オリンパスZUIKOレンズ 写真家インタビュー

四季折々の情景や文化に様々なアプローチで迫る…中条望さん

M.ZUIKO DIGITAL ED 25mm F1.2 PRO

八坂神社は昼夜を問わず常に人であふれている。雨天・夜間といった不利な条件であっても本レンズなら高いAF精度と解像力で手持ち撮影も難なくクリアできる(撮影:中条望)。
OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 25mm F1.2 PRO / 25mm(50mm相当) / 絞り優先AE(F1.8、1/125秒、±0EV) / ISO 3200 / WB:オート

オリンパスのZUIKOレンズを使う写真家に、作品表現でのポイントや使い勝手をお聞きしていく本企画。

今回は写真家の中条望さんに、写真を撮るとき気をつけていることや、撮影機材で重視していることなどを聞きました。レンズ「M.ZUIKO DIGITAL ED 25mm F1.2 PRO」で撮影された作品も紹介します。

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中条望
CHUJO NOZOMU
1984年三重県生まれ、同志社大学卒業。在学中よりアジアを中心とし難民・スラム・辺境といった状況に生きるマイノリティーに寄り添い撮影を続けている。主な写真展に「友人たちのポートレート:ASIAのMinority -難民キャンプ・スラム・辺境から-」(2016年オリンパスギャラリー東京・大阪)/「サゴッタ:11歳の女の子が過ごす難民キャンプ」(2019年オリンパスギャラリー東京・大阪)等がある。ウェブサイト:https://nozomuchujo.jp


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現在、どのような作品を撮られていますか?

海外での撮影がほとんどで、近年はバングラデシュの難民キャンプやネパールの農村部を中心に継続しての取材を行なっています。

全て人の生活に根付いた「日常」部分を中心に撮影を続けています。

今回は京都を巡られていますが、中条さんにとっての同地の魅力とは?

伝統文化と自然の融合が織りなす豊かな風景、それに尽きると思います。

京都は100万都市でありながら豊かな自然に溢れ、市中においても春は桜、夏は蛍、秋は紅葉、冬は雪と四季折々の表情を日々はっきりと感じる事ができます。

また平安京を基礎として長きにわたって培われた伝統文化は、今なお色濃く息づいています。どこに行っても私たちがイメージする「京都」に出会う事が出来ます。

京都御所は荘厳な雰囲気だけではなく、人々の憩いの場所でもある。絞り込んでの撮影のため、画面周辺までしっかりと解像。オリンパスブルーも良く映えた(撮影:中条望)。
OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 25mm F1.2 PRO / 25mm(50mm相当) / 絞り優先AE(F9、1/400秒、±0EV) / ISO LOW(64相当) / WB:オート

京都の印象を“艶やかな町”と表現されています。このあたりをもう少し詳しく教えていただけますか?

京都は四季の移り変わりを特に強く感じる事が出来る場所だと思っています。

それは京都三大祭「葵祭」「祇園祭」「時代祭」の訪れや「五山の送り火」、花街では「都をどり」また市中の「地蔵盆」など、古くから連綿と続く祭事が生活に強く関わっているからかもしれません。また日本有数の大都市で有りながらも豊富な自然があり、市中においても四季折々の花の色や木々の緑、季節ごとの日差し、目にする全てが季節の移り変わりを私たちに伝えてくれます。

いつどこを見回しても人の暮らしも季節の移り変わりも様々な表情を見せ、今なお美しい町だと思います。

「みたらし団子」は下鴨神社内の御手洗池の水泡を模して作られたと言う。合焦部の解像感はもちろん水面の質感まで、想像以上の仕上がりが得られた(撮影:中条望)。
OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 25mm F1.2 PRO / 25mm(50mm相当) / 絞り優先AE(F1.2、1/500秒、±0EV) / ISO 1600 / WB:オート

撮影時に心がけていることはありますか?

自身がシャッターを切る瞬間の「心情」を説明出来るように心掛けています。

被写体に対し何を美しく感じどのように伝えたくてシャッターを切るのか? 勿論、直感的に撮影する事も多々有りますがその際にも必ず意識するようにしています。

また運良く「撮りたい」と思えるシーンに出会った時には何時間でも何日でも粘ります。画角・日・時間帯等、考えうる全てを試し、自身が納得するまで撮影を継続しています。

古くから交通の要所である四条大橋。傘越しに覗くシルエットが印象的で思わずシャッターを切った。E-M1 Mark II ・F1.2PROレンズの組み合わせであればAF低輝度限界は-6EVである。雨天・夜間こそ好ましいシチュエーションだ(撮影:中条望)。
OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 25mm F1.2 PRO / 25mm(50mm相当) / 絞り優先AE(F1.8、1/500秒、±0EV) / ISO 3200 / WB:オート

お気に入りの撮影場所や、京都での撮影でオススメしたい場所がありましたら教えてください。

どこに行っても間違いがないのが京都の魅力ではありますが、いちばんのお気に入りは京都御所です。

オススメの場所ですと、静かに撮影できるコースと、京都らしさのある王道的なコースの2通りの考え方ができます。

[1]人ごみを避けたコースで静かに撮影を行えます。
[2]王道的なコースではありますが観光客が多く人ごみを避けられません。

私個人としては[1]なのですが、いわゆる京都のイメージであれば[2]をお勧めします。なお、京都のほとんどの神社仏閣は三脚禁止の場所が多いので、マナーを守っての撮影をお願いします。強力な手ぶれ補正のモデルを用いれば十分に手持ち撮影は可能です。

もし時間がなければ京都駅の駅ビルもオススメです。大階段から空を見上げると近代建築と空の融合とが楽しめます。

オススメ[1]

どこへ行っても観光客や外国人が多く訪れる京都では有りますが、京都御所は今でも静かに過ごす事ができる場所のひとつです。木々が生い茂り、春は桜、秋は紅葉を楽しめる自然豊かな憩いの場所です。御所周辺には近代的な高層建築がないため空が広く山なみもはっきりと見る事ができて、京都が盆地であることを改めて認識できます。

アクセス方法の個人的なオススメは寺町通り沿いに北上する行き方と、出町柳から鴨川を渡る方法の2通りがあります。前者は繁華街から市中へと変遷して行く様子、後者は山々を背に鴨川を渡り京都の地理を体で感じる事ができます。「寺町通」や「鴨川デルタ」は、いずれも印象的な京都のシーンを捉えられると思います。

オススメ[2]

桜の時期であれば「祇園白川」から「八坂神社」にかけて、桜を楽しみつつ散策をするのが一番かと思います。

ここでは穏やかに流れる白川と見事な桜、京都らしい街なみ、全てを十分以上に楽しめると思います。もちろん、円山公園の枝垂れ桜も見逃せません。合わせて「先斗町(ぽんとちょう)」を訪れるのもオススメです。

先斗町は鴨川沿いにある小路ですが、両隣には趣のある飲食店がならんでいます。南北に連なる奥行きのある通りには夜を照らす提灯が吊され、道ゆく人の中には和服を着た方を目にすることもあります。これらは全て徒歩圏内ですので、カメラを片手に散策や食事を楽しみつつ素晴らしい1枚を狙ってみてください。

先斗町、向かいの提灯がガラスに浮かび上がる。この日も人通りは絶える事なく、私の前を美しい横顔の女性が横切った。その瞬間を逃す事なく思い通りの美しいシルエットを描き出してくれた(撮影:中条望)。
OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 25mm F1.2 PRO / 25mm(50mm相当) / 絞り優先AE(F2、1/200秒、±0EV) / ISO 3200 / WB:オート

交換レンズに求める性能とは?

耐久性(防塵防滴)・軽量コンパクト・明るい、この3点です。

バングラデシュやネパールといった取材先では砂埃が酷く咳き込んでしまう環境であることも多く、雨季で道が崩落してしまい、機材を背負って山中を歩き続けるといった事がざらにあります。そのため、機材が防塵防滴に対応する性能を有している事や、軽量コンパクトである事は極めて重要です。また取材先には電気が通っていない場所も多々あり、昼間でも室内は真っ暗で夜間はロウソクに頼る、といった場面も多いんです。そうした厳しい環境での使用で、この明るいレンズには随分助けられています。

M.ZUIKO DIGITAL ED 25mm F1.2 PROの使用感や描写について、ご感想をお聞かせください。

このレンズは35mm判換算で50mm相当の標準レンズにあたりますが、F1.2の明るさを持つレンズとは思えないほどコンパクトです。

E-M1 Mark IIとの組み合わせではシステム重量が約984gとなりますが、軽さ以上にそのバランスの良さに驚きます。E-M1 Mark IIのグリップは程良い窪みがあり、中指がかかりやすい形状になっているのですが、このレンズを装着すると、構えている時も下ろした時も、指へのかかり具合が非常に自然で一切ストレスのないホールディングができます。

また描写面での特筆事項として驚異的な守備範囲の広さを挙げたいです。開放1.2から秀逸な描写を見せ、絞り込めば広角レンズの表現を、得意とする近接能力を活かせばマクロ的なアプローチをも可能とする点が魅力です。

こういった特性を活かすには被写体への様々なアプローチが必要となりますが、OM-Dとの組み合わせであればストレスなく今までに無い表現にトライできると考えています。

M.ZUIKO DIGITAL ED 25mm F1.2 PRO

“高解像度とにじむボケ”が本レンズのポイントとのことですが、表現上で特に有効だと感じるシーンはありますか?

高解像の合焦部からアウトフォーカスにかけてにじむボケ、これら主役と背景とのメリハリは見る人の視線を集中させ、描き出したい部分をより際立たせてくれます。

面白いのは、マイクロフォーサーズの利点である近接能力を活かし、「被写体を思い切って切り取ってみる」、そんなマクロ的な撮影を行う際に特に有効かと思います。

ポートレートであれば思い切って美しい瞳やまつ毛を、植物であれば鮮やかな花弁や新芽などを、このレンズの特性を理解してマクロ的な近接撮影を行えば、想像以上に主役となる被写体を際立たせる事が可能です。

もし広角的な撮影を行うのであれば「前ボケ」を活かして撮影すると面白い画が撮れると思います。滑らかに描写されるボケ部分は、前面部から主役を際立たせるような、奥行きを持った表現を可能にします。

標準画角50mm相当で、かつF1.2の明るさのレンズというだけでも「どんな状況下においても撮影できる安心感」がありますが、もう一歩踏み込める高い付加価値をもつレンズであることを強調したいです。

下鴨神社の境内には水御籤(みずみくじ)をはじめ、さまざまなおみくじがある。前ボケと後ろボケとの対比にメリハリがあり、ピントの合焦部が立体的に浮かび上がる(撮影:中条望)。
OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 25mm F1.2 PRO / 25mm(50mm相当) / 絞り優先AE(F2、1/2,500秒、±0EV) / ISO 640 / WB:オート

オリンパスのカメラで気に入っている機能は?

F1.2PROレンズとの組み合わせに魅力を感じています。

主にOM-D E-M1 Mark IIとM.ZUIKO DIGITAL ED 25mm F1.2 PRO(たまにM.ZUIKO DIGITAL ED 17mm F1.2 PRO)の組み合わせで、クッション素材の布に機材を包んで鞄に入れて持ち運んでいます。本システム導入以降、明らかに撮影の頻度が増えました。

「今日は何を撮りにいこうかな?」

初めてカメラを持った時のような、わくわく感がこのシステムにはあります。

それは、暗所でも正確なAF性能・驚異的な高解像・雨天でも持ち出せる防塵防滴性能を持つPROレンズとの組み合わせであれば「天候・時間帯」を気にせずに撮影を行えるからです。次は何を試してみようか、そんな風に撮り手のスタイルを一新させる革新的なシステムに、私は魅力を感じています。

八坂神社の西楼門を背に多くの人が行き交う中、町角を彩る花に目をひかれた。合焦部からアウトフォーカス部へかけて、にじむようなボケによる表現力が素晴らしい(撮影:中条望)。
OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 25mm F1.2 PRO / 25mm(50mm相当) / 絞り優先AE(F2.2、1/640秒、±0EV) / ISO 2500 / WB:オート

告知があればぜひ!

継続して撮影を行っているバングラデシュやネパールの作品も今後発表して行く予定です。写真展開催の時には応援宜しくお願いします。

デジタルカメラマガジンにも中条望さんが登場!

デジタルカメラマガジン2020年2月号の連載「日本列島 ZUIKO LENSの旅」で、中条望さんによるM.ZUIKO DIGITAL ED 25mm F1.2 PROの解説が掲載されています。

本連載は47人の写真家が47の都道府県を巡るというもの。今回、中条さんは京都を巡っています。ぜひ、あわせてご覧ください。

制作協力:オリンパス株式会社

デジカメ Watch編集部