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Sennheiserが映像クリエイター向け1chワイヤレスマイクを投入

収録ミス防止機能も搭載

送信機(左)と受信機(右)

ゼンハイザージャパン株式会社は、映像クリエイター向けワイヤレスマイクシステム「Profile Wireless 1-Channel Set」を7月24日(木)に発売する。オープンプライスで、店頭予想価格は3万5,200円前後の見込み。

2.4GHz帯を使用するワイヤレスマイク。送信機と受信機が1台ずつの1チャンネルセットとなっている。

1月に発売した2チャンネルタイプの「Profile Wireless」(実勢価格:5万5,000円前後)が好評なことから、新たに1チャンネルモデルを追加した。2チャンネルまでは必要ないユーザー向けて価格を抑えた提案とした。

2チャンネルタイプの「Profile Wireless」

特にワンオペ(ソロクリエイター)を意識したモデルで、収録ミスを防ぐ複数の機能も盛り込んだ。収録した音にノイズがあったり音がこもっていた、あるいは音量の調整が上手くいかなくて音が歪んでいたり、そもそも録音できていなかったという不安を排除できるとしており、そうした心配が無いぶん、作品づくりに集中できる価値を提供するとしている。

使用例

送信機に16GBのメモリを搭載し、32bit floatの録音が可能になっている。内蔵メモリには最長30時間の録音が可能。なお、受信機に送られる音声は32bit float非対応となる。

32bit floatは広いダイナミックレンジを有するフォーマットで、各社のマイクや音声レコーダーで採用が進んでいる。本機は2つのA/Dコンバータを併用することで、音量調節不要で音割れを防いだ録音が可能となっている。

メモリ容量を抑えるために従来の24bit収録も可能。このとき、6dB低い音声がステレオの方チャンネルに出力されるため音割れ対策になる。さらに、ワイヤレス伝送が不安定な際に自動でマイク本体での録音を開始する機能も備えている。

送信機の概要
送信機
送信機のマイク部分。左はオプションのラベリアマイク用の端子。ネジ止め可能となっている
送信機の充電はUSB Type-Cで行える
送信機のボタンは誤動作防止のため凹んだ位置にある
送信機にはクリップと三脚用のネジ穴がある
送信機は三脚に付けて据え置きマイクのように使うこともできる
同梱の風防を装着したところ
受信機の概要
受信機
受信機は出力端子のほかヘッドホン端子も装備
受信機のディスプレイ部分
受信機はホットシューや三脚にも取り付けられる
付属のアダプタでスマホにも直接装着可能

音質については、「クリアで立体的。ノイズが非常に少なく、広い周波数特性があるので作品の温度や空気感まで音で表現したい方に合っている音質」(同社)。周波数特性は、Sennheiserを代表するマイクの1つであるショットガンマイク「MKH 416」に似た特性になっているとのこと。

ノイズの少なさもポイントとしている
周波数特性
MKH 416。放送局などで定番となっているマイクで、発売50周年を迎えた

使用する際は専用アプリは不要で、電源を入れるだけですぐ使える。受信機はタッチスクリーンで操作できる。受信機の出力はUSB Type-Cのデジタル方式とアナログの3.5mmジャックとなっている。受信機のディスプレイでは、送信機のバッテリー状態も確認できる。

付属の受信機は2チャンネル仕様となっているため、送信機単体を購入すると2チャンネル同時受信が可能となる。また、Profile Wirelessに付属していた充電バーなどすべてのコンポーネントは単品で購入可能。将来的にProfile Wirelessと同様に運用することも可能となっている。

1回の充電で最大7時間使用できる。音声周波数特性は60-20,000Hz。低域が110Hzになるローカットフィルターも備える。システムの遅延は8ms以下。重量は送信機が27g、受信機が30gと軽量だ。

パッケージ内容
同梱のケース
ガンマイクを送信機に付けるといった使い方も

SEIKIN担当ディレクター「最初から音ができあがっている」

都内で行われた発表会には、ゲストとしてUUUMでディレクターを務める髙木涼平氏が招かれた。

髙木涼平氏(左)

髙木氏は音楽専門学校を出ており、自身もバンド活動をするるなど音にはこだわりがあるとのこと。制作に使っているデスクを披露してくれたが、高価な音響機材を用いるなどサウンドへのこだわりが見て取れる。

髙木氏のデスク。Sennheiserのヘッドホンやノイマンのマイクも使われている

テレビでYouTubeを視聴する人が増えている現状から、髙木氏は「やはり聞きやすい音質が重要になっているのではないでしょうか。コンテンツの長尺化もあり、長く見てもストレスを感じないような音を目指しています。ピンマイクを導入してしっかり声を収録したり、後処理なども工夫しています」と話した。

米国市場の調査だが、テレビでストリーミングコンテンツを見る人が増えている

髙木氏がProfile Wirelessを知ったのはInterBEE 2024のゼンハイザーブースを訪れたのがきっかけ。「遂にSennheiserが出してきたのか、とテンションが上がりました」と振り返った。

髙木氏はSEIKIN氏の動画制作に携わっており、実際の収録でもProfile Wirelessを使用しているとのこと。最近の事例として、6月5日(木)に公開されたSEIKIN氏によるNintendo Switch 2の開封動画を紹介した。

話題のアイテムなのでその日のうちに動画をアップしたいが、SEIKIN氏自身も音にはかなりこだわりがあるそうで、スピードと音質の両立が課題だったという。髙木氏によると、Profile Wirelessは他のワイヤレスマイクに比べて「最初から音ができあがっている」そうで、後処理が少しの調整で済むそう。「かなり編集しやすかったというのが印象です」(髙木氏)。

今回のような40分ほどの動画の場合、ほかのワイヤレスマイクでは音声調整に20分ほどかかっていたそうだが、Profile Wirelessだと5分くらいの調整でOKになったとのこと。

髙木氏は音質以外にも、三脚用のネジ穴がある点や誤操作防止の凹んだスイッチなどに触れ、ユーザーのことを考えたデザインだと評価した。

ピンマイクというジャンルに関しては、ガンマイクだと指向性から外れた場合にうまく録れない問題があるが、ピンマイクだと演者が動いても声をしっかり録れる点でお勧めとのこと。使い方のコツとして、対談などでは顔が向く方の襟元にマイクを取り付けるなど工夫すると良いそうだ。

Sennheiserとは? 創立80年の名門

Sennheiserは、プロからコンシューマーまで広く音響機器を手がけているドイツの企業。2025年に80周年を迎えた。マイクではライブステージ用のワイヤレスタイプや放送用のショットガンマイクなどで知られる。一方、ヘッドホンやイヤホンもプロ用から音楽愛好家向けまで広いラインナップをもっている。

今回のProfile Wirelessシリーズも、プロ用音響機器を開発してきた歴史の中で培われた技術を落とし込んでいるとのことだ。

会場ではスマホの内蔵マイクと聞き比べるデモもあった。Profile Wirelessシリーズの方がかなり明瞭に聞こえた

会社の始まりは、フリッツ・ゼンハイザー氏がSennheiserの前身となる会社をドイツのハノーバーでスタートした1945年に遡る。その後シーメンスへのマイクや測定機器の供給などを経て、1958年に社名を「ゼンハイザーエレクトロニック」に変更。その2年後には”クジラ”の愛称で有名なダイナミックマイク「MD 421」をリリースしている。

MD 421は1960年の発売。今日まで楽器やボーカル、アナウンスなどの収録に活用さているそうだ

その後2代目となるイェルク・ゼンハイザー氏が経営を引き継ぎ、世界展開を広げる足がかりとして同社を代表するヘッドホン「HD 25」を1988年に発売。HD 25も現在まで続くロングセラー品となった。優れた遮音性や音質で、DJやサウンドエンジニアからの人気が高い。

HD 25。コンコルドの機内用ヘッドホンにも選ばれたそうで、その遮音性の高さが伺える

1991年には、当時650万円といわれた弩級のヘッドホンシステム「Orpheus」を発表。2000年代は没入感を意識したイマーシブオーディオにも力を入れているほか、車載オーディオなども展開している。

現在の経営は、3代目となるダニエル・ゼンハイザー氏とアンドレアス・ゼンハイザー氏の兄弟が共同CEOという形で行っている。開発投資を重視していて、2024年の売上高に占める研究開発費は10%という。製造業としては比較的高い数字といえる。

80周年ロゴも展示されていた。SennheiserのDNAであるプレシジョン、クリエイティビティ、トゥルーサウンドを視覚的に表現したものだ

1981年生まれ。2006年からインプレスのニュースサイト「デジカメ Watch」の編集者として、カメラ・写真業界の取材や機材レビューの執筆などを行う。2018年からフリー。