カメラ旅女の全国ネコ島めぐり

日本有数の牛の島で、ネコに出会う旅(黒島・後半)

島を上から見るとハートの形をしていることから、「ハートアイランド」と呼ばれる八重山諸島の黒島は、沖縄県の石垣島からフェリーで30分のところにある周囲約13kmの小規模な島です。ほぼ平地の島の地形をいかして、畜産業が盛んで、人口の10倍の数の牛が暮らしている「牛の島」でもあります。

しかし、八重山諸島の島々のなかでも、観光地という印象が薄く、なんとなく謎めいていました。何があるのか、ネコはいるのか。

好奇心に駆られるまま、黒島へ行ってきました! そして、自転車で島を巡っていたら、黒島港にあるカフェ「ハートらんど」で思いがけずネコ情報をゲット。お店のお母さんに教えてもらった、ネコのいる牧場へと向かいました!


【これまでのねこ島めぐり】

20匹以上のネコとネコおじさんに出会う

向かった牧場は、黒島港からまっすぐのびる県道213号線より一本内側の牧草地を走る道で、黒島展望台の近くです。

どこだろうな〜?と思いつつ、牧場にいる牛を眺めながら進むと、牛舎の横に20匹ほどのネコがみっちりとくっついていました!

す、すごい!

一瞬にして、大きなネコ絨毯は散らばって(警戒して)しまいましたが、すぐに「この人間はご飯をもっているかも?」と思ったのか、興味津々で近づいてくるネコたちも。

たまたま牧場のおじさんがいらっしゃって、

「すごい数でしょ、まだまだいるよ」と声をかけてくれました。

これ以上いるとは!

「ご飯をあげていたら、勝手に住みついちゃってね」と言っていましたが、こういう方、いろいろな島のあちらこちらで出会いました。ハートらんどのお母さんが、「あそこの牧場は、家にもたくさんのネコがいるのよ〜」と言っていたので、根っからのネコおじさんかと思われます!

美ネコが多くて、さまざまな柄のネコがいて、見ていて飽きない! なんて、フォトジェニックなネコたちでしょう。

牛とネコがともに暮らす

牛さんと、黒ネコさんが同化していて、一瞬違いがわからなかった図。面白いのでパチリ。ネコたちは牧草地も牛舎の中も自由に出入りしていて、お互い警戒し合う様子もなくて、いい関係なのかなと感じました。

せっせとお仕事をされていたおじさんに、一斉にネコたちが寄っていったので見学すると、どうやらご飯をもらいに行っているようです。まさに、ネコに囲まれるおじさん。はてはて、ここは牛舎だった? ネコ舎? と思える一枚が撮れました。

写真を撮らせてもらっていると、牛のお世話をしているのがネコさんたちのように見えてきました。

ネコたちに取り囲まれる

さて、停めていた自転車まで戻ると、ネコたちにずらっと囲まれていました。私がお昼用に買っていたパンの匂いを嗅ぎ分けたのか、「ここに、いいものがあるにゃ!!」と分かっているようでした。

「ごめん、ごめん、みんなにあげられるものは無いんだよー」と言うと、

ネコたちは、

「ほんとうに?」

「ほんと?」

「ちかって?」

と、ぐいぐい来ます。その瞬間をここぞとばかりに、しっかり撮らせてもらいました。かわいい表情、いただき!

自転車に乗って去ろうとしたとき、近くで車が停まり、ネコたちが猛ダッシュで駆け寄っていくので、少し見学させてもらうと、牧場の人が降りてきて、牧草地へと入っていくのをネコたちが一生懸命とことこ追いかけていきました。

広い緑の原っぱに、さまざまな柄のネコは、目立ちますね。

それにしても、牛もネコも、大自然の美味しい空気いっぱいの島で、のびのび育っているう様子。

心惹かれる景色がたくさん

その後、仲本集落を経由して、黒島研究所へ行ってみることにしました。

黒島研究所は、主にウミガメの研究をしているところですが、小さな博物館や水族館のようになっていて、黒島の海中生物を見学することができます。

一番惹かれたのは、サメ。

石垣島の宿で出会った旅人から「サメがいて、餌付けできるんですよ」と聞いて、ぜひ挑戦してみたいと密かに思っていたのです。

仲本集落は、やっぱりのどかで、サンゴの石垣を残した景観が素敵です。神様を祀るような独特の祠も惹かれますが、島内でちらほら見かける小さな郵便ポストが可愛らしい。写真に撮ると、アクセントになりますね!

そしてこの集落にあった、目立つ看板。

なにかと思ったら、「ほぼ無人販売」という、きくのやさんの看板でした。ちらっと中を覗くと、お菓子などが少々売られていましたが、たしかに無人でした。

島の海中生物を見学できる研究所

黒島研究所に到着。

外に作られた掘割にも、すでに80cmほどのサメが数匹泳いでいました。手作り感のある外観は、味があって心惹かれます。

入場料は大人500円。

中には、魚介類やサンゴの展示やパネル紹介など、ミニ博物館と、さまざまな海中生物(猛毒の種類もたくさん!)が水槽にいて見学できる部屋と、屋外のサメがいるプールと分かれていて、どれも手作り感あふれて、見応えがあって興味深かったです。

なにより、サメの餌(キビナゴ)を受け付けで買って、屋外のサメに実際に餌やり体験するのはドキドキでした……!

サメは黒島に住むレモンザメで、陸地に近いところで生息しているようです。プールの中をひたすら泳ぎ続けていました。

持っていたキビナゴを投げると、ざっぱーん!と食いつく姿は、まさに「サメ! ひえー!」でした(笑)。

緑のトンネルを抜けて浜へ

そろそろ石垣島へ戻るフェリーの時間なので、最後に西の浜へ寄りました。

曇天の風の強い日だったので、海の状態はベストではないかもしれないけれど。と思って向かうと、途中で「牛の病院」を発見しました。

牛の島ならではですね。ほんわかした気分になりました。

西の浜へ行くところが緑のトンネルのようになっていて、写真にも素敵に映りました。この先に海があると思うと、ワクワクとします。

西の浜は約2km続く白い砂浜が魅力のビーチですが、やっぱり曇天ということもあって、本来の海の色よりはくすんでいたかもしれません。でも、十分美しいグラデーションの青色でした。

4月から9月にかけて、ウミガメが産卵にやってくるようです。

日帰りながらも充実した旅に

自転車を返却して、ターミナルへ。

島の中で何度もすれ違った観光客たちとは、顔見知りのようになって、にっこり会釈を交わすように。そんな島旅もいいなあと思うのです。

今回は一泊せず日帰りの黒島でしたが、思いがけずたくさんの黒島生まれのネコや牛、海中生物に出会えて、ましてやサメに餌付けまでできて、とっても充実した時間でした。

観光地化されすぎず、良い意味であまり観光客を寄せ付けないマイペースさがあって、のどかな時を過ごすことができました。

こうした離島から、さらに離島へ、日帰りでいけるところも日本各地にあるので、これからも離島の先へ、先へと足を運んでみたいと思います!

小林希

旅作家。元編集者。出版社を退社し、世界放浪の旅へ。帰国後、『恋する旅女、世界をゆくー29歳、会社を辞めて旅に出た』で作家に転身。著書に『泣きたくなる旅の日は、世界が美しい』や『美しい柄ネコ図鑑』など多数。現在55カ国をめぐる。『Oggi』や『デジタルカメラマガジン』で連載中。