メーカー別「撒き餌レンズ」まとめ

オリンパス:低価格でお買い得……なのに“PREMIUM”の実力派!

撒き餌とは、漁や釣りを行なう際に獲物をおびきよせるためにばらまくエサのことである。仕掛けの近くに集めるのがおもな目的であるため、通常、あまり高価なものは使用しないとされる。

この撒き餌になぞらえて、安価ながらよい写りをする交換レンズを、俗に「撒き餌レンズ」と呼ぶ。もちろん、これはいかなるカメラメーカーからも、また一般社団法人カメラ映像機器工業会からも規格化、標準化されていない概念であるが、カメラ愛好家のあいだではすでに広く認知されている。

多くの場合、撒き餌レンズは、標準ズームの画角域の単焦点レンズで、大口径と呼ぶほどには明るくないF値を特徴とする。比較的設計の難度の高くない標準〜中望遠域ではF1.7、F1.8のものもあるが、レンズキットに多く同梱される普及価格帯の標準ズーム(概してF3.5-5.6程度)に比べれば明るいと言えるF2.8程度のものも多い。

光学設計、機構設計に技巧的な要素を盛り込まないことで小型軽量化や低価格化を実現しつつ、ほどほど以上の画質とボケの大きさを兼ね備える。高級感をさほど感じさせない外観と描写力との不釣り合いさが、ギャップ萌えと呼ばれる心理現象を誘引する要因となっていると解する説もある。

一般に、撒き餌レンズは、レンズ交換式カメラを買ったばかりの入門者に向けて、2本目(ダブルズームキット購入者にとっては3本目)の選択肢として提案される。安価であるうえに、画質面では十分に高く、価格も考慮すればきわめて高く評価できる。ボケが大きい、寄れる、ファインダーが明るいなどの分かりやすい特徴を持つため、標準ズームとの使い分けも楽しめる。また、おおよそは日本の工業製品らしい強度と耐久性を備えているので、一般的な使用において問題が発生することは考えにくい。

しかしながら、撒き餌レンズは、多くのカメラ愛好家にとって、危険な存在でもあることを指摘しておかねばならない。冒頭にも記したとおり、撒き餌とは、獲物を狩り集めるためのものだからだ。

撒き餌レンズそのものは安価であり、購入時の家計への影響も限定的である。しかも、価格対効果は非常に高いため、人によっては初めてレンズ交換式カメラを購入したとき以上の満足感と幸福感を得ると考えられる。この体験の影響は、次に交換レンズに対する欲求が高まったときに、より激化したかたちであらわれやすい。

交換レンズを買うような非日常的行為がなされるには心理的な障壁を乗り越える必要があるが、それにともなう葛藤は初回のみ強く、2度目、3度目には格段に容易に乗り越えられるようになる。さらに、数万円の出費で得た満足と幸福の記憶が、より大きな出費に対する期待感を増大させる効果があることも知られている。

つまり、撒き餌レンズに手を出すことは、3本目、4本目の交換レンズの購入への誘引要素となりやすく、かつ、より高価なレンズを買わずにいられない衝動の引き金ともなりかねないのである。事実、筆者の知るかぎりにおいても、「1本ぐらいどうってことないと思っていた」「お小遣いの範囲で楽しんでいるつもりだった」などの声が少なからず集まっていることから、その危険性を広く知らしめるべきとの意見が強まり、年末の財布のひもがゆるみがちなこの時期に、あえて特集し、特段の警戒を呼びかけるものである。

さて、小誌における撒き餌レンズの認定基準については、

  1. 大手量販店の店頭価格が消費税込みで4万円程度を下まわっている。
  2. 現行のカメラメーカー純正レンズで、比較的明るい単焦点レンズである。
  3. 比較的発売時期が新しい、もしくは定評のある光学系を採用している。

と、勝手ながら定めることとした。価格については編集部とも協議を重ねた結果、おおかたの了解は得られるものと判断した。賛否はあろうが、ご理解いただきたい。

◇   ◇   ◇

さて、ここからは各メーカーの撒き餌レンズを紹介したい。今回はあいうえお順でトップバッターに選ばれた、オリンパスの撒き餌レンズだ。

オリンパスの撒き餌レンズ(傾向と対策)

現在のオリンパスは、ミラーレスカメラシステムのマイクロフォーサーズに軸足を置いており、テレコンバーターを含めて19本の交換レンズを擁している。

そのうち、撒き餌レンズ認定できるのは、M.ZUIKO DIGITAL 17mm F2.8、M.ZUIKO DIGITAL 25mm F1.8、M.ZUIKO DIGITAL 45mm F1.8の3本と、けして多くはない。

M.ZUIKO DIGITAL 17mm F2.8は、初代のPEN E-P1と同時に登場した広角系の薄型レンズで、単焦点としては唯一無印の「M. ZUIKO」に属する。発売時期が古いこともあって、外観の意匠はほかと少々毛色が異なっている。

一方、M.ZUIKO DIGITAL 25mm F1.8とM.ZUIKO DIGITAL 45mm F1.8は「M. ZUIKO PREMIUM」の系統で、意匠的にも共通する特徴を持つ。この2本は小型軽量さだけでなく、光学性能にも重点を置いた設計がなされていると言える。

いずれもブラックとシルバーの2色が用意されているが、撒き餌レンズらしく外装素材が樹脂製ということもあって、シルバーのほうがやや低廉な印象となっている。

なお、オリンパスには、フィッシュアイボディーキャップレンズ BCL-0980(9mm F8.0 Fisheye)、ボディーキャップレンズ BCL-1580というボディーキャップレンズがあるが、これらは付属品という位置づけであるうえ、AF機能はもとより、電子接点などもなく、開放F値が普及価格帯のズームレンズよりも暗いこともあるので、ここでは紹介しない(編集部注:マイクロフォーサーズシステム規格を満たしていないことから、オリンパスでも交換レンズではなくアクセサリーとしての扱いとしている)。ただし、非常に安価であるし、それなりの写りも楽しめるので、遊び用として手に入れるのも一興だろう。

ここから、オリンパスの撒き餌レンズを、実売価格の高い順に紹介していこう。

※価格はすべて税込みです。

M.ZUIKO DIGITAL 25mm F1.8

実勢価格:3万3,300円前後

焦点距離50mm相当(35mm判換算)の標準レンズだが、典型的なガウスタイプではなく、凹レンズ先行型の7群9枚構成の光学系としている。焦点調節にインナーフォーカス方式を採用しているのも特徴で、静かで迅速なAF撮影が可能だ。使い勝手の言い画角、美しい背景ボケが持ち味とのことで、人物や静物撮影など、幅広く活用できるという。

なお、「M. ZUIKO PREMIUM」では唯一、レンズフードが同梱された状態で販売されている。

M.ZUIKO DIGITAL 25mm F1.8(ブラック)
M.ZUIKO DIGITAL 25mm F1.8(シルバー)

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M.ZUIKO DIGITAL 45mm F1.8

実勢価格:2万6,100円前後

筆者のような中高年が手を出すのがはばかられる「ママのためのファミリーポートレートレンズ」なるうたい文句が付された中望遠レンズで、M.ZUIKO DIGITAL 25mm F1.8よりも細身に仕上がっている。

普及価格帯のズームレンズに比べて圧倒的に大きなボケが得られるのが特徴で、それを2万円台で手に入れられるのが大きな魅力となっており、同社の撒き餌レンズの代表格と言える。焦点調節はインナーフォーカス方式で、快速かつ静粛。

レンズフードを付けない場合にバヨネット爪を隠すことのできるデコレーションリングが付属する。

M.ZUIKO DIGITAL 45mm F1.8(ブラック)
M.ZUIKO DIGITAL 45mm F1.8(シルバー)

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M.ZUIKO DIGITAL 17mm F2.8

実勢価格:2万1,500円前後

スナップ撮影などに適した広角系の薄型レンズで、2013年3月に大幅値下げを断行(旧価格は税別で4万9,875円だった)。一気に身近な価格設定となり、晴れて撒き餌レンズの仲間入りを果たした。

薄型の光学系ながら、第1レンズに凹レンズを配置するレトロフォーカスタイプの光学系を採用する。焦点調節で前玉が繰り出す仕様であるため、AF撮影時に若干の動作音が発生するのは要注意点である。

純正ではレンズフードの設定はないが、エツミやUNからドーム型のものが発売されているので、必要に応じて買い求めていただきたい。

M.ZUIKO DIGITAL 17mm F2.8(ブラック)
M.ZUIKO DIGITAL 17mm F2.8(シルバー)

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北村智史

北村智史(きたむら さとし)1962年、滋賀県生まれ。国立某大学中退後、上京。某カメラ量販店に勤めるもバブル崩壊でリストラ。道端で途方に暮れているところを某カメラ誌の編集長に拾われ、編集業と並行してメカ記事等の執筆に携わる。1997年からはライター専業。2011年、東京の夏の暑さに負けて涼しい地方に移住。地味に再開したブログはこちら