特別企画

ニコンDfで楽しむ“非CPU”ニッコールレンズ

レンズの装着・設定方法を解説。実写画像も

 ニコンDfは、これまでの同社デジタル一眼レフと異なり、非Ai方式レンズにも対応するカメラである。筆者は従来非Ai方式レンズをデジタルで楽しみたいとき、マウントアダプターを介してミラーレスカメラを使用していたが、その場合他社製のカメラということもあり、今ひとつ釈然としないものを感じていた。

 そのため、2013年12月のDf登場に思わず小躍りしたことはいうまでもない。以前本誌に掲載したDfのレビューでも非Ai方式を含む非CPUニッコールの装着については軽く触れているが、今回はより詳しく掘り下げてみることにする。

非Ai方式のニッコールレンズでも撮影の楽しめるニコンDf。本テキスト執筆時点でのボディ本体実勢価格は27万8,500円前後。

 電子接点を持たない非CPUニッコールには、非Ai方式レンズとAi方式レンズが存在する。両者の違いは絞りリングの露出計への連動方式だ。前者は絞りリング上に装着したいわゆるカニ爪を使い露出計を連動させるもので、後者は絞り情報をボディに伝える露出計連動ガイドを絞りリングに備えたものである。

 非Ai方式レンズはニコンFと同時の1959年に登場し、Ai方式レンズは1977年からとなる。両者に露出計の連動方法に関して互換性はないが、非Ai方式よりも歴史的に新しいAi方式のニッコールレンズも一部を除きカニ爪を備え、非Ai方式のフィルム一眼レフに装着した場合露出計を連動させることができる。また、Ai方式に対応するフィルム一眼レフの多くは、露出計連動レバーを跳ね上げ、非Ai方式のニッコールレンズを装着することも可能としている(測光は絞り込み測光)。

 なお、Ai方式レンズは未だ8本が現行モデルとしてライナップされている。かつて行われていた非Ai方式レンズのAi化有料改造サービスも含め、これらはニコンというカメラメーカーの懐の深さを知らしめるものといえる。

Dfは露出計連動レバーを右のように跳ね上げられる

 同社の一眼レフがデジタルとなってからは、カメラの露出計連動レバーが跳ね上げられない固定式となり、非Ai方式レンズは装着できなくなった。ちなみに露出計連動レバーを元々持たないD40やD60などに非Ai方式レンズの装着はできないわけではないが、露出はマニュアルのみとなってしまい、さらにDXフォーマットであるため非Ai方式レンズの真価をフルに活かすことはできない。何よりそれらのカメラに非Ai方式レンズを装着することは、メーカーとして非推奨としている。

 そのような状況から路頭に迷うオールドニッコールファンの救世主として登場したのがDfだ。同社デジタル一眼レフで初めて跳ね上げ式の露出計連動レバーを搭載。Ai方式レンズのみならず非Ai方式レンズの装着を可能とし、さらに多少の手間は必要とするもののAE撮影も可能としている。しかも35mm判相当のFXフォーマットであるため、フィルム時代と同じ画角で撮影が楽しめるのである。

レンズの装着方法を確認

 では非Ai方式レンズをDfで使用するにあたり、その作法をAi方式レンズの場合とともに見てみよう。

 まず非Ai方式、Ai方式とも装着するレンズ情報の入力を行う。設定はセットアップメニューの[レンズ情報手動設定]開き、レンズナンバー(1から9までの中から任意で選択)、焦点距離、開放絞り値、露出計連動方式(非AiもしくはAiを選択)を入力していく。ちなみにDfのマニュアルを見ると、レンズ情報の入力によって露出以外に以下の機能が使用可能になるという。

AE以外にレンズ情報入力で使える機能

  • スピードライトのオートパワーズーム
  • 再生画面での焦点距離表示
  • レンズで設定した絞り値表示
  • スピードライトの絞り連動外部自動調光
  • 再生画面での絞り表示
  • RGBマルチパターン測光
  • 中央部重点測光、スポット測光、i-TTL測光の精度向上

 以上のほかにもレンズ情報の入力により、焦点距離や設定した絞り値等がExifデータに書き込まれる。そのため、なるべく正確に入力するようにしたい。レンズ情報は全部で9本分入力することができ、一度入力しておけばその後は装着するレンズに応じて選択を行うだけだ。

レンズ情報入力の手順

1.非CPUニッコールをDfに装着する際は、まずレンズ情報手動設定のメニュー画面を確認し、必要であればレンズ情報を新たに登録する。
2.レンズNo.は1から9まで任意で選択する。
3.非CPUニッコールの焦点距離を選択。焦点距離はExif情報にも反映される。
4.開放絞り値を選択。露出に特に影響するところなので正確に選択するようにしたい。
5.露出計連動方式の選択では、非AiレンズかAiレンズかを選ぶ。
6.設定終了を選択しOKボタンを押すと設定が完了。登録してあるレンズ情報は、レンズNo.から選択する。

 レンズ情報の入力もしくはレンズ情報の選択が終わったらいよいよレンズ装着を行う。ここで非Ai方式レンズでは露出計連動レバーを跳ね上げる。この跳ね上げの操作はつい忘れがちになるので、非Ai方式レンズを使用する際は留意するようにしたい。

 ちなみに筆者は一度跳ね上げないまま非Aiレンズを装着してしまったことがある。絞り環の動きがどうも渋いと思いマウント部を確認したら、そのことに気づき青くなってしまったのだが、ちょっと力を入れれば露出計連動レバーを跳ね上げなくてもDfに装着できてしまうのである。もちろん、露出計連動レバーや絞り環に負荷がかかってしまうため、そのようなミスは絶対避けたいところだ。

 Ai方式レンズの場合では、露出計連動レバーを倒したままの状態にして装着を行えば、本レンズの作法はここで終わり。絞りリングの操作で、設定した絞り値の情報がカメラに伝わるようになり、撮影が可能となる。

Ai方式レンズの装着手順

1.レンズ情報の入力を行う/レンズ情報を選択する
2.露出計連動レバーは跳ね上げない
3.Ai方式レンズを装着して撮影

 非Ai方式レンズに関しては、さらに設定したレンズの絞り値をサブコマンドダイヤルでカメラに入力する。入力した絞り値はトップカバーの液晶パネルかファインダー内に表示される。この操作はレンズの絞り値を変える度に行う必要があり、些か面倒な作業ではあるが、絞り値の情報をDfに自動的に伝える手段がないので致し方ないところだろう。カメラへの絞り値の入力が済んだらいよいよ撮影可能となる。なお、露出モードは非CPUニッコールの場合、A(絞り優先AE)もしくはM(マニュアル)が選択可能だ。

非Ai方式レンズの装着手順

1.レンズ情報の入力を行う/レンズ情報を選択する
2.露出計連動レバーを跳ね上げる
3.非Ai方式レンズを装着する
4.レンズの絞りを設定
5.設定した絞り値をサブコマンドダイヤルでカメラに入力して、撮影

実写してみる

 今回は非Ai方式レンズ4本で撮影を行ってみた。製造年としては焦点距離をセンチメートルで表示するものが古く、NIKKOR-S Auto 5.8cm F1.4、NIKKOR-Q Auto 20cm F4とも1962年頃に製造されたものと思われる。ミリメートル表示のものでもNIKKOR-N Auto 85mm F1.8が1965年頃と古く、NIKKOR-UD Auto 20mm F3.5は1969年頃と今回のなかで最も新しい。

 ちなみにDfにはFマウントニッコール全てが装着できるかといえば、そうではない。NIKKOR-S Auto 5cm F2の最初期モデルのように絞りリングのスカート部が深く、Dfに装着できないものもいくつか存在する。

 また、常時ミラーアップを必要とするNIKKOR-O 2.1cm F4も装着は不可能だ。センチ表示に限らずオールドニッコールを購入する際は、可能であれば事前にDfに装着できるかどうか確認してみることをオススメする。さらにオールドニッコールはグリス抜けしているものが多いので、購入の際はそのことに気をつけ、必要であればオーバーホールに出したい。

NIKKOR-UD Auto 20mm F3.5

レトロフォーカスを採用する超広角レンズ。それまでのNIKKOR-O 2.1cmF4と異なりミラーアップが必要なく、ファインダーでの撮影を可能としている。レンズ構成は9群11枚。製造初年は1968年で、「Nippon Kogaku」とレンズ銘に書かれた前期モデルと「Nikon」と書かれた後期モデルが存在する。歪みを抑えた描写は、当時の超広角レンズとしては秀逸。画面周辺部の破綻も最小限に抑えている。

ISO100 / F5.6 / 1/160秒
ISO100 / F8 / 1/125秒
ISO100 / F5.6 / 1/800秒
ISO100 / F8 / 1/320秒

NIKKOR-S Auto 5.8cm F1.4

5.8cmという中途半端な焦点距離の標準レンズだが、これは開発当時開放F1.4とした場合、焦点距離50mmでは十分な光学特性が得られなかったことに起因する。5群7枚の変形ガウスタイプを採用。開放では甘い描写だが、1段絞るだけでキリッと締まってくる。とろけるようなボケも魅力のレンズである。1960年に発売を開始しているが、その後このレンズ構成でミリ表示のものは発売されず、NIKKOR-S Auto 50mm F1.4にその座を受け渡している。

ISO100 / F1.4 / 1/2,000秒
ISO100 / F2.8 / 1/800秒
ISO400 / F2 / 1/160秒
ISO100 / F5.6 / 1/500秒

NIKKOR-H Auto 85mm F1.8

1964年に発売された中望遠レンズ。レンズ構成は4群6枚で、ガウスタイプを採用する。当時としては最も開放値の明るい望遠レンズで、それよりも明るさを抑え焦点距離を伸ばしたNIKKOR-P Auto 105mm F2.5と長く人気を二分した。現代的な描写が特徴で、絞り開放からキレはよい。ボケもクセがなく、素直な描写のレンズである。ちなみにレンズ名の“Auto”とは自動絞りのことを表している。

ISO200 / F8 / 1/400秒
ISO100 / F2.8 / 1/320秒
ISO100 / F1.8 / 1/1,600秒
ISO100 / F4 / 1/1,000秒

NIKKOR-Q Auto 20cm F4

4群4枚のシンプルなレンズ構成を持つ望遠レンズで、製造初年は1961年。最短撮影距離は3mと、現代の望遠ズームなどとくらべると見劣りするところもあるが、ヘリコイドの回転角は大きくじっくりとピント合わせを行うことができる。この焦点距離の長いオールドレンズは総じて安いものが多いが本レンズも例外ではない。開放絞りでは解像感の低下や周辺減光が際立つが、少し絞り込むと締まった描写が得られる。やや線が太く感じられなくもないが、画面周辺部まできっちりと描写する。

ISO400 / F5.6 / 1/2,500秒
ISO220 / F5.6 / 1/200秒
ISO180 / F8 / 1/200秒
ISO200 / F8 / 1/400秒

モデル:水星マキ

ニコン機で味わう往年のニッコール

 Dfとオールドニッコールの組み合わせでは、Dfのキレのよいフォーカシングスクリーンと、つくりのよさを感じさせるフォーカスリングの操作性とによってピント合わせがたいへん心地よい。また、描写特性も欲張ったことを考えなければ不足を感じるようなことは少ない。もちろん最新のデジタルに最適化されたレンズと比較してしまうと、描写の及ばないところは見受けられるが、それはレンズの味と解釈しても文句をいわれることはないだろう。

 たしかに非Ai方式レンズのDfへの装着にあたっては、レンズ情報を選択し、露出計連動レバーを跳ね上げ、絞りを変える度にサブコマンドダイヤルで絞り値をカメラに伝える必要がある。しかし、オールドニッコールを他社製のミラーレスではなく、同じニコンのデジタル一眼レフで使用できることは同社のファンとしては大いに価値のあることだし、何より楽しい。Ai方式レンズも含め、ぜひDfでその描写をとことん味わってほしい。

大浦タケシ

(おおうら・たけし)1965年宮崎県生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業後、二輪雑誌編集部、デザイン企画会社を経てフリーに。コマーシャル撮影の現場でデジタルカメラに接した経験を活かし主に写真雑誌等の記事を執筆する。プライベートでは写真を見ることも好きでギャラリー巡りは大切な日課となっている。カメラグランプリ選考委員。