岡嶋和幸の「あとで買う」

997点目:現代写真史での事件と言われる衝撃の写真集

森山大道『写真よさようなら 普及版』

ネットショップのカートの中にある「あとで買う」には、様子見をしているなど気になるアイテムがたくさん入っています。この連載では、フォトライフに関連する製品を中心にその中身をお届けします。どのような物に興味を持ち、どのような視点で選んでいるのかなど、日々の物欲をお楽しみください。

森山大道『写真よさようなら 普及版』

1972年に刊行された森山大道さんの写真集『写真よさようなら』は、現在に至るまで何度も再刊され、「写真集市場の永遠の問題作にしてロングセラー」と言われています。その影響力の強さは衰えることがありません。衝撃的な1冊ではあるのですが、その後は森山さん自身が長いスランプに陥ることになります。

1975年から私の母校でもある東京写真専門学校(現・東京ビジュアルアーツ)の講師を務められています。直接教えていただいたことはありませんが、森山さんの影響を受けた先輩や後輩はたくさんいます。

本書はその普及版で、2019年に刊行された『森山大道写真集成(3)写真よさようなら』の構成をもとに、装丁を新しくし判型がコンパクトになっています。316ページ、収録作品145点のソフトカバーで、販売価格は4,950円です。手にしやすい価格、そしてサイズと言えるでしょう。第2号から参加した雑誌『provoke』(プロヴォーク)の同人であり、ライバルでもあった中平卓馬さんとの対談も全文が掲載されています。

1967年、福岡県生まれ。東京写真専門学校卒業。スタジオアシスタント、写真家助手を経てフリーランスとなる。作品発表のほか、セミナー講師やフォトコンテスト審査員など活動の範囲は多岐にわたる。写真集「風と土」(インプレス)など、著書多数。主な写真展に「ディングルの光と風」(富士フイルムフォトサロン)、「潮彩」(ペンタックスフォーラム)、「学校へ行こう! ミャンマー・インレー湖の子どもたち」(キヤノンギャラリー)、「九十九里」(エプソンイメージングギャラリー エプサイト)、「風と土」(ソニーイメージングギャラリー)、「海のほとり」(エプサイトギャラリー)などがある。