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2023年度グッドデザイン賞、ベスト100に「GFX100 II」や「網膜投影カメラキット」など選出

FUJIFILM GFX100 II

公益財団法人日本デザイン振興会は10月5日、2023年度のグッドデザイン賞各賞を発表した。このページでは、「グッドデザイン・ベスト100」に選出されたカメラおよび関連製品をお伝えする。

1億200万画素のラージフォーマットセンサーを搭載したミラーレスカメラ「FUJIFILM GFX100 II」が、「デジタルカメラ」として"ベスト100"に選出された。富士フイルムはこのほか、新しいインクジェット方式「構造色インクジェット技術」も受賞している。

ソニーからは、レンズ交換式旋回型カメラ「ILME-FR7」と、網膜投影カメラキット「DSC-HX99 RNV kit」の2製品が選出。このほか、リコーイメージングの360度カメラ用浮力調整器「RICOH STAYTHEE」が選ばれている。

審査員の評価

富士フイルム株式会社「FUJIFILM GFX100 II」

プロ向け中判デジタルカメラ。フラッグシップ機ということもあり、こう言ったプロダクトは従来のクラシックでコンサバなデザインに落ち着くのが必然と言える。然しながらGFX100 IIはカメラのデザインの常識に果敢に挑み、思い切ったチャレンジが随所に見られる。傾斜したトップ面はサブ液晶を見やすくする効果と共に、スタイリング上の特徴となっている。新開発の三ツ矢状の新シボ形状をグリップに採用するなど、細かい部分もよく考え抜いている。プロダクトデザインとしての完成度が高く、高性能が巧く表現された高級機に仕上がっている。

審査委員の評価

富士フイルム株式会社「構造色インクジェット技術」

色素が発する色ではなく、光の屈折や干渉が発する色(構造色)を再現できるインクジェット技術である。これまでの印刷の常識にとらわれず、自然界の色を印刷で再現できないかという社内デザイナーの夢が取り組みのきっかけとなっており、柔軟な発想を生み出す環境と、それを具現化する技術力が実現したイノベーションに審査委員の評価が集まった。これからの教育やパッケージデザイン、製品加飾、アートの分野の表現を大きく拡張する、新たな印刷技術として大いに期待したい。

審査委員の評価

ソニー株式会社 / ソニーグループ株式会社「ILME-FR7」

「形態は機能に従う」と言わんばかりのスタイリングでありながら、随所にデザイナーの美意識を感じる秀逸なプロダクトである。人の入っていけないシチュエーションや無人でなければ撮影できない現場等、これまでのシネマカメラでは不可能だった映像の撮影を実現することがこの製品のカメラとしての使命、一番の特徴ではあるが、無駄をそぎ落としただけではない、機能的、必然的に細部にまで施された美しい形態こそがこの製品の最大の魅力となっている。

審査委員の評価

株式会社QDレーザ / ソニー株式会社「DSC-HX99 RNV kit」

「ロービジョン」と呼ばれる日常生活に支障をきたすほど視力に問題を抱えた人向けの、視力に依存しない網膜投影ビューファインダーを搭載したカメラキットである。本製品は単に「見える」ことを目的に作られたものではなく、美しい風景を誰もが同じように感動したり、シェアするなど写真に付随する楽しさを伝えたりすることを目指したことにあり、人間の感性を尊重する理念が最新の技術となって実装されている。その製品化までの成り立ちもユニークで、違う技術を持つ会社同士がお互いの理念をリスペクトする事で商品化にまで至ったその背景は、学ぶべき美しい姿勢であると言ってもいい。最先端のテクノロジーがただ利便性や不便さを取り除くものではなく、豊かな感性を満たすために作られた点を審査委員一同高く評価した。

審査委員の評価

株式会社リコー「RICOH STAYTHEE」

三脚、自撮り棒、ドローン撮影等、撮影や被撮影のためのプロダクトは様々存在するが、水中で一定の水深に浮遊させ、カメラを自立させることを目指した本製品は非常にユニークで独創的である。水中で水をはじく体積を0.1ccレベルで増減できる構造により、“中性浮力”というダイバーなら誰もが知る安定した状態を水中で維持、調整できる点が唯一無二である。同社のカメラだけでなく、同様のポピュラーな他社製アクションカメラ等にも対応しているのは多くのユーザーにとって嬉しい仕様である。

審査委員の評価

本誌:宮本義朗