カメラ旅女の全国ネコ島めぐり

日本有数の牛の島で、ネコに出会う旅(黒島・前半)

沖縄県八重山諸島の島のひとつ、黒島。石垣島から南南西17kmにあり、フェリーに乗って約30分で到着します。大きな山はなく、隆起珊サンゴ礁で形成された島で、ほぼ平地という島の地形を活かして畜産業が盛んです。

なんと、人口216人に対して、牛の数は2,860頭(2019年4月時点)。それゆえ「牛の島」と呼ばれたり、また真上から見るとハート形をしているので、「ハートアイランド」と言われたりしています。

ただ、それ以上の情報があまりなく、少し謎めいていてワクワクします。八重山諸島は、イリオモテヤマネコのいる西表島をのぞいて、外で出会うネコがいる島々が多いのですが、黒島はほとんど猫情報さえありません。

一体どんな島なのか? カメラを片手に、来島することにしました!


【これまでのねこ島めぐり】

まさにここは牛の島!!

石垣島から黒島へは、1日に5〜6便ある八重山観光フェリー(もしくは安栄観光フェリー)の船で、私は朝9時半の便に乗って、夕方戻ることにしました。

曇天日和ということもあって、ミルキーブルーの海を走って半時間、いよいよ黒島港に到着すると、20人ほどの観光客がいっせいに向かうのはレンタサイクル屋さん。

島は起伏が少ないけれど、外周約13キロあるので、歩くよりは自転車でめぐるのが一番なのです。私も、港で客引きをしていた「まっちゃんおばー」で自転車を借りる手続きをして、いざ出発!

黒島の集落からまず海沿いの道を走りながら、島で一番大きな東筋集落のほうへ向かいました。まっすぐに伸びた道をゆくと、やがて牧草地が広がり、たくさんの牛が放牧されていました。

自転車を降りると、一瞬の警戒心を顕にしたものの、すぐにまた牧草をむしゃむしゃ食べ始める牛さんたちをパチリ。空が広くて、少し大陸感があり、島だというのが不思議です。

その後、伊古桟橋へ寄りました。水平線まで届きそうな勢いをみせる全長354メートルの桟橋は、かつて実際に船の発着に使われていて、まさに黒島の入り口だった場所です。

平成17年に国の有形文化財に登録されてからは、黒島の観光スポットの目玉でもあるようです。

私が立ち寄った時間が干潮に向かっていたせいか、海底がずいぶん遠くまで出現していました。それはそれは、幻想的な海のワンシーン。標準レンズを持っていたので、一番広角に合わせてパチリと一枚。自転車を降りて歩きだすと、海を歩いている気分になりました。

伊古桟橋の海を見て右手に、非舗装の狭い道があったので進んでみました。すると、辿り着いたところは「黒島東牧場」と書かれた牧門で、思い切って中に入ってみました。

そして、中にいたおじさんに声をかけて、見学させてもらうことに。

「ここは牛が人間の十倍いる島なんだよ」

「すごい数! 酪農ではないんですね?」

「黒島はね、子牛を出荷するんだよね。畜産業の島だからね」

そう言って、中にいる生後1週間ほどの子牛を見せてもらいました。

か、かわいい……。

子牛はやがて競りにかけられ、日本あちこちへと出荷されて、松坂牛や神戸牛とよばれる牛さんへと育てられるようです。

ところで、1頭だけジャージー牛がいて、とても可愛かったです。

「来年2月には、黒島の牛祭りがあるからまたおいでね」

そんな嬉しい言葉をもらって、牧場をあとにしました。

ついにネコちゃんと遭遇!

ちんたらと未舗装の道をもどって、伊古桟橋から東筋集落のほうへと向かいました。集落はひっそりとしていて、サンゴの石垣が印象的な道で、自転車で走っていると気持ちがいいです。

竹富島に比べて観光地化されていないようで、ありのままの島の流れを感じる黒島の集落は、「見所は少ない」のかもしれませんが、力んで島巡りをする必要がない気楽さがとてもいいなあと感じました。

写真を撮ると、「この先をもっと行って見たい!」と思わせる魅惑的な引力を感じる道が撮れました。

東筋集落には、とてもほのぼのとするローカル感たっぷりの「たま商店」や「黒島郵便局」がありました。今回、集落にあるカフェ数軒がすべてお休みだったので、たま商店でパンを買ってお昼に備えることにしました。

おばちゃんが「あらあら、今日はお休みばっかり?」と、のほほんと話してくれて、心がほっこり。

その後、集落を抜けて県道213号線を自転車で走り抜けると、黒島展望台につきました。ここから213号線を見下ろせるのですが、この道は日本の優れた特色ある道として、「日本の道100選」に選ばれています。

遠くに海があり、手前に広がる緑の牧草は、美しい直線と曲線で大きな川のごとく走る一本道によって分断され、黒島の特徴的な風景に感じます。まさに写真映えもして、青と緑のコントラストも美しいです。

県道213号線は集落を港を結ぶ一本道ですが、ちょうど真ん中に黒島小中学校があります。空が広く、芝生が綺麗で、子供たちがのびのびと育ちそうな環境!

そして、そのまま県道213号線を走って、黒島港に再び戻ると、港にある「ハートランド」というカフェがオープンしているのを発見。さきほど、たま商店で買ったパンはしまって、八重山そばを食べようと中に入りました。

すると……。

「いらっしゃい〜」と大きなあくびで出迎えてくれたのは、看板ネコちゃん。とっても人懐こく、愛嬌たっぷりのキジトラさんです。黒島でみかけた初のネコさん!

麺の太い八重山そばをいただきながら、ネコちゃんが向かいでごろんと居座ってくれて、ネコ好き客への大サービスが完璧。

ふわふわの毛と美顔のネコちゃんたちは、姉妹でいて、ルルとロロという名前だそうです。

とっても顔が似ているし、仲良し姉妹。

お店に来ているお客さんからも、おにぎりをもらったりして、とても可愛がられていました。

「このふたりは、お客さんに育てられたようなもんですね。とっても人に慣れてますよ」とお店のお母さん。

パシャパシャと写真を撮らせてもらっていると、

「ネコが好きなんですね」とお店のお母さんに言われたので、ネコが好きだけど黒島ではあまり見かけなかった話をすると、

「そんなことないわよ、たくさんいるの。そうだ、すごくたくさんネコがいる牧場があるから行ってみたら。教えてあげるから」とネコ情報が舞い込んできました。

「ぜひともーーーー!」

ということで、その牧場へと向かうことになりました。

牛さんとネコさん。

想像しただけでも、ほのぼのと絵になる図ですが、ネコたちは、どれくらいいるのでしょうか?

嬉々としてお店を出ると、最後まで看板ネコらしいルルとロロちゃんが、「またきてにゃ〜」とお見送りしてくれました。

いざ、教えてもらった牧場へ!

つづく

小林希

旅作家。元編集者。出版社を退社し、世界放浪の旅へ。帰国後、『恋する旅女、世界をゆくー29歳、会社を辞めて旅に出た』で作家に転身。著書に『泣きたくなる旅の日は、世界が美しい』や『美しい柄ネコ図鑑』など多数。現在55カ国をめぐる。『Oggi』や『デジタルカメラマガジン』で連載中。