特別企画
旅×カメラ:OLYMPUS OM-D E-M10
OM-Dがここまで小さく! 上位機種ゆずりの画質をキューバで試す
Reported by上田晃司(2014/3/31 12:00)
OM-D E-M1とOM-D E-M5のDNAを引き継ぐ小型ミラーレスカメラ。それが注目のOM-D E-M10だ。
最上位機種であるE-M1と同じ画像処理エンジン「TruePic VII」と、E-M5から継承した16M Live MOSセンサーを搭載。OM-Dシリーズで一番の小型軽量ボディながら、上位機種譲りの高画質を堪能できるのが特徴だ。これからのゴールデンウィークや夏休みに旅行へ行く方々で、軽量・コンパクトかつ本格的なカメラの購入を考えている方には、一つの選択肢になるに違いない。
今回このカメラを持って、筆者初めての地であるキューバへ撮影に行ってきた。日本からカナダのトロントを経由して約18時間の場所にあるカリブ海の島国だ。経由など含めれば24時間ほど掛かる。
この国は1961年以降アメリカと国交を断絶しており、現在も一部は緩和されているものの、経済制裁が続いている社会主義国家である。そのため1950年代の古い自動車などがまだ多く走っており、古い街並みや自動車が好きな筆者には堪らない国なのだ。現在は旧市街などが世界遺産に登録されており、観光にも力を入れている。
今回は、首都ハバナとリゾート地であるハバデロを訪問した。
旅に便利な小さなボディ
今回は、筆者も慣れていない地域の旅だったので機材は可能な限りコンパクトとにまとめたかった。見知らぬ土地で撮影する場合、撮影機材は軽量で小さい方が安全だ。しかも最近では、機内持ち込み荷物の制限も厳しくなっている。機材の総重量は、旅人を常に悩ます問題だ。
E-M10を中心としたシステムは、M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 EZ、M.ZUIKO DIGITAL 25mm F1.8、マクロコンバーターMCON-P02、予備バッテリー、専用グリップECG-1。小さなカメラバッグに一式が入る。安全な上、1日中持って歩いても疲れない。
ボディは筆者の手のひらに収まるほどコンパクト。ボディのみ重量は約396gだ。このクラスのカメラとしては軽量といえるだろう。機材一式合わせても1kg以下なので、圧倒的な機動力を実現できる。デジタル一眼レフにはなかなか実現できない重量感とサイズ感、それがこのクラスのミラーレスカメラのアドバンテージの一つだ。
初日から数日間は首都ハバナに滞在し、世界遺産に登録されている旧市街を散策した。朝から夜まで十数時間近く歩いても、一般的なデジタル一眼レフカメラを持ち歩いた場合と比べると疲れ方が違う。最近、疲れると手が上がらないほど肩こりがひどくなることがあるが、今回は軽量なシステムのお陰で、肩こりも悪化することなく撮影に集中することができた。
スナップ撮影においては、どれだけ街中を歩き回って被写体に出会うかが結果に影響するので、体力を極力消耗しないカメラが重要だ。その点においてはE-M10は最高の相棒と言ってもよいだろう。
日差しの強い旅先で心強いEVF
操作感に関しては、今までのOM-Dシリーズを引き継いでいるため、迷うことなく思い通りの操作を行なえた。
例えば、タッチ式液晶モニターではAFターゲットを直感的に選択可能。頻繁に変更するISO感度やWB、ピクチャーモードなども、OKボタンから素早く変更できる。ストレスなく撮影に集中できた。
パームグリップも心地良い握り具合。購入時のままでも十分なホールド感を得られるが、さらに別売の専用グリップECG-1(税別7,500円)を使用すれば、ある程度手の大きい方でも楽にホールドできるのでオススメだ。大口径レンズなど、大きめのレンズを使用する方にもよいだろう。
このハンドグリップは底面のレバーを操作するとワンタッチで外れる仕組み。メモリーカードやバッテリー交換を容易に行なえる優れものだ。
また、E-M10の注目すべき機能であるEVFは、直射日光が強いキューバでは非常に役立った。
ファインダー倍率は35mm判換算で0.57倍、ドット度は約144万。視野率は100%であり、被写体をしっかり捉えることができる。表示タイムラグも0.007秒と高速。走るクラッシックカーなどもストレスなく撮影できた。
また、3型約104万ドットの液晶モニターはタッチパネルを採用し、上向き80度、下向き50度にチルトする。ハイアングル、ローアングルも楽な姿勢でこなせるのはやはり便利だ。
上位機種ゆずりの高画質を堪能
オリンパスのお家芸である、ボディ内手ブレ補正も強力だ。E-M1の5軸補正にはスペック的に劣るものの、E-M10の3軸VCM手ブレ補正もシャッター速度換算約3.5段の補正効果を持つ。街灯の少ない夜のハバナ市内でも、ISO1600、1/8秒前後であれば手持ちで撮影できた。ファインダー像も止まる。
この手ブレ補正は、動画撮影においても圧倒的な効果を体感できる。三脚を使っていないにも関わらず、ほとんどブレが気にならない。静止画、動画を手持ちでブレなく撮影できることに、旅カメラ、スナップカメラとしての優秀な資質を感じる。
気になる画質に関しては、E-M1とE-M5のDNAを引き継ぐだけのことはあり、不満を覚える場面はほとんどない。解像感も申し分なく、ディテールまでしっかりと表現できている印象だ。
また、色の表現力が高く、表現の難しいカリブ海のカリビアンブルーも肉眼で見たまま表現することができた。青や緑は特に美しい印象を受ける。日陰に駐車してある車の赤色も素晴らしい。夕日や朝焼けの空のグラデーションも滑らか。「ハイライト&シャドーコントロール」も作品を造り上げるには役立った。
高感度性能も悪くない。ISO3200位であれば十分使用できる印象だ。暗部などを見ると少しざらつきはあるが気になるほどではないだろう。ISO6400もシーンによっては十分使えるレベルだ。クリーンでノイズレスなイメージを撮影したい場合は、ISO1600くらいまでが最適の印象。個人的にはISO3200位まではノイズはほとんど気にならなかったので、気兼ねなく高感度撮影を行なうことができた。
驚異的な薄さの新標準ズームレンズ
今回、使用したレンズはM.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 EZとM.ZUIKO DIGITAL 25mm F1.8だ。
M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 EZは、「世界最薄の3倍ズームレンズ」というふれこみの製品。35mm判換算で28-84mm相当をカバーする。E-M10のキットレンズでもある。単体での価格は税別4万2,000円。
このレンズはとにかく薄い。電源OFF時には22.5mmまで薄くなるので、カメラバッグのスペースを有効に使うことができた。ボディキャップの代わりに、E-M10に付けっぱなしにしても気になることはないくらいだ。
さらにオプションの自動開閉レンズキャップLC-37C(税別5,000円)を使えば、スイッチをオンにするだけですぐに撮影できる。コンパクトデジカメではよく見られる機構だが、交換レンズとしては初めての試みだ。
電源を入れて1秒ほどで繰り出すため、時にはもどかしいこともある。これは電動ズーム特有の問題だ。しかし、自動開閉レンズキャップを使うことで、外したレンズキャップをいちいち管理する必要がなくなる。そのメリットは計り知れない。
レンズ構成は、非球面レンズ3枚、EDレンズ1枚、スーパーHRレンズ1枚の7群8枚構成。描写力は高く、遠景までしっかりと解像している印象だ。
細かく見るとレンズ周辺は少し流れているように感じることもあったが、このサイズ感と価格を考えれば納得できるだろう。ボケもキットレンズとしては十分な印象だ。
最大撮影倍率は0.23倍。35mm判換算で0.46倍になると考えると、簡易マクロレンズとしても使える実力を持っている。
加えて別売のマクロコンバーターMCON-P02(税別8,500円)と組み合わせることで、最短撮影距離は18cm、最大撮影倍率は0.38倍(35mm判換算で0.76倍)となる。52gとコンパクトなコンバーターレンズなので、持ち運びには苦にならない。カメラバックに入れておけば、いざという時に安心だろう。
25mm F1.8は汎用性の高い標準レンズ
換算50mm相当になるM.ZUIKO DIGITAL 25mm F1.8では、標準域でのスナップを楽しんだ。E-M10と同時に発表された新レンズで、開放F値の明るい単焦点レンズ群、M.ZUIKO PREMIUMに連なる標準レンズだ。価格は税別4万2,000円。
開放F値がF1.8と明るく、ボケを生かした撮影や、ローライトコンディションでシャッター速度が必要なシーンでも役だった。ボケも美しく、シャープなピント位置からアウトフォーカスに移行する部分の描写はとてもきれいだ。
サイズもコンパクト。E-M10との相性も抜群だ。造りも良く、フォーカスリングのフィーリングなど、高級レンズに負けない操作感は高く評価したい。
この手の大口径単焦点レンズは、キットのズームレンズとは全く違うボケ感を得られる。旅にもう1本レンズを持って行くのなら、このレンズがオススメだ。
旅との相性が良いカメラ
今回、キューバではインターネットが日本ほど普及しておらず、E-M10のWi-Fi機能が活躍する場面がほとんどなかった。とはいえ一般的に、旅先で写真のSNS投稿ができるのは楽しいものだ。最近のトレンドである、Wi-Fi機能の内蔵は素直に歓迎したい。
その他、アートフィルター、HDR撮影、手持ち夜景、タイムラプス動画といった機能を搭載。露光中の画像を更新表示できるライブバルブやライブタイム撮影も可能となっている。コンパクトなカメラではあるが、機能は上位機種に引けをとっていない
バッテリーについても触れておこう。CIPA試験基準によると約320枚は撮影できる。自分の撮影スタイルの場合、終日撮影しても交換する事態にはならなかった。
ただし、充電機を持って行かないユーザーや、枚数を撮影するユーザーは予備のバッテリーを携帯しておくことをオススメしたい。折角旅に行ってバッテリー切れで写真を撮れないようなことがあると、旅の楽しみも半減してしまう。
E-M10はレスポンスが良く、ストレスを感じさせないカメラでもある。筆者の撮りたいイメージを的確に撮ることができたのは、俊敏な操作感にもあると思う。小型ボディによる機動力もあり、本当に旅やスナップ撮影に最適なカメラといっても過言ではないだろう。
旅行シーズンを前にカメラの選択で悩んでいる人、サブカメラを狙っている人は、ぜひ実機を触っていただきたい。このカメラの良さが分かるはずだ。
(制作協力:オリンパスイメージング株式会社)