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【新製品レビュー】キヤノンIXY 3

〜持つ喜びと機能性を両立。美しさが際立つ12倍ズーム機
Reported by 本誌:折本幸治

 今年のキヤノンの春モデルのうち、個人的に最も目を奪われたのが「IXY 3」だ。端正なボディ形状と美しい塗装は、「IXY史上最も美しい製品」と呼びたくなるほど。それだけでなく光学12倍ズームレンズや裏面照射型CMOSセンサーなど、機能面も充実している。ブルーカラーの製品版を試用する機会を得たので、レポートをお届けしたい。

 発売日は、シルバーが2月23日。レッドおよびブルーが3月9日。直販価格はいずれも3万4,980円。


このサイズで光学12倍ズームを実現

 IXYシリーズにおける位置付けとしては、同時発表の兄弟機「IXY 1」(3月9日発売)とともに、約12年前に登場した初代「IXY DIGITAL」への原点回帰を意識したプレミアムモデルとなっている。キヤノンでは「初代IXYの黄金比フォルムを現代的解釈のもとに飛躍させた」と説明しており、確かに初期のIXY DIGITALのサイズ感(当時、キヤノンはしきりにカードサイズと説明)を想起させ、幅と高さは初代IXY DIGITALに近い。

 ただし、奥行きは7.7mmも短くなっており、それでいてレンズの光学ズーム倍率は2倍から12倍に。そういえば初代IXY DIGITALの記録メディアはCFだったが、本機はmicroSDXC/SDHC/SDメモリーカード。時代の流れを感じてしまう。

 フロントとリアはアルミ外装で、塗装にはアルマイト染色を採用。さらに旭光を出すためのスピンカット(回転切削加工)が施されている。見る角度でグラデーションが変わる旭光の美しさは格別で、特にブルー、またはレッドの色調には目を奪われてしまうほど。

 また、スピンカットといっても細かい凹凸が表面にあるのでなく、分厚いクリア塗装で覆われているので、手触りは滑らかだ。かといってツルツル滑るわけでなく、しっとりとした抵抗とともに手の中に残る感じ。適度な重みとあいまって、触っているだけでうれしくなるカメラだ。

端正なフォルムに美しい表面処理。コンパクトデジカメに新しい方向性を感じる

 背面パーツと液晶モニターとに段差がないのも特徴だろう。いわゆる「ツライチ」を実現しており、すっきりした見た目とともに、高級感を演出している。ボタン類の塗装も外装にあわせたものになっており、三脚ネジ穴も金属製。もちろん最近のトレンドを踏まえ、鏡筒もボディと(一部)同色だ。

すっきりした背面。液晶モニターと本体の段差がほとんどない 上面操作部はシンプル。ズームレバーもボディと同色だ

 撮像素子は、有効約1,010万画素の裏面照射型CMOSセンサー。サイズは1/2.3型。ただし不思議なことに、総画素数は約1,680万画素もある。おそらくレンズのイメージサークルは、センサー周辺部をカバーしていないと思われる。つまり約670万画素分には光が当たっていないわけで、実に思いきった設計だ。従来も有効画素数と総画素数との間に多少の乖離はあったものの、ここまではっきりと画素を捨てているケースは珍しい。

 何だかもったい話だが、1/2.3型より小さなイメージサークルに合致する小型かつ高倍率なレンズが設計できたものの、調達できるセンサーにぴったりのサイズのものはない……今回はこのレンズを優先させ、センサーの画素数は二の次としたのだろう。画素数自体はもう十分なので、画素を思い切って捨てる方向性は、これから増えるかもしれない。

 そのレンズは、焦点距離28-336mm相当(35mm判換算)F3.4-5.6の光学12倍ズームとなっている。ボディの小ささからすると驚異的な高倍率だが、意外にも鏡筒の繰り出し量はわずか。レンズの小型化と高倍率化は、IXY高級ラインでおなじみの「屈曲沈胴プリズム退避鏡筒」を採用したためだ。それと、撮像素子の中央部だけを使用する変則的なイメージサークルが、高倍率化に寄与しているのだろう。

 手ブレ補正機構ももちろん搭載されている。シーンにあわせて6パターンのISモードが切り替わる、最新の「マルチシーンIS」を採用する。実際の効果も高い。特にマクロ時には角度ブレとシフトブレを同時に抑える「ハイブリッドIS」が発動し、このときの補正効果はとにかく強力だ。

 記録メディアはSD系ではなく、microSD系のメモリーカードを使用する。これまで、micro系のメモリーカードを採用したコンパクトデジタルカメラは少なく、カシオのEXILIM EX-G1ぐらいだった。今春はソニーのサイバーショットDSC-TX300VがmicroSD、またはメモリースティックマイクロを採用。現在、microSDHC/SDHCメモリーカードはスマートフォンでは身近な存在なので、今後デジタルカメラでも採用が進むのかもしれない。

 ちなみに、現在唯一のmicroSDXCメモリーカード、サンディスクの64GBのmicroSDXCカードをIXY 3で試してみたところ、問題なく使用できた。書き込み速度も速く、SDHC/SDメモリーカードで他のIXYを使っているのと変わりない操作感だった。

現在唯一のmicroSDXCカード、サンディスクの「モバイルウルトラmicroSDXC UHS-Iカード64GB」を装着。問題なく使用できた
バッテリーは870mAhのNB-9L。IXY 50S、IXY 51Sに続く採用だ

家族写真に便利な「個人認証」

 今春からの新機能としては、顔認識を活用した「個人認証」に対応したのがトピック。パナソニックがいち早く実現している機能だが、キヤノンの個人認証は誕生日を設定しておくことで、年齢に合わせた動作を自動的に行なう。ちょうど、登録した誕生日をもとに月齢を表示する、パナソニックの「赤ちゃん」モードを取り入れた格好だ。

 たとえば0〜2歳未満ならストロボオフ、露出を明るめに。動きがちな2〜12歳ならサーボAF/AFで追尾、3枚連写してそのうち1枚からベストなものを選ぶ(これも新機能)といった具合だ。登録した人物が何人かいる場合は、最も若い人物にピントと露出を優先するなど、実用的な機能になるよう、工夫が見られる。

 人物の登録は簡単。指定の枠内に正面からの顔を入れて撮影し、名前を誕生日を入れるだけだ。同じ人物を何度か撮影して、認証の精度を上げることもできる。

個人認証の登録画面 登録した人物はMENUから参照できる。それぞれの名前などを編集可能
再生モードで登録した名前が表示される

 ただし、名前に使用できる文字がアルファベットのみで、使える文字数が少ない(実質的に名前のみ。姓と名前は無理)のは、少々拍子抜けだった。また、パナソニックの個人認証のように、撮影中のモニターに名前を表示しない。そのためちゃんと認証しているか不安だったが、ほとんどの場合杞憂だった。もちろん再生モードでは、顔の下に登録した名前が表示される。

 そのほか顔認識関連では、ストロボ・AF補助光・合焦音・シャッター音が強制オフになる「寝顔検出」や、3枚連写した中からベストな1枚を残す「笑顔検出」などを搭載。家族写真用のカメラとして、かなり強化された印象を受けた。静止画撮影を行なうごとに直前の動画を記録、それらを1日単位でひとつのファイルにまとめる「ムービーダイジェスト」も、家族イベントで活躍しそうだ。

 また、カメラがメインの被写体を判別してピントを合わせる「主役フォーカス」など、最近のIXYおよびPowerShotの機能が奢られている。最も使用するであろうシーン認識の「こだわりオート」は、従来より26シーン増えた58シーンに強化。ただし新シーンには個人認証を伴うものも多く、家族旅行などで利用する場合は、事前の登録作業はこまめにしておいた方が良いだろう。

 動画は1,980×1,080ピクセルのフルHD記録に対応。圧縮方式はキヤノンお得意のH.264。ステレオ音声記録や動画中の光学ズームにも対応するなど高性能だ。もちろん、ムービー専用ボタンも備えている。


まとめ

 操作性で変わっているのは、IXYの上級クラスとしては久しぶりに、4方向ボタンを兼ねたロータリーダイヤルがなくなったことだ。代わりに4方向ボタンが独立して設けられている。それはいいのだが、中央にあるはずのFUNK./SETボタンが、なぜか4方向ボタンの下にある。小型化を優先したためだと思うが、最初はとまどった。ただし慣れるとまったく問題はない。

 画質は1/2.3型のコンパクトデジカメとあって期待していなかったが、ノイズが少なく階調も自然。最近のモデルにしては解像感もなかなか検討している。約1,000万画素しか使っていないことを考えるとなおさらだ。

 感心したのが高感度ノイズの処理の上手さ。今回も高感度に強いHS SYSTEMを標榜するだけあって、不自然なノイズは少ない。

 外観、機能、画質のバランスは悪くなく、1/2.3型のカメラとしては今季最強クラスの製品といえる。ただし、兄弟機のIXY 1とどちらを選ぶかが悩みどころだ。実勢価格はIXY 1が38,000円前後、IXY 3が31,000円前後。差額は7,000円程度ある。

 IXY 1にあってIXY3にないものは、無線LAN機能とタッチパネル式液晶モニター。スマートフォンを普段から利用しているなら、IXY 1の無線LAN機能は捨てがたい。

 ただし、IXY 3の高級感は唯一無二。そしてタッチパネルではなくボタンでの操作が可能な点も、反タッチパネル派にとっては魅力的に写るに違いない。耐水深3mという寂しいスペックながら、ウォータープルーフケースのオプション設定があるのもIXY 3だけだ(IXY 1はタッチパネルなので)。

 というわけでIXY 1とIXY 3は、実に悩ましい関係にある。いっそ2万円ぐらい価格差がついているならあきらめがつくし、IXY 1の外装がIXY 3なみならこんなにも悩むことはないのだが……。IXY 1については、近いうちに別の記事で紹介したい。


実写サンプル

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
  • 縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。

・画角

広角端 / IXY 3 / 2.1MB / 3,648×2,736 / 1/2,000秒 / F4 / 0.0EV / ISO160 / WB:オート / 4mm 望遠端 / IXY 3 / 2.1MB / 3,648×2,736 / 1/500秒 / F5.6 / 0.0EV / ISO100 / WB:オート / 48mm

・感度
IXY 3 / 3.8MB / 3,648×2,736 / 1/50秒 / F5 / 0.0EV / ISO100 / WB:オート / 14.6mm IXY 3 / 3.9MB / 3,648×2,736 / 1/100秒 / F5 / 0.0EV / ISO200 / WB:オート / 14.6mm
IXY 3 / 3.9MB / 3,648×2,736 / 1/200秒 / F5 / 0.0EV / ISO400 / WB:オート / 14.6mm IXY 3 / 3.7MB / 3,648×2,736 / 1/400秒 / F5 / 0.0EV / ISO800 / WB:オート / 14.6mm
IXY 3 / 3.9MB / 3,648×2,736 / 1/800秒 / F5 / 0.0EV / ISO1600 / WB:オート / 14.6mm IXY 3 / 3.8MB / 3,648×2,736 / 1/1,600秒 / F5 / 0.0EV / ISO3200 / WB:オート / 14.6mm

・マクロ/ボケ
IXY 3 / 2.1MB / 3,648×2,736 / 1/50秒 / F3.4 / 0.0EV / ISO800 / WB:オート / 4mm

・逆光
IXY 3 / 1.7MB / 2,736×3,648 / 1/500秒 / F3.4 / 0.0EV / ISO200 / WB:オート / 4mm IXY 3 / 2.6MB / 2,736×3,648 / 1/2,500秒 / F6.3 / 0.0EV / ISO160 / WB:オート / 27.2mm

・料理

※こだわりシーンモードで撮影

IXY 3 / 2.1MB / 3,648×2,736 / 1/40秒 / F4 / 0.0EV / ISO640 / WB:オート / 5.8mm

・作例
IXY 3 / 1.9MB / 3,648×2,736 / 1/200秒 / F5 / 0.0EV / ISO100 / WB:オート / 21.6mm IXY 3 / 2.7MB / 3,648×2,736 / 1/13秒 / F4.5 / 0.0EV / ISO1600 / WB:オート / 11.0mm




本誌:折本幸治

2012/3/12 00:00