赤城耕一の「アカギカメラ」

第123回:禁断の「オトナの自由研究」——ニコンZボディでミノルタ/ソニーAマウントレンズを使う

先日のことですが、ミラーレス機を最近購入し、写真をはじめたアマチュアカメラマンのビギナーの方に「なぜカメラメーカーが異なると交換レンズを共用できないのですか?」という質問をいただきました。

現在使用しているカメラから、異なるメーカーのカメラに乗り換えようと思えば、マウントも変わってしまうことが普通ですから、交換レンズもそれに合わせてすべて買い替えなければならないのは当然のことだと読者のみなさんは理解されていると思いますが、これを当たり前のこととする私たちはそれでいいのでしょうか。

そういえば、はるか昔の話ですが、筆者の父親も、筆者が駆け出しの時代、どのカメラメーカーを選ぶか悩んでいたときに、なぜ、異なるメーカー間で、レンズを共通使用できないのか、同じ疑問を持っていましたね。カメラのことなどなにも気にしないようでいて、この疑問はなかなかツボをついていたわけです。

筆者はこの質問を笑うことはできません。そうです、ビギナーさんの質問はたしかに的を射ているわけです。過去、ライカスクリューマウントとかプラクチカマウント、Kマウントなどユニバーサルマウントを目指したメーカーもありましたが、限られたメーカー間にとどまる格好になってしまいました。

このレンズは開放でのボケよりも少し絞った方が整うことが経験でわかっています。とても素直な描写です。
ニコン Z5II/SONY 50mm F1.4/50mm/絞り優先AE(1/8,000秒、F2.8、−0.7EV)/ISO 400

いまは「Mマウント」や「マイクロフォーサーズマウント」、「Lマウント」がユニバーサルマウントの役目を果たしているところもありますが、これもすべてのメーカーが賛同しているわけではありません。

メーカー側としては1度カメラを購入したら、他のメーカーへの浮気は許しませんよ。という思惑もあるでしょう。メーカーとしては一眼レフユーザーからミラーレス機に買い替えていただくため純正のアダプターを用意するのは当然なのですが、一方で他メーカーのマウントの異なるレンズの面倒はみたくないわけであります。

交換レンズはカメラボディよりもはるかに利益率が高いそうですから、カメラメーカーとしては自分のところだけにお客さまを囲い込みたくなるのは当たり前ですね。

東京の空を旅客機が飛んでいても誰も見向きもしませんが、筆者はいまだについ撮影しちゃうわけです。この時期にしてはヌケのいい描写です。
ニコン Z5II/SONY 50mm F1.4/50mm/マニュアル露出(1/1,250秒、F11)/ISO 400

先のビギナーさんには「原則として、異なるメーカーのカメラとレンズは互換性はない」と答えるしかなかったわけですが、方法がないわけではありません。いまはとくにサードパーティから膨大なマウントアダプターが用意されていて、マウントのかたちだけでなく、電気的にも異なるメーカー間を繋ぐ試みが常に研究されているようです。

「電子マウントアダプター」と呼ばれるこれらによってAE・AFが使用できるのなら、異なるメーカーのレンズでも、純正レンズと同じ感覚で使用することができますからストレスが軽減され、先のビギナーさんの疑問にも応えることができるのですが、ただ、手放しでオススメすることはできません。

AFの合焦の精度とか挙動、機能的な制限などに加えて、マウントアダプターを使用した上での事故が起こることも皆無ではなく、これらはすべて自己責任になるわけで、このことをビギナーさんにご理解いただくのは少々ホネが折れますね。

古いレンズなのにクリアなのは、ニコンZ5IIの画質がいいからなのでしょうか。歪曲収差以外は問題ないですね。
ニコン Z5II/MINOLTA AF ZOOM 35-70mm F4/35mm/絞り優先AE(1/1,000秒、F8.0、−0.7EV)/ISO 200

電子マウントアダプターの種類が多いのは、ソニーα(Eマウント)シリーズ用のようです。これはミラーレス機の黎明期からαが頑張っていたからでありましょう。

αのすごいのはモーター非内蔵のAマウントレンズをEマウントに変換し、さらにAE・AF動作を可能にした純正電子アダプター「LA-EA5」を用意したことで、これはいまだにニコンも成し遂げていない快挙ともいえ、実用面においても感動的な動作をするマウントアダプターです。「LA-EA5」を使用してのAマウントレンズの動作感については本連載でもすでに報告しています。

今回は焦点工房からお借りした、EマウントレンズをZマウントレンズでAF動作するアダプター「Megadap ETZ21 Pro+」と、「LA-EA5」を2重に連結して、モーター非内蔵のAマウントレンズをニコンZでAFによる撮影ができないかを試みてみることにしました。

EマウントレンズをニコンZマウントボディに装着できる電子マウントアダプター「Megadap ETZ21 Pro+」(左)とソニー純正のAマウント-Eマウントアダプター「LA-EA5」。これを2重連結することで、ミノルタやソニーのAマウントレンズをニコンZ5IIに装着してみました。

手持ちのEマウントレンズが少ないという理由もあるのですが、Aマウントのモーター非内蔵レンズの動作を見たかったという興味からであります。使用カメラはニコンZ5IIを用いています。良い子は真似してはいけない禁断の「オトナの夏休みの自由研究」というわけであります。

まったく個人的な話でいえば、筆者は、ミノルタやソニーのAマウントレンズの味わいがどうのという話にはほとんど興味がなく、異なるもの同士を結びつけることのできる絆というか、“連結の知恵”に強い興味があるわけです。

ニコンはレンズ内にAF駆動モーターを内蔵しないニッコールSやDタイプレンズをニコンZボディにおいて、AF動作させることのできる電子アダプターをいまだに用意していません。

この理由は先に述べたようにニコン独自の厳しい基準によるAF精度の維持や、これにかかるコストの問題もあると考えられますが、モーター非内蔵のAマウントレンズをニコンZに装着し、AF撮影をすることができたら痛快だし、もし実用的に使うことができれば儲けものじゃないかと考えるわけです。とくにミノルタ時代のAマウントレンズは中古市場では冗談ではないかと思えるくらいの価格がつけられていたりします。

至近距離は性能が落ちるかなあと思いましたが、まったく問題ない描写をしますね。少し湿度の高いような再現がいいですね。
ニコン Z5II/SONY 85mm F2.8 SAM/85mm/絞り優先AE(1/1,600秒、F4.5、−0.7EV)/ISO 100

ニコンユーザーのみなさんは真面目な方が多いので、一眼レフ時代はサードパーティのレンズやアクセサリーを自身のニコンカメラボディに装着することを嫌う方も少なからずいらしたのですが、ミラーレス時代を迎えてからは、少し事情が変わってきたように思います。

ニコンZのフランジバックの短さや、センサー前の極薄カバーガラスの特性を利用し、マウントアダプターを使用することで他社メーカーのレンズやオールドレンズを使用するユーザーも増えてきたように見受けられるのです。これはミラーレス後発の優位性というものでしょう。

異なるカメラメーカーのカメラやレンズを電子アダプターで繋ぐのは、電子信号の解析など、かなり高度な技術が必要なることは素人にも想像できることです。

筆者はこうした技術的知識とは1番遠いところにいるので、なぜそんなことが可能になるのか、1ミリも理解することはできません。

ワイド端での撮影です。タル型の歪曲だけは少しだけ気になりますけど。素晴らしく良い画質です
ニコン Z5II/MINOLTA AF ZOOM 35-70mm F4/35mm/絞り優先AE(1/2,000秒、F8.0、−0.7EV)/ISO 400

そこで、知人の電気に詳しいエンジニアに、筆者にもわかるように電子マウントアダプターの仕組みについて、簡単に解説してくれと頼んだら、彼は呆れるように私をみて、「早い話が、カメラを騙す、いや勘違いさせて動作させているんじゃないのかな」といっていました。

今回の例でいえば、「Megadap ETZ21 Pro+」と「LA-EA5」を2重連結させ、Aマウントレンズを使うと、Zボディはニッコールが装着されているのだと思い込み、AFを動作させてようと頑張るようなのです。おー! なるほどそうなのか。もちろん機能的な面では完全なウラはとれていませんけどAFは動作するのです。

使用した印象、結論を書いてしまいますけど、AF速度については不満を感じませんでした。Z5IIになって、積極的に使うようになったオートエリアAFとかAF-Aモードも純正Zレンズ並みにAマウントレンズで使用することができます。正確かどうかは不明ですが、各種撮影モードも機能し、被写体認識、顔認識や瞳認識も反応します。ボディ内の手ブレ補正も機能するようです。

測定器を使用するなどしてAFをはじめとする各種機能の精度を検証したわけはありませんが、実用上は十分であることがわかりました。

街中で目立ったマネキンがいたのでカメラを向けてみたら、きちんと手前の顔に顔認識AFするわけです。そのままシャッターを押してしまいました。
ニコン Z5II/SONY 50mm F1.4/50mm/絞り優先AE(1/1,000秒、F4.0、−0.7EV)/ISO 400

ただ、1つだけ、問題がありました。

どういうわけでしょうか、連写をするとAE時の露出が安定せず、ブラケッティングするようにバラついてしまうことがあるようです。

この現象は個体差かもしれず、常にこの現象が出現するわけでもないのではっきりと申し上げにくいのですが、使用した限りでは、コマ速を高速に設定にするほど、現象が出現する確率が上がるようなので、対処としてコマ速度を遅くした連写にするか、単写設定、あるいはマニュアル露出に設定にすれば防ぐことができるようです。

この現象を大きな問題とするか、しょせん反則技の遊びなのだから仕方ない、実用的には有効なのだから諦めるという考え方もあります。人それぞれの価値観の違いとなりますが、筆者は実用面を重視することにしました。お遊びだと考えれば、目くじらを立てる必要はないと考えています。

撮影をやりなおせる条件では、結果が悪ければ撮影をやり直せばいいことですし、なんとしてもここはイッパツで決めねばならないという条件では、マニュアル露出で撮影すれば済むことだからです。言うまでもなく大事な撮影にはこうしたお遊びをしてはいけません。

とはいえ、ここだけの話、筆者は先日のアサインメントの撮影で、今回のAマウントレンズとニコンZ5IIの組み合わせで使用してみたのですが、出来上がりはなんら問題にはなりませんでした。でもね、念のため繰り返しますが、良い子にはおすすめしないことを強調しておきます。

MINOLTA AF 20mm F2.8

ソニー時代になっても同じスペックのレンズの設計変更はないままでしたから、もともと優秀なレンズだったのです。

脊髄反射的にシャッターを切りましたが、AFもAEもうまく機能しました。歪曲はよく補正されています。
ニコン Z5II/MINOLTA AF 20mm F2.8/20mm/絞り優先AE(1/640秒、F13、−0.7EV)/ISO 200
明暗差が大きいのでうまく再現するかなあと心配でしたが、なんのことはなく見た目に近い感じで写りました。素晴らしいですね。
ニコン Z5II/MINOLTA AF 20mm F2.8/20mm/絞り優先AE(1/400秒、F11、−0.7EV)/ISO 200
新宿の裏通りを歩いていましたら、店頭に見かけないオブジェが。腰をかがめるのが面倒な年寄りなのでノールックで撮影したのですが、うまいこと収まってました。
ニコン Z5II/MINOLTA AF 20mm F2.8/20mm/絞り優先AE(1/320秒、F4.0、−0.3EV)/ISO 200

MINOLTA AF 24mm F2.8

コンパクトな24mmレンズで性能も優秀です。単焦点の余裕みたいなものも感じられます。Z50IIにつけて35mm相当画角で使いたくなります。

ボケ味云々を語るレンズではないのですが、とても自然で良い感じです。真面目な人が設計したんだろうなという印象です。
ニコン Z5II/MINOLTA AF 24mm F2.8/24mm/絞り優先AE(1/1,250秒、F4.0、+0.3EV)/ISO 400
条件があまり良くないのですが、見た目に近い再現で嬉しくなりました。合焦点の画質はいいですね。
ニコン Z5II/MINOLTA AF 24mm F2.8/24mm/絞り優先AE(1/640秒、F8.0、±0.0EV)/ISO 400

MINOLTA AF ZOOM 35-70mm F4

ミノルタα-7000時代(1985年)の標準ズームレンズ。とてもコンパクト。鏡筒が最も短くなる位置はテレ端の位置。ゴム部分が加水分解して悲しい姿になりました。

明暗差、コントラストが強い条件。ハイライトの調子がいいのは謎なくらいです。
ニコン Z5II/MINOLTA AF ZOOM 35-70mm F4/60mm/絞り優先AE(1/1,000秒、F8.0、−0.7EV)/ISO 200
見た目が眩しいくらいな白い壁と青空。レンズの欠点が露呈するぜと思ったら、クリアな描写になりました。
ニコン Z5II/MINOLTA AF ZOOM 35-70mm F4/70mm/絞り優先AE(1/1,600秒、F11、−1.0EV)/ISO 400
おまけみたいなマクロ域(手動設定)で緻密な描写は望めないのではないかと思ったのですが、これもサクッと写りますね。少し線が太いくらいですかねえ。
ニコン Z5II/MINOLTA AF ZOOM 35-70mm F4/70mm/絞り優先AE(1/2,000秒、F11、−1.0EV)/ISO 400

SONY 50mm F1.4

伝統のガウスタイプの50mm F1.4です。これはミノルタ時代から変わらずですね。モーターは非内蔵です。個人的に好きなレンズであります。

タル型の歪曲収差は確認できますが、コントラストの強い条件だけど、階調の再現がいいですね。
ニコン Z5II/SONY 50mm F1.4/50mm/絞り優先AE(1/2,000秒、F8.0、−0.7EV)/ISO 400
これも明暗差の大きな条件ですが、良い感じの再現です。フォーカスは何も言わなくても目玉に合いました。
ニコン Z5II/SONY 50mm F1.4/50mm/絞り優先AE(1/8,000秒、F2.0、−1.3EV)/ISO 400
古い家。もっとシャドーが落ち込むと思ったら、あっさりと撮れました。少し手を入れればもっと良くなりますね。
ニコン Z5II/SONY 50mm F1.4/50mm/絞り優先AE(1/800秒、F8.0、−0.7EV)/ISO 400

MINOLTA AF MACRO 50mm F2.8

ミノルタAマウントの初期の標準マクロレンズです。非常に不人気で、廉価です。1度呑みに行くのを我慢すれば購入することができます。デザインはものすごくカッコ悪く、鏡筒もツルツルです。

AFも問題なく、正確に合焦します。鏡筒はカッコ悪いですが、素晴らしくよく写ります。
ニコン Z5II/MINOLTA AF MACRO 50mm F2.8/50mm/絞り優先AE(1/800秒、F4.0、−0.7EV)/ISO 100
AF-Aのままでカメラを向けたら、筆者が望んでいたピント位置の「Q」に合焦しました。感動です。
ニコン Z5II/MINOLTA AF MACRO 50mm F2.8/50mm/絞り優先AE(1/50秒、F4.0、−0.7EV)/ISO 800
昭和時代のカメラカタログの作例みたいですが、筆者もレンズも昭和なのでこれでいいわけです。スッとストレスなく合焦しました。Z5IIは偉いですよね。
ニコン Z5II/MINOLTA AF MACRO 50mm F2.8/50mm/絞り優先AE(1/80秒、F4.0、−0.7EV)/ISO 800

SONY 85mm F2.8 SAM

今回使用したAマウントレンズでは唯一、レンズ内にAFモーターが内蔵されています。音もなくスッと合焦します。鏡胴もマウントもプラスチッキーでものすごくお安い作り込みです。レンズ構成は4群5枚ですが写りは素晴らしかったりします。質量は175g。至近距離では実効F値が表示されますが、これは純正ニッコールレンズと同じです。

ブタのオブジェの目玉に自然に合焦しました。自分の意図を見抜かれているが如くで悔しいです。
ニコン Z5II/SONY 85mm F2.8 SAM/85mm/絞り優先AE(1/100秒、F5.6、−0.3EV)/ISO 100
工事中にセメントが乾く前に麻雀牌を落とした。のかもしれませんが、とある場所で見つけました。俯瞰撮影ですが、均質性は抜群です。
ニコン Z5II/SONY 85mm F2.8 SAM/85mm/絞り優先AE(1/200秒、F4.5、−0.7EV)/ISO 100
大口径ではない85mmなんか価値があるのかという声が聞こえてきそうですが、余裕です。フォーカスは何も指示していないのに鳥のオブジェの目玉に合いました。
ニコン Z5II/SONY 85mm F2.8 SAM/85mm/絞り優先AE(1/2,500秒、F3.3、−0.7EV)/ISO 100

MINOLTA AF APO TELE ZOOM 100-300mm F4.5-5.6

小口径の望遠ズームレンズです。コンパクトで携行性は優れます。今回の試用では少し線の太い描写という印象を持ちました。実用性は十分です。大ボケ状態からAFを起動すると合焦に多少の時間を要しますので、使用にあたってはコツが必要です。

中庸な距離だとテレ端でもなかなか良い描写です。圧縮効果を狙いました。
ニコン Z5II/MINOLTA AF APO TELE ZOOM 100-300mm F4.5-5.6/300mm/絞り優先AE(1/400秒、F9.0、−0.7EV)/ISO 100
特別にシャープな印象はありませんが、テレ端側の描写も安定しているように感じるのはアポタイプのレンズだからでしょうか。
ニコン Z5II/MINOLTA AF APO TELE ZOOM 100-300mm F4.5-5.6/300mm/絞り優先AE(1/400秒、F8.0、−0.7EV)/ISO 100
ワイド端の100mmの設定では、テレ端方向よりも性能は優秀です。こういうところにレンズの生まれた背景というか時代を感じてしまいますね。
ニコン Z5II/MINOLTA AF APO TELE ZOOM 100-300mm F4.5-5.6/100mm/絞り優先AE(1/1,000秒、F8.0、−0.7EV)/ISO 100

【2025年8月5日】初出時に「Megadap ETZ21 Pro」と記載していましたが、正しくは「「Megadap ETZ21 Pro+」になります。お詫びして訂正いたします。

赤城耕一

1961年東京生まれ。東京工芸大学短期大学部写真技術科卒。一般雑誌や広告、PR誌の撮影をするかたわら、ライターとしてデジカメ Watchをはじめとする各種カメラ雑誌へ、メカニズムの論評、写真評、書評を寄稿している。またワークショップ講師、芸術系大学、専門学校などの講師を務める。日本作例写真家協会(JSPA)会長。著書に「アカギカメラ—偏愛だって、いいじゃない。」(インプレス)「フィルムカメラ放蕩記」(ホビージャパン)「赤城写真機診療所 MarkII」(玄光社)など多数。