中井精也のエンジョイ鉄道ライフ「ジョイテツ!」

ソニーα7R IVで撮る!北海道ツアー①

ソニーα7R IV FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS (247mm) 絞り優先オート(F5.6、1/1,250秒) ISO 800 WB:曇天

今回のジョイテツは、ラベンダー咲く季節に訪ねた夏の北海道撮影ツアーの様子をご紹介します。といってもトップの写真は秋っぽいですが(汗)、これは麦の風景だから。だいたいツアーというとあらかじめ決められたルートを旅しますが、僕のツアーは基本的に僕が「本気撮り」する場所に参加者についてきてもらうというスタンスなので、天気や条件によって行き先が変わるミステリーツアーのようなエキサイティングな旅。はたしてどんな旅になったのか、ぜひ一緒にお楽しみください。

ツアーといえば大型バスですが、それでは小回りがきかず、撮影に支障がでてしまいます。というわけで、僕のツアーの移動は大型のバンが基本。これならほとんどの場所に分け入っていけます。今回は3泊4日と短い期間なので列車には乗らず、すべて車移動で撮影を最重視した旅になります。宿泊は旭川に2泊と帯広に1泊。初日となる今日の予定は富良野線の撮影ですが、あいにく雲が多めのお天気。さっそく予定を一部変更し撮影に挑みます。

ソニーα7R IV FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS (400mm) 絞り優先オート(F5.6、1/1,250秒) ISO 200 WB:曇天

この日は雨こそ降らないものの、ところによっては大雨が降るような雲が多い天気。撮影する予定だった美瑛の丘の風景と富良野線の絶景撮影は明日に延期し、今日は途中で撮影しながら、来年(2020年5月)に廃止されることが決まった札沼線に行くことにします。

撮影はツアーに限らず、だいたいみんな計画をたてたら、どんな条件でも予定どおりの場所に行ってしまいがち。その結果、「あぁ天気悪かったんだね」っていうガッカリな写真を量産してしまいます。そんなときは条件にあわせてベストの撮影地にどんどん変更することが、ガッカリしないための最大の方策なのです。

最初に訪ねたのは、北海道らしい直線の道と富良野線を撮れるポイント。ここなら空を入れずに撮れるうえ、参加者のみなさんにも北海道の雄大さを味わっていただけます。この場所は「かみふらの八景」にも指定されているビュースポットで、永遠につづくかと思える直線道路と、その道のはるか先を横切る富良野線を撮ることができます。僕たちが訪ねたときも、大型バスで来た台湾からの観光客のみなさんが撮影していました。と言ってもみんなこの雄大な道を撮影しているだけで、望遠レンズではるか彼方の鉄道を撮っている僕たちを不思議そうに眺めていました(笑)。

ここは道路が主役なので車が走っていないのがベストですが、1台でも車が通ると見通しがいいぶんずーっと見えてしまいます。さらに周辺で工事があるようで、5分おきくらいにダンプカーがのろのろと行き交います。これは難しいかな……と心配していましたが、運良く1台も車がいない状態で撮影することができました。ラッキー!

続いて訪ねたのは三井芦別鉄道の炭山川橋りょう。撮影地である橋の奥に列車が走っているのが見えますが、実はこの鉄道、約30年前に廃止されていて、なんと実際の鉄橋のうえにかつてこの路線で活躍していた機関車が静態保存されているのです。もともとは国鉄根室本線の芦別駅から頼城駅までを結んでいた約9kmの路線で旅客列車も運行していたこともありますが、1989年に廃止になってしまいました。前から訪ねてみたかった場所なのですが、実際に見ると、まるで現役時代の風景のようで感動的な光景でした。

ソニーα7R IV FE 24-70mm F2.8 GM (70mm) 絞り優先オート(F6.3、1/200秒) ISO400 WB:曇天
ソニーα7R IV FE 24-70mm F2.8 GM (50mm) 絞り優先オート(F6.3、1/320秒) ISO400 WB:曇天

さてこちらで構図を変えて撮影した2枚の写真を見比べてほしいのですが、何が違うかわかりますか? 簡単にいえば機関車の位置が違うということですが、ここで注目してほしいのは空です。この日はあいにくの曇り空だったのですが、こういう日の天気にはいつも僕が心がけているルールがあります。それは「白い空は親のカタキと思え」です。

1枚目の写真は以前解説した「せいや君構図」の左上に機関車がある素晴らしい構図なのですが、画面上部に白い空が入ることで、その部分だけが弱い構図になってしまっています。この白い空の部分は、デジタル写真ではほとんどデータがない状態ですので、まるでそこだけ写真が切り取られたような感じになってしまいますし、背景が白いと背景と写真が溶けてしまいます。だからこそ写真の力を弱める「白い空は親のカタキ」なのです。

対して2枚目の写真では、機関車の位置はかなり端に寄っています。しかし白い空が入っていないぶん、画全体がまんべんなく緑で満たされた構図になり、天気の悪さもあまり気にならない写真になっています。

曇天時の「白い空は親のカタキと思え」

ぜひ覚えておいてくださいね。

この写真でもうひとつ驚いたのは、ソニーα7R IVの描写力です。この写真はPhotoshopで100%表示したものですが、さすが約6,100万画素を誇るだけあり、これだけ機関車を小さく写しても、機関車の番号が読めるほどの高精細な描写に驚きました。木の1本1本どころか、葉っぱ1枚1枚まで繊細に描写するほどの細高精細な描写は、この谷全体を臨場感とともに、立体的に表現できています。恐るべしα7R IV!

続いてやって来たのは札沼線の豊ヶ岡駅に近い跨線橋。ここからは秘境駅の雰囲気とともに、豊ヶ岡駅を撮影できる人気スポット。これから廃止になる来年の5月までは、たくさんの人が訪れることでしょう。参加者の皆さんと並んで列車を待ちますが、僕は手前の木を前ボケにするため、一番右の端っこで撮影します。

ソニーα7R IV FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS (400mm) 絞り優先オート(F5.6、1/250秒) ISO1600 WB:曇天

ここでまた2枚の写真を比較してみます。1枚目は僕の狙いのままで、2枚目は同じ列車を写した前のカットです。大きな違いは構図の傾きと明るさ。ざっくりと言えば、1枚目は雰囲気重視の「ゆる鉄写真」で、2枚目は見たままの色の「風景写真」と言っていいでしょう。この2枚の写真の差は、明るさや構図だけでなく、「写真のキャラクター」の違いでもあるのです。

撮影時に写真のキャラクターなんて考えない人がほとんどだと思いますが、僕はかなり意識しています。それは自分の写真のキャラクターを明確にすることで、写真を見る人へ意図が伝わりやすくなると考えているからです。というわけで僕はここであえてハイキーで画面を傾けることで、「この写真は風景写真として記録したのではなく、イメージ写真なんだよ」って伝えたのです。

札沼線は北海道の大都市、札幌から分岐する路線で、途中の北海道医療大学駅までは頻繁に電車が運行されていますが、その先は非電化の超ローカル線になり、途中の浦臼駅までは1日わずか5往復、その先の新十津川までは何と1日1往復しか運転されません。1日1往復の区間を走る列車はすでに行ってしまったので、浦臼までの区間で撮影ポイントを探します。そして見つけたのが、知来乙(ちらいおつ)駅のすぐ横に広がる麦畑。撮影地全景を見るとあまりキレイに見えませんが、皆さんならどう撮りますか? 自分ならこう撮るという構図を、ぜひ想像してみてくださいね。写真右側が駅のホームで、麦畑のわだちの奥で列車が見えます。

ソニーα7R IV FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS (209mm) 絞り優先オート(F5.6、1/1,250秒) ISO800 WB:曇天
ソニーα7R IV FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS (247mm) 絞り優先オート(F5.6、1/1,250秒) ISO800 WB:曇天

駅を入れようとすると「親のカタキ」が入ってしまうので、駅は入れずにローアングルで麦の美しいところだけ切り取ってみました。高い位置だとわだちが目立ってしまうので、ローアングルで麦を前ボケさせています。上下2本の列車が来るので、縦横両方の構図で撮影しました。麦秋の風景が美しい、ローカル線の素朴な風景を撮影することができました。皆さんが想像した構図と同じかな?

初日の宿泊は旭川なので、留萌本線経由で撮影しながら1日目は終了です。

次回のジョイテツでは、いよいよ美瑛の丘の風景と富良野線を撮影した作品を紹介します。お楽しみに!

中井精也からのお知らせ

【ただいま募集中】11月催行、中井精也と行く東北・秋田2泊3日撮影ツアー!

撮影ツアーのお知らせです。11月1日〜3日にかけて、東北・秋田鉄道撮影ツアーを開催します。ツアー中は中井精也が常に同行し、中井精也みずから皆様へ撮影指導を致します。定員にまだ余裕があります為、9月中ごろまで応募期間を延長致します。

ツアー中は専用車で常に移動し、大型バスでは入れない細かな撮影地へ皆様をご案内。早朝から日没まで、砂利道や草地などをグングン進む、大変に本気度の高い撮影ツアーとなります。多少よごれてもよい服装、履きなれた登山靴、雨合羽を持参のうえご参加くださいませ!

撮影はもちろんのこと、ロケハン(撮影地探し)から体験できるのがツアーの醍醐味。専用車で移動するので、不要な荷物は車へ残し持ち歩く必要が無い。(写真は今年7月、北海道ツアーより)
草花の前ボケと列車を狙う、ツアー参加者と中井精也。全員が衣類の汚れを気にしていない所に、本気度の高さが見て取れる。(写真は今年7月、北海道ツアーより)

<ツアー概要>
開催日程:2019年11月1日(金)〜3日(日)
費用:おとな1名 17万1,1000円(税込)
募集締切:9月中ごろまで

<ツアーチラシはこちら>
WFT2019_Tohoku_encho.pdf

<お問い合わせ・お申し込み>
株式会社ワールドファンツアーズ 担当:市村宛に、メールにてお問い合わせください。
info@funtours.jp

ゆる鉄画廊写真展『SMILE TRAIN』開催中

ゆる鉄画廊では、中井精也写真展『SMILE TRAIN』を8月29日(木)〜10月1日(火)にかけて開催致します。中井精也が日本で、そして世界で出会った笑顔の写真作品38点を展示。2009年の初期の作品から、2019年の最新作まで幅広く展示しておりますのでぜひお越しくださいませ。

展示中の作品のほか、過去のテレビや誌面で掲載された作品は、ご希望を頂ければ額装して販売させていただきます。ご要望・ご質問は店頭スタッフまでお気軽にお声掛けくださいませ。

<企画展「SMILE TRAIN」概要>
展示期間:2019年8月29日(木)〜10月1日(火)
入場・閲覧:無料
営業日:平日 午後1時〜午後7時 / 土日祝 午前10時〜午後6時
定休日:毎週水曜 (祝祭日は営業)
ゆる鉄画廊ホームページ:https://garou.ichitetsu.com/

1日1鉄!ブログのご案内

鉄道写真家 中井精也の『1日1鉄!ブログ』は、2004年春からスタートして今年で15年目。『鉄道写真家たるもの、毎日電車の写真を撮るのじゃー!』をモットーに、毎日かならず1枚、鉄道の写真を撮影し投稿しています。

中井精也のゆる鉄画廊在廊日や、写真教室の開催日程、ツアー募集の案内など、最新情報を随時掲載しておりますのでぜひお役立てください。

・中井精也の1日1鉄ブログ(現在):
https://ameblo.jp/seiya-nakai/

・中井精也の1日1鉄ブログ(2019年以前のアーカイブはこちら):
http://www.ichitetsu.com/archives.html

中井精也

1967年、東京生まれ。鉄道の車両だけにこだわらず、鉄道にかかわるすべてのものを被写体として独自の視点で鉄道を撮影し、「1日1鉄!」や「ゆる鉄」など新しい鉄道写真のジャンルを生み出した。2004年春から毎日1枚必ず鉄道写真を撮影するブログ「1日1鉄!」を継続中。広告、雑誌写真の撮影のほか、講演やテレビ出演など幅広く活動している。株式会社フォート・ナカイ代表。2015年、講談社出版文化賞・写真賞、日本写真協会賞新人賞受賞。著書・写真集に「デジタル一眼レフカメラと写真の教科書」「DREAM TRAIN」(インプレス・ジャパン)、「ゆる鉄」(クレオ)、「都電荒川線フォトさんぽ」(玄光社)などがある。2018年5月、東京都荒川区に鉄道写真ギャラリー&ショップ「ゆる鉄画廊」をオープンした。甘党。https://ameblo.jp/seiya-nakai/

■TVレギュラー:「中井精也のてつたび」/NHK BSプレミアム、「ヒルナンデス!沿線フォトさんぽ」/日本テレビ、「ひるまえほっと てくてく散歩」/NHK総合、中井精也の「にっぽん鉄道写真の旅」/BS-TBS、カメラと旅する鉄道風景/CS各局