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グランドセイコーの腕時計が、森山大道・荒木経惟とコラボ

写真作品を時計ストラップにデザイン

セイコーは、グランドセイコーの新作腕時計「Black Ceramics Limited Collection」のプレスイベントを5月27日にIMA CONCEPT STORE(東京・六本木)で開催した。写真家とのアートプロジェクト「Grand Seiko Avant-garde」に取り組んだコレクション。

同プロジェクトは、3月にスイス・バーゼルで行われた世界最大級の時計・宝飾見本市にて発表。海外アートシーンでも注目されているという森山大道さん、荒木経惟さんとのコラボレーションを行った。写真作品を短冊状に解体して腕時計のストラップに仕立てることで、手首に巻くと完成するアートピースになっている。

写真をストラップに仕立てた。すべて1点もので非売品
展示品には作家本人のサインが入っていた

森山大道さんは女性の網タイツ(「下高井戸のタイツ」)と振り返りざまの犬(「三沢の犬」)の2点、荒木経惟さんは「花曲」(1997年)からの2点を同プロジェクトに提供した。

森山大道さん「下高井戸のタイツ」
森山大道さん「三沢の犬」
荒木経惟さんの作品は「花曲」からの2点

実際に市販されるBlack Ceramics Limited Collectionには一般的なクロコダイルバンドが付属するが、アートピースの長いストラップを一般的な長さに仕立て直したものを用意し、Black Ceramics Limited Collection購入者に抽選で進呈するキャンペーンを行う。

Black Ceramics Limited Collectionの購入者に抽選で当たるストラップ

セラミックスとチタンのハイブリッド外装。心臓部は独自のスプリングドライブ

アートプロジェクトのベースとなったBlack Ceramics Limited Collectionは、2タイプ・4モデルをラインナップ。それぞれ世界限定500〜600本の限定生産品で、全国のグランドセイコーマスターショップで取り扱う。6月10日に「スプリングドライブ クロノグラフGMT」(税別140万円)の2モデル、7月8日に「スプリングドライブGMT」(税別115万円)の2モデルをそれぞれ発売する。各タイプにおけるモデルごとの違いは、文字盤の仕上げやGMT針の色。

スプリングドライブ クロノグラフGMT
スプリングドライブGMT

同モデルの特徴は、軽くて傷に強いセラミックスを同社で初めてケース前面に採用した点。本体はチタン製のインナーケースに、セラミックスの左右ケースと正面ベゼルリングの3ピースを取り付けた構造となっている。ケース外径は46.4mmで、40mm前後が多く見られるグランドセイコーの中ではスポーティで押し出し感のあるサイズといえる。

Black Ceramics Limited Collectionのムーブメント(時計の心臓部)は、いずれもセイコーを代表する技術「スプリングドライブ」を採用している。機械式とクオーツ式のハイブリッドといえる仕組みで、自動巻きの原理でゼンマイを巻き上げ、そのほどける力で発電した電力でクオーツとICを動かし、針の動きを制御する。1日に数秒〜数十秒のズレが起こる機械式時計に対し、月に±10〜15秒程度という高精度を実現しているのがメリット。秒針がステップなく滑らかに回転するのも、視覚的な特徴になっている。

展示品のストラップには作家名が記されていた。インナーケースと左右2ピースのケース構造も見える。背面はシースルーで、ムーブメントの動きや仕上げを眺めて楽しめる。

時計、写真、カメラが話題のトークも

会場では、評論家の山田五郎さんと、ファッションエディターの祐真朋樹さんによるトークイベントが行われた。ナビゲーターはIMA編集部エディトリアルディレクターの太田睦子さん。

左から、祐真朋樹さん、山田五郎さん

山田さんは、海外時計ブランドがアートとコラボレーションする例は多くあっても、セイコーほどの大規模メーカーがこうした取り組みをするのは凄い、と評価。グランドセイコーの印象として、「もともと実用の頂点だったが、今回のセラミックスのモデルで高級時計の仲間入りをした」と語る。

写真家とグランドセイコーの橋渡しをしたIMA編集部の太田さんは、今回のプロジェクトで2人の写真家に「作品が解体されることを楽しんでもらえた」と振り返る。アートピースとして、両者のファンにも納得してもらえる仕上がりを目指したのもポイントだと紹介した。

話題は腕時計と写真を通じて、「メカニカル」の共通項を持つカメラにも及んだ。山田さんは「腕時計とカメラの二つを集めている人は多い」とし、時計愛好家が口にする「持ち重り感」といった表現が、カメラの「シャッターの押し感」などにも通じ、人はそうした感覚を求めているのかもしれない、と分析した。ファッションの分野で写真に接する祐真さんは、「デジタル時代になって、写真に触れる時間が短くなった」と印象を語る。

また、山田さんと祐真さんは「昔の技術が新技術と並んでいるのは時計ぐらい」と話し、1969年にセイコーが世界初のクオーツ式腕時計を発売してから低価格化とともに広く普及したことで、一時は機械式時計がなくなるとまで言われたが、それでも1990年代から機械式時計が復権してきたことを感慨深く振り返った。

祐真さんはその後も山田さんの時計レクチャーを受けるかのように、必要性・実用性だけでは説明しきれない「ミニッツリピーター」(時刻を耳で聞くための機構)や「トゥールビヨン」(かつて高精度を求めて発明された複雑機構)といった、アートのような複雑時計機構の原理解説に、来場者とともに聞き入っていた。