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【フォトキナ】ZEISSの35mmフルサイズ機「ZX1」詳報

Eマウント新レンズ「Batis 40mm CF」も披露

ZX1

既報の通り、カールツァイスはフォトキナ2018会期中にドイツ・ケルンで自社イベントを開催。において、レンズ一体型デジタルカメラ「ZX1」を発表した。来春発売予定としている。

イベントはフォトキナ2018会期中のドイツ・ケルンで開催。今回、フォトキナ会場にツァイスのブース出展はない。
ZX1を手にする、独ツァイスのコンシューマ製品担当ヨルグ・シュミッツ氏。

単独で撮影、編集、共有までを完結できる初めてのカメラを謳っており、フォトグラファーが撮影〜共有までを行う一連の流れを「FLOW」というキーワードで表現した。

Android搭載でスマートフォンライクな端末としてはパナソニックの「LUMIX CM1/CM10」が思い浮かぶが(こちらはSIMカードを入れることもできた)、ZX1はAdobe Lightroom CCという本格的な編集環境を内蔵したことが“初”の根拠なのかもしれない。

現場で実機の動作を見たり、手に取って操作することはできなかったが、外観からわかること、気になったことについてツァイスのZX1担当者に聞いた。

展示機にはデモムービーが表示されており、実際に動作する個体は見られなかった。

主なスペックについて

光学ローパスフィルターレス仕様で有効3,740万画素の35mmフルサイズセンサーを搭載。製造は協力会社が担っているが、設計はツァイス。搭載レンズとのマッチングなどを考慮した専用のチューニングが施されることになる。感度はISO 80〜51200。

超音波などを使ったセンサーダスト除去の機能は持たないが、レンズとセンサーの部分は一体化してシールドされており、ゴミを気にする必要はないとのこと。

レンズはDistagon T* 35mm F2。両面非球面2枚を含む5群8枚構成。補正なしでも歪曲が認められないレベルの性能だという。最短撮影距離は30cm。光学式の手ブレ補正機構は非搭載。35mm F2という広角寄りで明るいレンズのため不要という判断だ。

動画記録は4K/30pに対応。こちらは画面周辺部のクロップによる手ブレ補正が可能。

Distagon T* 35mm F2レンズを搭載。
AF/MF切り換えスイッチ。

搭載するメカシャッターは1/1,000秒〜1秒に対応。レンズシャッターのためストロボは全速同調する。電子シャッターを使うと1/8,000秒〜30秒まで設定可能で、T(タイム)モード時は上限なしとのこと。内蔵ストロボは持たず、ホットシューはシグマ製ストロボのTTLプロトコルに対応しているという。

専用ダイヤルにより、絞り、シャッター速度、感度のパラメーターをダイレクトに設定できる。

シャッター速度ダイヤル周囲のレバーは、前後にプッシュできる仕組み。レンズ方向に押すと静止画/動画のモード切替、背面側に引くとスリープ/復帰の動作になる。

感度ダイヤル、シャッター速度ダイヤル、電源レバー。

EVFは有機ELの0.7型1,920×1,080ドット。背面モニターは液晶で、右端部分が手前に折れ曲がっている。撮影時はファインダーを覗きながらその右端部分に右手親指を沿わせることで、ファインダーを覗いたままでも素早く各種操作が可能という。画像再生などの操作は、左手親指で画面左側をタッチ操作する。

撮影中のイメージ。
測光モードを変更しているところ。

背面のファインダー右側に備わる丸いボタンはファンクションボタン。AEロックやAFロックなどを任意に割り当てられる。横の小さなステータスランプは通信状況などを表示する。

EVF部分。トップカバーに分割線があるのは、ここにWi-Fiのアンテナが収まるため。2つのアンテナで通信効率を最適化しているという。
液晶モニターは右端部分が折れ曲がっている。背面にはファンクションキーを除いて物理的なダイヤルやボタンが存在しない。

ストレージは内蔵SSDの512GBのみで、メモリーカードスロットは非搭載。側面のUSB Type-C端子でデータ転送、カメラの充電、HDMIアダプター経由でのテレビ出力を行う。

撮影画像はネットワーク経由でクラウドに自動バックアップされる。ギャラリー(再生画面)から編集したい画像を選んでEditを押すとLightroom CCに遷移し、編集過程はネットワーク経由でAdobe Creative Cloud上のファイルにも反映されるという。

Lightroom CCの動作イメージ。
トーンカーブも使える。
横位置表示でも作業可能。
アップロード先にDropboxのアイコンがあった。
メール添付も可能。宛先や文章の入力時は、画面にキーボードが表示される。

通信機能はWi-Fi/Bluetooth/NFCに対応。スマートフォンのようにSIMカードを入れて携帯電話回線に接続する機能は持たない。

ZX1はAndroidベースで動作しているが、外部からのソフトウェア追加はできない仕様。画像処理に関しては、カスタマイズしたプロセッサーを搭載しているとのこと。

バッテリーは専用形状の充電池を使用。CIPA基準で230〜250枚を撮影できる模様。スリープ状態でバッテリーを抜いても30秒程度は内部に電力が残っており、その間にバッテリーを交換すればデータは失われないそうだ。USB Type-C端子を利用してモバイルバッテリーからの充電もできる。

底部にはバッテリー室と三脚ネジ穴。

仕様表によると、本体サイズは142×93×46mm(+レンズ部20mm)。重量は電池込みで800g以下。参考までに他社フルサイズコンパクトのサイズを示すと、ソニーRX1R IIが113.3×65.4×72mm、ライカQが130×80×93mm。

Peak DesignとZEISSがコラボレーション

ストラップは米国Peak Design製の特別品が付属。長さ調節可能な「Slide Lite」をベースとし、黒地にZX1の機種名を配したものだという。なおツァイスは、今後もPeak Designとのコラボレーションを続けるという。

カメラとの脱着にはPeak Designストラップでお馴染みの「アンカー」を使用。小さいアイレットに合わせて紐の太さを調整した特別仕様のものが付属する。通常は赤のワンポイントが入るところ、カメラのデザインに合わせてオールブラックになっているという。

また、たすき掛けから速写スタイルを取ることも想定し、三脚ネジ部分にストラップを取り付けるための「アンカーマウント」も付属する。

Peak Designのストラップが付属。
カメラ側面をフラットにするため、コンパクトデジタルカメラ並みの小さなアイレットを採用。

レンズフードに見える部分は衝撃吸収性の「レンズリング」で、本体のスタンド代わりにもなる。先端には紛失防止のストラップホールがある。今回は実物を見られなかったが、交換用の「レンズシェード」(こちらがレンズフードとして機能する)も付属する。これらもクイック着脱ストラップの仕組みを使った紛失防止機構を備えるという。

レンズリングをスタンドにしたところ。

Batis 2/40 CF

イベント会場では「ZX1」のインパクトに押されてしまった感があるものの、フルサイズ対応のソニーEマウントAFレンズBatisシリーズとして5本目となる「Batis 2/40 CF」もお披露目された。国内・海外ともに発売時期や価格は未定。こちらは実機を手に取って試せた。

CFはClose Focusの略で、最短撮影距離24cm、最大撮影倍率1:3.3という仕様。近い画角の35mmレンズでは30cm程度の最短撮影距離が一般的なところ、本レンズは更に接写できるとアピールしている。

フォーカスレンジリミッターがある。
クローズアップのイメージ。

本誌:鈴木誠