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ニコンCOOLPIX P5100【第7回】
イルミネーション撮影に挑戦

Reported by 本誌:折本 幸治


 今回は時節柄もあって、イルミネーション撮影に挑戦してみた。これまでも本連載のネタづくりとして、FinePix F11(2005年)、COOLPIX S10(2006年)とイルミネーションを撮っているが、今年担当しているのはシャッター速度優先AEやマニュアル露出に対応した機種。いつもより苦労なく撮れるだろうと予想していた。

 都市夜景の場合、私は自動車のヘッドライトの軌跡を前景に入れるのが好きだ。こうした長時間露光は、シャッター速度の下限が低い、オート主体の機種では難しい。スローシャッターを任意に選べなかったり、「花火」など特定のモードに頼らなければならないからだ。

 また、シャッター速度優先AEにすると強制的にISOオートになるなど、P/A/S/Mを完備していても変わった制約がつきまとう機種もある。COOLPIX P5100のシャッター速度優先AEやマニュアル露出には、そうした制約が一見しただけでは見当たらない。

 しかし実際に撮りはじめると、思わぬところに落とし穴があった。シャッター速度が1段刻みでしか設定できないのだ。シャッター速度優先AE、マニュアル露出ともにである。デジタル一眼レフカメラで1/3ステップでのシャッター速度制御に慣れた身にしてみると、今どき意外に感じる仕様。まあ、ヘッドライトの軌跡を捉えるだけなら、細かいシャッター速度の指定は必要ない。かえってシンプルで潔いと考えていると、もうひとつ困ったことが起きた。本連載が始まる前に掲載した「【新製品レビュー】ニコン『COOLPIX P5100』」において大浦タケシ氏が指摘しているように、最小絞りが広角端でF7.6、望遠端でF7.3までしかないのだ。

 あまり絞れないとなると、明るい場所でヘッドライトの軌跡を長く引っ張りたい場合、露出オーバーになりがちだ。おかげで自動車の速度、背景の明るさ、タイミングの選択が思ったよりシビアになった。それでも最低感度がISO64と低いので、多少明るくても問題ないだろうと高をくくっていたが、上手くハマる場所になかなか出くわさないい。今回狙っていたいくつかのポイントは「イルミネーション+ヘッドライトの軌跡」であり、予想以上に背景のイルミネーションが明るい。その中で自動車が通り過ぎる時間に合わせてシャッター速度を選ぶと、オーバー気味になる。NDフィルターを持参しなかったことを悔やみつつ、早々にあきらめて、普通にイルミネーションを撮ることにした。

 もうひとつ気になったのは、夜景だとAFが合いにくいこと。特に遠景だ。COOLPIX S10でも感じたことだが、何回合わせ直してもピントがおかしい。COOLPIX S10のときは液晶モニターにAF不能を伝える表示が良く現れたものだが、COOLPIX P5100ではその手のサインすら現れず、撮った画像がピンボケになる。コンパクトデジタルカメラでは、ほかの機種にも同様の現象が見られることがある。

 解決策はフォーカスモードを「遠景AF」にすることだろう。経験上、AFが合いにくいのは遠景なので、これで大抵のケースはカバーできる。説明書では遠景AFについて「5m以上離れた遠景に合わせる」とあり、これ以上近い場合は通常AFでもそこそこ合うので、適宜切り替えることにした。本当はクラスを考えると、マニュアルフォーカスが欲しいところだ。

  • 作例のリンク先のファイルは、JPEGで撮影した画像をコピーおよびリネームしたものです。
  • 作例下の撮影データは、記録解像度(ピクセル)/露出時間/絞り値/露出補正値/ISO感度/ホワイトバランス/35mm判換算の焦点距離を表します。
  • 強調のため一部の項目を1行目に抜粋した場合もあります。


4,000×3,000 / 2秒 / F4.9 / 0EV / ISO64 / WB:晴れ / 47mm

4,000×3,000 / 1/2秒 / F4.3 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 35mm


4,000×3,000 / 1/4秒 / F4.8 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 87mm

4,000×3,000 / 8秒 / F7.7 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 47mm


 さて今年は、例年にも増して動くイルミネーションに出くわすことが多かった。昨年よりもさらに高速で緻密なパターンが増え、道行く人々の眼を楽しませている。しかしLEDの明滅パターンが速くなればなるほど、COOLPIX P5100の最低感度であるISO64では絵を写し止めるのが難しくなる。シャッター速度を上げないと、単なる光源の集まりになってしまうからだ。色が変わるイルミネーションも困りもので、露光が長いとただの白になる。

 そこで感度を上げるわけだが、残念ながら本機の高感度画質はあまり良くない。もちろんISO200やISO400が上限だったひと昔前に比べると、格段に良くなっているのは間違いない。ただしその程度なら、現行機種ならほとんど当たり前。COOLPIX P5100で悲しいのは、同じようにイルミネーションに挑戦した昨年や一昨年の機種より、若干劣る印象を受けることだ。

 ISO400までノイズそのものは少ない方だと思うが、個人的には他機種より輪郭の崩れが早いのが気になる。ここでISO200がもう少しキリっとしていたら、手ブレ補正を活かして、手持ちで都市夜景を撮り歩くこと(本当はこれが一番やりたい)も可能だったかもしれない。なお本機の感度設定は、フル画素でISO64~ISO2000。記録画素数が5M相当になるものの、ISO3200での撮影にも対応している。ISO800からはノイズも目立つようになり、ISO1600~ISO2000はメモ程度のクオリティといえる。


ISO64
4,000×3,000 / 4秒 / F5.3 / 0EV / WB:晴れ / 87mm
ISO100
4,000×3,000 / 2秒 / F5.3 / 0EV / WB:晴れ / 87mm

ISO200
4,000×3,000 / 1秒 / F5.3 / 0EV / WB:晴れ / 87mm
ISO400
4,000×3,000 / 1/2秒 / F5.3 / 0EV / WB:晴れ / 87mm

ISO800
4,000×3,000 / 1/4秒 / F5.3 / 0EV / WB:晴れ / 87mm
ISO1600
4,000×3,000 / 1/8秒 / F5.3 / 0EV / WB:晴れ / 87mm

ISO2000
4,000×3,000 / 1/10秒 / F5.3 / 0EV / WB:晴れ / 87mm
ISO3200
2,592×1,944 / 1/17秒 / F5.3 / 0EV / WB:晴れ / 87mm

ISO64
4,000×3,000 / 3.6秒 / F5.3 / -1.3EV / WB:電球 / 87mm
ISO100
4,000×3,000 / 2秒 / F5.3 / -1.3EV / WB:電球 / 87mm

ISO200
4,000×3,000 / 1.23秒 / F5.3 / -1.3EV / WB:電球 / 87mm
ISO400
4,000×3,000 / 1/2秒 / F5.3 / -1.3EV / WB:電球 / 87mm

ISO800
4,000×3,000 / 1/4秒 / F5.3 / -1.3EV / WB:電球 / 87mm
ISO1600
4,000×3,000 / 1/7秒 / F5.3 / -1.3EV / WB:電球 / 87mm

ISO2000
4,000×3,000 / 1/10秒 / F5.3 / -1.3EV / WB:電球 / 87mm
ISO3200
2,592×1,944 / 1/15秒 / F5.3 / -1.3EV / WB:電球 / 87mm

 もっとも、背景が明るい屋内などで撮る分には、高感度での撮影が大変重宝している。画質的には今ひとつだし、同じ1,200万画素のライバル機種より画質に優れているとはいえない。それでもかなり暗い屋内で、とりあえずノンストロボで撮れるのはありがたい。高感度を「撮れないよりマシ」で片付けるのは寂しいが、ないよりはあった方がずっといいと思う。今後の進化にも期待したいし、もし画素数が高感度画質のネックになっているとすれば、それを抑えた高感度対応バージョンにもニーズはあると考えるが、部材調達やマーケティングなどの面で実現は難しいのだろうか。

 もうひとつ厄介に感じたのが、セルフタイマーだ。夜景撮影では、ブレ防止のためセルフタイマーで撮影している。このとき、撮影後に必ずセルフタイマーの設定がリセットされ、撮るたびに設定し直さなければならないのが苦痛だった。ちなみに、セルフタイマーの設定は10秒と3秒。短い方が2秒ではなく3秒なのは珍しい。

 と、柄にもなく苦言を並べてしまったが、やはりコンパクトデジタルカメラなのに、スローシャッターが選べたり、マニュアル露出が可能なのは面白い。オート主体のお手軽コンパクトより、撮影の幅が広いのは素直に認めたいところだ。


4,000×3,000 / 1/2秒 / F4.7 / 0EV / ISO64 / WB:晴れ / 302mm

4,000×3,000 / 1/15秒 / F3.4 / 0EV / ISO64 / WB:晴れ / 23mm(ワイコン使用)

4,000×3,000 / 1秒 / F3.9 / 0EV / ISO100 / WB:電球 / 47mm

4,000×3,000 / 1/2秒 / F3.9 / 0EV / ISO200 / WB:電球 / 74mm


1:1
2,992×2,992 / 1/2秒 / F3.4 / 0EV / ISO64 / WB:電球 / 47mm

1:1
2,992×2,992 / 1秒 / F5.4 / 0EV / ISO64 / WB:晴れ / 35mm


URL
  ニコン
  http://www.nikon.co.jp/
  製品情報
  http://www.nikon-image.com/jpn/products/camera/compact/coolpix/p5100/
  気になるデジカメ長期リアルタイムレポートバックナンバー(2007年)
  http://dc.watch.impress.co.jp/static/backno/longterm2007.htm

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本誌:折本 幸治

2007/12/25 00:02
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