私がOM-Dを使う理由。- My Style, My Olympus -
Vol.05:撮影を支える「沖縄への愛」〜小早川渉さん
美しい風景の向こうにある“大切な何か”を意識して
(2016/3/25 07:00)
この連載「私がOM-Dを使う理由。」では、自分の感性で世界と対峙する若手写真家たちに、写真と向き合うようになったきっかけや、写真に対する考え方などを聞くインタビュー企画です。撮影機材のOM-Dとそのレンズについても、使い勝手や印象をうかがいました。
今回は沖縄在住のフォトグラファー、小早川渉さんの登場です。美しい沖縄の風景との出会い、そして小早川さんにとってのOM-Dの魅力とは?(編集部)
写真・キャプション:小早川渉
現在、どのような写真関連の仕事をされていますか?
フリーランスのカメラマンとして沖縄県内の広告や雑誌を中心に活動する一方、風景写真家として1年間のうち数カ月を離島で過ごしながら、沖縄の島々が作り出す美しい風景を撮り続けています。それらの撮りためた風景写真は、主に県外向けの観光・旅行系メディアに多く使用されています。
写真を撮るようになったきっかけは?
最初は写真ではなく、油絵からこの世界に入りました。しかも大学で経済学を学んだ後、油絵の学校に再入学するという回り道で(笑)。結果として構図の基礎、色彩の大切さなど今の写真に通ずる「絵作りの心得」を油絵の学校で学ぶことができたと思っています。
写真に関しては在学中に自分の描いた絵を記録用として残すため、祖父の形見である二眼レフカメラで撮り始めたのが最初でした。
その後、絵と写真の縁を通じて東京の大手ストックフォト会社に入社。仕事でどっぷり写真に触れ合う生活はその頃から始まりました。気がつくと時間をかけてじっくり描き上げる油絵と異なり、瞬発的に空間を絵として切り取れる写真の魅力にすっかり虜になってました。
2005年会社を辞めて沖縄へ移住する際には「人生で一度くらい命を懸けてやりたいことに挑戦しよう」と一念発起し、大好きな沖縄の風景を自分の手で撮影・発信することを決意してカメラマンとしての活動を開始しました。
影響を受けた写真家、写真集、メディアは?
南方写真師・垂見健吾さんです。
垂見さんは80年代から沖縄を撮り続けている沖縄写真界の重鎮の一人です。沖縄の人々や風景を情景的に撮影する天才で、県内外に抜群の人気と知名度を持っている憧れの写真家です。
個人的にも接点が多く、沖縄の離島で写真を撮る時の姿勢や、沖縄らしい空気感を写真1枚の中にどう入れ込むかなど、沖縄を撮る上で必要な多くのハウツーを学ばせていただいてます。自分にとってはまさに生きるお手本です。
その影響は自分の作品のどんなところに現れていると思いますか?
移住当時は目の前にある沖縄の美しい風景を惑わされ、ただガムシャラに2次元的に風景を切り取っていただけでした。それが垂見さんと写真の話をするようになってからは、1枚の風景写真の向こうにあるものを強く意識するようになりました。
垂見さんの写真にあって自分の写真にないもの。それは島を吹き抜ける風であり、漂う匂いでした。それからは沖縄本島や離島に流れる空気感を意識するように心がけながら撮影しています。
今回の作品で使った機材の印象は?
最初に手にした時、OM-D E-M5 Mark IIのコンパクトで軽すぎるボディには正直なところ「本当にちゃんと撮れるのかなぁ?」と疑心暗鬼でした。その考えはすぐ、よい方向にすべて裏切られました。
小さなボディの中には大型一眼レフカメラも顔負けの高機能をフル装備。おまけに多少のブレなら心配御無用の5軸手ブレ補正とバリアングル式の背面液晶モニターまで搭載しているのですから、もう完璧のひと言でした。
M.ZUIKOレンズも気に入っています。メインで使用した標準ズームのM.ZUIKO ED 12-40mm F2.8 PROを筆頭に、広角ズームのM.ZUIKO ED 7-14mm F2.8 PRO、望遠ズームのM.ZUIKO ED 40-150mm F2.8 PROのどれもがPROシリーズの冠の名に恥じないシャープな解像感、ヌケのよい描写力、風景写真に必須の深い被写体深度を備えており、すべてが高水準でした。しかもどのレンズもボディ同様にコンパクトで驚きました。
また仕事上、海を絡めた風景を撮影することが多い私にとって、沖縄特有のエメラルドグリーンに色づく海を再現してくれる画像処理エンジン「TruePiC VII」の描写力も非常に頼もしく感じました。
沖縄で風景写真を撮ることについて。
美しい風景を撮ろうとすればするほど、沖縄では体力勝負になりがちです。灼熱の太陽が照り返す白砂のビーチを延々歩くこともあれば、高温多湿極まるジャングルで何時間も待機することがあるなど、美しさとは裏腹に過酷な自然環境が待っています。
それらを乗り越えても撮りたいと思う気持ちの根源は「その土地への愛」だと思います。沖縄の風景に恋して、自分の手で撮り、そして人々に伝えたい、と決意した日の想いは一切変わってません。むしろ年を追うごとに強くなってきている気がします。
陸上から始めた風景撮影は、数年後に水中の世界に向かい、そして近年はドローンで空まで広がりました。すべては誰も見たことのない沖縄の風景を伝えたい、という一心に突き動かされていると感じています。
ドローンによる空撮の可能性について。
経験上、沖縄の風景とドローン空撮は非常に相性がいいです。陸上から景勝地を眺めている人々の目線で感じたイメージを損なうことなく、よりダイナミックに風景を映し出せる高度20〜60mあたりを自由自在に撮影できます。それは従来はヘリコプターでは難しかった低高度域にあたるため、今までほとんど写真が存在しませんでした。
ドローンを使えば未知の絶景を伝えられる時代が到来したのです。今後も積極的にドローンを使用して、新しい沖縄の風景をクリエイトしていきたいと思っています。
今後取り組みたいシリーズやテーマは?
現在、2014年から取り組み始めたドローンによる空撮シリーズが絶賛進行中です。おそらくまだ2〜3年はかかると思います。沖縄で陸、海、空の風景を1人で撮る風景写真家は少ないので、空撮シリーズがひと段落したら、集大成として写真展か写真集などで形にできればと思っています。
写真展の開催や写真集の発売など、告知があればぜひ!
移住以来、沖縄の島々で撮影した風景写真はストックフォトとしてホームページ「おきなわフォト」に掲載しています。鑑賞は無料ですので、どなたでもお気軽に閲覧していただけるとうれしいです。
また毎年風景カレンダー「とっておきの島風景」を販売していますので、そちらの方もよろしくお願いします。