ライブビュー時代の撮り方講座:イルミネーションを撮る
EOS 60D / EF 50mm F1.8 II / 約5.4MB / 3,888×2,592 / 1/2.5秒 / F1.8 / +0.7EV / ISO100 / WB:太陽光 / 50mm |
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冬は街を彩るイルミネーションの季節です。地域や企業によっては規模を縮小しているところもありますが、12月に入ってからは一気にその数を増しています。イルミネーションは非日常を感じさせる上、その美しさもあり、つい写真に残しておきたくなる被写体のひとつでしょう。
そんなイルミネーションの撮影テクニックをいくつか解説してみたいと思います。
■三脚があればベスト。できれば明るいレンズも
どんな撮影でもそうですが、レンズの選定にある程度頭を悩ますことになります。イルミネーションは日中より暗い状況で撮影するため、三脚が必須です。でも、最近のデジタル一眼レフカメラは高感度での画質がとても良くなり、手ブレ補正機構も良く効くようになりました。そうした条件が揃うなら、手持ち撮影で、しかも標準ズームレンズを使っても撮れないことはありません。
ただし、絞り込んで前景や背景を取り入れたり、後述する点光源を星状にするテクニックを使いたいなら、やはり三脚は必須があった方が有利です。また、画質が良くなったとはいえ、最低感度と高感度の差はまだあります。本気で撮りたい場合は、ある程度しっかりした三脚を用意した方が無難でしょう。
今回メインで使用した機材。上段左からEF 70-200mm F2.8 L IS II USM、EOS 60D+EF 50mm F1.8 II、EF-S 18-135mm F3.5-5.6 IS(以上キヤノン)。下段左からマルミの67mm→77mmステップアップリング、クロスフィルター(77mm径)、リモコンRC-6(キヤノン) | 三脚はベルボンのジオ・カルマーニュE645 |
ただ、見物客が多い場所や時間帯は手持ちで、スペースがとれるなら三脚で、と使い分けてください。また、色や光源の位置が変化するイルミネーションの場合、スローシャッターで撮ると、そのときの感動が伝わらない可能性があります。そういう場合は三脚があったとしても、高感度にしてシャッター速度を上げて撮ることになります。あるいは三脚に固定して、動くイルミネーションを動画で撮るのも面白いものです。
今回のボディはEOS 60Dで、レンズはEF-S 18-135mm F3.5-5.6 ISを基本としました。暗いレンズですが、三脚が使えるなら問題ありません。広角側の28.8mm相当は、街中のイルミネーションを撮るなら十分な画角。また、印象的な部分を切り取る際に、望遠側の216mm相当が役に立ちます。
さらに手持ちでの撮影を意識して、EF 50mm F1.8 IIとEF 70-200mm F2.8 L IS II USMも用意しました。明るいレンズは単にシャッター速度を稼げるだけでなく、被写体の前後にボケを作り出せるため、特に望遠の場合は、バリエーション豊かな表現を得やすくなります。あとで作例をお見せしましょう。
リモコンもあると便利なアイテムです。三脚を使って長時間露光する場合、シャッターボタンに手が触れた瞬間、カメラブレが起きて作品に影響を与えることがあります。それを防ぐため、リモコンやレリーズケーブルがあると便利。ない場合はセルフタイマーで撮影すれば、カメラブレを防げます。セルフタイマーはたいてい10秒、または2秒を設定できますが、2秒に設定するとあまり待たずにシャッターが切れます。とはいえ毎回2秒待つのは、たくさん撮る場合面倒なものです。寒い中ならなおさらでしょう。リモコンやレリーズケーブルなら、待つことなく撮影できます。
リモコンは2秒セルフタイマーでも代用できるが、テンポよく撮影したいならおすすめのアイテム |
予備バッテリーも用意した方が良いでしょう。バッテリーは寒さに弱く、外気温が寒いと予想以上にバッテリーが持たないものです。予備バッテリーはポケットに入れるなどして暖めておけば、ある程度持ちが良くなります。
■三脚と相性の良いライブビュー撮影
三脚を使った場合の補足になりますが、三脚にカメラを載せた状態だとカメラをホールドしていなくても操作できるので、ライブビューでの操作が楽になります。特にEOS 60Dのような液晶モニターの角度を変えられる機種は、ハイアングルやローアングルでの撮影がやりやすくなり、無理な姿勢で撮ることが少なくなります。リモコンと組み合わせれば、カメラを自分の目線より高くしても楽に撮影できます。
ライブビューなら視野率100%で撮れるメリットも大きいでしょう。夜景は全体的に暗く、ファインダーの周囲の状況がわかりづらいときがよくありますが、ライブビューなら画面が大きく、しかも視野率100%。画面の端まで確認しやすく、安心して構図をつくれます。
また、電子水準器も活用したいライブビューの機能です。広角で撮る場合は水平に撮れてないと違和感を与える作品になりがちです。電子水準器がない場合は、以前からある水準器を使うことになりますが、撮影場所が暗いと、確認に手間取ることになります。液晶モニターの中で確認できる電子水準器なら、そうした苦労とも無縁です。
EOS 60Dの電子水準器。水平にとれているか常に確認できて便利だ |
ただしファインダーよりもバッテリー消費が大きくなるので、そういう意味でも予備バッテリーがあった方が安心でしょう。
■ホワイトバランスを変える
ここからは、もう少し細かいテクニックを解説します。
イルミネーションの撮影では、ホワイトバランスを変えることで色が変化し、全体の雰囲気が劇的に変わります。ライブビューなら事前にホワイトバランスによる色味の変化を液晶モニターで確認できるので、積極的に使ってみてください。液晶モニターに現れた色と、実際に撮影されたデータでは若干の違いはありますが、傾向はつかめると思います。
左がホワイトバランスオート、右が太陽光。ずいぶん雰囲気が変わるのがわかる |
最近では光源にLEDを使用したイルミネーションが増えています。同時に、今まで通り電球を光源にしたものもあります。作品によっては、それらがひとつの構図に入る場合もあるでしょう。光源によって色味は変わってくるので、どのようなイメージにしたいかホワイトバランスを変えて試してみましょう。自然光の中でホワイトバランスを変化させた時とは異なる色の変化を楽しめます。
■絞り込むことで点光源をドラマチックに
レンズによっては絞り込むことで、点光源の形が星状になることが知られています。キラキラ感がアップして、作品が一気にファンタジックになるテクニックです。星の形はレンズによって違うので、自分のレンズを一度確かめた方が良いでしょう。ほとんど星状にならないものから、何本もの光芒が派手に現れるものまで色々あります。光芒をなるべく長くしたいなら、絞り込むと同時に、なるべく明るくて近い光源を構図に入れて見てください。
下の作例では、絞り開放では点光源が丸みを帯びた状態になってますが、最小絞りに近づいていくごとに光が星状になっていきます。最小絞りF32では星のような形となりきらめきが強くなりました。
さらに派手に、あるいは手っ取り早く星状にしたい場合は、クロスフィルターを使うと良いでしょう。クロスフィルターにも色々な種類があり、光芒の数によって選ぶフィルターが違ってきます。ただし効果が派手なので、使いどころを間違えると、あざとい作品になる可能性があります。
絞り込むことで点光源を星状にする場合、どうしてもシャッター速度が遅くなりがちです。ある程度なら高感度で補えますが、手持ちでは限度があります。そういう意味では、三脚があると有利ですし、三脚がなくて絞れない場合は、クロスフィルターの出番が増えるでしょう。
■「丸ボケ」は明るい望遠レンズで
光が円形のボケになり、画面を彩る作品を見たことがあると思います。「玉ボケ」「丸ボケ」などと呼ばれる現象で、イルミネーションの撮影で多用されるテクニックです。丸ボケを作るのは以外と簡単ですが、思ったような大きさにするには、ある程度の知識と機材が必要です。なるべく大きくてきれいない丸ボケを作りたいものですが、どうすれば良いのでしょうか。
点光源をぼかすと、それが丸ボケになるわけで、そのときのボケをなるべく大きくすれば、丸ボケも大きくなります。つまり、被写界深度(ピントがあったように見える範囲)をなるべく浅くすれば良いわけです。
そのためには、
- 焦点距離を長くする(ズームレンズなら望遠側にズームする)
- 絞りを開ける
- 被写体に近づく
- 丸ボケにする点光源を被写体から遠ざける
の4点が重要です。これらは丸ボケだけでなく、ボケを大きくしたい場合の基本テクニックでもあります。
レンズとしては、「焦点距離の長い望遠レンズ」(1.)、「なるべく開放F値の明るい(数値の小さい)レンズ」(2.)、「最短撮影距離が短いレンズ」(3.)が有利になります。今回、EF 70-200mm F2.8 L IS II USMを用意したのは丸ボケのためですが、こうした高価なレンズでなくとも、マクロレンズや大口径単焦点レンズでも条件があえば、きれいな丸ボケが得られます。
丸ボケを大きくするため被写界深度を浅くするということは、その分ピント合わせがシビアとなることを意味します。ライブビューなら被写体を拡大してピントを合わせられるので、より厳密なピント合わせが可能になります。
■長時間露光を活かしたテクニックも
夜間に行なうイルミネーション撮影は、シャッター速度が遅くなりがちです。それを活かしたテクニックもあります。
例えば「露光間ズーム」は、露光中(シャッターが開いている状態、シャッター速度が遅いほど長い)にズームリングを回すことで、止まっているイルネーションに動きを出すテクニックです。光源と被写体の輪郭は放射線状に伸び、ズームの焦点距離の幅により線の長さは変わります。広角から望遠、望遠から広角、どちらにズームするかによって光の軌跡が変化します。カメラをしっかり固定していないと、光の筋がグニャグニャになりがちです。
もうひとつ有名なのが、「露光間ピントずらし」でしょう。露光中にピントリングを回すことで、ピントがあっている状態とピントがずれた状態が同時に記録され、光源のかっちりした輪郭とと、柔らかい光になった瞬間が同時に捉えられます。その時のフォーカスの移動量と速さやタイミングよって、毎回異なる写真となるところが魅力的です。
■まとめ
イルミネーションの撮影はコツやパターンを知っていれば思いのほか難しくありません。この季節色々な場所で見られるので足を運んで多くのイルミネーション撮影を楽しんでみてはいかがでしょう。もちろん人ごみの中という場面も多いので周囲の人への配慮を心がけ、細心の注意をお願いします。
また冬の夜間撮影なので、手袋やマフラーなど防寒対策はしっかりと。LED光源になってからはイルミネーションそのものも明るく撮りやすくなり、演出も多彩になりました。ぜひチャレンジしてみてください。
EOS 60D / EF-S 18-135mm F3.5-5.6 IS / 約6.5MB / 3,888×2,592 / 1/4秒 / F4.5 / +1.0EV / ISO200 / WB:太陽光 / 18mm |
EOS 60D / EF-S 18-135mm F3.5-5.6 IS / 約7.3MB / 3837x2558 / 1.0秒 / F8 / 0.0EV / ISO100 / WB:太陽光 / 39mm |
EOS 60D / EF 70-200mm F2.8 L IS II USM / 約4.8MB / 3,888×2,592 / 1/20秒 / F2.8 / 0.0EV / ISO100 / WB:太陽光 / 200mm |
EOS 60D / EF 70-200mm F2.8 L IS II USM / 約4.8MB / 3,888×2,592 / 1/50秒 / F2.8 / -0.7EV / ISO100 / WB:太陽光 / 200mm |
EOS 60D / EF-S 18-135mm F3.5-5.6 IS / 約4.8MB / 3,888×2,592 / 1/2秒 / F8 / -0.7EV / ISO100 / WB:太陽光 / 135mm |
EOS 60D / EF 70-200mm F2.8 L IS II USM / 約4.5MB / 3,888×2,592 / 4秒 / F5.6 / -1.0EV / ISO100 / WB:太陽光 / 140mm |
2011/12/12 12:56