中井精也のエンジョイ鉄道ライフ「ジョイテツ!」
ゆる鉄探訪 第1回「鹿島臨海鉄道」
沿線の撮影ポイント&ベストショットをご紹介!
2022年2月10日 09:00
今回から、僕が大好きな“ゆる鉄”路線をご紹介する新企画「ゆる鉄探訪」がスタート! 路線の撮影ポイントや見どころのほか、僕がその路線で撮影したBEST SHOTもご紹介しちゃいます。
1回目は茨城県の鹿島臨海鉄道。貨物線用の鹿島臨港線と、今回ご紹介する大洗鹿島線の2路線を有する第三セクター路線です。大洗鹿島線は水戸駅と鹿島サッカースタジアム駅を結ぶ全長53kmの路線ですが、列車はJR鹿島線の鹿島神宮駅まで乗り入れて運行しています。この路線の最大の特徴は、単線で非電化の壮大な高架のうえを列車が走ること。そのため水戸駅付近にあるJRとの共用のものを除けば、約50kmもある沿線に踏切が一つもありません。
こちらは車内から見た高架区間の風景。複線で電化された高架はめずらしくないのですが、単線で非電化の高架はレアなのです。まぁ鉄道ファンでなければ、どうでもいい情報ですが(汗)。
とにかく真っ直ぐで踏切もないので、最高速度はローカル線としてはかなり速い95km/hの区間もあるのです。そう考えると、じつはゆる鉄じゃないかもですね。ここでは列車の最後尾の窓にカメラを押し付けるようにして、自分が乗っている列車の影を入れ低速シャッターで風景を流してみました。
連続する高架を低い位置から見ると、かなり大げさに言えば万里の長城のような規模感があります。田園風景のなか、日没直前の夕日に照らされて赤く輝く高架は、かなりインパクトのある風景です。列車を撮影するなら、車両の足回りが隠れてしまう高架でないほうが撮りやすいのですが、ここでは「単線・非電化・高架」という、大洗鹿島線ならではの存在を強調してみました。
しつこいくらい単線・非電化・高架を狙った作品が続きます。まぁそれだけ鉄道ファンにとって、珍しい存在ということです。こうして遠くから見下ろしてみると、さらに違和感がスゴいでしょ? こちらは大洗港にある大洗マリンタワーの展望室から撮影したもの。広大な高架の上をポツンと走る大洗鹿島線の列車は、ちょっと可愛く見えますね。
大洗といえば、名物の「みつだんご」を忘れてはいけません。こちらは単なるお土産物でなく、地元の人達が日常的に食べる、まさにソウルフードと呼べるものなのです。名前は団子ですが、もち米ではなく小麦粉ベースです。そこに見た目よりもさっぱりした蜜ときな粉がたっぷりとかかっているので、お味としてはどちらかというとホットケーキに近い感じでしょうか。もち米の団子ではないぶん軽いので、無限に食べられそうです(笑)。コロナ禍で何かと「密」になれないこのご時世、思い切って「蜜」を楽しんでみてはいかがでしょう?
そしてもうひとつ大洗と言えば、アニメ「ガールズ&パンツァー」の舞台として一躍有名になりました。それにちなんで、大洗鹿島線にもガルパンラッピングの車両が運行され、ブームのピークが過ぎた今でも大人気となっています。この写真は2016年8月に運行されたガルパンラッピングの3両編成。
前述したように大洗鹿島線はほとんどの区間が高架なので、車両の足まわりや側面がスッキリと撮れる場所はなかなかないのですが、僕はこの「秘蔵ポイント」を知っていたので意気揚々と向かいました。すると僕しか知らないと思っていたのに、すでに30人くらいのカメラマンがスタンバイしていて焦りました(笑)。鉄ちゃんというかガルパンファン恐るべし!
鉄道+アニメといういわゆる「オタク色」の濃い列車なのですが、バカにするなかれ。このアニメのおかげで大洗の街も、大洗鹿島線も大にぎわい。最初は拒否反応をみせていた街の人たちも、今では街ぐるみでこのガルパンブームを使った町おこしをしているのです。そしてブームが一段落した今も、ガルパンラッピング列車はまだまだ大人気なのです。少女と戦車は、街もローカル線も救うのです。
大洗鹿島線の沿線は、日本有数の野菜の産地としても知られています。中でも鉾田市は、野菜の生産量が日本一を誇っているだけに、車窓には関東とは思えないほど大規模な、ビニールハウスの風景が広がります。陸橋から眺めると、広大な土地がビニールハウスに埋め尽くされていました。この違和感のある景色を、ホワイトバランスを電球モードにして、さらに違和感マシマシで撮影。日本離れ? いや地球離れした、ここでしか見られない風景なのです。
繰り返しになりますが、ずっと高架が続き列車の側面が見えない区間の多い大洗鹿島線ですが、ときおりサイドの防音壁がない区間があります。この場所もそのうちの一箇所。しかも背後が北浦なので、高い山や建物がなく、すっきりと夕日と列車をシルエットで狙うことができます。
ちょうど日没のタイミングで列車が通るので、車輪の下に夕日が来るタイミングで撮影。僕はあまり画面の中央に列車を置く構図をつくりませんが、ここではあえて左右シンメトリーの構図にしてみました。なんか北海道で撮ったみたいな、広大なイメージだと思いません?
先ほどシルエットを狙った場所の奥には北浦があり、対岸から眺めると遠くに大洗鹿島線の高架を望むことができます。僕が訪ねたときは満月の夜だったので、北浦の水面に月を反射させたら、みごとなムーンロードになってくれました。ちょっと列車が小さいのですが、列車の室内灯が目立ってくれたので、存在感をもたせることができました。
こちらはいわゆる山をくり抜いたトンネルではなく、森のトンネル。長年列車が葉っぱを削り落とすことで、トンネルのようになったのかな? この場所は列車に乗っていて見つけたのですが、だだっ広い印象の大洗鹿島線にあって、山深いイメージで撮れるレアなポイントだと思います。跨線橋からかなり遠いので、クロップして700mm相当で撮影しています。
まっ平らな畑の中に敷かれた一直線の線路をぶっ飛んで走る大洗鹿島線ですが、丁寧に探したら、魅力的な風景がたくさんありました。
この「ゆる鉄探訪」では、全国のゆる鉄をご紹介しますので、ふだん鉄道を撮らないという方もぜひ参考にしていただき、鉄道写真にチャレンジしていただければ嬉しいです。
中井精也からのお知らせ
ゆる鉄画廊NOMAD仙台
鉄道写真家中井精也の作品を展示・販売するギャラリー&ショップ「ゆる鉄画廊NOMAD」が、仙台の藤崎百貨店にて2022年2月16日(水)〜20日(日)の期間で開催されます。NOMAD初の東北での開催です。東北地方にゆかりのある車両や路線、ゆる鉄の代表作品、グッズをご用意して皆様をお待ちしております。
期間:2022年2月16日(水)〜20日(日)
会場:藤崎百貨店 本館7F(特設会場)
※新型コロナウイルスの感染状況によっては中止となる場合もあります。
※最新の情報は公式ホームページ又は「1日1鉄!」ブログをご覧ください。
・ゆる鉄画廊NOMAD公式HP
https://garou.ichitetsu.com/
・鉄道写真家中井精也の1日1鉄!ブログ
https://ameblo.jp/seiya-nakai/