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ライカの白黒フィルム「ライカMONOPAN 50」とドイツ本社の「暗室」を見てきた
2025年7月13日 12:00
既報の通り、「ライカI」誕生100周年を記念したイベントがドイツ・ウェッツラーのライツパークで開催。カメラの話題と写真文化に関する取り組みについて、先の記事でお伝えした。本稿では、取材中に偶然見かけたライカのモノクロフィルム「MONOPAN 50」と、ライツパーク内に新しく作られた暗室の様子をお伝えする。
ライカのフィルム「ライカMONOPAN 50」外観レポート
取材の合間に本社内を歩いていたところ、話題のモノクロフィルム「ライカMONOPAN 50」に遭遇。8月の発売予定(日本での価格は未定)に先駆けて、現物から判明したことをお伝えする。正式に販売されるものとは異なる部分もあるかもしれないが、参考になれば幸いだ。
「ライカMONOPAN 50」はISO 50の超微粒子フィルムで、780nmまでの感度を持つスーパーパンクロマチック。この感度の低さと解像度の高さから、F0.95やF1.4といった最新のライカレンズを使い、絞りを開けつつ高解像な描写を楽しめるフィルムと位置付ける。
D-76やロジナールのような現像液は非推奨のようで、ライカが公開しているデータシートを見ると、アドックスATOMAL、イルフォードDD-X、コダックXTolなどを用いた場合の使い方が記載されている。
外箱のデザインは4種類あるものの、品番としては共通の「14717」が与えられているため、希望するデザインのパッケージを購入できる仕組みになるかどうかは不明。なお、手にしたフィルムの使用期限は2027年6月となっていた。
今回のイベントには多くの写真家やライカユーザーが参加しており、フィルムカメラをメインに使う人も多い。そのため、ここでサンプルフィルムを提供し、何らかのフィードバックを得たいのかもしれない。フィルムを持ち帰った各国の写真家がテストして、これから少しずつ作例が公開されてくることだろう。
歴史を遡ると、いわゆるパトローネに入った写真用の35mmフィルムは“ライカ用フィルム”として当初発売されたが、ライカのブランドでフィルムが発売されるのは初のこと。安さで選ばれるフィルム銘柄になることはないと思うけれど、ライカユーザー以外でも単純にこの可愛らしいパッケージを楽しんだり、フィルム文化に話題を提供し続けるライカに対する「いいね!」の表明のような感覚で使ってみるのもアリではないだろうか。
「ライカMONOPAN 50」はISO 50の超微粒子モノクロフィルムだが、もしかしたら今後、ISO 400ぐらいの高感度モノクロフィルムや、カラーネガフィルムが登場することもあるかもしれない。とはいえ、まだ第一弾の製品すら発売前の段階だ。楽しみに待ちたい。
ライカ本社の暗室に潜入
ライツパークで取材中、日本から一緒に訪れた写真家のジョン・サイパル氏からDMが届いた。「We are in the darkroom now!」(暗室にいるよ!)。
というわけで、公式な取材スケジュールにはなかったが、面白そうなので勝手に彼を訪ねてみることにした。「ライカMONOPAN 50」の発表時にライカロゴが掲げられた暗室の写真も公開されたことで、一部で話題になっていた場所だ。
引き伸ばし機は、新旧のフォコマートが4台。いずれもランプはLED化されており、専用のコントローラーで操作する仕組みだという。
聞けば、こうして暗室を作るのは、特にドイツにおいては容易でないという。薬品を扱うとなれば、何らかのガスが発生した場合を想定した吸引装置、薬品が目に入った時のための洗眼器の設置など、法律で定められた条件がたくさんあるとのこと。
古くから銀塩写真に馴染みのある人からすれば「何もそこまで対策しなくても大丈夫だろう」と思うかもしれないが、今の時代に企業としてやっていることだから厳格だ。そして何よりフィルム写真への本気度も伺えるというもの。「ライカMONOPAN 50」の発売をきっかけにフィルムが盛り上がり、この先も長く、そして少しでも気軽に(再び)フィルム写真を楽しめる状況になればと願う。