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最新フルサイズα御三家の違いを見てみよう(2018年春)

ハイスピードのα9、高解像のα7R III、ベーシックなα7 III

ソニーのフルサイズミラーレスカメラは、"プロフェッショナルモデル"を謳うα9を筆頭に、α7R III、α7 III、α7R II、α7S II、α7 II、α7R、α7S、α7と実に9機種ものラインナップを誇る。原稿執筆時点での税込実売価格は、もっとも安いα7が10万6,680円前後、もっとも高いα9は50万1,240円前後と、予算に合わせて選べるのがすごいところである。が、悪く言えば、似たよーなカメラが9機種もあるわけで、選ぶ側としてはややこしいことこのうえない。

とは言え、気になるのは、発売時期が新しいα9とα7R IIIおよびα7 IIIの3機種で、特に発売前のα7 IIIは、例によって詳しい情報が日本のウェブサイトにも掲載されていないので、実機に触れるチャンスのない方には非常に悩ましい状態となっている。

今回は、裏から手を回して入手したデータ(なんのことはない、編集部からメーカーに問い合わせてもらっただけだが)をもとに、最新α御三家の違いを比べてみたい。

α9(ハイスピードモデル)

α9

言わずと知れたミラーレスαシリーズの看板モデルであり、画面のほぼ全域をカバーする693点の位相差AFと20コマ/秒連写を実現しているのがいちばんの売りだ。ボディ単体の税込実売価格は原稿執筆時点で50万1,240円。発売当初は53万8,790円だった。

撮像センサーはメモリー内蔵積層型のExmor RS CMOSセンサーで、さらに新開発のフロントエンドLSIを採用するなどした結果、AF性能の向上やEVFの表示タイムラグ短縮も実現している。

AFは位相差検出が693点、コントラスト検出が25点のハイブリッドで、位相差測距点のカバーエリアは画面全体の約93%と広い。三脚に固定したときや、動く被写体を撮りたいときのフレーミングの自由度はきわめて高い。

シャッターは最高速1/8,000秒のメカシャッターと、最高速1/32,000秒の電子シャッターを搭載。連写最高速は電子シャッター時で約20コマ/秒だが、メカでは約5コマ/秒と遅い。が、撮像センサーからの読み出しが速いこともあって、ファインダーのブラックアウトがなく、電子シャッターの泣きどころだったローリング歪み(動体歪み)も気にならないレベルに抑えられている。

連写時の撮影可能枚数はJPEGで362枚、圧縮RAWで241枚と文句なしの数字。約20コマ/秒で12秒間の連写が行なえるのだから、たいていの撮影ではバッファがフルになって連写が止まってしまう心配はなさそうだ。

ISO感度の設定範囲は常用でISO100~51200、拡張でISO50~204800までとなる。ただし、電子シャッター時はISO25600までに制限される。また、フリッカーレス撮影機能も搭載していないので、屋内でのスポーツ撮影などでは注意が必要になるかもしれない。

動画は画素加算なしの全画素読み出しで、6K相当(6,000×3,376ピクセル)の映像から4K映像を生成することによって解像感の高い描写を実現しているという。記録フォーマットは4K(3,840×2,160、30p)がXAVC S、フルHDはAVCHDとMP4も選択できる。

上面左手側方にドライブモードダイヤル、その基部にフォーカスモードダイヤル(いずれもロック機構付き)を備えているのがα7系との大きな違い。端子カバー内には有線LAN端子、シンクロ端子もある(ただし、α7R IIIのようなUSB Type-C端子はない)。

α7R III(高解像モデル)

α7R III

4,000万画素オーバーの高精細仕様ながら約10コマ/秒という高速連写も実現したモデルで、風景からスポーツまでマルチに使える汎用性の高さが魅力だ。ボディ単体の税込価格は原稿執筆時点で37万9,150円。発売当初は39万9,470円だった。

撮像センサーは有効約4,240万画素の裏面照射型Exmor R CMOSセンサー。画素数が多いので、APS-Cサイズ撮影時も1,782万画素と実用的な数字が得られるのは見逃せない点だ。反面、ISO感度の設定範囲は他機種に比べてやや狭く、常用でISO100~32000、拡張でISO50~102400となる。先発のα9にはなかったフリッカーレス撮影機能を備えているのは有利な点だ。

AFは位相差検出が399点、コントラスト検出が425点。位相差検出のカバーエリアは、α7R IIは「撮像エリアの45%をカバー」と書かれているのに対し、α7R IIIは「縦約68%×横約68%の範囲をカバー」する。数字としては約46.2%で微増となるが、誤差の範囲と考えたほうがいいだろう。

シャッター最高速は1/8,000秒で、電子シャッター時も変わりはない。晴天時に明るいレンズの絞り開放を使うときは露出オーバーにならないよう注意が必要となる。

連写最高速はHi+モードで約10コマ/秒。メカシャッターでも電子シャッターでも同じスペックだ。ライブビュー映像を見ながら撮れるHiモードでは約8コマ/秒となる。α9と違ってブラックアウトもあるし、ローリング歪みはそれなりに起きるので、動体撮影時はメカシャッターを使ったほうがよさそうだ。

画素数が多いだけに連写可能な枚数は少なくなる。と言ってもJPEGや圧縮RAWなら76枚(連続で7.6秒ぶん)撮れるので、バッファ容量としてはかなり大きそうだ。ただし、ファイルサイズが大きいぶん、バッファフルから解放までに時間がかかるかもしれないので、そのあたりは高速タイプのカードでしのぐことになるだろう。

動画は4K(3,840×2,160、30p)のXAVC S。MP4は省略されている。ウェブサイトに「Super 35mm(APS-Cサイズ相当16:9)時は、画素加算のない全画素読み出し」とだけ書かれていて、フルサイズ時については記載はないのはちょっと気になった。

α7 III(ベーシックモデル)

α7 III

もうすぐ(3月23日が予定日である)発売される最新モデルで、これをして「ベーシック」と言われてしまうと、後を追うのはかなりしんどいことになりそうに思う。原稿執筆時点での税込実売価格は、ボディ単体が24万8,270円、FE 28-70mm F3.5-5.6 OSS付きのレンズキットが26万9,870円となっている。

撮像センサーは裏面照射型のExmor R CMOSセンサーで、約2,420万画素の有効画素数はα9と同じだが、積層型ではないため、そのぶん読み出し速度やAF性能などで若干譲る部分があるのではないかと予想される。高速フロントエンドLSIはα9譲りのものが搭載され、15ストップのダイナミックレンジはα7R IIIと同じ。ISO感度の設定範囲はα9と同じくISO100~51200、拡張でISO50~204800となる。フリッカーレス撮影機能も備えている。

AFは693点の位相差検出と425点のコントラスト検出を併用するハイブリッドで、像面位相差AFのカバーエリアは全画面の93%と広い。このあたりはα9と肩を並べるスペックだ。

一方、シャッターはα7R IIIと同じスペックで、最高速はメカ、電子ともに1/8,000秒。やはりローリング歪みはあるので、動体撮影時はメカシャッターを使うのがいいだろう。ただし、わざわざ電子シャッター時は「メカシャッターのような振動が発生しないため、解像性能を最大限に引き出せます」と書いているぐらいなので、被写体の動くスピードや、要求する画質などを考えて選択することになるだろう。

連写最高速はHi+モードで約10コマ/秒、Hiモードで約8コマ/秒。20コマ/秒のα9に比べると半分でしかないが、α7 IIは5コマ/秒だったのだから2倍にスピードアップしている(ちなみに、α7 IIにはサイレント撮影機能もなかった)。

連続で撮れる枚数は、JPEGでは画質モードで変わり、エクストラファインでは163枚、ファインでは172枚となる。圧縮RAW時も89枚撮れる。ちなみに、α7 IIはエクストラファインで50枚、ファインで77枚、圧縮RAWだと25枚だったから、この点でも大幅に進化しているわけだ。

動画はα9とほぼ同じスペックのようで、6K領域から4Kにリサイズして解像感の向上をはかっているのも同じだ。MP4が省略されているのはα7R IIIと同じ。

そのほか、共通仕様や付属品など

EVFはいずれも0.5型の有機ELを採用する。解像度はα9とα7R IIIは369万ドット、α7 IIIのみ236万ドットで、数字としては大きな差だが、見比べてわかるかどうかという気がする。ただ、上位2機種はフレームレートを60fpsと120fpsに切り替えられるのに対して、α7 IIIは固定なのがちょっと残念な点だ。

ファインダーの倍率はいずれも0.78倍。α7 IIシリーズでは、α7 IIだけ無印シリーズと同じ0.71倍で「T*」マークもなかったのが、今回の3機種では共通仕様となった。

液晶モニターは、上位2機種は144万ドットなのに、α7 IIIだけは92万ドットで、これはα7 II(123万ドットだった)よりもややスペックダウンしている。が、92万ドットあればそれなりに高精細なので、実用上はあまり気にならないと思う。

なお、3機種とも液晶モニターのタッチ操作に対応しているので、測距点の移動などの操作を、従来より直感的に行なえる。また、ジョイスティック状のマルチセレクターを備えているほか、AF-ONボタンとAEロックボタンが独立して操作性を向上させている。

α7 IIIの背面

ボディ内手ブレ補正はいずれも5軸補正タイプで、CIPA基準の補正効果はα9とα7 IIIはシャッター速度5.0段ぶん、α7R IIIのみ5.5段ぶんとなっている。また、より解像感を高められるピクセルシフトマルチ撮影機能はα7R IIIだけに搭載されていて、静止画の画質を求めるなら「R」を選べ、ということになる。

一方、スピードが必要ならα9がきわめつけだが、動画をメインに考えるなら3機種の差はあまりないのだから、価格面で有利なα7 IIIがおすすめだったりもする。

あと、付属品に若干の違いがあるところは注意してもらいたい。と言うのは、α9はバッテリーチャージャーBC-QZ1とACアダプターAC-UUD12の両方が付属しているのに対して、α7R IIIはチャージャーだけが付属、α7 IIIはACアダプターAC-UUD12だけが付属している。ちなみに、バッテリーチャージャーBC-QZ1は税別9,800円、ACアダプターAC-UUD12は税別2,100円だ。

3機種とも見た目は似通っているし(α9だけは左手側肩にダイヤルがあるのでわかりやすい)、サイズや重さもそれほど違わない。使っているバッテリーも同じだし、縦位置グリップVG-C3EMやグリップエクステンションGP-X1EMといったアクセサリーも共通のものが多い。

縦位置グリップVG-C3EM
グリップエクステンションGP-X1EM

その一方で3機種のキャラクターは大きく違う。α9はハイエンドのスポーツ向けモデルで連写パフォーマンスの高さがいちばんの魅力。読み出しの速いExmor RS CMOSセンサーがAF性能の向上にも寄与していることを思えば、やはり動きものメインのユーザーには最有力候補となる。

α7R IIIも連写最高速は約10コマ/秒と十分に高いので、スポーツ系の撮影にも対応できるだろうが、4,240万画素だというのを忘れてはいけない。キヤノンやニコンのような低画素RAW記録もないため、枚数を多く撮るなら相応の覚悟が必要になる。ピクセルシフトマルチ撮影が生かせる自然風景などのジャンルがもっとも似合うと思う。

残るα7 IIIは、ハイエンドの連写性能は必要がなく、解像度もほどほどでいいのであれば、手頃な選択肢だ。と言っても、約10コマ/秒の連写は一般的なスポーツシーンで不便を感じることはあまりないし、約2,420万画素あれば多くの用途には足りてしまうはずだ。それでいて、実売価格がα9の半分以下となれば、いちばんのねらい目と言っていい。上位2機種に比べれば若干スペックが落ちるところはあるものの、そのあたりを気にしないのであれば、おすすめ度は高い。

α7 IIIα7R IIIα9
実売価格(単体)税込248,270円前後税込379,150円前後税込501,240円前後
撮像センサー35.6×23.8mm Exmor R CMOS35.9×24.0mm Exmor R CMOS35.6×23.8mm Exmor RS CMOS
有効画素数約2,420万画素約4,240万画素約2,420万画素
最大記録画素数6,000×4,000ピクセル、APS-Cサイズ時:3,936×2,624ピクセル(1,033万画素)7,952×5,304ピクセル、APS-Cサイズ時:5,168×3,448ピクセル(1,782万画素)6,000×4,000ピクセル、APS-Cサイズ時:3,936×2,624ピクセル(1033万画素)
動画ファイル記録形式:XAVC S、AVCHD 圧縮方式:MPEG-4 AVC/H.264ファイル記録形式:XAVC S、AVCHD 圧縮方式:MPEG-4 AVC/H.264ファイル記録形式:XAVC S、AVCHD、MP4(MP4はフルHDのみ) 圧縮方式:MPEG-4 AVC/H.264
動画記録3,840×2,160(30p、100Mbps)3,840×2,160(30p、100Mbps)3,840×2,160(30p、100Mbps)
ISO感度ISO100~51200、拡張:ISO50~204800(動画ISO100~51200、拡張ISO102400まで)ISO100~32000、拡張:ISO50~102400(動画ISO100~32000)ISO100~51200、拡張:ISO50~204800(動画ISO100~51200、拡張ISO102400まで)
AF方式ファストハイブリッドAFファストハイブリッドAFファストハイブリッドAF
測距点数位相差693点(画面の93%をカバー)/コントラスト425点位相差399点(画面の左右68×上下68%をカバー)/コントラスト425点位相差693点(画面の93%をカバー)/コントラスト25点
シャッターメカシャッター、電子先幕シャッター、電子シャッターメカシャッター、電子先幕シャッター、電子シャッターメカシャッター、電子先幕シャッター、電子シャッター
シャッター最高速1/8,000秒1/8,000秒1/8,000秒(メカシャッター)、1/32,000秒(電子シャッター)
フリッカーレス撮影ありありなし
連写最高速10コマ/秒(Hi+時)10コマ/秒(Hi+時)20コマ/秒(電子シャッター)、5コマ/秒(メカシャッター)
撮影可能枚数163枚(JPEGエクストラファイン)、172枚(JPEGファイン)、89枚(圧縮RAW)、40枚(非圧縮RAW)76枚(JPEG、圧縮RAW)、28枚(非圧縮RAW)362枚(JPEG)、241枚(圧縮RAW)、128枚(非圧縮RAW)
EVF0.5型OLED、236万ドット0.5型OLED、369万ドット0.5型OLED、369万ドット
視野率100%100%100%
倍率0.78倍(50mmレンズ、無限遠)0.78倍(50mmレンズ、無限遠)0.78倍(50mmレンズ、無限遠)
フレームレート選択不可60fps/120fps60fps/120fps
モニター3.0型TFTタッチパネル液晶、92万ドット3.0型TFTタッチパネル液晶、144万ドット3.0型TFTタッチパネル液晶、144万ドット
ボディ内手ブレ補正5.0段5.5段5.0段
ピクセルシフトマルチ撮影不可可能不可
シンクロ端子非搭載搭載搭載
無線通信Wi-Fi、BluetoothWi-Fi、BluetoothWi-Fi、Bluetooth
有線LAN端子非搭載非搭載搭載
インターフェースマイク端子、ヘッドホン端子、HDMIマイクロ端子、マルチ/マイクロUSB端子、USB Type-C端子シンクロ端子、マイク端子、ヘッドホン端子、HDMIマイクロ端子、マルチ/マイクロUSB端子、USB Type-C端子LAN端子、シンクロ端子、マイク端子、ヘッドホン端子、HDMIマイクロ端子、マルチ/マイクロUSB端子
記録メディアSDメモリーカード、SDHC/SDXCメモリーカード(UHS-I /II対応)、メモリースティック PRO デュオ/PRO-HG デュオ/マイクロ(M2)SDメモリーカード、SDHC/SDXCメモリーカード(UHS-I /II対応)、メモリースティック PRO デュオ/PRO-HG デュオ/マイクロ(M2)SDメモリーカード、SDHC/SDXCメモリーカード(UHS-I /II対応)、メモリースティック PRO デュオ/PRO-HG デュオ/マイクロ(M2)
バッテリーNP-FZ100NP-FZ100NP-FZ100
撮影可能枚数610枚(EVF)、710枚(LCD)530枚(EVF)、650枚(LCD)480枚(EVF)、650枚(LCD)
実動画撮影可能時間115分(EVF)、125分(LCD)100分(EVF)、115分(LCD)105分(EVF)、120分(LCD)
本体充電/給電USB充電/USB給電可能USB充電/USB給電可能USB充電/USB給電可能
寸法126.9×95.6×73.7mm(62.7mm)126.9×95.6×73.7mm(62.7mm)126.9×95.6×63.0mm(グリップからモニターまで)
質量650g(バッテリーとメモリカードを含む)、565g(本体のみ)657g(バッテリーとメモリカードを含む)、572g(本体のみ)673g(バッテリーとメモリカードを含む)、588g(本体のみ)
付属品の違いACアダプターAC-UUD12のみ付属バッテリーチャージャーBC-QZ1のみ付属バッテリーチャージャーBC-QZ1、ACアダプターAC-UUD12付属

16時40分追記:α7 IIIにおけるフロントエンドLSIの有無が判明したため追記しました。また、α7 IIIの付属品について「チャージャーもACアダプターも付属しない」と当初記載していましたが、ACアダプターのみ付属しているとわかったため、該当部分を修正しました。

北村智史

北村智史(きたむら さとし)1962年、滋賀県生まれ。国立某大学中退後、上京。某カメラ量販店に勤めるもバブル崩壊でリストラ。道端で途方に暮れているところを某カメラ誌の編集長に拾われ、編集業と並行してメカ記事等の執筆に携わる。1997年からはライター専業。2011年、東京の夏の暑さに負けて涼しい地方に移住。