倍で表示したところ

世界最大のCMOSセンサー

 キヤノンが8月31日に発表した202×205mmの超高感度CMOSセンサーと撮影した動画を展示していた。

世界最大のCMOSセンサー(左)と35mmフルサイズのCMOSセンサー(右)ピクセルピッチの比較

 300mmウエハーを一杯まで使用して1枚だけを切り出したセンサー。対角はほぼ300mm。35mmフルサイズセンサーの40倍の面積がある一方、画素数を160万画素に抑えたことで、1画素の面積は35mmフルサイズセンサー比で600倍となっている。1ルクス以下といった低照度での撮影が可能。

 大型の撮像素子は読出し速度に難があったが、今回は素子の回路を10に分けて読み出す工夫により60fpsでの出力が可能になった。素子場に回路のパターン線が縦方向に見えているが、使用時にはピクセルピッチが合うため問題にはならないのだという。

左は300mmウエハーCMOSセンサーの画像。右の35mmフルサイズセンサーと比べると明るく映るのがわかる

 大きなセンサーサイズに見合った光学系と組み合わせることができる天体望遠鏡などで性能を発揮するとしている。また、夜間の監視カメラ用途なども想定している。

マルチパーパスカメラ

 4K解像度(約4,000×2,000ピクセル)の2/3型CMOSセンサーを搭載したカメラのコンセプトモデル。製品化は未定。

マルチパーパスカメラ。カメラ下のボックスには冷却用ファンや画像のインターフェースなどが収まっているEVFも備える

 画素数は800万画素で、フルHDの4倍の解像度での動画撮影に対応する。撮像素子は新開発で60fps以上の読出しが可能。高画質なスロー動画などを得ることもできる。16:9のほか、デジタルシネマの規格に合わせたアスペクト比でも撮影可能という。

 コンセプトモデルとあって、シンプルにする意味からボタン数は最小にした。電源、ズーム、AF/MF切替え、視度調節レバー程度で、シャッターボタンは備えていない。静止画に関しては撮影した動画からキャプチャすることを想定している。

パワーズームのレバーが付く液晶モニターを閉じたところ

レンズは新開発したボディ一体型の「CANON ZOOM LENS 20× 7-140mm F1.8-3.8 L IS USM」を搭載。25mm判換算の焦点距離は24-480mm相当。フィルター径は72mm。新硝材や新機構を採用することで小型化を実現している。

液晶モニターはフリーアングルではない

 上部には跳ね上げ式で約123万ドットの4型液晶モニターを備えるほか、約155万ドットの0.52型EVF(固定式)も備える。EVFはカラーフィルター式。

 今回は実働モデルを展示しており、来場者は自由に操作を試すことができた。なお、現在は記録部を本体に備えておらず外部HDDに記録する方式となっている。

 同機で撮影した動画は、56型の4K対応ディスプレイで再生を行なっていた。

4K映像を56型のディスプレイに映していた同機で撮影したプリントも展示

デジタルカメラタッチアンドトライコーナー

 カメラのタッチアンドトライコーナーでは、EOS、IXY、PowerShot、iVIS(デジタルビデオカメラ)、業務用デジタルビデオカメラなどを試すことができた。

 EOSのテーブルには19日発売の新レンズ「EF 70-300mm F4-5.6 L IS USM」があり撮影を試すことができる。また、2011年3月発売の魚眼ズームレンズ「EF 8-15mm F4 L Fisheye USM」も試作品があり、撮影を体験できた。

EF 70-300mm F4-5.6 L IS USM望遠端にしたところ
EF 8-15mm F4 L Fisheye USM
EOS 5D Mark IIで8mmにしたところ。全周魚眼になるEOS 5D Mark IIで15mmにしたところ。対角魚眼になる
EOS 7Dで8mmにしたところ。4角がケラレるEOS 7Dで10mm付近にしたところ対角魚眼になる
EOS 7Dで15mmにしたところ

 そのほか、「EF 300mm F2.8 L IS II USM」、「EF 400mm F2.8 L IS II USM」(ともに2011年3月発売)。また「EF 500mm F4 L IS USM」、「EF 600mm F4 L IS II USM」(ともに発売日未定)も展示があった。

EF 600mm F4 L IS II USMEF 500mm F4 L IS USM
EF 400mm F2.8 L IS II USMEF 300mm F2.8 L IS II USM

 また、モデルのダンスを「EOS 5D Mark II」のフルHD動画で撮影しプロモーションビデオを作るデモを行なっていた。

EOS 5D Mark IIで動画撮影のデモを行なっていた

 そのほか、会場にはデジタル一眼レフカメラのデザイン検討用モックアップなども展示していた。

EOS 7Dのモックアップの変遷。簡易モック同No.1
同No.2同No.3
同No.4同No.5
EOS 50Dのデザインスケッチ
IXY 30SのデザインスケッチIXY 30S
IXY 30Sの外装パーツEOSのほか、PowerShot S95やIXY 30SのHSシステムを使った高感度撮影を体験できるブースもあった。写真はIXY 30S

新プロフェッショナルプリンター

 半切まで対応するプロ向けインクジェットプリンターを参考展示していた。発売は未定。

 プロカメラマンやスタジオなどのフォトビジネス向けを前提にしたモデルで、「世界最高峰の写真画質を実現」との説明があった。12色の新顔料カラーインクを採用するほか、画像処理エンジンも一新した。隣にはA3で出力したプリントも展示してあった。説明員によると、「画質の良さを理解していただけるハイアマチュアも含めて広く使ってもらえるのではないか」と話していた。

 また、「新コンセプト コンパクトフォトプリンター」も参考出品していた。製品化は未定。

 一般的なサイズの昇華型フォトプリンターだがロール紙を採用しており、カットする位置で自由に用紙のアスペクト比を変更できるのが特徴。3:2や16:9のほか、1:1といったサイズの出力サンプルを展示していた。同社ではこれを「マルチアスペクト印刷」としている。

 こちらも新画像処理エンジンを搭載しており、印刷機構も見直したとしている。また、自動レイアウト機能によるフォトブック印刷機能も備える。

4K対応などのプロ向け液晶ディスプレイ

 プロ向けの業務用液晶ディスプレイ4製品も参考出品していた。いずれも製品化は未定。液晶パネルの種別やバックライトの方式などは非公開となっている。

4K対応30型液晶ディスプレイ

 約4,000×3,000ドットで4Kの解像度を持つ製品。広色域をアピールしておりAdobe RGBをほぼ100%カバーするという。また、デジタルシネマの色域もサポートする。独自の画像処理エンジンを内蔵し高精細、高階調表現が可能になるとしている。輝度や色度の均一性も謳う。コントラストは800:1だとする。視野角も広い印象だった。

4K対応30型液晶ディスプレイ

 展示品は、特殊なグラフィックボードからDVIケーブルをパラレルに4本使い映像を伝送しているという。デザイン、CG、印刷、映像製作、デジタルシネマなどの分野に向ける。

カラーマネジメント対応液晶ディスプレイ

 「業界トップレベルの色再現性・階調性・長期安定性を実現」したという液晶ディスプレイ。400万ドットの30型と300万ドットの21型を展示していた。

カラーマネジメント対応液晶ディスプレイ(30型)同21型

 いずれも独自の画像処理エンジンを搭載しAdobe RGBカバー率は100%に近いという。縦位置にも対応する。写真編集、デザイン、印刷、製版の色校正に最適と説明していた。

●フルHD 17型液晶ディスプレイ

 動画分野における映像モニター用途に向けたディスプレイ。EBU、SMPTE-C、ITU-R BT.709といった放送規格の色域を正確に再現できるとする。

フルHD 17型液晶ディスプレイ

 ほかの展示品同様、独自の画像処理エンジンによる高精細、広視野角、広色域、高階調性能も備えるという。会場では複数のディスプレイを横に並べて展示しており、個体差の少なさもアピールしていた。

ワンショットマルチバンドカメラ

 6色のカラーフィルターを搭載した5,000万画素のCMOSセンサーにより、解像度と色識別能力を高めたカメラ。参考出品で製品化は未定。

ワンショットマルチバンドカメラ多視点で撮影した左右に動く映像を実物と比較できるデモをしていた

 被写体の色を6色に分解して撮影することで、人間の眼(3種類の視細胞で色を識別)や一般的なRGBカメラでは識別できない色の差を記録できる。これまでもマルチバンドカメラは存在したが、カラーフィルターを交換しながら複数回の撮影が必要だった。今回、超高画素のCMOSセンサー上に6色カラーフィルターを設けたため1回の撮影でマルチバンド撮影が可能になった。

 光源により人間の眼には見えない色の模様が含まれる被写体でデモ撮影を実施していた。ワンショットマルチバンドカメラで撮影すると肉眼では全く見えなかった色が撮影できていた。

 ワンショットマルチバンドカメラは多点撮影も容易なことから、光の当たる角度によって見え方が変化する被写体の撮影などに向くとする。表面の質感などがより鮮明に記録できるという。美術品などの文化財、医療、電子商取引など正確な色情報が必要な分野に応用できるとしている。

全方位ミラーによるパノラマ映像

 全方位ミラー(非球面ミラー)と5,000万画素のCMOSセンサーを組み合わせて、水平視野360度のパノラマ映像を得るシステム。参考出品で製品化未定。

全方位ミラー5,000万画素のCMOSセンサー

 ワンショットで全周を撮影できる。撮影画像はドーナツのような像になるが、PCで処理することでパノラマ画像に変換する。この方式の撮影では、最終的に使われず無駄になってしまうピクセルが多いこともあり、ある程度の大きさで閲覧するためには、超高解像度のセンサーが必要だったという。

作成したパノラマ画像

 高解像度を活かして、任意の方向を切り出すことも可能。デモでは、5台のディスプレイでパノラマを展示していた。トラックボールの操作で自在に方向を変えることがdけいる。

60インチ大判プリンター

 屋外サインなどに向けた60インチ対応の大判プリンター「imagePROGRAF X」を参考展示していた。発売は未定。60インチとして発売するかどうかも未定。

imagePROGRAF XimagePROGRAF Xの出力シートを貼り付けた自動車

 従来、屋外サイン用プリンターは溶剤インクを使用していたが本機は水性インクを採用したのが特徴。溶剤インクを使用する際には法令による規制のため、プリンター以外の設備投資が必要だったという。今回、同社大判インクジェットプリンターの技術をベースに、プリント直後に熱を加えることで耐候性を持たせることに成功。溶剤インク特有の臭いなども問題にならずに使用できるとしている。また、廃棄の際もエコロジーだとする。

 キヤノンはこれまで溶剤インクのプリンターは手がけておらず、imagePROGRAF Xで屋外サインプリンター分野に初参入することになる。

印刷物の質感シミュレーション

 ディスプレイ上で印刷物の仕上りを確認できる技術の参考展示。色味だけでなく紙のテクスチャーによる光沢を高精度にシミュレーション可能なシステム。印刷前に照明による映り込みなどを詳細に確認でき、プリントの失敗を削減できるとする。

印刷物の質感シミュレーションの例撮影時に紙の角度が合っていなかったものの、実物に近いシミュレーションができていた

 ディスプレイでは、3次元で自由に印刷物を動かして映り込みなどを観察することができる。商用展開についてはこれから詰めるが、プロ分野だけでなく、コンシューマー向けのプリンタードライバに組み込むことも可能性は考えられるとしている。

ワークフロー

 また、このシミュレーション技術を用いた「ワンストップ・オーダー・サービス」も提案していた。こちらも参考展示。Webでフォトブックやパンフレットなどの印刷を注文する際に、質感シミュレーションでより正確に仕上りを確認できるもの。3D表示で角度などを変えて確認できる。フォトブックなどは3Dでページをめくることができ、めくる際の光源の映り込み具合まで確認できる。本の厚みの感覚も掴むことができる。発注時に確認できることで、時間の短縮に繋がるとしている。

環境負荷低減への取り組み

 環境のコーナーでは、「EOS 7D」を例に環境配慮設計を説明していた。ペンタプリズムの鉛フリー、シャーシの六価クロムフリー、プリント基板の鉛フリーハンダなどで分解モデルによる展示を行なった。また、動画により工場での環境負荷低減施策も紹介していた。

EOS 7Dの環境配慮設計
工場内における水のリサイクルは、レンズの製造で効果が高いという鉄道輸送などを活用している
梱包材の削減も実施

 また、民生用としてはインクジェット複合機の省エネについての展示もあった。「PIXUS MG6130」(9月発売)の消費電力をリアルタイムで見ることができるもの。プリンターの状態として多いというスリープモードの消費電力を「PIXUS MP610」(2007年発売)に比べて28%削減した。MG6130のスリープモード消費電力はカタログ値で2Wだが、展示品は1.55W程度だった。また、特定の機能を使用する際には必要な回路にだけ電力を供給するシステムとすることで、動作時の省エネも実現しているとする。

PIXUS MG6130のスリープモード時の消費電力
動作時も必要な回路にのみ電源を供給する

 さらに、プリンター本体の部材については同社複写機のリサイクル材を一部に使用しているという。

 使用済のインクカートリッジについては、全国に設置した回収ボックスから集めたのち、分類や解体などを経て別の製品にリサイクルしている。一部は、またインクカートリッジの部品になる。

使用済みインクカートリッジのリサイクルルート新たな製品に生まれ変わる

iPhoneとiPadのネットワークカメラアプリ

 キヤノンイメージングシステムズの展示として、iPhoneとiPadでネットワークカメラをコントロールできるアプリを参考展示していた。製品化は未定。

iPhoneのアプリでコントロールしているところこちらはiPadようアプリ

 ネットワークカメラは、Webを通じて映像を送信できる監視用途などのカメラ。今回のアプリでは、iPhoneまたはiPadと1対1で接続することでカメラの向きをコントロールできる。画面の端に出るバーをドラッグすることで操作が可能。シャッターアイコンもあり、静止画を撮影して保存できる。店舗や施設などでの利用を見込む。

カメラウォークイン

 3次元CADのデータを基に、人間があたかも製品の中を歩いているかのように見ることができるシステム。参考展示で製品化は未定。

体験者が装着するスコープ

 今回は一例として、EOS 5D Mark IIの中にレンズ側から入った体験ができるデータでデモを行なっていた。体験者は専用のスコープを装着して映像をみる。体験者が上を向くとカメラ内部で上が見え、振り返ると反対側(レンズ側)が見えるというもの。この際、体験者はCG映像とともにリアル世界の映像もオーバーレイで見える。そのためこうした技術を「MR」(ミックスド リアリティ)と呼ぶ。

体験者が見る映像。カメラの内部を歩くことができる見上げるとそれに合わせてミラーボックスの上が見える

 CADデータから生成できるため、自動車や建築物など様々に応用ができる。屋外でも使用可能で、例えば建物の建設予定地で完成した状態を確認することなどに使えるとする。

多値情報撮影

 多くの情報を撮影しておくことで、後の編集の自由度を向上させる技術。参考展示で、製品化は未定。

人物切り出しの応用例。ドレスの色のみを任意に変えることができる

 多値情報撮影の例としては、深い被写界深度の画像、時間的に連続した画像、動き情報などにより撮影後の被写界深度調整、連続した静止画からのベストショット選択、動体の強調などを行なえるもの。

 会場では、多値情報撮影の基礎になる人物切り出し技術のデモを行なっていた。通常人物などを背景から自動で切り抜くにはブルーバックなどで撮影する必要があるが、今回自動的に複雑な背景と人物を分離できる技術を開発した。これにより、背景はそのままに人物の大きさや位置を調整したり服の色だけを変更したりする個が可能になった。逆に人物はそのままで背景にブラー処理を施すことで、流し撮りのような写真を作ることもできという。

人物切り出しのデモ。複雑な背景(左)からでも人物のみを切り出して、自動で別の背景に合成可能(右)

イメージクリエイション

 新たな映像の楽しみ方を提案するコンセプト展示。製品化は未定。

 高画素だけに留まらない新しい映像の楽しみ方を具現化するアイテムとして「SLRスタイルコンセプト」(これのみ上海万博が初出品)、「3Dカム」、「イメージナビカム」、「ワイヤレスMR HMDコンセプト」、「イメージパレット」というコンセプトモデルを提示。簡単かつ自由に映像をアレンジして楽しむことを訴えている。

SLRスタイルコンセプト。「超高精細、高倍率」というマルチユースのSLRのコンセプトモデル3Dカム。手軽に3D画像を撮影できる二眼式のステレオスコピック3Dカメラ
イメージナビカム。GPSを搭載してネットワークに繋がることで良い写真を撮るための場所や時間を教えてくれるワイヤレスMR HMDコンセプト。家庭での使用も想定したMRヘッドマウントディスプレイ。折り畳み可能

 カメラで撮影した画像はイメージパレットというタブレット型のデジタルフォトフレームでアレンジを楽しめる。上記の多値情報撮影技術を用いることで、イメージパレットへのタッチ操作で簡単によりよい写真を作成できる。

イメージパレット。触れるだけで、静止画や動画を自在にアレンジできる“創造型マルチフォトフレーム”
イメージパレットでのアレンジの例。撮影した画像(左)に対して、人物を大きくし位置も変えることで構図が良くなる(右)
任意の部分にふれるとその場所にピントを合わせることが可能人物以外の部分を加工することで流れを表現できる
画面をなぞると、動画のコマ送りや巻き戻しのようにしてベストショットを選べる

セマンティック検索

 画像が持つ“意味”を基に検索する技術。人の意を汲んだ検索が可能としている。参考展示で製品化は未定となっている。

セマンテック検索の画面右からキーワードを選ぶと絞り込める

 画像認識などを活用して写真や動画が表す意味を抽出し、ユーザーの意図を推測して検索結果を表示できる。今回はわかりやすさを重視して、3D空間に画像を配置するインターフェースを採用した。

 キーワードを指定していくことで、そのキーワードが表す意味の画像が現れる。登録のための情報はあらかじめ人間が多少入力する必要があるが、画像認識やネットワークによる集合値などの活用である程度自動的に抽出できるとする。

アネモネを選んでカードを作った例できたカード
似た別の画像に変更しようとしたところ。3つの軸に意味の似ている写真が並ぶ1つを選ぶと、さらによく似た画像も表示される
その中から最終的に選んで作りたかったカードができた、という例

EOSテクノロジー活用のデジタル眼底カメラ

 医療コーナーには、検診システム、超音波診断装置、デジタルX線装置などを展示。その中に、EOSのテクノロジーを利用したデジタル眼底カメラ「CR-2」(12月発売)が展示されていた。

CR-2

 「EOS 60D」をベースに、眼底カメラ用に特化したカスタム品の「専用デジタルカメラユニット」(EOSシリーズとは呼ばない)を搭載した世界初の無散瞳デジタル眼底カメラ。従来モデルでは「EOS 50D」をそのまま搭載していたが、今回は専用デジタルカメラユニットとしたことで本体の大幅な小型、軽量化を実現している。

EOS 60Dをベースにした「専用デジタルカメラユニット」を装着している

 従来機は画像が反転してカメラに入るためミラーなどを組み合わせて修正する必要があったが、CR-2では専用デジタルカメラユニットで画像の反転や画像を見やすくする処理などを行なうことで小型化を実現している。また、カメラが高感度になったため連写での撮影もできるようになった。AE機能にも対応している。

CR-2での撮影例。ジョイスティックの上のボタンがシャッターになっている

 また医療機器のコーナーでは、キヤノンの前身である精機光学工業製の国産初となる結核予防向けX線カメラ「CX-35」を展示していた。

CX-35のセット

 1940年に結核の早期発見を目的に開発した。創業者の故御手洗毅が医師であったことから「人々の健康と幸せに貢献したい」として開発を進めたという。フィルムは専用フィルムを使用したが、カメラの規格自体は35mmフィルムで、レンズは「R-Serenar 4.5cm F1.5」が付いていた。X線発生装置などと組み合わせて使用し、結核の集団検診で活躍したという。

上部には「SEIKI」のマークが見える
レンズはR-Serenar 4.5cm F1.5使用時の様子。右はX線発生装置。左側にカメラをセットする

そのほかの展示

プリンターのデザインスケッチ入口近くにEFレンズをタワー状にした展示があった
「ENJOY PHOTO&MOVIE」をテーマに、プリントやフォトブックとこのども成長記録の動画を流すコーナーも
伊藤みひろ氏によるEOSでの写真と動画の作品を展示
伊藤氏の写真作品(左)と動画作品(右)
渡辺幸雄氏がEOSで撮影した作品も展示



(本誌:武石修)

2010/11/11 12:57