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ソニー「α9」が目指したもの、狙うもの
技術革新でプロフォトグラファーの期待に応える
2017年4月21日 16:50
ソニーは4月21日、ミラーレスカメラ「α9」を国内発表。同日にマスコミ向けの説明会を開き、開発背景や市場導入の狙いを明らかにした。
α9の詳細については、こちらの記事にまとめたのでご覧いただきたい。
被災しても続けたプロジェクト
レンズ交換式カメラ市場はここ数年縮小を続けているものの、35mmフルサイズセンサーを搭載したボディは堅調に伸びている。対応レンズもしかりだ。
ソニーの場合はα7シリーズの快進撃に合わせ、フルサイズ対応ボディが2013年から2015年にかけて大きく伸張した。35mmフルサイズ対応レンズも順調に売上を拡大しており、現在、事業の中核に位置付けられているという。
ただし2016年4月、熊本地震によりソニーのイメージセンサー工場(ソニーセミコンダクタマニュファクチャリング株式会社 熊本テクノロジーセンター)が被災した。これがデジタルカメラ業界に影響を与えたのは記憶に新しい。絶好調だったソニーの35mmフルサイズ対応ボディも、2016年の売上は横這いに転じている。
地震のため操業停止をよぎなくされていたイメージセンサー工場だが、そんな中でも中断しなかったプロジェクトがあったという。
それが今回α9で搭載されたイメージセンサー「Exmor RS」の開発だ。このイメージセンサーにかける技術者の意気込みはかなりのものだったという。
ソニーイメージングプロダクツ&ソリューションズ株式会社マーケティング部門デジタルイメージング本部の坂本裕司部門長は、Exmor RSを「イノベーションを起こす夢のイメージセンサー。技術者の夢が歴史を変える」と説明した。カメラのブレイクスルーはイメージセンサーにあった、とも。
積層型イメージセンサーと電子シャッターが変える常識
積層型構造により高度な信号処理回路とメモリーを内蔵したExmor RSは、常にイメージセンサーに光を導く構造を実現。これにローリング歪みを極限まで抑えた電子シャッターを組み合わせることで、ミラーレスカメラの弱点を解消するとともに、一眼レフカメラを超えるスペックを有するに至ったのがα9だ。
ライブビューのブラックアウトフリー
20コマ/秒の連写性能
1秒に60回のAF/AE演算
測距点693点、AFカバー率93%
無音・無振動のサイレント撮影
シャッター速度1/32,000秒
撮像エリアの93%を埋め尽くすように配置された693測距点は、被写体が測距エリアから外れる可能性をなくすことで、被写体を測距し直す無駄を省略する。
1秒あたり60回のAE演算は、被写体の明るさが突然変わっても高い追随性を維持する。
毎秒60フレームのリフレッシュレートにより、被写体の見えが途切れることなく、ブラックアウトフリーで追い続けらる。
動く被写体に強いカメラといえば、もっぱら一眼レフカメラが挙げられるだろう。光の速さで被写体を視認できる光学ファインダーや、高度なミラー制御を伴う連写機構。特に後者は、幾世代にもわたるメカの進化により実現された、ひとつの頂点である。
ソニーマーケティング株式会社プロダクツビジネス本部デジタルイメージングビジネス部の小笠原啓克統括部長は、「電子がメカの性能を追い越し、置き換えたらどうなるか。カメラが小型・高性能化し、真のデジタル時代が始まる」と述べる。
ソニーが強調する高速性能は、主に電子シャッターにおけるもので、メカシャッター時のスペックはまた異なる。電子シャッターにおけるローリング歪みが少ないα9では、撮影におけるメカシャッターの利用率は下がると思われる。が、一応メカシャッターのみで撮影するモードも用意されている。通常はメカシャッター、高速シャッターが求められるときにのみ電子シャッターが作動するオートモードも利用できる。
プロの求めるものを技術で実現する
動きものに強いα9が狙うのは、スポーツ報道などのプロ市場だ。同時に発表されたFE100-400mm F4.5-5.6 GM OSSもその一翼を担う。
α7シリーズは世界のプロフォトグラファーから高い評価を得ているという。説明会では、ソニーに切り替えた多くのプロフォトグラファーの例や、コメントが披露された。
全国のソニーストアにプロサポートの拠点を設けるなど、ソニーは国内でもプロフォトグラファーへのケアを進めている。キヤノンとニコンが大勢を占めるプロ市場に参入するためには、そうしたコストも度外視できない。
とはいえ、プロの評価はマーケットへ高い影響を及ぼす。また、最先端の現場の意見を吸い上げられる利点は大きい。「ソニーの使命は、技術に裏付けされたプロの仕事をサポートすること。表現を支援すること」というのは、ソニーマーケティング株式会社代表取締役社長の河野弘氏だ。
「プロからのフィードバックを受け止め、革新的な技術をもって実現する。これがソニーのカメラ造りに対する考え。期待に応え、ときには超える。αはソニーのミッションを体現する一番の製品」(河野氏)。