新製品レビュー

カシオEXILIM EX-FR10

分離・合体可能な遊べるデジタルカメラ

 カメラ部分が分離するコンパクトカメラで、同社のラインナップでは「ライフスタイル」というカテゴリーに分類されている。

 普通のカメラとしても使えるが、自分撮りだったり、アクションカメラ的な使い方を楽しむのを目的に買うカメラだと思われる。

 大手量販店の店頭価格は、税込みで4万9,680円前後。カラーバリエーションは、今回試用したグリーンのほか、ホワイトとオレンジがある。

合体変形ロボット型カメラ

 レンズ、撮像素子、カードスロットなどからなるカメラ部と、液晶モニターを持つコントローラー部が別々になった構造で、カメラ部は、ヒンジユニットのプレートをコントローラー部のスロットに差し込んで一体化できる。ヒンジユニットは180度可動式で、レボルビング(縦位置と横位置の切り替え)、着脱も可能。まっすぐに伸ばして使えば自分撮りカメラ、180度倒して畳んだ状態では普通のカメラと同じような撮り方ができる。合体変形ロボット型カメラとでもいえばいいのかもしれない。

カメラ部は、カメラ本体部分とヒンジユニットからなり、縦位置と横位置の切り替えが可能。また、取り外すこともできる。LEDがあるのが長辺側(横位置での上側)となる
カメラ部のヒンジユニットは180度の範囲で角度を変えられる
畳んだ状態なら普通のコンパクトカメラのように使える。かなり厚みがある(48mmほど)ので、携帯性はもうひとつだ
カメラ部。右側のプレート部分をコントローラー部のスロットに差し込んで一体化する

 撮像素子には有効1,400万画素の1/2.3型裏面照射型CMOSセンサーを搭載する。レンズは21mm相当F2.8の単焦点。かなりの広角だが、最近は24mm相当からのズームを搭載したコンパクトカメラも少なくない。それに慣れている人にとっては、ひとまわり広いだけだし、液晶モニターで見ている分には、そんなに広い感じはしない。

搭載レンズは21mm相当F2.8の単焦点広角レンズ。フジツボ型のレンズフードが付属する

 絞りは固定式。シャッターは撮像素子の電子シャッターで、実写で確認できた最高速は1/4,000秒だった。ピント合わせはAFのみで、レンズ前10cmまで寄れる。測距点は自動選択のみで位置を変えることはできない。レンズフードが付属していて、レンズ部外周のリングと交換して使用する。

 記録メディアは65.9MB(記録エリア)の内蔵メモリーとmicroSDXC/SDHC/SDメモリーカード。実写での平均ファイルサイズは約3.0MBだった。バッテリーはカメラ部とコントローラー部のそれぞれに内蔵されていて、交換はできない。

記録メディアは、内蔵メモリーとmicroSDXC/SDHC/SDメモリーカード。スロットはカメラ部にある

 CIPA基準の撮影可能枚数は255枚だが、実写では200枚ほど撮った時点でもフル表示のままだった。

 充電はマイクロUSB端子を利用するタイプで、充電器も付属している。ただし、カメラ部とコントローラー部の両方を充電しないといけないので、別途マイクロUSBケーブルを用意して、並行して充電できるようにしておいたほうがいいだろう。

カメラ部の操作部。下から、電源、シャッター、ムービーボタン。レボルビングロック解除を行なうFREEレバーがある
コントローラー部の操作部。左から、ムービー、シャッター、電源ボタンがある

 液晶モニターは、タッチパネルを内蔵した2型。解像度は23万ドット。今どきのカメラとしては、正直、かなり低いスペックだが、モニターを大型にして使い勝手が悪くなってもしようがない。それに、本機のような性格のカメラの場合、多少のことには目をつぶるべきだろう。

コントローラー部。2型のタッチパネル液晶を備える。サイズも小さいし解像度も低いのでさびしい
リリースボタンは、カメラ部をコントローラー部から分離するときに使う

 カメラ部とコントローラー部のあいだの情報のやり取り(ライブビュー映像、再生映像も含む)はBluetoothを使用する。両者をペアリングした状態で出荷されるため、ユーザーはややこしいことを考なくていいのはありがたい。Wi-Fi経由でスマートフォンとつなぐときのようなまどろっこしさはない。ただし、撮影するにはカメラ部とコントローラー部の両方の電源をオンにしないといけないのがちょっと面倒だ。

 カメラ部とコントローラー部を分離して使っていると、ライブビューの映像が粗くなったりコマ落ちしたりするが、一体化して使う分にはほとんど普通のコンパクトカメラと同じ感覚でいい。一方、表示のタイムラグはかなり大きく、シャッターチャンス重視の撮影の際は、モニターではなく、被写体を見ながらシャッターを切るほうがいい。

 電源オンの状態でコントローラー部の電源スイッチを押すか、30秒間放置するとスリープ状態となる。この状態でも通信機能だけは起きていて、コントローラー部の電源スイッチを押すとスリープから復帰する。

 ややこしいことに、スリープ状態であってもカメラ部のシャッターボタンを押すと、スリープを解除したところでシャッターが切れる。カメラ部だけで撮影することもあるので、これは当然の動作ではあるが、ポケットやバッグへの出し入れの際に、持ちどころが悪くて無駄にシャッターを切ってしまうことが何度かあった。このあたりは気をつけないといけないところだ。

さまざまな場所に固定可能

 本機の撮影スタイルはいくつかある。一般的なカメラのように撮るときは、カメラ部とコントローラー部を一体化した状態で、折り畳んで使用する。一方、伸ばして使うと自分撮りカメラになる。

 21mm相当の広角だと思うと使いこなしが難しそうな気がしてしまうが、腕の長さの範囲で構えて、上半身と背景がほどよく画面におさまってくれるので、自分撮りには意外と使いやすい画角だといえる。カメラ部がレボルビング機能を持っているので、縦に持ったまま横位置で撮ったり、横に構えて縦位置で撮ることもできる。

 カメラ部とコントローラー部を分離して使用する場合、カメラ部を固定するためのアクセサリーがいくつか用意されている。三脚に固定するための「三脚ナット」はカメラに付属しており、カメラ部のプレート部分を、三脚のネジと三脚ナットで挟んで固定するようになっている。

付属の三脚ナットを使って、カメラ部を固定することができる

 いちいちネジを締めたり緩めたりするのが面倒なら、「トライポッドマウンターEAM-1(別売:税別2,000円)」を使うといい。カメラ部のプレートを差し込んで固定できる、ようはクイックシューである。三脚への着脱が容易になるので、三脚を使用する機会の多い方は買っておいたほうがいい。コントローラー部を装着するための変換アダプターが付属している。

別売の「トライポッドマウンターEAM-1」を使用。カメラ部のプレート部分を差し込むスロットがあるので、着脱はスピーディーにできる
トライポッドマウンターに付属の変換アダプターを使うと、コントローラー部を固定することもできる

 手軽で便利なのが「マルチアングルクリップEAM-2(別売:税別2,500円)」だ。名前のとおり、クリップで挟んで固定するアクセサリーで、カメラ部のプレートを差し込むシュー部分は水平方向に10度刻みで360度回転できるようになっている。あまり太いものは挟めないが、バネの強さと内側に滑りにくい素材が貼ってあるおかげでしっかり固定できる。

別売の「マルチアングルクリップEAM-2」を使用。クリップ部の内側は滑りにくい素材が貼ってあるので、お手軽なわりにしっかり固定できる

 ほかに「マルチアングルベルトセットEAM-3(別売:税別3,500円)」もある。こちらはマジックテープ付きのゴムバンドを使って固定するもので、ゴムバンドは長短の2本が付属する。短いほうは手首や腕など、長いほうは頭部などに対応できる。装着するのに少々手間はかかるが、いろいろなものに固定できるのが便利だ。こちらもシュー部分は回転式だ。

別売の「マルチアングルベルトセットEAM-3」を使用。自転車のハンドルやヘルメットなどに固定するのに利用する。ゴムのベルトは長短2種類が付属する

カメラとしての機能はシンプル

 機能はいたってシンプル。というか、ユーザーができることはあまりない。レンズは単焦点だし(4倍のデジタルズームはある)、撮影モードは全自動のプレミアムオートのほか、5種類のアートショットだけ。メニューの項目数も少なく、撮影メニューは8項目で、うちひとつはセットアップメニュー。こちらも9項目しかない。再生メニューに至っては2項目のみである。すごく割り切った仕様である。

撮影時の画面。カメラ部を離して使う際に電波が弱いと、ライブビューや再生画像の画質が低下する
画面左下のホームアイコンをタッチしたところ
撮影メニューの内容。いたってシンプルである
セットアップメニューの内容。こちらもシンプル

 感度はオートのみで、スペック表には制御範囲さえ記載されていない。実写の結果、ベース感度はISO100、最高感度はISO1600のようだ。ホワイトバランスもオート、屋外、屋内の3種類だけだ。静止画サイズは「14M」「16:9」「5M」の3種類からの選択。動画はフルHD(30fps)のみ。肌をきれいに描写する「メイクアップ」機能もあるが、筆者のようなおっさんには関係はない。撮影時の露出表示などもない。

静止画の画質に関連する項目はこれだけ。動画はフルHDのみなので項目すらない
「鏡面反転」したところ。自分撮り向けの機能だ

 EVシフト(露出補正)はメニュー内で、ホームアイコンにタッチして、以下、MENU→下矢印→EVシフト→+または−をタッチ、というふうに手間がかかる。しかも、タッチしてから画面が切り替わるまでのタイムラグが長いので、気短な人はストレスを感じるかもしれない。

EVシフト(露出補正)時の画面。操作が面倒なのはどうにかしてもらいたい
ホワイトバランスもざっくりである。上から、屋外、屋内、オートの3種類のみ
フリック起動をオンにしておくと、モニター画面を指でなぞる操作で起動させられる
セルフタイマー撮影時の画面。秒数は5秒で固定されていて、作動中は残り時間が画面に表示される

 インターバルタイマー機能を内蔵していて、撮影間隔は15秒、2分、5分の3種類。撮影パターンが「静止画のみ」「動画のみ」「静止画+動画」の3種類から選べるのはおもしろい。撮影する枚数や時間を設定する機能はなく、撮り始めと撮り終わりはシャッターボタン押しで決めるようになっている。撮影した画像からタイムラプス動画を作成する機能はない。

インターバル撮影アイコンにタッチしたところ。開始をタッチすると撮影スタートとなる
インターバル撮影の設定画面
撮影間隔は、15秒、2分、5分の3種類
撮影パターンでは、静止画+動画、動画のみ、静止画のみから選べる

 そのほか、スマートフォンなどと連携できるWi-Fi機能、日付単位でその日に撮った写真を1枚の画像にまとめる「ハイライトフォト」、静止画と動画を1本の動画にまとめる「ハイライトムービー」機能などがある。

撮影モード選択時の画面。プレミアムオートのほかは5種類のアートショットだけ。1ページ目はトイカメラ、ソフトフォーカス、ライトトーンがある
撮影モード選択画面の2ページ目。セピアとモノクロ(粒子が荒れるハイコントラストタイプ)
撮影時の詳細情報表示画面。サイズが小さいこともあってかなり見づらい
こちらは最盛時の画面。カメラ部、コントローラー部の両方のバッテリー残量が表示される
マルチ表示中の画面。サムネイルは正方形にトリミングされて、9コマが並ぶ
再生メニューの画面。実質的には1項目だけである
ハイライトスコアはお気に入りの画像に印をつけられるもの。「+1」「0」「-1」の3段階で設定する

いろんな撮影にチャレンジしたくなるカメラ

 普通にデジタルカメラとして評価するのであれば、正直なところ、あまり誉められる製品ではない。21mm相当の広角というおもしろさはあるものの、特に周辺部の画質はいただけない。機能面でもかなり物足りない。が、そういう細かいことは考えずに、いろんな撮影にチャレンジしてみたくなるカメラであるのは間違いない。普段の生活の中ではなく、遊びやレジャー、スポーツの中でどんなふうに活用するかを考えるのが楽しいカメラだと思う。

撮影モード

 撮影モードは、全自動のプレミアムオートのほかはアートショットのみ。HDR系やパノラマ機能はない。

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
  • 縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。
プレミアムオート
トイカメラ
ソフトフォーカス
ライトトーン
セピア
モノクロ

作例

※すべてデジタルズーム未使用

ISO感度はオートのみなので、日が暮れると画質的にはお手上げである。三脚も使えるのだから、低感度で撮れるようにして欲しかった。1/20秒 / F2.8 / ISO1000 / オート / 3.8mm
出張中の本誌のO本編集長による自分撮り。画角が広いので、こういう説明的な写真はとても撮りやすい。1/50秒 / F2.8 / ISO640 / オート / 3.8mm
市電の線路の向こうに半月が浮かんでいた。感度がISO1600でシャッター速度が1/20秒というのが低輝度側の限界のようだ。1/20秒 / F2.8 / ISO1600 / オート / 3.8mm
天気のいい昼間に撮る分には、21mm相当の広角レンズはとても楽しい。1/2,500秒 / F2.8 / ISO100 / オート / 3.8mm
いじわるして画面内に太陽を入れて撮ったカット。1/4,000秒 / F2.8 / ISO100 / オート / 3.8mm
落差のある川の流れを下からあおって撮ってみた。カメラ部が分離できるので、手もとで画面を見ながら撮影できるのが便利。1/1,250秒 / F2.8 / ISO100 / オート / 3.8mm
毎度登場のテレビ塔。ここまで寄って足もとからてっぺんまで全部写るカメラは少ない。1/2,000秒 / F2.8 / ISO100 / オート / 3.8mm
歪曲収差をチェックするのに撮ったカット。画角から考えれば、それほど気にならないレベルのタル型。単焦点レンズだからなのかもしれない。1/1,000秒 / F2.8 / ISO100 / オート / 3.8mm
低い位置からレンズを真上近くに向けの撮影。普通なら、仰向けに寝転がらないと撮れないアングルだが、カメラ部を分離できる本機なら楽勝である。1/125秒 / F2.8 / ISO100 / オート / 3.8mm
絞りは開放で固定だが、周辺光量の低下はない(デジタル補正かもしれないが)。中央部はまだしも、周辺部は画質劣化が気になる。1/4,000秒 / F2.8 / ISO100 / オート / 3.8mm
指定した日に撮った写真をまとめてくれる「ハイライトフォト」で作成した画像。BGM付き動画を作れる「ハイライトムービー」もある

動画



「マルチアングルクリップEAM-2」を使って自転車の前輪にカメラ部を固定して撮ったもの。



カメラ部を分離しての手持ち撮影。マイクがモノラルなのは残念な点だ。

北村智史

北村智史(きたむら さとし)1962年、滋賀県生まれ。国立某大学中退後、上京。某カメラ量販店に勤めるもバブル崩壊でリストラ。道端で途方に暮れているところを某カメラ誌の編集長に拾われ、編集業と並行してメカ記事等の執筆に携わる。1997年からはライター専業。2011年、東京の夏の暑さに負けて涼しい地方に移住。地味に再開したブログはこちら