OLYMPUS OM-D E-M1Xが拓く新しい動体撮影の世界

難易度の高い状況でも追尾する“飛行機認識AF”

航空写真家・青木勝さんに聞く

撮影:青木勝 ©Katsu Aoki
OM-D E-M1X / M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO / 300mm(600mm相当) / シャッター速度優先AE (1/500秒・F4.0・±0.0EV) / ISO 6400

今年2月に誕生したオリンパスの「OM-D E-M1X」は、他のオリンパス製ミラーレスカメラと同じマイクロフォーサーズ規格に準拠する「機動力」を維持しながら、より安定したホールディング性と操作性を実現した、まったく新しいタイプのプロフェッショナルモデルであることが特徴だ。

特に、ディープラーニング技術を応用することで、「飛行機」、「モータースポーツ」、「鉄道」といった特定の被写体を自動で検出したうえで、最適なポイントにフォーカスし、かつ追尾する「インテリジェント被写体認識AF」の搭載は、OM-D E-M1Xの先進性を語る上で欠かすことのできない新機能となっている。

本稿の企画は、そのオリンパスOM-D E-M1Xを使用した3名の写真家にインタビューを試みるものである。

今回は、約50年にわたりジャンボジェットを始めとした航空機の撮影に携わってきた青木勝氏に話を伺った。青木氏に憧れて航空写真家になった、あるいは目指しているという人も少なくないだろう。(インタビュー・文:曽根原昇 写真:青木勝)

青木勝

1944年、埼玉県生まれ。東京写真短期大学(現 東京工芸大学)卒業。新聞社を経て、フリーランス写真家となる。1970年、日本航空の嘱託カメラマンとして飛行機写真を撮り始める。以後、飛行機の魅力に取り憑かれ、飛行機写真 ジャンルの確立と拡大を担って、グラフ誌、写真専門誌、航空専門誌等に写真と記事を掲載、数多くの個展で飛行機 写真の魅力を発信してきた。写真集に「JET JET JET」、「AIRLINERS 青木勝の旅客機の世界」、「YS-11名機伝説」、「Hello, Goodbye BOEING747」など。

OLYMPUS OM-D E-M1X

長年の経験を最新のデジタルカメラで活かす

——仕事として航空機の撮影を始められてから約50年とのことですが、そのご経験とキャリアに心から敬意を表します。

いえいえ(笑)、でも撮影を始めたころは大変でしたよ。デジカメのような便利なものはなくて、当然フィルムカメラです。しかもマニュアルフォーカス、マニュアル露出でしたから。

——撮り直しが効くデジタルカメラで、オートフォーカス、オート露出が当たり前の今から見ると信じられないくらいハードな世界ですね。そんな時代に航空機の撮影をするのは難しかったのではないでしょうか?

一連のカメラの設定を連続して、順序正しく操作して、しかも確認しながら条件に合わせて臨機応変に対応しなければいけませんから、いまより格段に難しい撮影でした。さらには飛行機の運行状況や都合、天候も全部意識する必要があります。

——デジカメと違って撮れているかどうか全く分からないのがフィルムですしね……

しかし、そうして経験を積み重ねてきたからこそ、今があるのだと思っています。今のカメラはどれも高性能です。そしてカメラの自動化が進んだ分、さらに撮り手ができることの幅が広がった、そう思っています。フィルム時代に培った感性というのは、デジカメでも活きますし、大切な財産なのだと感じています。

撮影:青木勝 ©Katsu Aoki
OM-D E-M1X / M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO / 300mm(600mm相当) / シャッター速度優先AE(1/640秒・F4.0・±0.0EV) / ISO 2000

青木さんも納得「飛行機認識AF」の実力

——そんな青木さんにとって、オリンパスの最新モデル、OM-D E-M1Xの「飛行機認識AF」はいかがでしたでしょうか?

これは凄かったですね、驚きました。まさかカメラ自体が飛行機を認識して的確にピントを合わせに行くとは。

——青木さんが考える「こう捉えたい」「ここにピントを合わせたい」といった認識結果になりましたか?

はい。飛行機全体を追ってくれるのはもちろん、コクピットが見えている状態であれば、間違いなくそこにピントを合わせに行ってくれました。「これはさすがに無理かもしれない」というような悪条件でも撮影しましたが、いずれの場合も正確に認識し続けてくれました。

提供:オリンパス株式会社
提供:オリンパス株式会社

——例えばどのようなシーンでしょうか?

一脚を使って流し撮りをするような場合や、風が強く構図を安定させづらいような場合、肉眼では機影が捉えにくいような暗い夜の場合などでも、迷うことなく正確にピントを合わせてくれました。飛行機の撮影ということもあって、超望遠レンズを使うことが多いのですが、本来なら熟練してもピント合わせがシビアな超望遠レンズでスムーズにピントを合わせてくれるのです。

——確かに、飛行機撮影が素人の私でも、試しに撮影してみたらほぼ100%の確率で納得できる位置にピントを合わせてくれました。OM-D E-M1Xを使うと自分でも飛行機が上手に撮れるのではないかと思えてしまいますね。

実際の撮影では、ピント以外にも飛行機撮影ならではの難しさがあるのですが……(笑)、それでも、狙ったときにカメラが素早く的確にピントを合わせてくれるというのは本当に助かります。「ここ!」というタイミングで正確に飛行機にピントを合わせるのは、本来、MFの時代でも、AFが当たり前になっても、難しいことに変わりありません。でもOM-D E-M1Xならそれを簡単にこなしてくれる。すごいことですよね。

撮影:青木勝 ©Katsu Aoki

OM-D E-M1X / M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO + MC-14 / 180mm(360mm相当) / シャッター速度優先AE (1/800秒・F8.0・-0.3EV) / ISO 100
撮影:青木勝 ©Katsu Aoki
OM-D E-M1X / M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO / 300mm(600mm相当) / シャッター速度優先AE (1/500秒・F4.0・±0.0EV) / ISO 6400

1,200mm相当でも気軽に綺麗に撮れるM.ZUIKO DIGITALレンズ

——青木さんは昔から超望遠レンズがお得意だったと聞きますが、OM-D E-M1Xではどんなレンズを使いますか?

主に「M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO」と「M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO」の2本です。これらに2倍のテレコンバーター「M.ZUIKO DIGITAL 2x Teleconverter MC-20」を必要に応じて装着します。

——300mmに2倍テレコンバーターともなると、35mm判換算での焦点距離は1,200mm相当ですね。描写性能はいかがでしたか?

2本の望遠レンズはもちろんのこと、2倍テレコンバーターMC-20の性能も素晴らしかったです。テレコンバーターというと焦点距離は伸びる代わりに画質が劣化するイメージがありましたが、この製品にはそれがない。レンズの高性能ぶりをそのまま引き出して拡大してくれるという、実に好印象なものでした。とんでもなく長大なレンズを使う必要があった時代から撮影していますが、いまはこんな軽く小さなシステムで撮影できてしまう。隔世の感があります。

撮影:青木勝 ©Katsu Aoki
OM-D E-M1X / M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO +MC-20 / 600mm(1,200mm相当) / シャッター速度優先AE (1/1,000秒・F10.0・±0.0EV) / ISO 320

—— OM-D E-M1Xは他のミラーレスカメラに比べて大きくて重いという意見もありますが……

かつてのフィルムカメラやフルサイズデジタルカメラに比べれば、ぜんぜんコンパクトですよ(笑)。目的に対する大きさの問題です。

——私などは600mm相当を超えると被写体がどこにあるのか捉えるのも難しいですし、どんな状況で飛行機を撮ればよいのかもよく分かりません(笑)

そこは鍛錬が必要になるところです。カメラが進化して撮影が便利になったなら、他の部分で不足している技術が浮き彫りになってきます。経験というのはどうしても必要になるのだと思います。

しかし、必要な時に的確に飛行機を捉えさえすれば、ピントや露出に関しては、OM-D E-M1Xが的確に導き出してくれるのです。これから飛行機を本格的に撮ってみようという人でも、撮影のハードルが大きく下がったのは事実なので、気軽な気持ちで撮影に臨んでもらえればうれしいですね。

撮影:青木勝 ©Katsu Aoki
OM-D E-M1X / M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO +MC-14 / 420mm(840mm相当) / シャッター速度優先AE (1/800秒・F7.1・±0.0EV) / ISO 320

まとめ

素人ながらも飛行機を撮っていると、いったいどこにピントを合わせるべきか迷ってしまう経験を何度かしたことがある。仮にピント位置を自分なりに決めたとしても、ピントを合わせきれない、被写体を追いつづけられない、というのが実際のところだ。

しかし、OM-D E-M1Xの「飛行機認識AF」なら、カメラが自動的に判断してピントを合わせ、しかも追いつづけてくれるのだから驚きである。体感していない人には、カメラが決めたピント位置で本当によいのか? という疑問もでるだろう。だが、かの青木勝氏が太鼓判を押してくれた性能だ。飛行機の撮影に苦手意識のあった筆者にとっても、この取材はこの上なく心強いものとなった。

あとは、もっと被写体について学習して、現場でフレキシブルに立ち回れるようになりたい。超望遠レンズの扱いにも慣れる必要がある。そこは軽く小さく堅牢性の高い、オリンパスのマイクロフォーサーズシステムが強力にバックアップしてくれるはずだ。

青木勝写真展「Hello, Goodbye BOEING747」が10月4日から開催

©Katsu Aoki

いまやほとんど見ることがなくなったボーイング747の勇姿を中心に堪能できる写真展。青木さんが40数年にわたって撮り続けてきた作品に加えて、OM-D E-M1Xで撮り下ろした新作も展示される予定だ。

オリンパスギャラリー東京

開催期間:2019年10月4日(金)〜10月9日(水)
開催時間:11時00分〜19時00分
休館:木曜日
ギャラリートーク:10月5日(土)14時00分〜、10月6日(日)14時00分〜

オリンパスギャラリー大阪

開催期間:11月1日(金)〜11月14日(木)
開催時間:10時00分〜18時00分(最終日は15時00分)
休館:日曜日・祝日
ギャラリートーク:11月2日(土)13時00分〜

提供:オリンパス株式会社

曽根原昇

(そねはら のぼる)信州大学大学院修了後に映像制作会社を経てフォトグラファーとして独立。2010年に関東に活動の場を移し雑誌・情報誌などの撮影を中心にカメラ誌等で執筆もしている。写真展に「イスタンブルの壁のなか」(オリンパスギャラリー)など。