20周年企画

デジタルカメラニュースの20年を振り返る/第3回(2006年)

2024年に9月27日(金)に当サイト「デジカメ Watch」が20周年を迎えるのにあたり、開設から20年を振り返る小特集を配信しています。

今回は2006年のニュースを振り返ってみます。

「α」がコニカミノルタからソニーへ

前年の7月に、ソニーとのデジタル一眼レフカメラの共同開発を発表したコニカミノルタですが、2006年1月に突然カメラ・フォト事業全体の終息を発表。デジタル一眼レフカメラだけでなく、コンパクトデジタルカメラを含むすべてのカメラ事業から撤退を告げました。

あとを受けたソニーは、デジタル一眼レフカメラのブランド名を「α」に決定。6月に「α100」を発表します。ミノルタ時代から続く「α」の名が引き継がれることに、ひとまずほっとした人は多かったのではないでしょうか。

ソニー α100

個人的には当時、カメラ業界におけるアナログからデジタルへの転換がこれをもって一区切りを見せたと感じていました。伝統あるコニカとミノルタのブランドをソニーがどう変えるのか、期待と不安の両方が入り交じった思いでした。

発売相次ぐデジタル一眼レフカメラの中級機

ソニー以外のデジタル一眼レフカメラの話題としては、オリンパスに続きフォーサーズシステム規格に参入したパナソニック「LUMIX L1」が忘れられません。意外にもクラシカルなボディデザインを採用、ライカブランドのレンズも同時に発表するなど、独自の展開を予感させました。

パナソニック LUMIX L1

キヤノンは「EOS 20D」から約2年という速度で、後継機の「EOS 30D」を投入。

キヤノン EOS 30D

同じくミドルクラスとしてニコンは「D80」を発表。こちらは「D70s」からの後継で、1年5カ月でのモデルチェンジになります。このスピード感は今と大きく違うところでしょう。

ニコン D80

ニコンは前年の「D2H」に続き、D1桁系の高画素モデル「D2Xs」を6月に発表しています。

ニコン D2Xs

ペンタックスもついにミドルクラスのデジタル一眼レフカメラを投入しました。「K10D」は、1,020万画素のCCDに加え、CCDシフト式の手ブレ補正機構「SR」を搭載。この「SR」が翌年、「K100D Super」でローパスフィルターへのゴミ付着を防ぐ「DR」を兼ね備え、その後のペンタックス機の定番装備となります。また、0.95倍のファインダーを売りにしていたのも、ミラーレス時代のいまとは異なる点です。

ペンタックス K10D

シグマからはFOVEONセンサーを搭載した「SD14」が9月に発表。「SD10」(2003年)に続き「FOVEON X3ダイレクトイメージセンサー」を搭載したデジタル一眼レフカメラで、一般的なベイヤー方式と異なる表現に期待が高まりました。

シグマ SD14

12月に発表されたのが富士フイルムの「FinePix S5 Pro」。フォトキナ2006の参考出品で、2007年1月での発売が告げられました。この頃、富士フイルムのレンズ交換式デジタルカメラはまだXシリーズではありません。撮像素子の歴代スーパーCCDハニカムには、熱心なファンがついていました。

富士フイルム FinePix S5 Pro

エントリーモデルではニコン「D40」(11月発表)の存在が際立っていました。レンズ内モーター搭載のレンズでないとAFが使えないという欠点はあったものの、「D50」からの進化が感じられ、しかも475gというその軽さに驚いたものです。

ニコン D40

また、2005年3月に発売された「EOS Kiss Digital N」の後継機「EOS Kiss Digital X」が早くも8月に発表。画素数が約1,010万になり、「セルフクリーニングセンサーユニット」「ダストデリート機能」といったゴミ対策が搭載されています。

キヤノン EOS Kiss Digital X

初のライブビュー搭載モデルなど技術進化も

当時のCCDは長時間の撮像に適していなかったため、コンパクトデジタルカメラのように背面モニターを常時見ながらフレーミングできるフルタイムでのライブビューを苦手としていました。

そこに風穴を開けたのがオリンパスの「E-330」。CCDではなくLive MOSセンサーを採用することで、ミラーアップしての長時間でのライブビューを実現したAモードと、ファイダー光学系の内部に設けたフルタイムライブビュー専用のCCDの映像を背面モニターに映すBモードの2つを切り替えられ得るようになっていました。AモードはAF不可で、オリンパスでは「マクロライブビュー」と呼んでいました。

E-330

ミラーレス時代のいまからすると当たり前のライブビューですが、こうした工夫をしてまで実現していたことを考えると、やはり当時からニーズは高かったようです。普及が進みつつあったレンズ交換式のデジタルカメラでしたが、この頃はまだ過渡期に過ぎなかったことを思い知らされます。

デジタル版M型ライカ「M8」

この年の9月に発表されたのが「ライカM8」です。あのM型ライカがデジタルになったということで大いに話題となりました。イメージセンサーは1,030万画素CCDで、フルサイズではないことを残念に思う声も多かった記憶があります。価格は当時としては高価な57万7,500円でしたが、今見るとずいぶん安く感じますね。

顔検出が定番化の兆し

7月に発表された富士フイルム「FinePix S6000fd」は、同社のデジタルミニラボ「フロンティア」で研鑽をつんだ顔検出機能を搭載しています。この技術は翌年発売されるデジタル一眼レフカメラの「FinePix S5 Pro」にも実装されました。

FinePix S6000fd

デジタルカメラの顔検出機能自体は以前から存在したのですが、2006年から本格化した印象です。オリンパス「μ780」(3月発表)、リコー「Caplio R6」(9月発表)、キヤノン「PowerShot G7」(9月発表)、同「IXY DIGITAL L4」(9月発表)といったところ。翌2007年にはパナソニック、ペンタックス、Samsungからも搭載機種がリリースされています。

現在のミラーレスカメラでは認識系AFが当たり前になっていますが、その源流を作ったともいえる機能でしょう。

スマートフォンを思わせる二眼デジカメ

コダックの「EasyShare V570」は、23mm相当の単焦点レンズと39-117mm相当のズームレンズという2系統の光学系を搭載したコンパクトデジタルカメラ。それぞれに撮像素子(CCD)をあてがったという構成で、そのアイデアに驚いたものです。いまでいうスマートフォンの多眼レンズを先取りしたような製品でした。

EasyShare V570 デュアルレンズデジタルカメラ

当時のコダックは、デジタルカメラを昇華型プリンター(プリンタードック)に載せるだけでプリントできるEasyShareシステムを展開していました。コダック以外にもオリンパスやソニーなどもコンシューマー向けに昇華型プリンターをリリースしており、まだ家庭のプリント需要が感じられた頃になります。

ちなみにCIPA(カメラ映像機器工業会)はこの年、小型フォトプリンターの出荷統計を開始しています。

Adobe Lightroom ベータ版がお目見え

1月9日にはアドビの「Lightroom」がベータ版として公開されています。この頃からプロ写真家向けであることを強調し、大量の画像を高速に扱えることをアピールしていました。それまで「フォトのつばさ」など編集より管理を重視したソフトはあったものの小規模な開発のものであり、そこに業界標準の「Photoshop」で知られるアドビが参入した格好になります。

「Lightroom」はこのあと、同じく写真家向けとしてリリースされるアップルの「Aperture」と、激しいアップデート合戦を繰り広げることになります。

異次元のRAW現像ソフト「Capture NX」発売

2月にはニコンからRAW現像ソフトの「Capture NX」が発表されました。今でいう「NX Studio」の元祖です。Nik Softwareが開発したU Pointを搭載しており、どこかやぼったいイメージのあったメーカー純正のRAW現像ソフトとは、一線を画していた印象がありました。

Capture NX

ただしこの後、RAW現像ソフトは「Lifghtroom」や「Aperture」といった、開発のスピードが速い非純正メーカーのソフトに主流が移っていきます。

SDHCが登場、SDメモリーカードが4GBに

この年、SDHC規格のSDメモリーカードが出回り出しました。これにより、容量2GBを超える容量4GBのメモリーカードをコンパクトデジタルカメラのユーザーが手にすることに。当時は「4GBもいらないよね〜」などと仲間内で話していたものですが……。

SanDiskのSDHCメモリーカードとUSBメモリカードリーダー「MicroMate USB 2.0 reader」
本誌:折本幸治