私がOM-Dを使う理由。- My Style, My Olympus -
Vol.04:旅に出ることで未知の自分に出会う〜伊勢谷浩一さん
旅先では写真が第一 撮ったことのない世界を求めて
(2016/2/25 07:00)
活躍中の若手写真家に、自らの写真の成り立ちや写真についての考え方を聞く連載「私がOM-Dを使う理由。」。現場でのパートナーであるOM-Dについても、その想いを語ってもらいました。
今回登場するのは、旅写真で知られる伊勢谷浩一さんです。世界中を旅する伊勢谷さんは、写真とどう向き合い、カメラとどう付き合っているのでしょうか。(編集部)
写真・キャプション:伊勢谷浩一
現在、どのような写真関連の仕事をされていますか?
カメラ雑誌などで撮影テクニックの解説や新製品レビュー、旅行誌などへの写真提供、WEBカタログやブライダル撮影、一般の方を対象とした写真教室など、幅広い活動をしています。
写真を撮るようになったきっかけは?
中学時代はまわりにいじめっこが多く、なるべく目立たないような生活を送っていました。そんな中学時代を終え、進学した高校は、インターナショナルな高校だったこともありとにかく自由で毎日が楽しくて。そんな生活が3年で終わってしまうことに寂しさを覚え、写真で楽しい学生生活を後からいつでも見返すことのできるようにしておこうと思いました。
初めは使い捨てカメラで記録を残していましたが、そのうち物足りなくなり、父親がかつて使っていた一眼レフカメラを借りて写真を撮り始めました。あれこれ触ってみるものの、使い方がよくわからず本格的に写真を学ぼうと渋谷にある日本写真芸術専門学校へ入学しました。
影響を受けた写真家は?
マイケル・ケンナと竹沢うるまさんです。
マイケル・ケンナは、1974年から1994年までの20年間の作品を収録した写真集「A TWENTY YEAR RETROSPECTIVE」に写真専門学生の頃に出会うのですが、完璧な構図、バランス感覚、幻想的で静寂に満ちたモノクローム作品に一瞬で心奪われました。そんな写真を自分でも撮ってみたくなり、それからは取り憑かれたように毎晩カメラと三脚を持って夜の河川敷や工場へ出掛け、マイケル・ケンナが多用する長時間露光を使って作品を撮るようになりました。今でも憧れの写真家です。
竹沢うるまさんは、写真展に通い続けているうちに声をかけてもらい、海外での撮影の手伝いをさせてもらえるようになりました。旅を通して写真家として生きていく覚悟、旅する方法、写真の撮り方など、写真家に必要なことのすべてを教えていただきました。海外や沖縄の離島に撮影に出るようになったのも、南の島や海外をメインに撮影をされる竹沢さんの作品に大きな影響を受けたためです。
その影響は自分の作品のどんなところに現れていますか?
風景を撮る時にメインとなる被写体が画面のどの部分にあれば一番気持ちがいいかなど、構図やバランス感覚に特に気を使って撮影をするところ、今でも続けている夜の長時間露光での作品制作などはマイケル・ケンナの影響が大きいです。
竹沢さんは逆にそういったことを考えずに心が動いた瞬間を記録する方なので、旅先でのスナップはあまり考えずに心がわくわくした瞬間にありのままシャッターを切るように心がけています。
今回使った機材の印象は?
E-M1は性能と携帯性のバランスがとれたカメラで、旅で持ち歩くのに最適のカメラです。高機能なカメラは他にもあるのですが、高機能になればなるほど重さも比例していきます。
マイクロフォーサーズはボディからレンズまでシステム全体が小型軽量なので、お気に入りのレンズを何本もストレスなく持ち運ぶことができます。そして、長時間露光に強いことも見逃せないポイントです。
E-M1に装着して使っているレンズは標準ズームレンズのM.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PROがほとんどですが、旅に1本だけレンズを持っていくとしたら迷わずこのレンズを選びます。ズーム全域で解放値からシャープな描写が得られるのはさすがPROレンズといったところですが、マニュアルフォーカスクラッチ機構が搭載されていることは特筆すべきポイントです。
これは、フォーカスリングを手前に引くことでAFからMFに素早く移行できる仕掛けなのですが、露出やピントまで全てをマニュアルで撮影することが多く、夜の撮影ではAFを使用しない私にとってこの機能は欠かすことができないものです。
伊勢谷さんにとって旅とは?
旅とは、新しい自分に出会うための修行の場だと思っています。旅先ではさまざまなことが次から次へと起こりますが、中には今の自分では対処できないことが必ず来る起こる。そんな時に自分はここまでしかできないと線引きしていた限界を超えて起こり来る出来事に対処していかないといけない。その時はとてもつらいですが、未知の自分に出会える瞬間が好きで、いつもその瞬間が来るのを楽しみにしながら旅をしています。
旅と写真の関係性について
単純に旅がしたくて旅に出るということは今まで一度も無くて、自分が撮ったこともないような写真を撮るために旅に出ます。旅では常に写真を撮ることが第一優先。写真を撮りたいという欲求が私を見たこともないような場所へ連れていってくれます。
今後取り組みたいシリーズやテーマは?
以前撮っていたメキシコの銀鉱山をテーマにした撮影を今年再開させるのと、海が好きなので、今回掲載させて頂いた作品のような海をテーマにした写真展を開催したいと思っていて、一昨年から繰り返し関東近郊の海へ撮影に出ています。
写真展の開催や写真集の発売など、告知があればぜひ!
「写真に対して、もっと気軽に何でも聞ける写真教室のような場所が身近な場所にあればいいのに……」という周りの方からの声を受け、初心者の方向けの写真教室を定期的に開催しています。コンパクトデジタルカメラやスマートフォンのカメラでの参加も歓迎しています。開催の日程は希望者に合わせて決めているのでホームページからお気軽にメールを頂ければと思います。