いま“知っておきたい”トレンドワード

「USB 3.2 Gen 2」って何だっけ?…対応機器セレクトのポイントを整理

昨今の技術の進歩は目まぐるしく、気づいたら知らない言葉が増えている、ということはありませんか? この連載では、よく聞くけど何となくしか知らない、気になっているけど今更聞きにくい、といった「トレンドワード」を易しく解説していきます。(編集部)

USB 3.2 Gen 2って何だっけ?

カメラやカードリーダーなどUSB接続する機器に「USB 3.2 Gen 2対応」という表記を見ることも多くなりましたが、「USB 3.2 Gen 2」とはどういうものなのか、実はよく分からずなんとなく使っている人も少なくないでしょう。

USBは世の中で広く使われる標準規格のため、ぼんやりとした理解でも問題ないことが多いのですが、最近、規格が増えて混沌としているUSB 3.2周りのトピックや誤解しやすい点、注意すべき点などをまとめましたので、USB 3.0から知識が止まっている人はぜひここでアップデートしてみてください。

USB 3.0と何が違うの? 名前の話

まずはUSBの歴史を簡単におさらいしておきましょう。USB(Universal Serial Bus)が最初に登場したのは1996年と古く、現在広く使われているのはUSB 2.0(2000年)とUSB 3.2 Gen 1(2008年)、USB 3.2 Gen 2(2013年)の3つの規格です。最近では後継のUSB4も見かけますが、カメラ周りでの採用はまだ広がっていません。

あれ、USB 3.0は?と思った人もいると思いますが、結論を言えば「USB 3.0=USB 3.1 Gen1=USB 3.2 Gen1」です。これらはすべて同じ規格と考えてOKです。単に時代とともに名前が変わっただけ。これがUSB周りの規格がゴチャゴチャに感じる大きな原因の一つです。

経緯をもう少し詳しく説明してみます。2013年にUSB 3.0の2倍の速度を出せる「USB 3.1 Gen 2」が策定されました。そのときに、元々のUSB 3.0は「USB 3.1 Gen 1」に改名されたのです。同じように、2017年にUSB 3.1 Gen 2のさらに2倍のスピードが出る「USB 3.2 Gen 2×2」が策定されたときに、USB 3.1 Gen 1(元USB 3.0)は「USB 3.2 Gen 1」に改名されてしまいました。

だから、「USB 3.0=USB 3.1 Gen 1=USB 3.2 Gen 1」というややこしい状況が生まれたというわけです。

同様に、今日の主役「USB 3.2 Gen 2」は「USB 3.1 Gen 2」と同じ。名前が変わっただけです。

さらに、カメラ周りではUSBの規格として別の名称を目にすることもよくあります。USB 2.0なら「Hi-Speed USB」、USB 3.2 Gen 1は「SuperSpeed USB」、USB 3.2 Gen 2は「SuperSpeedPlus USB」です。例えば、ニコンのカメラの仕様表を見るとUSB 3.Xの表記は見当たらず、こちらの表記を使っていますね。ニコン Z 8のUSBポートはSuperSpeed USB ですからUSB 3.2 Gen 1となります。

ここまでの話をまとめると、USB規格の名称は以下の表のようになります。横の並びはみな同じ規格です。

策定年名称転送速度
2000USB 2.0--Hi-Speed USB480Mbps
2008USB 3.0USB 3.1
Gen 1
USB 3.2
Gen 1
SuperSpeed USB5Gbps
2013-USB 3.1
Gen 2
USB 3.2
Gen 2
SuperSpeedPlus USB10Gbps
2017--USB 3.2
Gen 2×2
-20Gbps
2019USB4
Version 1.0
---40Gbps
2022USB4
Version 2.0
---80Gbps

最新のUSB4では「Gen」でなく「Version」という新たな名称も登場し、さらに混沌とした状況になってしまいました。余談ですが、USB 3.XまではUSBと数字の間に半角スペースが必要ですが、USB4ではスペースがありません。

2022年9月にUSBの規格をとりまとめるUSB-IFが、一般ユーザー向けに転送速度をベースにした名称に統一するガイドラインを策定し、以下の名称を使うよう推奨しています。

規格新名称
USB 2.0変更なし
USB 3.2 Gen 1USB 5Gbps
USB 3.2 Gen 2USB 10Gbps
USB 3.2 Gen 2×2USB 20Gbps
USB4 Version 1.0USB 40Gbps
USB4 Version 2.0未策定

最近発売されたカメラの仕様表にはまだ従来の名称が表記されていますが、ケーブルメーカーでは新名称の採用が徐々に始まっているため、今後はより分かりやすい名称に統一されていくかも知れません。

USB 3.2 Gen 2が必要なシーンとは

ここまでUSBの抱えるややこしさに焦点をあてて解説してきましたが、ユーザーがカメラやカードリーダーでUSBを使う場合にどのように考えればいいのでしょうか。私は以下のように考えています。

お使いのカメラが「SDカード利用であるならUSB 3.2 Gen 1以上」、「CFexpress利用ならUSB 3.2 Gen 2以上」で揃えるのがポイントになります。

USBの転送速度はカードリーダー(カメラ)からパソコンまでの経路のうち、遅いものがボトルネックになってしまうため、すべてを狙いの規格以上に揃える必要がある点に注意しましょう。USBは後方互換性があるため速い分には問題ありません。

カメラのUSB規格に関してはユーザーはそれを受け入れるしかないのですが、カメラにUSBケーブルを直接繋いでデータを吸い出すということをしない限り、USB 3.2 Gen 1で困ることは少ないでしょう。問題はカードリーダー側の性能です。

USB 3.2 Gen 1の理論上の最高速度は5Gbps(625MB/s)です。実際にはここまで速度が出ることはありませんが、最も高速なUHS-II対応SDカードでも転送速度は300MB/sが上限ですから、SDカードで利用するなら十分なスペックと言えます。ちなみに、下限が規定されている訳ではないので古いUSB 3.2 Gen 1(USB 3.0)では300MB/sが出ない事があるかもしれません。

一方、CFexpressであればすでに1,000MB/s以上の速度が出るものがありますので、USB 3.2 Gen 1ではカードの性能をフルに引き出せません。10Gbps(1,250MB/s)に対応したUSB 3.2 Gen 2が有利になります。SDカードでもデュアルスロットリーダーでは帯域に余裕があるUSB 3.2 Gen 2対応のものがおすすめです。

USB 3.2 Gen 2を利用する場合はパソコンのUSBポートがUSB 3.2 Gen 2に対応していることも確認しておきましょう。古めのパソコンだとUSB 3.2 Gen 1までしか対応していないことがあります。

一部の高速なCFexpress Type Bカードでは1,250MB/sを超える速度のものも出てきているため、実はすでにUSB 3.2 Gen 2でもスペックが不足してきています。今後はUSB 3.2 Gen 2×2やUSB4に対応したカメラやカードリーダーが出ることも期待されます。

どのケーブルを買えば良いか分からない場合は?

ここまでUSBの転送速度について話を進めてきましたが、USBには端子に関するもの(Type-CやStandard-A、Micro-Bなど)、電力供給に関するもの(USB PD)、映像出力に関するもの(DisplayPort Alt Mode)といった付随する様々な規格が組み合わさっています。

これらの解説はいずれここでやりたいと思いますが、目的に合ったケーブルを探すのも一苦労といった状況なのです。

もしこういったゴチャゴチャの状況を一切考えたくない場合にはThunderbolt 3対応のケーブルを買うのがおすすめ。Thunderbolt 3はUSB 3.2 Gen 2の上位互換だと思ってもらえればOKです。

Thunderbolt 3ケーブルならUSB 3.2 Gen 2と互換性があり、Thunderbolt 3対応機器同士なら最大40Gbpsの通信が可能。電量供給や映像出力など1本でなんでも対応する万能ケーブルです。なお、Thunderbolt 3の一部に存在するアクティブケーブルはUSB 3.Xをサポートしないので注意が必要。

現在はさらに高速化し、USBの完全上位互換とも言えるThunderbolt 4も登場していますが、カメラやカードリーダーで使うならまだオーバースペックという状況です。USBの互換性が心配ならまずは一家に1本Thunderbolt 3ケーブルを持っておくと安心です。

中原一雄

1982年北海道生まれ。化学メーカー勤務を経て写真の道へ。バンタンデザイン研究所フォトグラフィ専攻卒業。広告写真撮影の傍ら写真ワークショップやセミナー講師として活動。写真情報サイトstudio9を主宰。ライフワークは写真をより楽しむための情報を発信すること。2021年より北海道に移住して活動中。