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オリエント「レトロフューチャーカメラ」シリーズ

機械式カメラのモチーフを散りばめた機械式時計

4月23日から発売されるオリエントの腕時計「レトロフューチャーカメラ」シリーズ。発表時のニュース記事が人気だったため、サンプル品を借りて外観をチェックしてみた。3種類の通常カラーと1種類の限定カラーがあり、いずれも希望小売価格は税別5万8,000円。

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RN-AR0204G(限定カラー)

この腕時計は、レンズの絞り羽根をデザインした文字盤や、フィルム巻き上げノブをイメージしたリュウズなど、機械式カメラらしいモチーフを散りばめているのが特徴。2005年にオリエントスターのブランドで発売された同名のシリーズを、オリエントのリバイバルシリーズとして復活した。

メーカーの発表では「1950年代のレンジファインダー式カメラのディテールを随所に盛り込んだ」としており、実際に当時のカメラを持ち出して見比べてみた。

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巻き上げノブをイメージしたというリュウズ。一般的には平目ローレットをよく見るが、あえて綾目ローレットとしているところが狙いだろう。
参考:1950年代のレンジファインダー式カメラの巻き上げノブ
参考:1950年代のレンジファインダー式カメラ用レンズの絞り羽根。昔のレンズは羽根の枚数が多く、骨の本数が多い高級な傘のようだ。

この時計がイメージしている1950年代といえば、カメラの外装はそれまでのブラックペイント+黄色っぽいニッケルメッキに代わり、より強度が高く白っぽいクロームメッキが普及している。というわけで、ステンレス素材そのままの色のモデルはクロームメッキのカメラがよく似合う(※個人の印象です)。

ケース側面。スポーティな雰囲気の厚さがある。このモデルには金属ブレスが装着されているが、自己責任で取り替えるのも楽しいだろう。
標準の金属ブレスは3連タイプ。
バックル部分。
ファインダーをイメージしたという、背面の窓。

盛り上がってきたので、ニッケルメッキ時代のカメラも引っ張りだし、ブロンズ色メッキのモデルと合わせてみた。以降の3色は、それぞれのカラーに合わせた引き通しタイプの革ベルトが装着されている。

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回転ベゼルの造形に、クラシックな沈胴式レンズの雰囲気を見た。
手首がかなり細いのでサイズの参考になるかは怪しいが、適度な持ち重り感が「腕時計をしてるぞ!」という気持ちにさせる。

カメラで黒+緑というと、筆者は軍用のコダック35かシグネット35ぐらいしか思い当たらないが、単純に色味として美しい。緑の文字盤は、主流でこそないものの、定番的に存在する。

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色、質感ともに雰囲気が落ち着いている。
ふと光が入った時に、金属製品のロマンを味わえる。

グレーとブロンズの2モデルでは、蓄光塗料の色味が黄色がかっているのも見どころ。放射性物質を含む昔ながらの夜光塗料が、経年によるヤケを起こした風合いを再現したものだろう(現在の安全な夜光塗料は、経年でもヤケない)。こうしたディテールの積み重ねが、全体の雰囲気作りに一役買っている。

勝手にアレコレと語ってしまったが、かように見立ての楽しさが詰まった腕時計だ。今回発見できなかったディテールもあるだろうし、違ったカメラを連想する人もいるだろう。筆者の解釈も、オリエントのデザイナーからしたら「全然違うよ!」という部分もあるかもしれない。しかし、こうしたアイテムは各自の想像による解釈を楽しんでこそだと信じて紹介してみた。

ゴージャスルックの限定モデル

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オリエント70周年を記念して、限定2,300本(国内1,000本/海外1,300本)のみ生産されるカラー。価格は他の3本と同じだが、発売時期がこの限定モデルのみ6月となる。

独特な文字盤の仕上げは、エレキギターのサンバースト塗装のようでもあり、ブラックペイントが擦れて真鍮の地が出てきているような雰囲気にも見える。とにかく美しい。この明るい雰囲気には、白いままの夜光塗料が合っていると思う。

質感を身につける楽しさ

筆者は腕時計について素人も素人だが、腕時計の楽しみのひとつに「質感」を手元に置くという部分があると思う。現在のデジタル製品のほうが多機能・高精度であっても、当時なりの最善を尽くして作られた製品には、時を経ても変わらない魅力が宿る。それはまさに、機械式カメラの巻き上げやヘリコイドの操作フィーリングと同じだろう。

文字盤から中身の機械が覗いている部分などは、クォーツや電波時計が当たり前の今にあって「機械式の腕時計である」という魅力を強調している。比較的手頃な価格と相まって、多くの人がその特別感を楽しめるようにパッケージングされた印象を受ける。

内部機構の動作が見える部分。周辺部分にも穴があり、奥行き感が与えられている。

カメラと腕時計は、クルマや楽器と並んで男子がハマりやすい対象として有名だ。腕時計の美意識でカメラを眺めてみるというのもオツなものだろう。とかく趣味の世界は目の肥えた固定ファン層と共に先細っていきがちなので、こうして「カメラ」という共通点で気軽にエントリーできる本格腕時計が登場することは、カメラ業界、時計業界の双方にとり明るいニュースなのではないだろうか。

本誌:鈴木誠