クルマとカメラ、車中泊

#05:電気をください!

デジタルカメラ、ドローン、MacBook、iPhone、iPad。日々充電しなければならないグッズに枚挙のいとまのない昨今。神様、僕は充電するために生きているんでしょうか? と問いかけたくなるほどだと切に思う。

それは車の中でも同じこと、なんなら撮影に行く途中で充電を済ませてしまいたい。というわけで今回はサブバッテリーシステムを紹介する。システムといっても市販品を組み合わせたもので、90年代から車に合わせて作り直してきた。現バージョンはエブリイ購入とほぼ同時に作ったものなので、ほぼ3年運用していることになる。

2023年現在ではほぼ同一の機能と容量を持ったモバイルバッテリーが登場してきているので、自作する意味が薄れてきた。しかしながら、狭い車内のどこに押し込むかという点が最も肝心。そのための自作という意味合いが大きい。

どこに仕込むか、どんな形にするか

まず仕込んだ場所はカーゴスペースに置いた収納ラックとリアシートの背もたれの間だ。狭いスペースに押し込むため、薄型のバッテリーにする必要があった。

車内にあってはサブバッテリーシステム。車外に持ち出せば単独のモバイルバッテリーとして使える。全容量は定格480Wh

中身はこう。相当に怪しいビジュアルだ(笑)。検問で荷物検査はされたくないなあ。いやいや、法に触れるものは一切使用しておりません。

中身のパーツを列挙すると、12Vリン酸鉄リチウムイオンバッテリー×2、New-Era(サブバッテリーチャージャー)、ソーラーチャージコントローラー、500Wインバーター(直流12Vを交流100Vに変換)、Wi-Fiルーター。そのほかリレーやスイッチ、接続端子である。Wi-FiルーターはiPhoneのテザリングを拡張するため、この中に仕込んでしまっている。

以下に主なアイテムのリンクを紹介する。購入したインバーターはすでに販売終了となっていたが、「500W 正弦波」で検索すると適当なものが見つかるはずだ。

求める機能と接続順

接続のイメージを図にすると下図のようになる。赤矢印は充電、青矢印は電力消費。

求める機能は以下6つ。

①5V直流(USB電源)、12V直流、100V交流の3つが使用できること
②500W程度の家電製品が利用できること
③サブバッテリーの使用状況が車両のバッテリーに影響を与えないこと。つまりサブバッテリーがバッテリー上がりを起こしても、車載バッテリーが上がらないこと
④車両から充電できること
⑤家庭用電源やソーラーパネルなどからも充電できること
⑥簡単に車両から下ろして単独で使用できること

そして、求めた機能とデバイスの相関は次の通り。

①と②はケースに収まる大きさのインバーターの中から適度なものを探した。ポイントは正弦波であること。正弦波でないものはモーターを使う一部の家電が使えないので注意。

③と④はNew-Era走行充電器が担当する。実は今回使ったものは先代からの流用で、購入履歴を見ると2012年だった。なんと11年も使っている。さて、この製品の仕様書ではリン酸鉄リチウムイオンバッテリーには適合しないことになっている。しかし、使用したリン酸鉄リチウムイオンバッテリーにもバッテリーマネージメントシステム(BMS)が搭載されていて、12V車で充電できるようになっているため、このNew-Eraを通して充電しても問題はなかった。ともあれメーカーが推奨していないことは明言しておくが、このシステムではサブバッテリーを空っぽにしてしまっても2時間弱走行するとサブバッテリーを満充電にでき、満足の結果だ。

⑤は別途ソーラーチャージコントローラーを追加することで解決した。別途ACアダプターやソーラーパネルが必要になる。ソーラーパネルも足の早い製品で、購入したものはすでに販売終了となっていたため、以下に同等品を紹介する。

120Wのソーラーパネルを用いて充電した場合、4時間強で満充電となる。また、充電しながら電気も使えるので、日が出ている間ならMacBook Pro(M1 Max)を使い続けても充電量が減ってしまうことがない。

⑥も重要なポイント。大きな電源があるのなら車から離れたところでも使いたいからだ。また、エブリイのようなバンタイプの車の場合、車載バッテリーはアクセスしにくいところに搭載されていることが多い。結果、長いケーブルをひき回して、取り外し可能なコネクターで接続することにした。ここで注意すべきポイントは最大30Aという非常に大きな電流が流れることだ。そこで、ケーブルにはジャンプスタートに使う50Aケーブルをカットして、コネクターにはラジコン用バッテリーなどに使われるEC5という規格のコネクターを使用した。このコネクターの耐圧は60Aである。

最大電流を超える仕様の太いケーブルで車載バッテリーと繋ぐ。内装に小さい穴を開けてケーブルをひき回した

120Wソーラーパネルは広げると結構大きい。畳めば厚み4cm程度で車内の隙間に置いておける。屋根に常設する方法もあるが、走行充電があるので、1か所にしばらく留まる際にのみ必要な装備であることから、折りたたみ式を選んだ。

実は以前、車の屋根に常設できる軽くてフレキシブルなPET素材のソーラーパネルを組んだことがあるのだが、紫外線によって硬化し、3年持たずに割れてしまった。そうしたことからも、折りたたみ式が正解のように思う。住宅の屋根に設置するようなハードな素材も検討対象だが、重いことと飛石などで割れてしまう可能性があるので、大きく背の高い車両以外には不向きだろう。

バッテリーの種類について

僕のシステムで使っているのはリン酸鉄リチウムイオンバッテリーだが、大きな括りとしてリチウムイオンバッテリーの一種ということになる。リチウムイオンバッテリーというと、発火や爆発の事故をよく耳にするが、これらはリチウムポリマーバッテリーというもので、やはりリチウムイオンバッテリーの一種だ。同じリチウムイオンバッテリーの一種であるがリン酸鉄リチウムイオンバッテリーには発火の危険はないとされており、旅客機のフライトレコーダーにも使われている点からも安心できるものである。よって、自作するにせよ市販品を購入するにせよ、サブバッテリーとして使う大型のバッテリーにはリン酸鉄リチウムイオンバッテリーをチョイスしてほしい。

一方で、リン酸鉄リチウムイオンバッテリーは瞬時に大きな電力を取り出しにくいという性質がある。今回使用しているバッテリーは車載用となっているが、セルモーターなど瞬時に大きな電力が必要なものには向いていないのだ。例えばリン酸鉄リチウムイオンバッテリーを車載バッテリーとして使用した場合、エンジンがかからないことがある。バッテリーは用途に合わせて種類を選ぼう。

走行充電+サブバッテリーというシステムは、走行中の余剰電力を貯めておいて使うという、いわばエコなシステムだ。まあ、これを載せているのが純ガソリン車であるのでなんとも言えないが。世間の電動化の流れからは、斜め上の方向とも言える。そろそろEV車に買い替える友人も現れてきたが、EV車になったら、今みたいな車中泊旅行はできないなあ、とぼんやり考えている。誰もいない山の中や海辺で電欠したらどうしようと考えるのだ。するとEV車を充電できる発電機を積んでおくのが正解かなぁと諸々思案をめぐらせたりしている。そして巡って最初に戻るのだ。あぁ、神様、僕は充電するために生きているんでしょうかと(笑)。

1962年東京生まれ。日本大学芸術学部卒業後、出版社マガジンハウス入社。社員カメラマンを経て2010年にフリーランスとなる。主に風景・星景を撮影し、星空の撮影は中学校で天文部に入部した頃からのライフワーク。またドローンでの撮影や、国家資格の審査員も行なっている。コロナ禍の影響で拠点を九十九里に移してから、ネット通販、特にAmazonの利用機会が増加。ちょっとくらい評価が悪くても買ってしまう“密林の探索者”を自認している。