20周年企画
デジタルカメラニュースの20年を振り返る/第4回(2007年)
デジタル一眼レフカメラのライブビュー化が進む
2024年9月10日 07:00
来る9月27日(金)、当サイト「デジカメ Watch」が開設から20周年を迎えます。そこで、過去のニュースを年次で振り返る小特集を企画しました。
今回は2007年のニュースからピックアップします。
ペンタックス・HOYAの合併が中止へ。TOBに切り替え
2007年のニュースでまず思い出すのは、HOYAとペンタックスの経営統合とその去就です。
前年2006年の年の暮れ、HOYA株式会社とペンタックス株式会社が合併すると発表。デジタル一眼レフカメラの隆盛に期待するHOYAと、シェア拡大を目指すペンタックスの目論見が合致したためで、ともに光学メーカーであるところも合意に達した理由でした。
いずれにしてもペンタックスのブランド名は残ることが名言されており、むしろブランドが存続することに、ペンタックスファンはほっと胸をなで下ろしたのではないでしょうか。
しかし2007年4月、両社は合併の中止を突然発表。「ペンタックスの一部株主の状況および第三者との契約関係の状況などを考慮して、合併という形で両社の経営統合を実現することは実務上困難」(HOYA)とし、株式公開買い付け(TOB)での統合を図ることになります。とはいえ敵対的なものではなく、あくまでも友好的にTOBを進める意向のようでした。この年の8月にTOBは完了、ペンタックスはHOYAの完全子会社となったのです。
こうして新生HOYAペンタックスが始動したわけですが、約4年後、HOYAがあっさりとペンタックスを手放すことになることを、このとき我々は知る由もなかったのでした。
CCDからCMOSへ、ライブビューも搭載が進む
2007年もデジタル一眼レフカメラ周りの話題は活発でした。
まず、オリンパスが3月に「E-410」と「E-510」を発表。前者はグリップレスで軽量、後者はボディ内手ブレ補正など機能に振ったラインアップです。
E-330から引き続き、Live MOSセンサーによるライブビューにも対応しています。このライブビューへの対応が、この年のデジタル一眼レフ業界におけるキーワードとなりました。
キヤノンは5月にプロ向けの「EOS-1D Mark III」を発売。APS-H相当の自社製CMOSセンサーを採用し、この機種よりライブビューが可能になっています。
8月発表の「EOS 40D」でも、キヤノンはライブビューを搭載しました。しかもライブビュー中のAFが可能になっています。ライブビュー以外もバランスが良い製品で、ハイアマチュアを中心にヒットしました。アマチュアユーザーにおける、フィルムからデジタルへの転換を推し進めた機種の1つといえるでしょう。
ニコンは前年の「D40」につづき、早くも「D40x」(6月発売)を投入。この頃はデバイスの進化が早く、車業界でいうところのフルモデルチェンジに対するマイナーチェンジのような製品が多く世に出ています。たいていは上位機種に並ぶ、もしくは超える性能を与えられたこともあり、それを揶揄する「下剋上」という言葉がその後もよく聞かれました。
「D40」「D40x」といえば、ボディ内のAF駆動用モーターを省略したため、AF機能がモーター内蔵レンズでしかできない仕様が話題となりました。いまでは当たり前になりましたが、この頃すでに、サードパーティのシグマより対応レンズが出てきています。
さらにニコンは8月、プロ向けの「D3」とミドルクラスの「D300」を同時に発表しました。それまでかたくなに採用しなかった35mmフルサイズセンサーを「D3」に搭載したことで、ファンに衝撃が走りました。いわゆる「FXフォーマット」の登場です。イメージセンサーもCCDからCMOSセンサーへと切り替わり、ライブビューも実現しています。
前年に「α100」でデジタル位置がレフ市場に参入したソニーですが、2007年9月、ハイアマチュア向けの「α700」を発表しています。コニカミノルタの「α-7 DIGITAL」を引き継いだような製品ですが、アンチダスト機能やクリエイティブスタイルなどの新要素も。「Exmore」「BIONZ」といったソニー用語もこの頃からだと記憶しています。
同じく前年に「LUMIX DMC-L1」でデジタル一眼レフカメラ市場に参入したパナソニック。2007年9月には、エントリークラスの「LUMIX DMC-L10」を発表。引き続きライブビューに対応するのはもちろん、さらにライブビュー中のAFが可能になるなど進化が見られます。
10月には、オリンパスのフラッグシップモデル「E-3」が発表されます。2003年に発売された「E-1」の後継で、前年のフォトキナ2006からイベント毎に参考出品を重ねてファンの期待を集めていました。
4/3型のイメージセンサーを搭載するフォサーズシステム規格としては異例の大型ボディであり、堅牢性やファインダー品質、約5コマ/秒の連写などで、下位モデルとの差別化を打ち出しています。
ライブビュー非対応のカメラをライブビュー対応にする
ライブビューで思い出しましたが、いまはハクバ写真産業株式会社に吸収されているベルボンより、一眼レフカメラでライブビューを可能にする「Zigview S2」の国内発売がこの年に発表されています。
ファインダー接眼部にとりつけることで、ファインダー内部の様子をCCDで2.5型の液晶モニターに映し出す仕組みで、これによりライブビュー非対応の製品でもライブビューを手に入れることができました。いずれはすべての新規のデジタル一眼レフカメラがライブビュー対応になることが明白でしたが、こうした隙間を埋める製品をさっと供給する撮影用品メーカーの存在が、カメラ市場を盛り上げてくれていたのでした。
無線LAN機能を内蔵したコンパクトデジタルカメラ
ニコンが「D3」「D300」に続いて8月に発表したのは、無線LAN機能を搭載した「COOLPIX S51c」です。現在ではスマートフォンとの通信機能が標準搭載になっていますが、当時はまだ初代iPhoneが海外で発売されたばかりの頃。このモデルは自宅の無線LANとの接続がメインになります。
加えて、「BBモバイルポイント」と「HOTSPOT」への接続が可能でした。どちらかといえば、ニコンが当時展開していた画像保存サービス「myPicturetown」などとの親和性を強めるための機能といえました。
すでに「Flickr」がサービスを開始してから3年が経っています。デジタル一眼レフカメラの普及を受けて国内でも、様々な画像シェアリングサービスがこのあと展開されました。
コンパクトデジタルカメラに「28mmブーム」が到来
この年、各社からまだコンパクトデジタルカメラは続々と発売されています。当時のトレンドは、搭載ズームレンズの広角端を35mm相当から28mm相当にする動きが本格化し始めたことでしょう。
パナソニックは「LUMIX DMC-TZ3」(3月発売)で、28mm相当からの光学10倍ズームレンズを採用。旅カメラを銘打った前モデル「LUMIX TZ1」が35mm相当スタートでしたから、ヒットモデル「LUMIX FX01」(2006年発売)の28mm相当にならったものと思われます。
28mm時代を切り開いたその「LUMIX DMC-FX01」は、「LUMIX DMC-FX30」へと進化。やはり広角端28mm相当のレンズは堅持しました。
同じく28mm相当スタートのズームレンズを搭載する製品としては、キヤノン「IXY DIGITAL 910 IS」(9月発売)、富士フイルム「FinePix S8000fd」(7月発表、27mm相当)、同「FinePix F480」(11月発売)、ポラロイド「t743」(11月発売)などがあります。
その流れとは別になりますが、リコーの「Caplio GX100」(4月発売)も印象深いカメラです。こちらは24mm相当から始まるズームレンズを搭載。前年に出した「GR DIGITAL」のズーム版ともいえる製品でもありました。
28mm相当ブームの後、コンパクトデジタルカメラは24mm相当からのスタートへとシフトしていきますので、その先鞭をつけた製品ともいえるでしょう。オプションに外付けビューファインダを用意している点も、その後の高級コンパクトデジタルカメラのトレンドを予言しているかのようです。
YouTubeモード搭載のコンパクトデジタルカメラ
カシオが8月に発表した「EXILIM Hi-ZOOM EX-V8」と「EXILIM CARD EX-S880」の売りは、「YouTubeモード」を備えていること。圧縮効率の良いH.264形式での動画記録に加え、付属ソフトを用いることで、YouTubeへのアップロードを容易にした機種です。
“YouTuber(ユーチューバー)”なんていう言葉がまだ浸透していない頃で、まさかYouTubeがここまで成長すると、このとき考えていた人は少なかったことでしょう。
カメラの名を持つ携帯電話が登場
もう1つカシオの話題です。同じく8月、auからカシオ製の「EXILIMケータイW53CA」が発売されています。おそらくカシオ製「W31CA」の後継機ですが、画像処理エンジンに「EXILIMエンジン for Mobile」を搭載するなど、カメラ機能に性能を振ったフィーチャーフォンになります。ちなみにこの製品も28mm相当の単焦点レンズを搭載。
カメラ付きの携帯電話としては、J-PHONEの「J-SH04」(シャープ製、2000年発売)が初の例とされており、以後、機種が増えるにつれてその有用性を世に知らしめたのでした。それから7年、ついにカメラの名を冠した製品が登場するに至ったわけです。
現在ソニーがXperia系列でαのテクノジーとの共通性を謳っていますが、その元祖ともいえる機種がこれに相当するのではないでしょうか。
ちなみにコンパクトデジタルカメラですが、この当時から単価下落と製品サイクルの速さから、消耗の激しい市場として認知されていました。それでも1家に1台が当たり前であり、季節商品でかつ世間の旅行需要も旺盛。全世界でもフィルムカメラを置き換える需要が続くとあって、各メーカーはエントリークラスをはじめとしたフルラインアップで造り続けるしかなかったようです。
スマートフォンの一般普及をもって、各社とも高付加価値モデルへと移行しますが、国内ではカメラ付きのフィーチャーフォンがその土台を作ったともいえるでしょう。
大人気のクランプラーカメラバッグ
デジタル一眼レフカメラの普及が進む中、フィルムカメラ時代から人気のカメラバッグブランドに脚光が当たり始めます。例えばDomke(ドンケ)、TEMBA(テンバ)、f.64、Lowepro(ロープロ)といった海外ブランドです。
そんな中、新興メーカーとして当時人気を博していたのがCrumpler(クランプラー)。ブランドとしての出自はロードバイク用のメッセンジャーバッグですが、そのデザイン性を生かしたままカメラバッグもラインアップ。ポップで現代的な見た目が受けて、またたくまに人気のブランドとなりました。
2007年11月にはブランド直営店が東京・銀座に誕生。輸入代理店の銀一が手がけたショップです。その後もトレンドは移り変わり、現在この場所は同じく銀一が輸入代理を務めるPeak Designの直営店になっています。