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ペンタックス K10D【第2回】
パワーズームで手持ちイルミネーション撮影

Reported by 中村 文夫


今回使用したレンズ。左からsmc PENTAX FA★ 80-200mm F2.8 ED(IF)と同FAズーム 28-80mm F3.5-4.7
 K10DのレンズマウントはペンタックスKAF2。従来のKAFマウントとの違いは、電源接点が付いたことだ。本来この接点は、フィルムカメラのZシリーズのときにパワーズームに電力を供給するために考案されたものだ。

 パワーズームはズームリングを指先でわずかに動かすだけでモーターの力によってズームが作動。リングの回転角を変化させるとズーミングのスピードが3段階に変化する。リングを手前に引けば手動ズームに切り替えることも可能。さらに、インテリジェントズームと名付けられた独自の機能を装備していた。インテリジェントズームの機能は以下の3つだ。

 1.ズームクリップ

     予め任意の焦点距離を設定しておくと、レンズ側のボタンを押すだけで、その焦点距離にズーミングする機能。

 2.像倍率一定機構

     たとえばポートレートなどを撮影する場合、最初に構図を決めて、この機能を設定。こうすると、焦点距離と被写体までの距離から人物の写る大きさをカメラが演算し、撮影距離が変わっても、人物の大きさが一定になるよう自動的にズーミングしてくれる。

 3.自動露光間ズーム

     イルミネーションなどを撮影する場合、露光中にズーミングすると光源が尾を引いたように写すことができる。自動露光間ズームとはこれを自動的に行なう機能で、露光時間の前半は焦点距離を固定したまま露光。1/2を過ぎた時点で広角側から望遠側にズーミングがスタートし、放射状に伸びた光跡を画面に残す。


 これらの機能を利用するためには、パワーズームを内蔵したレンズを使用する必要あり、そのためFAレンズと名付けられた新レンズシリーズが開発された。だがパワーズームに対するユーザーの反応は冷ややかで、高級レンズのFA★レンズを残し、数年で姿を消した。インテリジェントパワーズームはアイデアとしては面白いが、どちらかというと他社と差別化を図るために考え出された機能なので、結局、ユーザーに受け入れられなかったのだろう。またパワーズームのためには、レンズ内にズーム駆動用モーターを組み込まなければならず、そのためレンズが大型化したことも、定着しなかった理由と考えられる。


K10DのマウントはKAF2。マウント内側にある2つの電気接点でレンズへ電力を供給する。K10Dでは、超音波モーター内蔵レンズ用にも使われる こちらはZ-1P。KAF2マウントはK10Dとまったく同じだ

 ペンタックスはデジタル一眼レフの*ist Dを発売する際、パワーズーム非対応のKAFマウントを採用。K100Dまで同じマウントを採用してきた。今回K10DでKAF2マウントが復活したわけだが、これは来春発売予定の超音波モーター内蔵レンズに対応するための準備である。KAFマウントには超音波モーターに電源を供給する機能がなかったので、長い間休眠状態だったパワーズーム用接点を超音波モーター内蔵レンズ用に流用したというわけ。新しい規格を作るより、従来のものを利用した方が得策だと判断したためだ。

 利用目的は違っても、K10DのKAF2マウントは、フィルムカメラのZシリーズに採用されていたマウントと基本的な仕様は同じ。当然のことながら、パワーズームを内蔵したレンズをK10Dに組み合わせるとパワーズームが利用できる。ただし上記のインテリジェントズームには非対応で、利用できるのはモーターの力でズームを動かす通常のパワーズームのみ。だが、パワーズームユーザーにとってはこれだけでも朗報だ。

 パワーズームが生き残れなかった最大の原因は、思ったより実用性が低かったことだが、まったく役に立たなかったわけではない。たとえば望遠系のFA★ズームレンズのようにレンズ本体が大型の場合、パワーズームを使えばカメラを下から支えた左手の位置を動かすことなく指先の操作だけでズーミングが可能。リングの回転角の感覚が微妙なので、慣れないと使いにくいが、程良いバランスを保ったまま手持ち撮影ができる。もちろんK10Dなら、どんなレンズを組み合わせても手ブレ補正が作動。つまり、カメラがホールディングしやすいうえに手ブレ補正機能の効果が上乗せされ、手ブレの危険性が格段に低下する。


パワーズームを採用したsmc PENTAX FA★ ズーム 80-200mm F2.8 ED(IF)。ED(超低分散)ガラスを使用した高性能大口径レンズ 写真を見ればわかるように前側に重心がある。パワーズームを利用すれば、指先だけの操作でズーミングができるので、手持ち撮影時にバランスが崩れない

ズームリングをわずかに回転させるだけでパワーズームが作動。リング回転角に合わせズームスピードが3段階に変化する。リングを手前に引けば手動ズームもできる パワーズームを搭載したレンズの側面には、インテリジェントパワーズーム用スイッチがある。ただしK10Dでは、これらの機能は利用できない

smc PENTAX FAズーム 28-80mm F3.5-4.7。Zシリーズととにも誕生したバワーズーム内蔵の標準ズーム




 前置きが長くなったが、今回のレポートでは、手持ちのパワーズーム2本を使って、夜景撮影に挑戦。クリスマスのイルミネーション溢れる街へ繰り出した。もちろん三脚は不携帯。すべて手持ちで撮影した。

 撮影当夜は雨。それほど雨足は強くなかったので傘を差しながら撮影。それでもカメラが濡れてしまったが、K10Dは防滴機能を備えているので安心して使うことができた。なおレンズの方は防滴仕様になっていないが、とりあえずトラブルなく作動。ところで、これからK10D用として発売になるレンズは、防滴仕様になるのだろうか。少なくとも超音波モーターを内蔵した高級レンズくらいは防滴仕様にして欲しいものだ。

 最初に使用したレンズは、smc PENTAX FA★ 80-200mm F2.8 ED(IF)。このレンズはフィルムカメラのZシリーズの時代に登場した大口径望遠ズームで、つい最近まで現役だった。このクラスにしては大きくて重いが描写性能はトップクラス。もちろんパワーズームを内蔵している。

 撮影地は千葉中央公園周辺。まず公園の真ん中にそびえ立つクリスマスツリーの撮影からスタートした。最初はハイパープログラムで絞りを開放にして撮影していたが、いくら大口径とはいえISO100だとシャッタースピードが1/10~1/20秒になってしまう。手ブレ補正機能をオンにしてあっても、望遠レンズだと歩留まりが悪い。

 そこで撮影モードをSv(感度優先)モードに変更。意外と早くこの新モードの使い道が見つかった。ファインダー内でシャッタースピードの表示を確認して、手ブレしそうなシャッタースピードのときは、後ダイヤルでISO感度をアップ。ダイヤル操作だけでISO感度が変わるので、とても使いやすい。またパワーズームを使うと、レンズを支える左手を持ち替えることなくズーミングが可能。今回のように傘を差しているときなどはバランスを崩すことなく撮影に専念でき、とても便利だ。

  • 作例のリンク先のファイルは、JPEGで撮影した画像をコピーおよびリネームしたものです。
  • 作例下の撮影データは、使用レンズ/記録解像度(ピクセル)/露出時間/絞り値/露出補正値/ISO感度/ホワイトバランス/実焦点距離を表します。


絞りを開放にしてもISO100だとシャッタースピードは1/25秒にしかならず、完全に手ブレを防ぐことは不可能。3カットのうち1カットだけブレずに済んだ。
FA★ズーム 80-200mm F2.8 ED / 3,872×2,592 / 1/25秒 / F2.8 / 0EV / ISO100 / WB:太陽光 / 103mm
Svモードで撮影。シャッタースピードが1/30秒になるようISOを400にアップさせた。この焦点距離だと1/30秒以上のシャッタースピードを選べば、かなりの確率でブレを回避できる。
FA★ズーム 80-200mm F2.8 ED / 3,872×2,592 / 1/30秒 / F2.8 / 0EV / ISO400 / WB:太陽光 / 148mm

雨の中を歩き回っていたら、植え込みに埋め込まれた照明から湯気が上がっているのを発見。とても明るいのでISOを100に戻して撮影した。このレンズはズームレンズにしては最短撮影距離が1.4mと短く、近接撮影にも強い
FA★ズーム 80-200mm F2.8 ED / 3,872×2,592 / 1/125秒 / F2.8 / 0.3EV / ISO100 / WB:太陽光 / 200mm
遠くにあるネオンにピントを合わせて撮影。絞り開放なので手前のイルミネーションがキレイな前ボケになった。MFに切り替えて撮影
FA★ズーム 80-200mm F2.8 ED / 3,872×2,592 / 1/50秒 / F2.8 / 0EV / ISO400 / WB:太陽光 / 200mm

頭上を見上げるとモノレールが駅を出るところだった。とっさに進行方向へカメラを向け、ISO1600に変更。Svモードだからできる技だ。ただしホワイトバランスを変える余裕はなく、太陽光のまま撮ってしまった。ノイズが目立つが、ISO1600にしてはそれほどでもない
FA★ズーム 80-200mm F2.8 ED / 3,872×2,592 / 1/30秒 / F2.8 / 0EV / ISO1600 / WB:太陽光 / 115mm
 公園を後にして繁華街へ。ヘアサロンのディスプレイが目に付いた。看板だけではつまらないので、人が通り過ぎるのを待ってシャッターを切る。今度はホワイトバランスをオートにセット。自然な発色を得ることができた。
FA★ズーム 80-200mm F2.8 ED / 3,872×2,592 / 1/25秒 / F2.8 / 0EV / ISO400 / WB:オート / 80mm

 雨足が強くなってきたので、一旦屋内へ避難。レンズをFAズーム 28-80mm F3.5-4.7に交換し、雨が小降りになるのを待って外へ出た。駅へ向かう途中、洒落たカフェを見つけカメラを向けた。このレンズもパワーズームを内蔵しているが、レンズ自体がコンパクトなので、パワーズームの必要性は、それほど強く感じない。

 次は京成千葉中央駅へ。駅ビルの壁面にイルミネーションで成田エクスプレスが描かれていた。そのまま撮ったのでは芸がないので、多重露出を使ってソフトフォーカス風に撮ることにした。最初の露光はピントを合わせ、2回目の露光でわざとピントを外せばシャープな像の周辺にボケた像が重なり、疑似ソフトフォーカスになる。

 *ist Dにも多重露出機能が付いていたが、実際に使うのは今回が初めて。メニュー画面で多重露出を表示させると露光回数や露出の自動調節機能まで付いていることに驚かされた。

 また、この被写体は露光間ズームにも向いているが、K10Dは自動露光間ズームには非対応。おまけに露光中はパワーズームが作動しない。露光中にパワーズームが使えれば、カメラに余計な振動を与えることなくズーミングができ、光跡がジグザグにならずに済むのだが……


とりあえずプログラムモードで1カット撮り、RECビューを確認。上半分を占める電飾看板が明るいので、暗部がつブレていた。そこで撮影モードをマニュアルに変更。ハイパーマニュアルでシャッタースピードを1段遅くして撮影した。電飾はトビ気味だが、全体の雰囲気は良い
FAズーム 28-80mm F3.5-4.7 / 3,872×2,592 / 1/20秒 / F4.5 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 50mm
 本来なら三脚を使ってカメラを固定すべきだが、持っていなかったので手持ちで撮影。ファインダー中央で照準を定めてフレーミングしたら意外とずれなかった。
FAズーム 28-80mm F3.5-4.7 / 3,872×2,592 / 1/10秒 / F4.5 / 0EV / ISO400 / WB:オート / 50mm

 コンパクトな広角ズームでは、それほど強く感じなかったが、大口径望遠ズームとパワーズームの相性は抜群だ。さらにK10Dの手ブレ補正機能との相乗効果で、かなり遅いシャッタースピードでも、手ブレすることなくシャープな写真を撮ることができた。

 またSvモードも今回初めて使ったが、ダイレクトにISO感度が変えられる機能と解釈すれば、なかなか便利だ。最初に説明を受けたときは、いったんどんなときに役に立つのだろうかと首を捻ったが、実際に使ってみて納得した。あとはTAvモードの使い道を探さなければ……



URL
  ペンタックス
  http://www.pentax.co.jp/
  製品情報
  http://www.digital.pentax.co.jp/ja/35mm/k10d/
  レンズ交換式デジタルカメラ機種別記事リンク集(K10D)
  http://dc.watch.impress.co.jp/static/link/dslr.htm#k10d
  気になるデジカメ長期リアルタイムレポートバックナンバー
  http://dc.watch.impress.co.jp/static/backno/longterm.htm


( 中村 文夫 )
2006/12/15 01:43
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