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カシオのフリーアングルデジカメで“フライボード”に挑戦

活用範囲が広がる専用防水ハウジングが登場

カシオのフリースタイルカメラ「EXILIM EX-FR10」は、カメラ部分とコントローラー部分を分離し、自由なアングルで撮影できる点が特徴のデジタルカメラだ。Bluetoothによる無線通信は最大10m程度まで有効なので、発想次第で様々な使い方ができる。

例えばカメラ部分だけを一脚の先に取り付けて人が入れない場所を撮影してみたり、自分の体のどこかに装着してスポーツの映像を撮ってみたり、あるいはマルチコプターと組み合わせて空撮をしてみるという活用方法がありうる。本機ならではの視点から撮影した映像や写真を、SNSなどで共有して楽しむのもいいだろう。

EXILIM EX-FR10。カメラ部(左)とコントローラー部(右)が分離できる

FR10には様々な器具や体の部位に装着するためのアタッチメントが用意されており、これまでは三脚ネジ付きマウンターの「EAM-1」(税別2,000円)、ベルトなどに固定できるクリップ式の「EAM-2」(税別2,500円)、腕や頭に取り付けられるベルトセットの「EAM-3」(税別3,500円)が用意されていた。

カシオでは今年に入って、さらにいくつかのアタッチメントを追加している。先端部にカメラを取り付けて手元のコントローラーで画面を確認できるマルチアングルスティックの「EAM-4」(税別8,000円)、防水ハウジングの「EAM-5」(税別1万円)、水中でも遠隔シャッターを切れるようにする「EAM-6」(税別8,000円)が発売済みで、8月下旬にはLEDリングライトの「EAM-7」(税別5,000円)を追加予定だ。

折しもマリンスポーツのシーズンということもあり、カシオのご厚意でEAM-4、EAM-5、EAM-6を試せる機会を得たので、使用感をレポートしたい。今回は鎌倉・材木座海岸でスタンドアップパドルボード(SUP。以下パドルボード)とフライボードを体験した。

なお、過去には山歩きやウインタースポーツ、空撮などで使用したレポートも掲載しているので、ご興味があれば併せて参照されたい。

新オプションは防水ハウジング

EX-FR10は元からある程度の防水性能を備えているが、水中での撮影に関しては、あくまでも“使用可能”というレベルで、あまり深く潜って使用することはできなかった。また、水中ではBluetooth接続が安定しにくいので、コントローラーと分離して少し離れた距離で使うのは難しい面もある。

7月に発売した新しいアタッチメントは、主に水中で撮影する際の利便性を向上するアクセサリー群だ。

防水ハウジングのEAM-5を用いることで最大20mまでの水深で撮影可能になったほか、アンテナケーブルのEAM-6を使用すると、水中での通信精度が向上し、カメラ部分が水中にあっても、安定した通信を行えるようになった。EX-FR10では以前から、カメラ部分が水中に入ると、コントローラーとの通信が不安定になって映像がコマ落ちすることがあった。

防水ハウジングのEAM5。前後のカバーから成る

EAM-6は、マルチアングルスティックのEAM-4とセットで使うことで、先端に取り付けたカメラ部分だけを水中に入れて安定した撮影が可能になる。もちろん、EAM-4単体で自撮り棒のように使うこともできる。

水中のカメラ部を遠隔操作できるEAM-6をセッティングしたところ。ハウジングの前カバーはEAM-5のもの
有線接続するためカメラ部を水中に沈めてもコントロールができる
マルチアングルスティックのEAM-4
EAM-6とマルチアングルスティックの使用例。コントローラー部がチルトでき画面が見やすい

なおEAM-6にはハウジング(前カバー)が同梱されていないので、EAM-6を使う場合はEAM-5も併せて導入する必要がある点に注意したい。

簡単な取り付けと十分な防水性能。ラフに扱っても平気なタフさが楽しい

EX-FR10はアクションカムとしての性質が色濃いこともあってか、IPX6/IPX8相当の防水性能を有するのみにとどまっている。これは水深1.5mで常温の淡水中に60分放置してもカメラ内部に浸水しない程度の性能なので、マリンスポーツで使うにはハウジングを利用した方が安心だ。

パドルボートを楽しむべく、海に向かう
砂浜でインストラクターによる指導を受けた

ハウジングを利用するには、カメラ部本体をヒンジユニットから外し、ハウジングのボタン位置に合わせるようにセットして、ねじ込むように裏蓋をするだけ。装着時にロックがかかるので、使い終わったらロックを外してカメラを取り出せばよい。簡単すぎてやや不安になるが、今回使った限りでは、途中で裏蓋が外れてしまうことはなかった。

ハウジングにはカメラ部をそのまま入れるだけで良い。ボタンはハウジングの外から操作できるようになっている
EAM-5をセッティングしたところ

まずは、パドルボードに取り付けてインターバル撮影による自分撮りを試した。

パドルボードには、吸盤付きのアームで取り付ける。念のため粘着テープで補強した
今回は乗る人側にレンズを向けた
手元のコントローラー部で写る範囲が見れるので、海に出る前にアングルを調整できる
いざ海に!
かなり沖でパドルボードを楽しんだ

筆者はパドルボードは初体験だったので、何回かボードごとひっくり返ったりもしたが、その程度の衝撃ならば特に問題なく使えた。

慣れないうちは立って漕ぐのはなかなか難しい

ただ、フライボードで海面数mの上空から落下するような衝撃を加えると外れてしまうこともあったが、元々防水性能のあるカメラなので、壊れはしなかった。オプションパーツの紛失にさえ気をつければ、かなりラフに扱えるのは気楽で良い。

パドルボードで自分撮りを試したところ。正直手元のコントローラーを触る余裕はほとんどなかった。EX-FR10 / 1/4,000秒 / F2.8 / 0EV / ISO100
EX-FR10のレンズは35mm板換算21mm相当の広角だが、ハウジングをつけると周辺部の画質はわりとはっきり落ちる。EX-FR10 / 1/3,200秒 / F2.8 / 0EV / ISO100
場合によっては、レンズ面に水滴が付いていた方が臨場感が出る、かもしれない。EX-FR10 / 1/5,000秒 / F2.8 / 0EV / ISO100

EX-FR10のコントローラーは静電容量式のタッチパネル液晶を搭載しているので、水に濡れると反応しないことが何度かあった。マリンスポーツならではの問題とも言える。しかしこれは仕組み上ある程度は仕方ないだろう。

コントローラーの液晶を使ってできる操作は設定の変更や撮影画像の確認、インターバル撮影などの開始/停止程度だし、そもそもアクティビティの最中に設定の変更などをする余裕はそれほどない。

続いては、フライボードに挑戦した。これは水上オートバイの噴射を利用して海上数mの高さを飛ぶスポーツだ。

フライボードは、このような装置を足に付けて水上オートバイから供給される水を噴射して飛ぶアクティビティ
ライフジャケットにカメラ部を付けて動画撮影に挑んだ
外れないように結束バンドで繋いでいる
慣れないとバランスを取るのが難しい。筆者も飛びながら何か撮ろうかと思っていたがはっきり言ってそんな余裕はなかった


フライボードをしながらEX-FR10で撮影した動画

夏休みのシーズンを迎え、海での遊びに向けた新たなオプションが追加されたことで、EX-FR10の活用シーンはさらに広くなったといえる。

こちらはラジオDJの井手大介さん。フライボードの経験はまだ5回ほどとのことだが、自由自在に飛び回っていた
井手さんによる自分撮り。EX-FR10 / 1/1,600秒 / F2.8 / 0EV / ISO100
こちらも井手さんの撮影。かなりの高さだ。EX-FR10 / 1/1,600秒 / F2.8 / 0EV / ISO100
井手さんは、EX-FR10のカメラ部とコントローラー部を両手で持って余裕で撮影

マルチアングルスティックEAM-4は、アンテナケーブルEAM-6と組み合わせてセットで試した。EAM-6にはケーブル接続コネクタのついた専用の裏蓋が付属しているので、EAM-5の裏蓋をこれに換装する。EAM-4の先端には三脚ネジでカメラを取り付け、持ち手の部分にはコントローラーを取り付けられるため、1m以上先のカメラの映像を手元で確認できる。

水上オートバイでマルチアングルスティックを使えば、水面ギリギリからダイナミックに撮影できる


水上オートバイからマルチアングルスティックで撮影した動画

マルチアングルスティックは、例えば渓流で水中に潜んでいる川魚を観察したり、桟橋の上などから水中の様子を見たいときなどに活用できるだろう。

新ファームウェアで各種撮影機能が強化。フォーカス精度やダイナミックレンジを改善

ところで、カシオが5月に配布を開始したEX-FR10のファームウェアVer2.0では、古いバージョンで不満の上がっていた幾つかのポイントについて、改善が施されている。

一例としては、インターバル撮影時のモニタリング機能の追加が挙げられる。これまでは、インターバル撮影を開始すると画面が暗転して、撮影中に構図の調整ができなかった。また、インターバル撮影の間隔は、5秒、15秒、30秒、1分、2分が選べるようになっている。

インターバル撮影で選べる撮影間隔が増えた
Ver2.0で追加されたスポーツモードは、解像度を下げて周辺部の歪みを補正するモードだ

このほか、ダイナミックレンジの改善、顔検出時のフォーカス精度の向上、タイムラプス機能の追加、フルHD動画撮影時間の延長など、多岐にわたる改善がなされている。カメラとコントローラーの通信を維持したままスマートフォンと接続することも可能になった。

まとめ

本機は一般的なデジカメよりも自由なアングルでアクティビティを記録できる点に特徴がある。そのため、インターバル撮影機能が活きるシーンは非常に多い。

使用者がアクティビティを楽しんでいる最中はカメラに触る余裕がない場合がほとんどなので、カメラを回しっぱなしにして、後からSNSなどにアップする写真を選ぶ使い方があり得るだろう。普通のデジカメのように決め打ちで瞬間を狙うという使い方もできなくはないが、それをEX-FR10でやる意味は薄い。

行楽に行ったある日の思い出を記録し、共有するという観点から考えると、アクティビティを楽しむありのままの姿を記録できるインターバル撮影が、EX-FR10の真価を発揮するモードだという見方ができる。その意味で、インターバル撮影機能を充実させた今回のアップデートは、妥当性のあるものといえるだろう。

(関根慎一)