編集後記

2021年8月27日

宮澤孝周
エプサイトギャラリー「Photographer's Masterpiece 絶対鑑賞写真展2」展示室の様子

特別な用事や仕事でもない限り遠出をすることができなくなって、早くも1年半になろうとしています。弊社では基本的に在宅での仕事が中心となってきていることもあり、季節感を感じにくくなった、とは以前にも書いた記憶があります。もう9月が目の前。晩夏の空気感の中、秋の虫の声が聞こえるようになってきました。

さて、そうした中でも仕事で外に出ることはあるもので。先日東京駅近くへ行く機会があり、周辺の各ギャラリーを少し覗いてきました。

当誌でも開催告知記事を掲載していますが、エプサイトギャラリーでは「Photographer's Masterpiece 絶対鑑賞写真展2」と題して、気鋭の作家の作品が展示されています。参加写真家は岩倉しおりさん、KYON.Jさん、小林淳さん、下園啓祐さん、谷口京さん、眞鍋久徳さんの5名。展示室には、各作家それぞれのアプローチでプリントされた作品がならんでいます。

何といってもユニークなのが、各作家でそれぞれプリントに使用している用紙が違うこと。そしてまた、それらの作品の一部に直接触れ、近づけたり遠ざけたりして見ることができるようになっていることです。

雪の質感表現と和紙とのマッチングであったり、光沢紙のキラキラした印象が都市夜景の奥行き感をさらに強調していたりなど、実際に手にふれ、間近で観察できるからこその気づきも多くありました。余白の使い方なども物理的なプリントならではの面白さだと、改めて感じさせられます。会期は9月4日までです。

もしお近くに立ち寄られた際は、ぜひ富士フイルムイメージングプラザ東京にも足を伸ばしておきたいところ。むらいさちさんの写真展「Life is Beautiful」が9月13日まで開催中です。

同展では、大判プリントで、むらいさちさんならではの淡い色彩イメージの世界が楽しめます。明るく、早春の芽吹きを感じさせるような柔らかい風が吹いているような空間で、塞ぎがちになりそうな感情を解きほぐしてくれるようでした。

会期中は全日程で在廊されているとのことなので、感染状況に注意しつつにはなりますが、お話を聞いてみると作品をより楽しむことができると思います。多くの作品は、富士フイルムXシリーズで撮影されたものですが、ハイキー調でまとめあげながらも、トーンジャンプなく仕上げられた作品は、Xシリーズの力の程をよく示しています。こうして作品を見ていくと、APS-Cセンサー機はもっと注目されていいのでは、とも思われてきます。

すっかりインプットの機会が減ってしまい、目が飢えていたのでしょうか。プリントを前にした時のワクワク感が久しぶりにこみあげてきました。