カメラ旅女の全国ネコ島めぐり

のどかな南の島で、美しい景観にとけこむネコを求めて(竹富島・後半)

沖縄県の石垣島から南へ約6km、フェリーで10分ほどのところに竹富島があります。八重山諸島のなかでも、島の規模感からすれば、もっとも観光客が多くおとずれて活気のある島です。

ただ、ほとんどが日帰りで来島するため、夕暮れとともに島は静寂に包まれます。

そこからが、「本当の竹富島だ」と島の人たちは言います。

小さな島には、ネコもたくさん暮らしています。

だいたい、ネコがいるスポットは決まっているので、確実に出会えるのも嬉しい。そこでは、一眼レフを携えたネコ好きカメラマンたちをたくさん見かけます。もちろん、私もそんな一人です。

今回、私は一泊して、静寂な時間の竹富島も楽しむことにしました! いざ、ネコを求めて!


【これまでのねこ島めぐり】

ネコスポットを満喫 遺跡も発見?

竹富島は、島の中央に集落が固まっており、東集落、西集落、仲筋集落と3つの地区にわかれています。港からまっすぐに行って、最初に着くのが東集落。

自転車を借りて、西側のネコスポットであるコンドイ浜でうんと猫にまみれて、それから仲筋集落へと向かいました。

日中でも、仲筋集落あたりは、少しだけ観光客が少ないように感じます。そして、島の日常の光景と思われる、島の子供達が下校しているところに出くわしました。

カラフルなランドセル。

島に咲き乱れるカラフルな花々のようで、写真にも映えます。

その後、仲筋集落の中をゆっくり進んでいると、黒白の猫ちゃんに出会いました。

首輪をしているので、飼い猫のようです。とっても人懐こくて、何度もすりすりしてきてくれました。

この猫ちゃんと遊んでいたら、島のおばあちゃんがやってきて、

「あれー、こんなかわいいネコいたの。あなたどこからきたの?」

「東京です〜」

と、会話がはじまりました。

「私は島生まれだけど、育ちは外で、戦争のあとに戻ってきたの」とか、「昔はもっとネコがいたのよ」とか、「最近はとっても人が多いけど、夜になるととても静かでいいのよ」とか、いろいろと教えてくれました。

ネコといると、こういう出会いがあるのが、本当に嬉しいです。

「よかったわね、かわいく撮ってもらいなさいよ」とネコちゃんに話しかけて、帰っていきました。

仲筋集落には、仲筋井戸(ナージカー)があって、迫力満点です。

まるで巨木の下に広がる池みたい。

ここは竹富島のなかで、もっとも水量が豊富な井戸のようです。言い伝えによれば、仲筋村の村建ての神さまの犬が、干ばつにもかかわらず尻尾を濡らしていたことで発見された井戸だそう。

昔から正月の若水や産湯として、この井戸水を利用してきたようです。現在は、石垣島から海底送水が引かれているので、利用されていません。

その後、道を進むと、なにやら遺跡のような跡がありました。
これもまた、言い伝えによれば、仲筋村の住民の飼っていた牛が、一夜のうちに「ンブフル」と鳴きながら、ツノで土や石をつき上げて丘を築いた丘のようです。

写真に撮ると、いっそう南国アジアに秘められた遺跡のように見えます。

それからすぐ近くには、竹富小中学校がありました。

校門に咲き乱れる花々が華やぎ、色彩にあふれて美しいです。逆光になってしまったので、また順光の時間帯にきて、写真を撮りたいなあと思いました。

「本当の竹富島」と出会う

それにしても、竹富島は、花の島と言っても過言でないほど。
楽園や、桃源郷を思わせる世界観が魅力です。そして、カメラ越しに映る景色が、場所によって異国感がでるところが多くて、写真を撮るのがとても楽しいです。

ようやく、東集落のほうへ出たので、西集落にある宿へ自転車を置きに戻り、歩いて集落を散策することにしました。

自転車と歩きでは、やっぱり目の前の光景を見定めるペースや、目線の高さが違うので、どちらも面白いなあと思います。

気づくと、観光客もぐっと減って、しーんと静かな時間が訪れていました。

琉球民謡「安里屋(あさどや)ユンタ」にでてくる竹富島生まれの絶世の美女・安里屋クヤマの生誕地が、西集落にありました。

そこに、ネコがいるではありませんか!

絶世の美女ならぬ、かわいらしいネコちゃん。

「だれにゃん?」と、いぶかしげにみられつつ、人には慣れているみたいでいたってマイペース。

絵になるポーズをしてくれたので、パチリ。

どうやら、ここもネコスポットのようで、この2匹が暮らしているようです。

その後、東のほうへ歩くと、駐輪場がありました。

ここも、ネコスポットなのです。

黒白のハチワレネコと、黒ネコの2匹が暮らしています。石垣に乗って、かっこよくポーズをきめてくれたので、パチリ。

すると、車が近づいてきたのを機に、逃げるどころか車に向かっていって大歓迎!

車からおばあちゃんが降りてくると、ネコたちは「ごはん〜!」とおねだり開始。

「毎日、ご飯をあげてるんですよ、ボランティアでね」とおばあちゃんが教えてくれました。

ネコたちは、カリカリをもらうと、焦るようにして食べていました。

あいにく曇りで、夕日は見られなかったけれど、島は静寂さを増していきます。

ご飯を食べ終えたネコたちも、いそいそと動き回り、やっと「僕たちの時間」がきたことを楽しんでいる様子。

それから、竹富島の名所といわれる「なごみの塔」にのぼりました。

今は、安全性から塔の上まで登るのは禁止されていますが、それでも十分に集落を上から眺めることができます。

島は、夜になるとオレンジ色の街灯に照らされます。このあたたかな色の光が、やっぱり異国のように映り、旅情をおぼえます。

「夕方からが、本当の竹富島よ」と島の方に聞きましたが、これほど日中と雰囲気が変わることに驚きました。

みんなが、音を出すことをやめたみたいに静まり返っています。

白砂の道にもオレンジ色の光がこぼれて、一人でゆっくりと歩くと、どこにいるのか不思議な気分。この美しい宵闇を独り占めすることに、幸せを感じながら宿に戻りました。

翌朝、7時頃にまたコンドイ浜のほうへ自転車を走らせると、誰もおらず、ネコたちがいそいそと動き回っていました。

空は曇天ですが、ネコがいる海は絵になります。

竹富島を出る前に、ゆっくりとネコのいるコンドイ浜を歩き、大きく深呼吸。

うん、いい時間、いい島旅。

観光客が多くて活気がある日中と、その後の静寂に包まれた朝晩のメリハリが、とても魅力的な島だなあと感じます。

次来るときも、またその変化を楽しみに、ネコスポットをめぐりながら旅をしようと思います!

小林希

旅作家。元編集者。出版社を退社し、世界放浪の旅へ。帰国後、『恋する旅女、世界をゆくー29歳、会社を辞めて旅に出た』で作家に転身。著書に『泣きたくなる旅の日は、世界が美しい』や『美しい柄ネコ図鑑』など多数。現在55カ国をめぐる。『Oggi』や『デジタルカメラマガジン』で連載中。