赤城耕一の「アカギカメラ」

第85回:先代での不満解消。ソニーα7CR+純正アダプターで輝くミノルタαレンズ

新年あけましておめでとうございます。年明け早々から地震や事故が立て続けに起こりまして、お屠蘇気分はぶっ飛び、筆者は早くも2日から平常運転中でございます。被災されたみなさまには心よりお見舞いを申し上げます。

波乱の2024年の幕開けとなりましたが、今年も「アカギカメラ」をどうぞよろしくお願いします。

で、年明け一発目は何をヤルかですが、昨年からの続きですが、ソニーα7CRの話をしようかと。これは以前、α7Cの時にも取り上げたのですがが、今回はうちにあるいくつかのAマウントレンズやEマウントサードパーティレンズをどう無駄にすることなく使用するかということをまず考えてみたいわけであります。

α7CRは約6,100万画素の高画質機だから、その鮮鋭な画質を得るためには古いレンズを使用するのは無意味であるという、お決まりの論調があることは存じております。

本連載では、いわゆるオールドレンズの味わい云々よりも、異なるマウント、一眼レフカメラ時代のレンズをどう未来に繋げてゆくかという各メーカーの努力に光を当ててきたつもりであります。

これはマウント変更により失われてしまうかもしれないユーザーのレンズ資産を守るためにという、きわめて実用的なお話を中心としています。これまでの筆者自身の経験からは、一般的な写真制作を行う多くの場合において、旧来の一眼レフ用レンズを最新のミラーレス機に使用しても、そう大きな問題にはならないという結論を得ています。

繰り返しますが、これは個人の判断であります。広告のために徹底した高画質画像が必要だとか、目的の写真を得るための素材の一部として、鮮鋭な描写の画像が必要だとか、緻密な風景写真を制作するために命を賭けてます、あるいは超絶な巨大プリントを作るため、しいては偵察衛星から某国の秘密基地を探るために撮影します。というみなさんには、もちろん当てはまらないわけであります。とにかく高画質を追求するのだという方はこの先は腹立たしいかもしれないので、あらかじめお断りしておきます。

筆者の見解としては、趣味なんだし、そうお金をたくさんかけけることなく、まだ松の内だしさ、少しユルくやりましょうや、ということです。

筆者はコニカミノルタがカメラ事業から撤退するにあたり、これに失望して、ミノルタブランドのαカメラとかAマウント交換レンズの多くを処分しました。

その後、ソニーがAマウントのデジタルカメラを発売するにあたり、一部のAマウントのレンズを買い直したりもしましたが、ソニーがEマウントのミラーレスαを中心にシステムの展開をするようになってからは、Aマウントの新品、中古のレンズが廉価に販売されているケースもあり、これらをマウントアダプターを使って組み合わせることを前提に入手したりもしました。

AマウントとEマウントを繋ぐ新しいアダプターLA-EA5が登場してからは、利便性がより向上しました。使用カメラにもよりますが、モーター非搭載のAマウントレンズでも像面位相差AFに対応、瞳AFやリアルタイムトラッキングなどの被写体認識も機能するという優れもののアダプターだったからです。

LA-EA5。5時方向にあるAFカプラーが、モーター非内蔵のAマウントレンズの受け軸にカップリングして、AF駆動するという、昔ながらのAF技法をソニーは見捨てませんでした。しかも、メカ駆動の絞りにも対応します。それなのにマウントアダプターはデブではありません。素晴らしい

そうです。あのメーカーに見習っていただきたい仕様のアダプターなのであります。ホント。

機能の制限や、一部にはAFが動作しないレンズもありますが、ソニーのアナウンスによればLA-EA5には新開発の小型AF駆動ユニットを搭載、絞り駆動ユニットも含めて機能を凝縮しAマウントレンズと同じ直径にすることに成功したとあります。

このためα7CRに装着しても違和感のないホールディングバランスになります。前機種α7Cではモーター非搭載のAマウントレンズでAFが駆動せず、筆者としては少々不満だったわけです。これはα7Cを取り上げた本連載の最後に強く申し上げております。

もっとも、さすが物持ちのよい筆者といえど、モーター非内蔵のAFレンズはそう多く所有していませんが、AFが動作するならば、旧ミノルタ時代の廉価で面白そうな中古Aマウントレンズを視野にいれてもいいのではないかと考えるようになりました。セミ・オールドレンズって感じですね。

ミノルタ時代のAマウント大口径レンズは、αのEマウント機で使用した方が、像面位相差AFによる精度の高いフォーカシングで力を発揮できそうにも思います。

実際のLA-EA5と非モーター内蔵のレンズを組み合わせた時の動作ですが、シャーッという色気に乏しい音を発しながらスパッと止まります。フォーカスをサーチする感じがほとんどないのが素晴らしい。潔いですね。うちにある生き残りでいちばん古いAマウントレンズ、ミノルタAF ZOOM 35-70mm F4も問題なく動作しました。モーター内蔵のレンズの場合は当たり前ですが、音もなくスパッと合います。レンズによっては周辺で測距すると怪しい動きをするものもありましたがおおむね問題なく動作しました。

ミノルタAF ZOOM 35-70mm F4
ミノルタα-7000時代の標準ズームレンズです。もちろんモーターは非内蔵です。登場は1985年ですから、もうすぐ40年ですね。小型軽量ですが、デフォルトでの最短撮影距離は1mであります。一応、マクロの切り替えはあります。小型軽量であるのは魅力です。じつはリサイクルショップで300円で拾ってきた個体ですが、素晴らしくよく写りました
素敵なダンプと街中で遭遇したので撮影しました。スルスルとカメラは顔にフォーカシングしてくれたので、シャッターを押しました。ヌケが良く感じるのは冬の天気か、レンズの性能か、α7CRの画像処理か
α7CR/AF ZOOM 35-70mm F4/絞り優先AE(35mm・F9・1/1,250秒・-0.7EV)/ISO 400
畑にあった籠。もちろん籠ではなさそうですが、遊具でもないですね。都市農業の畑には時おり不思議な光景が広がっていたりします。ディテールの描写は問題ないです。ハイライトが僅かに滲むように見えるのはレンズのコーティングの劣化か、鏡筒内の内面反射か
α7CR/AF ZOOM 35-70mm F4/絞り優先AE(40mm・F9・1/2,000秒・-1EV)/ISO 400
ソニー50mm F1.4
個人的には50mm標準レンズは、絞りの効くタイプの方が好きなので、このレンズは手放せません。ガウスタイプのレジェンド的な存在です。モーターは非内蔵です。筆者が入手した個体は、レンズ先端銘板にシールが貼られています。これを剥がすと「MINOLTA」の文字が出てきそうなのです
球面収差のにじみを生かす使い方もあるわけですが、筆者は若干収差が残っているな、くらいの絞りで設定することが多いですね。フォーカスの芯が欲しいからです
α7CR/50mm F1.4/絞り優先AE(F1.8・1/1,600秒・-0.7EV)/ISO 100
絞り込んでみると、優秀な描写をします。古い設計のレンズなのにα7CRの期待の描写を裏切らないというか、うまく助けています
α7CR/50mm F1.4/プログラムAE(F11・1/250秒・-0.3EV)/ISO 200
ソニー85mm F2.8 SAM
ミノルタ時代にはなかったレンズですね。いわゆるズームレンズの次の1本、中望遠の撒き餌として用意されたのかな。85mmは明確なポートレートレンズですが、開放F値が2.8では、現役時代では人気はなかったんじゃないかなあ。鏡胴からマウントに至るまでプラスチックです。個人的にはこの仕様だと暴れたくなるのですが、見かけによらず超音波モーター内蔵で、スムーズに動作して、しかもよく写ります
最短撮影距離0.5mというのは素晴らしい仕様です。F2.8と明るさ抑えめのため余裕あるのでしょうか。シャープネスとボケのバランスがとれています
α7CR/85mm F2.8 SAM/絞り優先AE(F4・1/4,000秒・-1EV)/ISO 100
中望遠スナップって、中平卓馬を思い出しますけど、35mmレンズばかりを使用している筆者としてはたまには、85mm縛りも悪くないと思いました。素直なボケですね
α7CR/85mm F2.8 SAM/絞り優先AE(F3.5・1/1,600秒・±0EV)/ISO 100

良い機会なのでMFのEマウントレンズもコシナ・フォクトレンダー、トキナーのFIRINを使ってみましたが、いずれも電子接点を有しており、カメラボディ側と情報のやり取りが行われているため、レンズのフォーカシングと表示拡大が連動し、ストレスのない撮影をすることができますし、Exifも記録されます。ワイド系レンズでは距離指標が役に立ったことはいうまでもありません。

先に述べましたが、約6,100万画素センサーとの勝負に明確に敗れたと決定づけるレンズもなかったことをご報告しておきます。もちろん、筆者独自の使い方ですし、個人の見解による結論であります。

フォクトレンダーAPO-LANTHAR 50mm F2 Aspherical
50mmのアポランターの初号機はEマウントでした。これを携えて青森でレビュー撮影したことを記憶しております。とにかく高性能なのでα7CRのポテンシャルを引き出したいという人には必要なレンズです。どこまでも拡大できるのではないかと思わせる凄みがありますね。線が細く高性能なので、通常の50mmレンズよりも被写界深度が浅く見えます。実際に絞りを開いていると、フォーカスの頂点が明確になるので、慎重にフォーカシングする必要があります
手が切れるようなエッジ描写です。条件的にバランスの取れた明暗差でしたが、うまく双方のニュアンスを拾ってくれています。レンズの性能かα7CRが優れているのか。お互いの協力によるものか
α7CR/APO-LANTHAR 50mm F2 Aspherical/絞り優先AE(F8・1/1,600秒・-0.7EV)/ISO 400
金属のディテールだけではなくて、油のぬめりを捉えてきます。画面全体を仔細に描写したい風景とか山岳写真などにも良さそうです。しつこいようですが、フォーカシングと手ブレには注意しましょう
α7CR/APO-LANTHAR 50mm F2 Aspherical/絞り優先AE(F8・1/2,000秒・-0.7EV)/ISO 400
フォクトレンダーNOKTON 40mm F1.2 Aspherical
40mmレンズって最近見直されていませんか。愛用者が増えているように思います。筆者としては、広角と標準の間に位置していることもあり、なんだかどっちつかずだなあと思うこともあれば、うまくハマると名玉にしたくなるという繰り返しですね。単なる気まぐれかもしれません。本レンズは仕様も魅力的ですが、α7CRに純正レンズのようによく似合ってしまいますね
街の工具店ですね。昨今は大型のホームセンターにお客さん奪われちゃうんでしょうけど、小回りのきく仕事をしますという感じが店頭にみなぎります。日陰の描写ですがディテール再現は素晴らしいですね
α7CR/NOKTON 40mm F1.2 Aspherical/絞り優先AE(F5.6・1/125秒・-1EV)/ISO 200
こうしたリフレクションを生かすには、ガラス面の描写が美しくないとサマにならないものですが、さすがノクトンという印象です。階調の繋がりの良さも貢献しているようです
α7CR/NOKTON 40mm F1.2 Aspherical/絞り優先AE(F8・1/250秒・-0.3EV)/ISO 200
シグマ24-105mm F4 DG OS HSM
ものすごくデカくて重いレンズですが、α7CRとの不釣り合いな感じがユーモラスでいいわけです。個人の感想です。AFエリアを画面周囲にまで拡げるとAFがうまく働かないようです。ならば文句を言わずに中央近辺で使えばいいわけです。描写性能は間違いないですが、高周波成分の多い被写体だと四隅にわずかな乱れがありました
ワイド端ではわずかなタル型収差がありますが、絞りを変えてもシャープネスに変化はありません。筆者の感覚だとフォーカスリングとズームリングの位置関係が逆のようにも思えますが、筆者は最初に焦点距離を決めて撮影するので問題はなく
α7CR/24-105mm F4 DG OS HSM/プログラムAE(24mm・F10・1/1,000秒・-0.7EV)/ISO 400
画面四隅がわずかに乱れますが、実用上は問題になりません。合焦点はシャープで全体にコントラスト高く、品格のある描写です
α7CR/24-105mm F4 DG OS HSM/プログラムAE(45mm・F10・1/500秒・-0.3EV)/ISO 400
テレ端です。空母のカタパルトみたいで気に入っているセメント工場ですが、金属皮質とハイライトの描写がまたいい感じです
α7CR/24-105mm F4 DG OS HSM/プログラムAE(80mm・F9・1/2,500秒・±0EV)/ISO 400
シグマ50mm F1.4 DG HSM
現行品の50mm F1.4 DG DN | Art のEマウントには絞り環が採用されグラッときましたが、筆者はAマウントのこちらをしつこく使うことにしてまして。だって、文句ないんですよ、筆者のレベルでは。開放からよく写りすぎるし。ちょっと重たいけど。ただ、開放での味わいが欲しい時は、先のソニー50mm F1.4を使います
近くの小学校の庭に咲いていた菜の花。最短撮影距離で絞り開放であります。右上に奇妙な二線ボケありますが、これだけ写ればツッコミどころないですね
α7CR/50mm F1.4 DG HSM/絞り優先AE(F1.4・1/160秒・-1EV)/ISO 400
昭和世代ですから枯れススキを撮影せねばなりません。穂の部分が良い感じに描写されていますが、ゆるふわ写真には向いていないレンズでありますね。ディテール再現を徹底追求したくなるレンズです
α7CR/50mm F1.4 DG HSM/絞り優先AE(F1.4・1/500秒・±0EV)/ISO 400
シグマ70-300mm F4-5.6 DG MACRO
某カメラ店にて、新品のデッドストックを見つけました。昨晩の焼き鳥屋さんの勘定と同じという消極的理由から入手に至っております。モーター非内蔵です。軽量なのはいいのですが、デザインがカッコ悪いレンズで、このレンズを装着したα7CRを持っているところを知り合いに目撃されたら、今後は日なたの道を歩いてゆけなくなるほどです。最短撮影距離はデフォルトで1.5mですが、マクロ領域では0.95m。しかも切り替えられるのが200-300mm設定時のみという、なぜだおまえ!という仕様。ところがですね、実写したところウルトラよく写ります。信じがたい。APO名のついた同スペックレンズもあるそうですが、そちらも欲しくなりました
テレ端で逆光に照らされたビニールハウスです。絞り込んではいますが、中央のビニールに印刷された青い文字がはっきり読みとれますねえ。切れ込みは申し分なく、歪曲もよく補正されています
α7CR/70-300mm F4-5.6 DG MACRO/絞り優先AE(300mm・F10・1/2,000秒・-0.3EV)/ISO 400
マクロと名付けたからには、お前ダメなら覚悟せいよと独り言を言いながら撮影したわけです。しかも300mmで、最短撮影距離。絞りは1/3絞っただけ。申し分ありません。ちなみにアポだったらもっとすごいのでしょうか
α7CR/70-300mm F4-5.6 DG MACRO/絞り優先AE(300mm・F8・1/500秒・-1EV)/ISO 400
トキナーFíRIN 20mm F2
一昔前ならスーパースペックのレンズですね。本レンズはMFですが、電子接点がありますのでα7CRとの電子的なやり取りはバッチリです。フォーカシングすると像拡大は行えますが、被写界深度が深いので日中晴天下の今回はすべて目測撮影しちゃいました。少々大きめのレンズですが、デザイン的に良いし、角型のフードも決まっています
おおげさではなくて、ドラマチックに写るレンズだなと評価していて、依頼撮影にも使用しており、たいへん満足しています。コントラスト、シャープネス優秀。絞りによる性能変化もあまりないようです。高性能ですから撮影距離の遠い条件でもメリハリのある描写になります
α7CR/FíRIN 20mm F2/プログラムAE(F8・1/2,500秒・-0.7EV)/ISO 400
いわゆる線の細いレンズです。光の拾い方もうまくて、半逆光の条件でエッジにこの強い切れ込みがあります。α7CRと組み合わせて、これだけ写れば文句ないでしょう
α7CR/FíRIN 20mm F2/プログラムAE(F11・1/640秒・-0.7EV)/ISO 400
赤城耕一

1961年東京生まれ。東京工芸大学短期大学部写真技術科卒。一般雑誌や広告、PR誌の撮影をするかたわら、ライターとしてデジカメ Watchをはじめとする各種カメラ雑誌へ、メカニズムの論評、写真評、書評を寄稿している。またワークショップ講師、芸術系大学、専門学校などの講師を務める。日本作例写真家協会(EPA)会長。著書に「フィルムカメラ放蕩記」(ホビージャパン)「赤城写真機診療所 MarkII」(玄光社)など多数。