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第36回土門拳賞に潮田登久子氏

古書をテーマにした写真集『本の景色 BIBLIOTHECA』で受賞

【包帯】(修復を待つ本 早稲田大学図書館特別資料室・2003年)

株式会社毎日新聞社は、日本の写真にひとつの流れを確立した巨匠・土門拳の業績をたたえ、同社が創刊110年記念事業のひとつとして1981年から開始している「土門拳賞」の受賞作品を、潮田登久子氏の写真集『本の景色 BIBLIOTHECA』に決定した。

プロ・アマ問わず毎年1月から12月までの間に発表された作品が選考対象となり、その受賞作品はニコン THE GALLERY(東京・大阪)で展示。土門拳記念館にて永久保存される。

受賞理由

毎日新聞社主催の第37回土門拳賞選考会は、2月20日午後2時より千代田区一ツ橋の毎日新聞社で開かれ、潮田登久子氏に決定した。受賞対象となったのは写真集『本の景色 BIBLIOTHECA』(発行・ウシマオダ、発売・幻戯書房)。

90人あまりの推薦委員から推薦された17作品の中から、飯島幸永氏の写真集『暖流』(彩流社)、潮田登久子氏の写真集『本の景色 BIBLIOTHECA』(発行・ウシマオダ、発売・幻戯書房)、紀成道氏の写真集『Touch the forest,touched by the forest.』(赤々舎)、菱田雄介氏の写真集『Border|Korea』(リブロアルテ)が最終選考に残った。

潮田登久子氏の『本の景色 BIBLIOTHECA』が、瑞々しい感性と確かな撮影技術に裏打ちされた描写、20年以上におよぶ持続力で他の作品の追随を許さなかった。

『本の景色 BIBLIOTHECA』は、潮田氏が確かな存在感を放つ古書を追い求め、図書館、古書店、個人の蔵書、出版社の編集室などで撮り続けたもの。人の手を経て変化した本の風貌、長い時間がもたらした重み、その本に触れた誰とも知れない人間たちの「生」が静かに迫ってくる。自然光のみの撮影、美しい階調に満ちたモノクロのプリントがその本の持つ背景を浮かび上がらせ、見る者を思索の旅へいざなう。

長年にわたり現地へ足を運び島の人達の生活をモノクロで活写したリアリズムの傑作であった飯島幸永氏の『暖流』、精神の病の患者たちと自然のふれあいを表現した紀成道氏の『Touch the forest,touched by the forest.』、政治体制と人間の存在との関係を目に見える写真で表現した菱田雄介氏の『Border|Korea』は潮田登久子氏の作品には及ばなかった。

作者プロフィール

1940年東京都生まれ。63年桑沢デザイン研究所卒業。同研究所で写真家・大辻清
司の指導を受け、写真家の道に進む。66~78年、桑沢デザイン研究所及び東京造
形大学で写真の講師を務める。75年頃よりフリーランス。
*主な写真集
『冷蔵庫 ICE BOX』Beebooks(1996年)
『HATS』パロル社(2004年)
『みすず書房旧社屋』 幻戯書房(2016年)
『本の景色 BIBLIOTHECA』発行・ウシマオダ 発売・幻戯書房(2017年)
*主な写真展
「微笑みの手錠」新宿ニコンサロン(1976年)
「冷蔵庫/ICE BOX」Port Gallery T・大阪(2008年)
「BIBLIOTHECA 本の景色」Port Gallery T・大阪ほか(2012年)

受賞記念写真展

THE GALLERY 新宿1

開催期間

2018年4月10日(火)~4月16日(月)

開催時間

10時30分~18時30分(最終日は15時まで)

所在地

東京都新宿区西新宿1-6-1 新宿エルタワー28階

休館

日曜日

THE GALLERY 大阪

開催期間

2018年5月24日(木)~5月30日(水)

開催時間

10時30分~18時30分(最終日は15時まで)

所在地

大阪市北区梅田2-2-2 ヒルトンプラザウエスト・オフィスタワー13階

休館

日曜日

土門拳記念館(予定)

開催期間

2018年10月4日(木)~12月24日(月)

開催時間

9時~17時(入館は16時30分まで)

所在地

山形県酒田市飯森山2-13

休館

4~11月は無休
※展示替えのため臨時休館する場合がある
12~3月は毎週月曜日
※月曜祝日の場合は、翌火曜日が休館

飯塚直

(いいづか なお)パソコン誌&カメラ誌を中心に編集・執筆活動を行なうフリーランスエディター。DTP誌出身ということもあり、商業用途で使われる大判プリンタから家庭用のインクジェット複合機までの幅広いプリンタ群、スキャナ、デジタルカメラなどのイメージング機器を得意とする。