Canon EOS R5 “REAL FOCUS”

顔・瞳認識は?AF測距エリアは?バッテリーは?…スポーツ写真家・奥井隆史さんに「EOS R5」のあれこれを聞く

画質の向上により、今まで以上にきれいな線を表現できるようになった。今まで使っていた「EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM」も素晴らしいレンズだったが、解像力がさらに高まり、望遠側が500mmになったメリットは非常に大きい。(撮影・キャプション:奥井隆史)
EOS R5 / RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM / 400mm / マニュアル露出(F7.1・1/1,600秒) / ISO 100 / WB:オート

キヤノンが長い期間で培ってきたカメラづくりのノウハウ。それが盛り込まれたフルサイズミラーレスカメラが「EOS R5」です。動く被写体への対応も強化され、いよいよ一眼レフカメラからの乗り換えを検討している読者も多いのではないでしょうか。

この記事ではスポーツ写真家の奥井隆史さんに、「EOS R5」を実戦投入した印象をお聞きしました。人気の交換レンズ「RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM」についてもインプレッションを語っていただいています。インタビューをまとめた動画も用意しましたので、「EOS R5」に興味のある方はぜひご覧ください。

奥井隆史

撮影:加藤丈博

1968年東京都生まれ。1992年日本写真芸術専門学校卒業後、スポーツフォトエージェンシー「フォート・キシモト」に在籍1996年よりフリーランス陸上競技を中心にアウトドアスポーツやスポーツフィッシングを含め様々なスポーツを撮影。AJPS(日本スポーツプレス協会)、AIPS(国際スポーツプレス協会)会員。

EOS R5 + RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM 撮影:加藤丈博

スポーツ競技の撮影について

——奥井さんはどんな競技を撮影されているのですか?

陸上競技がほとんどですね。体操や陸上、水泳など、いわゆる「オリンピック競技」と呼ばれるものの撮影が多いです。

——写真を始めたきっかけはどんなことでしたか?

父親が購入したキヤノンのフィルム一眼レフカメラ「FX」が家にあったのです。それを触っているうちに写真に興味を持つようになりました。はじめはいろいろなものを撮っていましたが、撮っているうちに「人間を撮るのが面白いな」と感じるようになり、その中でもスポーツの撮影にハマっていきました。

仕事ではフィルムカメラの頃からEOS-1桁系を使っていました。デジタルになってからもEOS-1D系を愛用しています。

「EOS R5」を使う前は「EOS R」も現場に持参していましたね。その頃は胴上げや表彰式などのスナップや動画で使用していました。「EOS R5」からは「スポーツでもいけるな」という手応えがありました。

勝者だけを撮影しても状況は伝わらない。従来は測距点を瞬時に撮りたい選手とフレーミングに合わせて動かしていたが、顔+追尾優先AFならフレーミングと瞬間に集中できる。(撮影・キャプション:奥井隆史)
EOS R5 / RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM / 254mm / マニュアル露出(F5.6・1/500秒) / ISO 8000 / WB:オート

——現在のミラーレスカメラと一眼レフカメラの使用比率を教えてください。

ほぼ9割は「EOS R5」を使っています。

——奥井さんがカメラボディで重要視することは何ですか?

AFの速さと精度、そして操作性です。堅牢性も重要ですが、使用者がケアすることである程度カバーできます。そこで、何より欲しいのがAFと操作性の良さになります。スポーツを撮影する現場では、瞬時に判断し、操作する必要があります。ですから、小さいボディではやりにくいこともあるんですね。小さすぎると持ちにくかったり、バランスが悪くなることもありますから。ミラーレスカメラとはいえ、小さければいいということではないと思っています。その点「EOS R5」はダイヤルの位置など、一眼レフのEOSを使っている人なら感覚的に移行できると思います。

——やはり望遠レンズを使うことが多いのでしょうか?

「EF400mm F2.8L IS III USM」がメインです。いままではこれに「EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM」をつけたボディを1台使っていました。いまは「EOS R5」に「RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM」ですね。

スポーツ撮影の場合、選手の邪魔にならないよう、自由にどこにでも移動できるわけではありません。きちんと位置取りできた場合には単焦点レンズ、そういったことが無理な場合にはズームレンズで撮影することが多くなります。ですから、焦点距離は重なりますが、両方持っているんですね。

外観・サイズについて

——コンパクトな「EOS R5」をお使いになられて、いままで使っていた「EOS-1D X Mark III」から違和感を覚えませんでした?

コンパクトとは言っても、小さすぎないのでそこがいいですね。「EOS R5」は小さすぎず、EOS-1D X系と変わりない操作感で使いやすいです。ダイヤルの位置なども似ているので、EOSを使っている人なら感覚的に移行できると思います。

グリップもとても握りやすいし、違和感はないですね。「バッテリーグリップBG-R10」をつけた方がしっくりくるのですが、このままでも十分に使えると思います。

画質について

——約4,500万画素の有効画素数についてはいかがですか?

実際そこまでの画素数が必要ではないことがほとんどなのですが、クロップでも約1,700万画素あるのは有利だと思いますね。どうしても近づけないときなど、あらかじめクロップして撮影することも多いです。反対に大きなスタジアムでお客さんが満席の観客席があり、そこを背景に選手が喜んでいるシーンなどを引きで撮る場合は、高画素であるほど細部までしっかりと写ります。

——奥井さんはJPEGではなくRAWで撮られるとのことですが……

僕はすべてC-RAWで撮影しています。「EOS R5」のRAWは1カット約50MBとすごいデータ量ですが、C-RAWならデータの大きさを40%程度圧縮できますし、クオリティはRAWもC-RAWも僕が扱う範囲では大きな差は感じていません。JPEGよりも自由度は高いですし。

AFについて

——「EOS R5」のAFについて教えてください。

領域拡大AFと併せて顔・瞳認識をシーンに応じて使い分けています。被写体の大きさにもよりますが、顔・瞳認識はかなり使えるという印象ですね。これまでとは違う写真が撮れると思います。

——スポーツの撮影でも瞳にAFがあっていることが重要なのでしょうか。

例えばリレーでバトンを渡すなどの場合でなければ、選手その人が表れる瞳にピントを合わせたいのです。動いている場合でも「EOS R5」の顔・瞳認識はすごい精度です。「EOS-1D X Mark III」のライブビューでもかなり良かったので、次はいける……と思っていたのですが、思っていた以上です。

僕はスポーツを通して人を撮りたいと考えている。「動き」「瞬間」「形」など人間性はさまざまな場面で現れるが、一番表れるのは「瞳」だろう。その瞳を追い続けてくれるAFが心強い。(撮影・キャプション:奥井隆史)
EOS R5 / RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM / 254mm / マニュアル露出(F7.1・1/2,000秒) / ISO 1600 / WB:オート

——ではこれまでなかった「頭部認識」はいかがでしょうか。

選手がこちらに向かって走ってきくるときは顔・瞳認識、その後くるっと回って戻っていくというようなシーンでは頭部認識という具合に、被写体の向きにかかわらずずっと追いかけてくれます。これまでAFエリアを上下左右していたものが、半押しを解除しない限りずっと追尾します。

——なるほど、顔の向きを限定しないというわけですね。

今まで自力でやっていたものをカメラがやってくれ、使い方さえ覚えてしまえばロックしてずっとついていってくれる。フレーミングするとき中央にAFエリアを合わせて半押し、そのまま解除せずに中央で被写体を捉えたままカメラを振ってしまえば、ピントは追い続けたままで被写体を端に配置することもできます。最初は信頼して良いものか不安もありましたが、これに慣れると、被写体の大きさがある程度あればまずピントが抜けることはありません。使い方のコツさえ覚えてしまえば、すごく便利ですね。

中央でピントを合わせて撮っていた被写体のところに、別の人が急にフレームインする。こういう場合でも中央の人にピントを残したまま、次に来た人も含めてフレーミングができます。AFエリアを左右に動かすよりも、一旦追尾を解除して、あらためてピントを捕まえ直す方が速いほどです。本当に自由自在ですね。画作りが変わると思います。

混戦状態からゴールまで顔・瞳認識で捉える
顔・瞳認識によって注目した選手を捉え続けることが可能。ゴール前で2位の選手との位置関係を伝える構図に変更してもしっかり追従してくれる点が頼もしい。(撮影・キャプション:奥井隆史)
EOS R5 / RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM / マニュアル露出(F7.1・1/1,250秒) / ISO 1250 / WB:オート

——一眼レフカメラの頃とは違う考え方が必要かもしれません。作画の自由度は高まりました?

そうですね。いままではAFのエリアを動かしている間に撮りたかったシーンが終わることもありましたが、「EOS R5」になってからかなり思うように撮れるようになりました。

例えば槍投げの撮影の場合などは、選手を下に、槍を上に配置したい。これまでは置きピンで選手にピントを合わせながら、最後の瞬間だけ槍をフレームに入れるためカメラを上に向けたりしていたのですが……予想してもそこにくるとは限らないので、選手の動きのクセをわかっている選手なら撮れるけれど、少しずれてしまうこともありました。でも、「EOS R5」では自由自在に構図が作れるようになりました。

(撮影:奥井隆史)
EOS R5 / RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM / 324mm / マニュアル露出(F8・1/2,000秒) / ISO 800 / WB:オート

——AF測距エリアも一眼レフカメラから広がっています。ほぼ端まで測距できるようになりましたが、奥井さんとしてはどう評価されていますか?

僕は選手を端に置くなど、極端なフレーミングをすることが多いですから、端から端まで使えるAF測距エリアには、とにかく満足しています。

足がきれいに跳ね上がっている瞬間は美しいが、複数人の足をそろえるのは難しい。約20コマ/秒の連写(電子シャッター)ならそんな瞬間も捉えられる。画面全域の測距エリアで構図も自由自在だ。(撮影・キャプション:奥井隆史)
EOS R5 / RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM / 254mm / マニュアル露出(F16・1/2,000秒) / ISO 640 / WB:オート

走ったり、投げたり、飛んだり、打ったり、そういうところは撮って当たり前で、それプラスアルファがないと面白くないと思うんです。それが僕が目指しているもの。みんなが撮っているものにプラスアルファ撮りたい。それに応えてくれるカメラだと思います。

——低照度下でのAF性能も強化されています。

以前に比べて非常によくなったと思います。競技場によっては照明が暗かったり、真ん中と周囲で明るさの差が激しい場所があります。特に選手の後ろ姿を撮る際には、暗いところが多いんです。また、日中くらいの明るいスタジアムもあり、そういう場合は陰が真っ暗になってしまいます。選手たちが明るいところから暗いところに移動していくような場合でも、ピントを追い続けることが可能です。

操作性について

——操作性で良くなったと感じられるところはありますか?

EOS-1D系のデフォルトでは、サブ電子ダイヤル(ボディ背面の大きなダイヤル。EOS R5でいうところのサブ電子ダイヤル1)で絞りを変えます。ただしこれだと撮っていないときにサブ電子ダイヤルが動いてしまい、絞りが変わってしまうことがありました。そのため、僕はボタンを押しながら回して絞りを変える設定にしています。

「EOS R」「EOS R5」にはボディ背面のサブ電子ダイヤル1に加えて、ボディ上面手前側に「サブ電子ダイヤル2」が加えられています。ここに絞りを割り当て、人差し指で操作する前方のメイン電子ダイヤルにはシャッタースピードを割り当てています。サブ電子ダイヤル2は勝手に回ることがなく、ボタンを押しながらの操作が必要なくなりました。

「EOS R5」の上面。右側のサブ電子ダイヤル2は「EOS-1D X Mark III」など一眼レフカメラのEOSにはない。

——バリアングル液晶モニターを動かして使うことはありますか?

動画でも静止画でも使います。ちょっと下から撮りたいシーンに遭遇した場合、地面に寝転がるよりもバリアングル液晶モニターを使ってフレーミングを決め、タッチでピント位置を合わせてシャッターを押せばすばやく撮影できます。とっさのときに、かなり対応できますね。

また、胴上げで監督や選手が宙にいるシーンなどでは、バリアングル液晶モニターを使うとピントも構図も楽に決められます。

シャッターについて

——シャッターフィーリングやシャッターボタンの位置はいかがですか?

すごくいいと思いますね。シャッター音もいいし、「これぞEOS」という感じですごく撮りやすいくて不満はありません。

——約20コマ/秒の電子シャッターは使用されていますか?

使っています。秒間20コマがどうしても必要ということはなく、僕にとってはそれよりもファインダー内で像がずっと見えていることが重要になります。

ミラーレスカメラはメカシャッターも含めてシャッター音が小さいため、最近は一眼レフカメラのシャッター音がとても気になるようになりました。例えば100m走のスタートシーンで静まりかえっているようなときです。大きな大会の選手は「スタート前は集中しているのでシャッター音は聞こえない」と言うのですが、高校生の大会だと申し訳ない気がします。また、フィギュアスケートのように、チケットを買って見にきている人たちに対してもシャッター音で邪魔をしたくないですからね。

連写について

——撮影時の連写設定について教えてください。

基本的にはいちばん速い設定にしています。メカシャッターは約12コマ/秒、電子シャッターでは約20コマ/秒です。

当初「こんなにいらないなあ」と思ってましたが、最高速にして撮ってみると「意外にこういうシーンもあったんだな」という発見がありました。もちろん使用しないカットも増えてしまいますが、これまでなかなか撮れなかったシーンを捉えやすくなったと思います。

約20コマ/秒もあると、例えば陸上でスタートして、選手の腕が上がったいちばんかっこいい瞬間もラクに撮れるようになりました。一般のカメラユーザーのみなさんでも、大事なシーンを確実に捉えられる可能性が上がるのでは、と思います。

高跳びのシーンなどは高速で手前に飛び込んで来るので、ゼッケンなどにAFが引っ張られがちだが、顔+追尾優先AFと約20コマ/秒連写(電子シャッター)の併用で、その一挙手一投足と表情を逃さず捉えることができる。(撮影・キャプション:奥井隆史)
EOS R5 / RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM / 270mm / マニュアル露出(F7.1・1/2,000秒) / ISO 2500 / WB:オート

電子ビューファインダーについて

——電子ビューファインダーの見え方はいかがでしたか? 表示ラグは気になりますか?

正直、スポーツの撮影で「ミラーレスの電子ビューファインダーは厳しい」と思っていました。でも「EOS R5」はなんの問題もないくらい普通に見えます。例えば100m走のスタート直後だと、ゴール前から見て誰が一番前にいるのか、光学ファインダーより見やすいくらいです。これまで一眼レフカメラのときはカメラのファインダーから目を離して肉眼で確認していました。「EOS R5」の電子ビューファインダーは、そうした微差も見えるのです。

——流し撮りのときはどうでしょう。

流し撮りでも電子ビューファインダーは見えています。メカシャッターで真横にカメラを振ると残像が残るのですが、電子ビューファインダーのとき電子シャッターで撮ると、ほぼ見えかたにズレがありません。

——電子ビューファインダーにはホワイトバランスが反映されます。便利だったことはありますか?

日中は基本的に太陽光で撮るのですが、ナイターの明かりではとても便利ですね。ミックス光で場所ごとに色が違う場合もあります。そうなるとオートで対応できることとできないことががあるのです。ですから色を見るという意味では便利です。この場所では色が転んでいるというのを確認できますから。

バッテリーについて

——バッテリーの容量が増加していますが、電池の持ちに関してはいかがでしたか?

当初はバッテリーの持ちを心配していましたが、全然悪くないですよ。

「バッテリーグリップBG-R10」をつけてバッテリーを2本入れていますが、陸上競技の撮影で、朝10時〜17時まで、この2本で撮れてしまいます。2,000カットくらいは撮れていると思います。液晶モニター、ビューファインダーはオートです。バッテリーグリップに入っている2本、プラス2本持っていれば、不安なく撮影できます。

CFexpressについて

——メインのメモリーカードはCFexpressですか?

サンディスクのCFexpressを使用しています。メリットとして、僕らの場合、書き込み速度よりも撮影後のPCへの転送速度が大事なんです。その速度が欲しいのでCFexpressを使っています。1分1秒争う場合でなくても、撮影後の作業は早く終わりたいものです(笑)。8GBを転送するのに20分かかっていたような時代がありましたが、いまはすぐに転送されてその後の作業ができます。PCへのバックアップ中はそばについてないと不安ですし。時間の短縮はありがたいです。

デュアルスロットのもう一方にはSDカードを入れて、CFexpressのバックアップとして使用しています。

Wi-Fi機能

——Wi-Fi機能が内蔵されていますが、現場で使用されますか?

意外と使いますね。「EOS-1D X Mark III」では外付けのトランスミッターを使用したり、プレスルームでPCを経由して送信していました。でも「EOS R5」なら内蔵しているので、「とにかく早く送って欲しい」という仕事のとき、カメラとiPhoneをつなぎ、そこで調整して送ることもあります。

転送も速いですよ。もちろんJPEGの方が速いのですが、僕はRAWで撮っているので、読み込みはJPEGよりは若干遅いです。すごい急いでるときは「早くー!」と思うこともありますが、RAWでもそこそこの速さで読み込んでくれます。

「RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM」について

——「RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM」についてお聞きします。EOS Rシステムで使用できる超望遠ズームレンズですが、サイズや重量はいかがでしたか?

一眼レフカメラ用の「EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM」とほぼ同じ重量感で、400mmではなく500mmまで撮れるのはメリットですね。自由に撮影場所を選ぶことができないスポーツ撮影の場合、ズームはとても便利です。引きも寄りも撮れるので面白いですね。かなりバリエーションが撮れると思うし、すごく面白いレンズだと思います。

「RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM」。一眼レフEOSで人気の100-400mmから、さらに望遠域が100mm拡張された。

——プラス100mmで変わるものですか?

これまでは「EF400mm F2.8L IS III USM」と「EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM」の組み合わせでしたが、もう少し寄りたいというとき、500mmが使えるメリットは大きいと思います。いったん引いて撮ったシーンを、余裕があれば500mmで寄って撮っておくこともできます。100-500mmという焦点距離域はいいと思いますね。

——望遠端の開放F値がF7.1です。それについては?

確かにもっとボケ感があるならそれでもいいかなと思います。僕の場合、シャッター速度を稼ぐのが望みではなく、背景をボカしたいのです。選手がメインなので、背景がごちゃごちゃする場合は、「EF400mm F2.8L IS III USM」と使い分けるようにしています。

とはいえ、背景のボケよりもまんべんなくきちんと撮って欲しいというクライアントもいますから、「RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM」1本で身軽に動ける方がいい場合もあります。

——解像感、描写力はいかがでしたでしょうか?

ズームレンズとしてはかなり良いと思います。ボディ(EOS R5)の画もすごいですから、組み合わせるとこんなに綺麗なんだと感心しました。僕はスポーツでも逆光で撮りますし、逆光は大好きですが、逆光耐性もよくなっていると思いますね。

——手ブレ補正の効果についてはいかがでしたでしょうか?

陸上競技の撮影では基本的に手ブレ補正があっても意味がないんですね。ただ、被写体が動いていないときの暗いシーンで、1/125秒、短いレンズなら1/4秒でも撮れるほど手ブレ補正の効果はあると思います。選手が泣き崩れているシーンなど、電子シャッターで連写すれば望遠レンズでも1/60秒でブレのないカットがでてますね。

手ブレ補正ですが、陸上競技ではなくスポーツフィッシング(魚釣り)の撮影で使います。シャッター速度を遅くして川の流れを表現するのです。被写体に動かないようにしてもらう必要がありますが……1/4秒でも大丈夫なので、三脚がなくても川の流れを滑らかに表現した写真が撮れるようになりました。

まとめとこれから

——現状「EOS R5」での撮影は、スポーツ競技をどこまでカバーできるのでしょうか。

ほぼ全部いけるのではないでしょうか。「EOS R5」になってから撮影した競技は陸上のみですが、ボルダリング、スポーツクライミング、体操などで面白い画が撮れると思いますね。

体操の場合、顔・瞳認識との相性は抜群でしょう。競技者が鉄棒で回っているとき、「EOS R5」は上下にカメラを振るだけでピントをつかまえてくれます。半押しして顔を覚えさせてしまえば、ずっと追いかけてくれるのでは。自由な構図を試せますし、シャッターチャンスも広がるでしょう。

競技中の選手たちの姿を可能な限りかっこよく伝えたい。従来のEOSの操作系を融合しながら、これまでにないAFと連写機能が備わっているので、ピントはカメラ任せで、極限に挑む瞬間に集中できる。選手と競技の関係性を常に考えながら、大胆な表現に挑むことができるシステムだ。(撮影・キャプション:奥井隆史)
EOS R5 / RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM / 300mm / マニュアル露出(F9・1/2,000秒) / ISO 100 / WB:オート

——「EOS R5」で特に気に入っているところは?

AFがすごく良いです。そこが僕にとってはいちばん大事ですね。被写体をスムーズに捕捉してくれるのはもちろん、AF測距エリアがすみずみまであります。僕は人物を画面の端に配置する写真が大好きで、フレーミング次第で選手が何を考えているのか、見ている人に想像してもらいたいと思っているんです。こういう割と極端なフレーミングをするので、EOS R5のAFは最強と言ってもいいと思います。

僕は、演出の写真ではなく、競技が撮りたくて仕事をしているところがあります。スポーツモデルを使った撮影も経験はありますが、やっぱりリアルには勝てないですね。表情や、筋肉もリアルには叶うものはありません。「EOS R5」はリアルを追いかける僕の撮影に、あらゆる面から応えてくれるカメラだと思っています。

3名の写真家がEOS R5のリアルを解説!

デジタルカメラマガジン2020年11月号の企画「REAL FOCUS」では、このページに登場いただいた奥井隆史さん(スポーツ)をはじめ、村上悠太さん(鉄道)、寺島由里佳さんの3名が登場。「EOS R5」で撮影した作品とインプレッションを掲載しています。撮影ジャンルの違う3名が、それぞれの切り口で「EOS R5」を紹介するこの企画、ぜひ手にとってご覧ください。

協力:キヤノンマーケティングジャパン株式会社

松岡佳枝