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低炭素プリント基板の量産に、エプソンの印刷ヘッド活用。エレファンテックと台湾LITEONが協業発表

インクジェット技術を活用

LITEON 日本法人 社長執行役員 酒屋ヘリオ氏(左)、エレファンテック 代表取締役社長 清水信哉氏(右)。東京・丸の内の「エプソンスクエア丸の内」にて

低炭素プリント基板を開発・製造するエレファンテック株式会社は11月15日、ICT業界大手の台湾企業LITE-ON Technology Corporation(以下、LITEON)との協業を発表した。低炭素プリント基板の量産化推進に向けての協業覚書を締結し、グローバルに向けた販売戦略を強化する方針だ。

エレファンテックは「新しいモノづくりの力で、持続可能な世界を作る」というミッションを掲げて2014年に創業したスタートアップ企業。2019年にはセイコーエプソン株式会社(以下、エプソン)との資本業務提携を締結している。2023年に入り製造設備を大幅に増強し、エプソンの技術も活用した金属インクジェット印刷により、低炭素プリント基板の量産化に世界で初めて成功した。

LITEONは、光半導体や電子モジュールの分野で世界的に高いシェアを持つグローバル企業。ゼロカーボン排出(ネットゼロ)に向けて高いコミットメントを持っている。設立は1975年で、台湾の電子市場においては最も古い上場企業という。

今回の協業により、まずはLITEONのPC用バックライトキーボードにエレファンテックの低炭素プリント基板を適用していく。それを皮切りに、様々な製品・事業に展開していくことで、ネットゼロカーボン排出の実現という両社共通のビジョンのもと、「よりグリーンな未来」の実現に向けたコミットメントを示していく構えだ。

低炭素プリント基板とは

プリント基板は、スマートフォンやパソコンなどあらゆる電子製品に使用されている電子回路。しかし、その製造方法においては環境負荷の高さに課題があるという。

例えば一般的な製造方法とされる「サブトラクティブ法」は、基材に銅箔を張り合わせて膜を形成したところから、現像、エッチング、レジスト除去といったプロセスを経る工法。いらない部分を溶かして捨てて、残った部分を使うという“引き算”の工法となっており、最初に投入した銅のうち7~8割は捨ててしまうという、環境に対して大きな課題を抱えていた。

サブトラクティブ法のイメージ

それに対してエレファンテックが開発したのは、“足し算”による製造技術「ピュアアディティブ法」。金属(銅)をナノ粒子のインクにして、それをインクジェットで基材に印刷。印刷した銅をめっきで成長させることで膜厚を得るという技術だ。これにより、銅の使用量-70%、二酸化炭素排出量-75%、水使用量-95%を実現するという。

ピュアアディティブ法のイメージ
エレファンテックは名古屋に自社工場を構えており、製造プロセス全体の技術を自社で賄っている
量産インクジェット印刷装置には、エプソンのインクジェットヘッドが採用されている。熱を使わずに印刷する技術をもつため、幅広い素材(今回のような金属など)に対応できる

低炭素プリント基板はこれまでディスプレイやセンサーなど、国内において少量生産による展開としてきた。しかし、このほど大量生産に対応できる製造設備導入が実現したため、LITEONとの協業によりグローバル展開を推し進めていく運びとなった。エレファンテックの代表取締役社長・清水信哉氏は、今後数年間で同社の低炭素プリント基板をグローバルで「デファクトスタンダードにしていく」と意気込みを見せる。

エレファンテック 代表取締役社長 清水信哉氏(右)
発表会の会場となったのは「エプソンスクエア丸の内」。社会の課題解決に向けた共創の場として、環境をメインテーマに様々な企業との取り組みを展示するショールーム。低炭素のプリント基板量産においても、社会課題解決に向けた共創の成果であると認識しているという
本誌:宮本義朗