カメラ旅女の全国ネコ島めぐり

猫も人もオープンハートな、宇宙に近い島(種子島・後半)

日本でもっとも宇宙と近い島、あるいは宇宙を感じる島といえば、種子島。

鹿児島大隅諸島の一つで、隣の丸い形をした屋久島と対比される、細長い種のような形をしている島です。鹿児島県で3番目に広い島で、人口は3万人ほど。瀬戸内海の島々と比べると、もはや“街”といえる規模感です。

だけれども、島をゆっくりめぐると、スローな時間が流れ、時折道端で出会う猫たちはのびのびとして、開放的な雰囲気がします。

種子島は、石器時代から始まり、異国との交流、鉄砲伝来、宇宙開発、ロケット打ち上げなど、日本の過去から未来まで、歴史を動かし続ける場所でもあります。その歴史を物語るかのように、島のあちこちでは、過去、現在、未来という時間軸が同時に存在しているようで、とても面白いのです。

さて、種子島2日目も、色彩豊かな島らしさを追いかけ、カメラを持ってめぐります!


【これまでのねこ島めぐり】

ロケットが間近に! 観光を満喫

2日目は、私が滞在している宿がある西之表から、44km離れた南部の南種子まで一気に移動します。まずは、宇宙開発センターへ。

集落をそろそろと車で移動していると、ところどころ鉄砲をモチーフにした絵が壁に描かれていたり、ロケットがお店のモチーフになっていたり、目をこらすと“種子島らしさ”があって、面白い。

そして、昨日と違う道を通ると、途中でさとうきび畑があったりして、南の島らしさにも出会います。

のんびりと車を走らせること1時間半、宇宙開発センターへ到着しました。宇宙科学技術館前の大きなロケットのオブジェに、「種子島に来たぞー!」とテンションが高まり、気分高揚!

科学技術館の見学は無料ですが、バスツアーは事前の予約がベターです。

宇宙科学技術館では、これまで打ち上げられたロケットの模型や、宇宙の無重力空間を表現した展示、宇宙ステーションの模型、迫力満点のロケット打ち上げ時の映像など、宇宙好き、ロケット好き、科学好きにはたまらない展示が目白押し。

バスツアーは、一般には立ち入り禁止されているエリアへ入り、実際に打ち上げられる発射台の近くまで行ったり、打ち上げられなかった本物のロケットが保管されている倉庫を見学したりと、宇宙との距離がちょこっと縮まるような、そんな気分に満たされるツアーでした。

見学の後は、同じ南種子にある“おかざき商店”に立ち寄り、宇宙ラーメンをいただきました! 細かなあられは、空に散らばる無数の星を表しているのだとか。トッピングも盛りだくさんで、かなりボリューミィ。豚骨ベースの美味しいラーメン!

さて、南種子のもう一つの目玉である島最南端の門倉岬へ向かいました。鉄砲伝来の地です。

門倉岬の沖に、1954年に異国船が漂着して、鉄砲技術が日本に入ってくることになるわけです。目前に広がる大海原を、パシャリと写真を撮ってみたら、この光景は、きっと昔となんら変わらないのだろうと、過去に思いを馳せてみるのでした。

ねこと駐車場でふれあう

門倉岬から北上して、島の景勝地の一つ、千座の岩屋を見にいきました。浜田海水浴場の一角にある、海の波によって洞窟が侵食された、島唯一の海蝕洞です。干潮の時間になると、枝分かれした洞窟内は歩いて回ることができて、その広さは千人が入って座れるほど、らしいです。

千座の岩屋へ行くには、専用駐車場で車を止めるのですが、ここで足止めをくらいます。
なぜなら、あちこちに、猫さんたちの姿がーー!

どうやら千座の岩屋の駐車場は、猫たちの住処のようです。

ふくよかな体つきを見ると、しっかりご飯をもらっているみたいで、それを証明するかのように、私が車を降りるなり、とことこと近づいてきました。

「人慣れしてるんだねえ」

「にゃーん」

“ご飯をくれ〜”と言われているのでしょうが、数枚、パシャパシャと写真を撮らせてもらって、まずは千座の岩場を見にいくことにしました。

波によって削れたとは思えないほどの大きな洞窟は、満潮ではないけれど、まだまだ洞窟内を歩き回れるほどには引いていませんでした。干潮時は、海側からも歩いて入れるほど、潮が引くようです。

今もなお、波によって洞窟は削られ続けているのだろうけど、その変化がわかるには、想像を絶する歳月がかかるのでしょう。

駐車場に戻って、ゆっくり猫ちゃんと遊ぼうと、まずはお近づきの気持ちに持っていたパンをおすそ分けすると、嬉しそうに食べてくれました。

愛らしい、まんまるの顔が、たまらなく可愛い!

種子島の猫たちは、美猫ちゃんが多いけれど、性格もおっとりさんが多い印象です。

心おきなく猫ちゃんたちとふれあい、それでも後ろ髪控える思いで駐車場をあとにしました。

食事も充実! 島それぞれの魅力に惹かれて

そこからすぐの場所にHOPEという宿があり、種子島ジェラートが食べられと、宇宙ラーメンをいただいたおかざき商店のお母さんが教えてくれたので、行ってみました。

私の前には、外国人の女の子たちがジェラートを買っていて、嬉しそう。

私も、ラズベリーとロイヤルミルクティ味のダブルを選び、ご満悦!

ジェラートを食べたらお腹が空いてきたので、南種子名物のインギー鶏が食べられる食堂美の吉に行きました。インギー鶏は、漂着した異国船を保護したお礼として、イギリスから贈られた鶏です。いまも、その子孫が飼育されて、交配なども慎重に、大切に継承されているそうです。

インギー鶏のお刺身は、とにかく鮮度がよく、味もよし! 種子島に来たら、またリピートしたい逸品となりました。

美の吉を出ると、どこからともなく、「にゃーん」という声が。

その声の主は発見できませんでしたが、なんだか猫の気配をよく感じる島だなあと思います。

夕方、西之表から高速ジェット船、その名も「ロケット」に乗りこみ島を後にしました。短い滞在時間だったけれど、島の歴史を辿るかのような島巡りは、未来への無限の希望も感じたし、はたまた今を生きる穏やかな島の人たちや猫たちに出会い、なんとも、果てしない時間軸を歩かされているような不思議な時間でした。

島は一つひとつ、独自性があり、本当に魅力的です。

島を訪れるたびに、「同じ!」ということがありません。猫というフィルターを通しても、まったく同じところはありません。だからこそ、実際に足を伸ばして、そこにいる猫に出会い、島の人の声を聞くというのは、島旅で欠かすことができません。

神々しい夕陽に見守られ、種子島の旅は終わりましたが、2019年もカメラを持って、全国津々浦々島めぐりは続きます!

つづく

小林希

旅作家。元編集者。出版社を退社し、世界放浪の旅へ。帰国後、『恋する旅女、世界をゆくー29歳、会社を辞めて旅に出た』で作家に転身。著書に『泣きたくなる旅の日は、世界が美しい』や『美しい柄ネコ図鑑』など多数。現在55カ国をめぐる。『Oggi』や『デジタルカメラマガジン』で連載中。