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航空科学博物館がリニューアル 新型フライトシミュレーターなど導入

チャーリィ古庄さんの作品も多数展示

航空科学博物館

成田国際空港にほど近い「航空科学博物館」がこのほど開館から30周年を迎えると同時に、館内のリニューアルを完了。関係者および報道機関が招かれた式典で、内部を公開した。

30周年記念式典でのテープカットの様子。

航空科学博物館は、1989年8月1日に日本初の航空専門の博物館として開館。来館者はこれまでに約600万人を数える。成田空港で旅客機を撮影するファンなら、一度は訪れた場所ではないだろうか。

30年を迎えるにあたり、同館では「魅力ある」「愛される」「楽しめる」博物館を目指して2018年6月よりリニューアル工事を進めていた。

リニューアルにあたって、最も大きく目立つ変化は「体験館」と呼ばれる付属棟だ。200名収容可能なホールを中心に、展示倉庫、バリアフリー展望台などで構成されている。

30周年記念式典の当日、ホールではレセプションが行われた。

バリアフリー展望台からは、成田空港の整備地区を見下ろせる。左手側にはA滑走路がある。

リニューアルの目玉は、体験館2階の「コクピットルーム」に新設された2基のフライトシミュレーターだろう。以前からフライトシミュレーターが人気を集めていた同館だが、リニューアル後はボーイング737MAX、ボーイング777の2つのシミュレーターがお目見えする。

特にボーイング737MAXは、プロジェクターを3台使ったパノラマビジョンや、実機さながらのフルコクピット仕様がすごい。操縦や離着陸の仕組みなどを臨場感たっぷりに体験できる。料金は1フライト1,000円。

ボーイング777の方はオープンタイプの操縦席となっており、車椅子利用の来館者も楽しめる。料金は1フライト500円。

あくまでも一般来館者を対象とした操縦の模擬体験のためのものであり、訓練などで使用されることはない。とはいうものの最新のシミュレーターだけに、CGはリアルだし操縦桿や計器などが醸し出す本物感も高く、航空機マニアの満足度も高いだろう。

現状、離着陸をシミュレートしているのは成田空港のみだが、今後は他の空港の追加も検討していく可能性があるという。いずれも対象は小学校4年生以上。1日最大30名程度の利用を見込む。

体験館以外の本館や西棟にも手が加えられている。

もともと大型の展示物が印象的だった西棟だが、リニューアルに際して新たにボーイング747-400の1/8サイズ大型模型が中央に据えられた。その周りにパノラマビジョンを配置し、スケール感で来館者を圧倒する。パノラマビジョンは従来から存在したコクピット操縦体験(有料)と連動した内容が表示されるという。

西棟で忘れてはいけないのが、本物のボーイング747エンジンだ。展示にはプロジェクションマッピングによる解説動画が加わっており、実際のエンジンの仕組みがそのままのスケール感で理解できるようになった。

また西棟2階には、航空機模型300機による「航空史立体年表」が配置された。精緻な模型をひとつひとつ見ているだけで時間が経っていく。

本館2階展示室には、木村秀政東京大学名誉教授(同館初代理事長)が選出した「日本の名機」10機の解説パネルが設けられている。

NAA(成田空港株式会社)コーナーでは、成田空港に就航した世界のエアラインを写真で解説したコーナーも。1978年から現在まで膨大な航空会社の航空機を網羅したものだ。成田空港とエアライン各社の歴史を辿りながら、思いに耽るのも良いだろう。撮影はすべて写真家のチャーリィ古庄さん。

その他、エントランス、レストラン(4階)、展望展示室の解説用DJブース(5階)などが改修されている。

エントランスもウェルカムバナーの設置で印象が一新。

開館から30年が経ち、その間に航空産業やそれを取り巻く環境も変化した。そのため若干古めかしい印象だった同館だが、最新のフライトシミュレーターに加えて、プロジェクションマッピングを使った解説や、随所に設けられたバリアフリーへの取り組みなど、時流に合わせたリニューアルが試みられている。これからも成田空港を訪れる航空機ファンの心を掴み続けることだろう。

本誌:折本幸治