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ライカ、2023年度の国際写真コンテスト受賞者を発表。エリオット・アーウィットの殿堂入りも

授賞式の様子。ドイツのライカカメラ本社でのイベント「セレブレーション・オブ・フォトグラフィー」の一環として行われた

ライカカメラ社は10月12日、国際写真コンテスト「ライカ・オスカー・バルナックアワード」の授賞式をドイツ本社で開催。写真家の功績を称える「ライカ・ホール・オブ・フェイム・アワード」および受賞者の作品から選出する「ライカ・ピクチャー・オブ・ザ・イヤー」も同時に発表した。

2023年度ライカ・オスカー・バルナックアワード(LOBA)

43回目を迎えた写真コンテスト。候補者は世界各国から推薦で選ばれ、5名の審査員による最終審査の結果、以下の2名が受賞した。ファイナリスト(Shortlist 2023)の作品も含め、LOBAのWebサイトに全て掲載されている。また、ライカギャラリーなど世界各地でも順次展示するという。

一般部門「ライカ・オスカー・バルナックアワード」

Ismail Ferdous
Lifeguards at the Cox’s Bazar Beach, Bangladesh, January 31, 2020
from the series “Sea Beach”
© Ismail Ferdous/LOBA 2023

アメリカを拠点とするバングラデシュの写真家イスマイル・フェルドウス(1989年生まれ)による「Sea Beach」が受賞。賞金4万ユーロと1万ユーロ相当のライカのカメラ製品が贈られた。

人口過多の国土に暮らすバングラデシュ人にとって、コックスバザールのビーチは自然の中で非日常が体験できる人気のリゾート。社会的な地位を問わず、誰もが気軽に訪れて休暇を楽しめるスポットです。忙しさとは無縁の場所であり、穏やかに流れる時間から「悩みやストレスは全部忘れてビーチでのんびり過ごそう」と誘われているかのような気がしてきます。LOBA受賞の報せは私の日常にこの上ない喜びをもたらしてくれたばかりか、今年を素晴らしい年にしてくれました。揺るぎない信念と尽きることのない情熱を持って日々の創作活動に取り組んでいますが、その甲斐あって今回受賞という最高の結果につながりました。

Ismail Ferdous: Sea Beach

一般部門受賞者のイスマイル・フェルドウス(右)

「写真に興味を持った最初の頃は花や蝶を撮っていたけれど、カメラを通じて自分の守りたい物、気になる物を伝えるというミッションを背負いたいと思った。撮影地のコックスバザールは、120kmと世界最長のビーチ。避難民が集まる場所であり、家族での鮮明な思い出もある場所。世界的に知られている難民キャンプというイメージの裏側には、こうした地元の人々の生活スタイルがある。この表裏一体の写真を2017年から2020年にかけて撮り続けた」(プレスカンファレンスでの本人コメントより)

新人部門「ライカ・オスカー・バルナック・ニューカマーアワード」

Ziyi Le
A young man looking out the window, Hangzhou, China, April 17, 2021
from the series “New Comer”
© Ziyi Le/LOBA 2023

30歳未満の若手写真家を対象とする賞。中国の写真家である樂子毅(1993年生まれ)による「New Comer」が受賞。賞金1万ユーロと「ライカQ3」が贈られた。

私は成長期に他人とコミュニケーションをほとんどとらず、ずっと疎外感を抱いていました。やがて、自分の居場所はどこにもないと思うようになりました。写真家としての基本的な本能から、自分のような若者をさまざまな都市から探し出し、その心に潜む同じような虚無感を感じてみようと思い立ちました。若者たちの表情を観察するとともに、自分が抱いている深刻な自信のなさに向き合ってみることにしたのです。

Ziyi Le: New Comer

新人部門受賞者の樂子毅(中央)

「自分と同じような1990年代以降に生まれた若者の中国での生活を知りたくて、コロナ禍にWeibo(中国のSNS)を通じて会いに行き、写真を撮り始めた」

(1枚目の写真について)「2020年には不動産関係で大きな事件があった。若者に対して住居を斡旋し、家賃だけを取って雲隠れするというもので、その被害にあった若者を撮影した」(プレスカンファレンスでの本人コメントより)

スペシャゲストとして、イギリスの詩人・作家フセイン・マナワーが参加。受賞作品のスライドショーにあわせて朗読を行った

エリオット・アーウィットが殿堂入り

New York City, USA 1999 ©Elliott Erwitt MAGNUM PHOTOS

マグナム・フォトグラファーのエリオット・アーウィット(1928年生まれ)の生涯にわたる功績を称え、「ライカ・ホール・オブ・フェイム・アワード」を授与。95歳と高齢のため式典に出席することは叶わなかったが、ライカカメラ本社内のギャラリーで作品展がスタート。2024年1月末まで開催している。

また、アーウィットが2000年に撮影した犬と飼い主の作品「Bulldogs」を「2023年度ライカ・ピクチャー・オブ・ザ・イヤー」に選出。世界各地の27のライカギャラリーで、特別なプリントを数量限定で販売する。有名な作品を現実的な価格で買える機会だとしている。

New York City, USA 2000 ©Elliott Erwitt/MAGNUM PHOTOS
本誌:鈴木誠